トンネリングとは、根分岐部への歯間ブラシの通過を可能にし、根分岐部への清掃性を改善する目的で行われる根分岐部病変に対する治療法のことです。トンネリングを行うことによって清掃性は改善されますが、根面う蝕のリスクも高まります。トンネリングはトンネル形成術とも呼ばれ、英語ではtunnel preparationといいます。
トンネリングやトンネル形成術の適応となる根分岐部病変は、下顎大臼歯のGlickmanの分類3級、Glickmanの分類4級、またLindheの分類3度です。主に下顎大臼歯が適応となります。また、トンネリングを適応するためには、歯根がある程度長く、離開している必要があります。
根の離開が少ない場合は歯根分割抜去(ヘミセクション)が優先的に適応となります。
また、根分岐部が歯肉縁上に露出している場合はそのまま貫通させ、露出していない場合は歯肉切除術やフラップ手術によって根分岐部を歯肉縁上に露出させる必要があります。処置後、根面う蝕が発生しやすいので予防に努める必要があります。
ここではFres M(2006)の"Clinical evaluation of tunneled molars: a retrospective study."の中で発表されているトンネリングを行った歯の根面う蝕の発生について見ていくことにします。
方法
歯周病治療を受け、露出した歯根面にフッ化物を塗布するなどのメンテナンスプログラムを受講した18名のトンネル歯30本(平均トンネル年齢=3.6歳)を対象としました。プラークインデックス(PI)、ポケットの深さ(PD)、プロービング時の出血(BOP)、虫歯、欠損、埋伏、健全歯(DMFT)、人口統計学的特徴を評価しました。統計解析には、Friedman検定とMann-Whitney検定、および重回帰分析を用いました。
結果
4本(13.4%)の歯でトンネル内に活発な根面齲蝕が認められました。ファーケーション領域に面した109本の根面(内側の表面)のうち6本(5.4%)がむし歯病変に冒されていましたが、トンネル外側の根面で観察された根面むし歯の量と同様に、調査した189本の表面のうち10本(5.3%)が修復されていました(p>0.05)。トンネルの内側では、外側に比べてPDが6mm以上の部位の割合が高い結果となりました(p>0.05)。しかし、プラークインデックスとBOPスコアは、トンネルの内側と外側の両方で低い結果となりました。回帰分析の結果、トンネル内のう蝕発生との唯一の正の関連性は、過去の根面う蝕の経験であるという結果になりました(β=-0.671;p=0.01)。
トンネル治療は、定期的なメインテナンスを受けている患者の根分岐部病変を治療するのに適したテクニックであることが示されました。