酸化亜鉛ユージノールセメントとは、主成分のユージノール(液)が持つ水酸基と酸化亜鉛(粉)の亜鉛イオンがキレート結合することでユージノール亜鉛を産生し、硬化するセメントのことです。ユージノールがレジンセメント、コンポジットレジンと接触するとレジンの重合を遅延させ、ポリマーを溶解するので、レジン充填の覆髄には適しません。酸化亜鉛ユージノールセメントの粉末の成分である酢酸亜鉛は、硬化反応の促進剤として用いられます。また、水分やアルコールの存在は著しくセメントの硬化を促進する為、器具などに水分、アルコールが付着している場合、注意が必要です。キレート結合は結合力が弱いためセメント強度は低く、歯質接着性もあまりありません(この性質は仮封には適している)。また、ユージノールは弱い消炎鎮痛作用を有しています。酸化亜鉛ユージノールセメントと類似した組成を持つEBAセメント(強化型酸化亜鉛ユージノールセメント)の液には、ユージノールとエトキシ安息香酸(ethoxybenzonic acid : EBA)が含まれます。EBAの水酸基もユージノールと同様に亜鉛イオンとキレート結合します。
酸化亜鉛ユージノールセメントの用途は、以下の通りです。
酸化亜鉛ユージノールセメントの組成は、以下の通りです。
[粉末]
酸化亜鉛
アルミナまたはシリカ
ロジンまたはポリメタクリル酸メチル
酢酸亜鉛
※ ZOEセメント、EBAセメントで組成は異なります。
酸化亜鉛ユージノールセメントの使用方法(添付文書より)
酸化亜鉛ユージノールセメントの使用方法は、以下の通りです。
粉液の採取: 特に仮着物の取り外しを容易にする場合は、液をやや多く練和する。
練和: 粉と液を紙練板またはガラス練板上に採取し、粉を2~3等分し、液中に徐々に投入し、均一に練り上げる。
仮封・仮着: 練和後直ちに適用するが、形成した歯面はエアやアルコールで乾燥させずに使用する。余剰セメント泥は軟らかいうちに除去する。
酸化亜鉛ユージノールセメントの取り扱い上の注意点は、以下の通りです。
酸化亜鉛ユージノール印象材とは、酸化亜鉛とユージノールのキレート結合により硬化する非弾性の印象材です。無歯顎患者に対する精密印象や咬合採得の際に用いられます。