なぜ、金パラが下がると勤務医の給料は下がるのか?【歩合給の闇】

なぜ、金パラが下がると勤務医の給料は下がるのか?【歩合給の闇】

ひら@歯科保険診療と収益について考える
2020年9月27日

1Dをご覧のみなさま、お久しぶりです。「歯科保険診療と収益について考える」というnoteを書いている「ひら」です。

前回寄稿した記事では、義歯の製作者である技工士の方々への配慮を欠いたこと、誠に申し訳ありませんでした。前回の記事は「材料をいっぱい使うと給料が上がる歩合制」や「金属代をはじめとする材料代が高騰すると歯科医院の人件費が増える仕組み」に対する問題提起をお伝えしたかったです。しかし、私の文章構成がつたなく、1Dのコメント・Twitterを中心にわかりにくいとのご意見を多数頂戴いたしました。

1D編集部と協議し、今回は「歩合制の問題点」について真っ向から取り組んだ記事を書かせていただきました。前半では「歩合制の問題点」、後半では「前回の記事の問題点」を取り上げます。文章構成等について、前回の記事のコメント・twitterで頂いたご意見を参考にさせていただきました。感謝申し上げます。

--- 以下本文になります。---

勤務歯科医師の給料は固定給か歩合給になります。固定給は毎月○万円が給料になります。経営者との面談で昇給することもあります。この記事でトピックになるのは歩合給のほうです。歩合給では売上の○%が給料になります。

例えばある月に30万点(=300万円)で自費が100万円を売り上げたとします。
歩合率が20%の場合は(300万+100万)×20%=80万
となり、この月の給料は80万円になります。

求人サイトをみると歩合率は20%程度が一般的です。求人サイトでは「歩合給で頑張っただけ評価されます」と書かれることが多いです。では、この「歩合給制度」何が問題でしょうか?

今回の記事では保険診療における歩合給の問題点を解説します。

そもそも歩合給では医院の利益に貢献しているかを評価できていない

歩合給は本来は歯科医院の利益に貢献している人を評価する制度のはずです。医療ですから、お金のことだけで評価するのがいいとは筆者は思いませんが、歯科医院も組織として、利益をださないと潰れてしまいます。なので、歯科医院に利益をもたらしている人を評価する必要があると思います。

しかし、今の歩合給のもとでは医院の利益に貢献できている人を評価しているとは言い難いです。

例えば、2006年には12%pdのFMCは661点でした。2020年7月には1391点になりました。この差分の1330点は、金属代の高騰によるものです。

ちょっと脱線しますがFMCの点数は以下のように決まっています。

2006年:保険技術料445点+保険材料料216点=661点
2020年:保険技術料454点+保険材料料937点=1391点

保険技術点とはFMCという物自体の点数です。

昭和62年には厚生省大臣からの通知
「製作技工に要する費用が含まれ、その割合は、製作技工に要する費用がおおむね100分の70、製作管理に要する費用がおおむね100分の30である。」

ここのため、7割を技工料として支払うのが、好ましいとされています。

保険材料料とは金属代です。厚労省が考える標準的な12%pdの使用量から算出された点数です。金属代が近年高騰しており、保険材料料の上昇は十分でないとの指摘もあります。今回の主題でないので、ここまでにしておきますが、これは「金パラ逆ザヤ」問題と言われています。

仮に、保険材料料が金属代の分をちょうどカバーしていたとして、保険材料料からは歯科医院は利益は出ないはずです。

しかし、歩合給のもとでは同じ大臼歯のFMCをセットした場合に

2006年:661点×20%=1322円
2020年:1391点×20%=2782円

なぜか、2006年と2020年で同じことをしても2倍近く給料が変わってしまいます

2020年10月には金パラの値段は減額改定が行われるため、歩合給は下がることとなります(参考:金銀パラジウム合金「想定外」の減額改定は受け入れられるか?)。

他にも歯周外科で骨を再生するのに用いられるリグロスという薬があります。

リグロス1200μgは2832点あります。これは仕入れ値とほとんど同じです。用いた場合と用いない場合で給料は5660円ほど変わってきます。医院の利益はリグロスを用いても用いないのでも変わらないです。

医院の利益を評価するという歩合給の趣旨からは、リグロスを用いることで給料が発生するのは不適切です。

かつては、金属代もここまで高騰しておらず、リグロスなどの高額な材料は保険に少なく、単純な歩合制でも大きな問題は起こらなかったかもしれません。

今は、金属代・高額な材料とお金がかかるようになってしまいました。時代の変化に「単純に売上の○%が給料という歩合制」では対応しきれてないように見えます。

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    売上以外で貢献している歯科医師の取り組みを評価できていない

    今の時代は歯科医院の経営では保険診療でも口腔状態を維持する取り組みが大事になってきました。これは安定した口腔状態を持つ患者に定期的に来ていただき、衛生士を中心に口腔衛生指導を行えば、歯科医師のチェアタイムは極めて短く、材料代もかからないため、収益率が高いからです。

    例えば保険でSPT2(歯茎の検査、写真記録、口腔清掃を包括した項目)を行なった場合1197点(注)になります。継続来院への動機づけは歯科医院の経営戦略上、最も大事な戦術となります。

    雑な治療やカリエスの取り残しによって、定期的に来院していたのに治療になってしまっては、患者さんから不満が出てしまうし、歯科医師のチェアタイムが将来そこに投資されてしまうことになります。

    このような継続来院への動機づけに対する評価、やり直しの少ない治療に対する評価は歩合給では発生しません。

    「当院は予防管理型の歯科医院です」と求人して、「歩合給で頑張っただけ評価されます」と書いてあることもしばしばあります。補綴物のセットを行うと給料が上がる仕組みが、予防管理型の歯科医院の勤務医への評価として妥当でしょうか?

    歩合給のもとでは歯科医学的に妥当な治療が行われるために、歯科医師に道徳やモラルが要求されてしまう。

    この歩合給のもとでは、極力、型取りをして材料・金属代・技工料を多く使うことが給料アップへとつながります。

    例えばCRかインレーか悩むケースがあるとします。歩合給であるとここにインレーにすると歯科医師の給料が上がるという問題が発生します(参考:保険のメタルインレーは本当に赤字なのか?)。

    このことから歩合給のもとでは、歯科医学的妥当性のみで判断するはずのことに、歯科医師自身の生活や給料が頭によぎってしまいます。歯科医師個人がモラルを持って、治療するのは当然ですが、このような仕組みが医療に相応しいのでしょうか?

    まとめ

    今回は歩合給の問題を
    • 「そもそも歩合給では医院の利益に貢献しているかを評価できていない」
    • 「売上以外で貢献している歯科医師を評価できていない」
    • 「歯科医学的に妥当な治療が行われるために、道徳やモラルが要求されてしまう」
    の3点に絞って解説しました。

    ではどういう、給料体系・評価制度がいいのかというと筆者にもその明確な答えはないです。なかなか難しい問題です。

    今回は問題提起とさせていただきます。こういう評価制度がいいのではというご意見をコメントで頂けると幸いです。

    --- ここからは前回記事の問題点についてです。---

    多数のご意見ご感想をいただきました。代表的なものを取り上げさせていただきます。

    • 一般の方、研修医、若手Dr・歯科技工士・衛生士等でも誤解を招かないような記事構成にすべき
      ご指摘の通りで、歯科医師以外の方々の視点は抜けていました。歯科医師は歩合給に馴染みがあるので、その視点からの記事になっておりました。歯科医師以外の方々の視点が抜けていることが記事の内容をわかりにくくし、技工士の方々への配慮を欠いておりました。誠に申し訳ありません。

    • 素人が読んだら歯医者は悪いことする人がいるんだと思う人もいると思うので、歯科が良くなって欲しいと思うならちゃんと発信してほしい
      ご指摘のとおりです。申し訳ございません。

    • 歩合歯科医の給与体系を分かっていないと皮肉だと分からない。
      ご指摘のとおりです。今回の記事では歩合歯科医の給与体系についての説明の詳細を入れました。

    • タイトルが悪い・皮肉だとわかりにくい
      ご指摘の通りです。タイトルについては目にとまるようにと、インパクトをあるものにしておりました。「確かに最後まで読めばわかりますが、少し引っ張りというか題名のインパクトと強い…素直に題名から伝えたいことを書いた方が良かったのではと思います」というコメントも頂きました。インパクトあるタイトルにするにしても、「序盤に種明かしが良かった」とのご指摘もいただきました。

    • タイミングが技工士問題を利用して炎上狙いなのか?
      前回の記事の公表の前日に、技工問題に関するライブ配信が行われたことと関連付けてのご意見もいただきました。前回の記事はタイトル・構成で「給料アップ」を主眼におくことにより、注目されることを狙ってはいました。しかし、技工問題と絡める意図はなかったです。技工士の方々も読む媒体だということが抜けており、技工士の方々への配慮が欠けたことが炎上の原因と考え、反省しております。

    • ジョークや皮肉であっても自分の仕事への熱意が茶化されたかの様な表現が文書として出ることへの不快感がある
      ご指摘の通り、技工士の方々を始めとする歯科医療者への配慮が欠けていたこと反省しております。

    • 歩合制の制度としての問題、点数と材料費の問題、オーバートリートにならないか歯科医師個人の道徳、モラルの問題なども含めてまとめた記事にしないといけない。
      ご指摘の点、最もだと思います。今回の記事で反映するよういたしました。

    • 削って詰めたりあれこれいらんことでもやればやるほど保険点数が上がる仕組みがあるから当然じゃないか?
      この問題については保険制度の問題ではなく、歩合給の方の問題だと考えています。保険点数は確かに必要性の薄い補綴物のやりかえを行うと上がります。しかし今の保険制度上、医院にとって利益になる行為は継続来院への動機づけを行い、長期安定した口腔内状態を作り、SPT2(歯茎の検査、写真記録、口腔清掃を包括した項目)の1197点(注)を算定していくことだと思います。今の保険の制度では、患者さんの利益になる長期安定した口腔内の維持に成功した医院へ保険点数は配分されていると思います。

    この度は多数のご意見・ご感想を頂戴し、ありがとうございました。この記事へのご意見・ご感想も、コメントやtwitterでいただけると幸いです。

    ここまで読んでいただきありがとうございました。

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    ひら@歯科保険診療と収益について考える
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    どうして私だけ。合格率9割の歯科衛生士国家試験に「落ちた」女たち

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    歯学部を放校になった「30歳・元歯学部生」の末路

    歯学部を放校になった「30歳・元歯学部生」の末路

    歯科医師国家試験の合格率は、下げ止まりの状況が続いている。厚生労働省が新規参入歯科医師を削減する動きもあるなかで、各歯学部は合格率の維持、そして優秀な学生の確保に頭を悩ませている。歯科医師国家試験が難化しているしわ寄せは、各歯学部の教員陣、ひいては在籍する歯学部生に及んでいる。臨床実習を含む現実味のないコア・カリキュラムのなかで、詰め込み型の教育を強いられているのが現状だ。多くの歯学部では、学生が在籍できる年数に限度がある。最大で12年間在籍できる歯学部もあれば、1学年につき1度の留年しか許されていない歯学部もある。勉強や実習に付いていけず、在籍限度を超えてしまった歯学部生に待ち受けているのは「放校」と呼ばれる事実上の追放処分だ。1D編集部では、今年で私立歯学部を放校になった「元・歯学部生」に取材を試みた。彼はこの春から地元である東北に帰り、歯科とは関係のない道へ進む。自分に合う職業を探す、ゼロからの再スタートを切ることになる。本記事が、歯学部が構造的に抱える教育上の欠陥に対する問題提起になれば幸いである。「ただただ、両親に申し訳ない」「至らぬ点もあるかと思いますが、本日はよろしくお願いします」。90度に近いお辞儀をして、彼は取材会場に現れた。鈴木さん(仮名)は見るからに真面目そうで、とても礼儀正しい印象の男性だ。彼は今年で31歳になる。2月中旬に発表された進級判定で留年が確定し、大学規定の在籍限度を超えてしまった。教授陣や大学事務にも掛け合ったが、なすすべなく放校という処分を受けた。「この数年間、こうなるかもしれないということは感じていました。今はまだ放校になった実感はありませんが、ただただ、両親に申し訳ないという気持ちでいっぱいです」。淡々とわれわれの質問に答える彼の表情は、勉強や実習の重圧から解放され安堵しているようにも見えた。叶えられなかった夢、守れなかった約束歯科医師になることを約束された人生だった。両親はともに歯科医師で、東北地方の地方都市にユニット10台を超える規模の歯科医院を経営している。1日に訪れる患者数も多く、地元住民から信頼されている歯科医院である。そんな両親の間で生まれ育ち、小学校の卒業文集には「お父さん、お母さんのような歯医者さんになりたい」という夢を書いた。中学・高校は地元で1番の進学校に通い、推薦入試で関東地方にある某私立歯学部に入学した。「子どもの頃から、自分は歯科医師になるものだと確信していました。歯学部での勉強はやればできるだろうという自信もあったので、まさか自分が放校になるなんて微塵も考えていませんでした」。歯科医師の資格を取り、臨床家として経験を積んだ後に両親が経営している歯科医院を継ぐーー。順風満帆に思えた彼の歯科医師としての人生は、歯学部入学後すぐに暗転することになる。「放校確定」までの顛末歯学部に入学した彼を待ち構えていたのは、休むことを許されない歯学部のカリキュラムだ。「歯学部での勉強は、想像していた以上に過酷でした。推薦入試で入学した私は、ほとんど受験勉強をしていなかった。朝が得意ではないということも相まって、1年生の冬には成績も出席も足りないという状態になりました」。人間関係のトラブルもあり、彼は1年生で留年することになる。翌年はなんとか2年生に進級したが、2年生でも留年。その後も毎年のように留年を重ね、5年生から6年生に上がることができず、あえなくタイムオーバーとなった。「歯学部に殺される」という危機感彼には、現在の歯学部の教育に対して主張したいことがある。それは、歯学部での評価方法が成績のみに限定されており、努力や人柄を無視しているということだ。「鬱になり学校に来れなくなったり、最悪の場合には自殺した人も出ています。人格的に素晴らしい人や才能がある人も、歯学部に入ると殺されてしまう」と憤る。さらに、歯学部が歯科医師国家試験の予備校と化している点についても指摘する。「大学側の目的は、国家試験の合格率。学生のことを合格率のパーセンテージとしか見ていません。合格率を上げて、大学の権威を保つということしか関心が無いのだと思います」と続ける。おわりに歯科医師になる資質がない者は、歯科医師になるべきではない。国民や患者に対する責任があるからだ。歯科医師国家試験は、基本的資質を有さない者を弾く機能として、重要な役割を担っている。しかし、弾かれた者にも人生がある。毎年、十数名の「歯のことを10年以上勉強した何でも無い人」が誕生しているのだ。資質を有さないと思われる者には、歯学部低学年時から他のキャリアを提案するなどの大学側の仕組みが必要である。さらに言えば、現在の歯科医師国家試験の合格率偏重の歯学教育は、本当に国民や患者のためになっているだろうか。歯学部が「予備校化」したことで、本来研究や臨床という役割を担うべき大学教員のリソースが国家試験対策に奪われ、本来あるべき大学としての機能を失っていないだろうか。われわれにも正解はわからないが、歯学部が抱える教育上の諸問題は、国民の健康な生活のために、もっと議論されるべきテーマである。※個人特定防止の為、内容やプロフィールを一部脚色しています。
    1D編集部
    2025年12月8日

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