口腔前庭

「口腔前庭」とは?歯科用語を解説
最終更新日: 2021年06月14日

口腔前庭とは?

口腔前庭とは、軟らかい口唇粘膜および頬粘膜と、歯の唇側・頬側面、可動性の少ない歯肉、歯槽粘膜に挟まれた空間である。英語では「Vestibulum oris」という。

口腔前庭に存在する構造物

口腔前庭に存在する解剖学的な構造物として、下記で解説するものがある。

【移行部】
口唇粘膜・頬粘膜と歯槽粘膜の移行部で粘膜が反転する部位を前庭円蓋(fornix of vestibule)という。大きく開口すると、両者は密接してほとんど実質的な空間は無くなってしまう。
 
【上唇小帯(superior labial frenulum)/ 下唇小帯(inferior labial frenulum)】
ちょうど前庭円蓋を仕切るように、正中に口唇粘膜と歯槽粘膜の間に1対のヒダがあり、それぞれ上唇小帯、下唇小帯という。歯槽粘膜側の付着部は粘膜歯肉境であるが、ときに歯肉頂にまで及んで乳頭歯肉が肥厚し、歯間離開の原因となることがある。小帯は軟らかい粘膜固有層が芯となっていて可動性に富むが、太い血管を含まない。
 
【頬粘膜】
頬(cheek)は口唇より背側の部分で、表情筋である頬筋を芯として、内側は口腔前庭に面して頬粘膜に覆われている。皮膚と粘膜の間には頬筋と結合組織のほか、頬脂肪体があり、強い疲労や疾患、飢餓によって減少する。頬粘膜には小唾液腺である頬腺(buccal gland)があり、多数の短い導管が頬粘膜に開口する。上唇小帯・下唇小帯によく似た、上下顎の小臼歯部の歯槽粘膜から斜め後方の頬粘膜に向かって1~2本のヒダがあり、これらを頬小帯(buccal frenulum)という。
 
【耳下腺乳頭】
およそ上顎第一、第二大臼歯頬側面に面する部分に、耳下腺の開口部である耳下腺乳頭がある。耳下腺管(parotid duct)は耳下腺前縁から出て咬筋外側面を走り、その前縁で内側に曲がってそのまま頬筋を貫いて頬粘膜に開口する。耳下腺乳頭は直径約5mmの粘膜の隆起で、導管上皮は口腔粘膜上皮に移行している。括約筋は存在しない。
 
【歯槽粘膜・歯肉】
口腔前庭の後壁は、歯列とそれを支える上顎骨・下顎骨の前面の一部で構成されている。骨は歯肉または歯槽粘膜で覆われている。両者の移行部を臨床的に粘膜歯肉境(mucogingival junction)といい、可動部と非可動部の境界でもある。特に下顎では触診・視診により容易に判別できる。歯槽粘膜は可動性で、上唇小帯・下唇小帯および頬小帯が付着している。

歯肉はさらに遊離歯肉溝(free gingival sulcus)によって歯槽骨に密着する付着歯肉(attached gingiva)と歯肉溝をもつ遊離歯肉(free gingiva)に分けられる。健康な歯肉の表面にはスティップリング(stippling)とよばれる多数の微細な凹みがある。これは歯槽骨と歯肉を結合するシャーピー線維の歯肉側の付着部である。

上顎の歯槽粘膜では上顎骨のごく薄い骨壁を隔てて、上顎洞(maxillary sinus)がある。また、骨内にはやはり下顎骨よりも薄い骨壁を隔てて歯根があるため、根尖部や上顎洞の病巣が歯槽粘膜を経て口腔前庭に波及することがある。また、同部は上顎洞やさらに上後方の頭蓋底の手術のための経路となる。
 

口腔前庭拡張術とは?

口腔前庭拡張術とは、口腔内の清掃性の向上、歯肉の健康維持などを目的として狭小な口腔前庭の深さを増大させる外科手術である。

切開は部分層弁(骨膜を骨に残す切開。出血は多くなるが、歯肉を動かした位置に固定しやすい)とし、適切な口腔前庭になるよう歯肉を移動し、骨膜と縫合する。


「口腔前庭」の文献・書籍など

【読み】

こうくうぜんてい

【文献・書籍】

『口腔解剖学 第1版第8刷』, 医歯薬出版株式会社

著者/監修者情報
歯科医師

歯科医師。大学卒業後、歯学部に再入学。歯学部卒業後に歯科医師免許を取得したのち、歯科医師として勤務する傍らワンディー株式会社でライターとして勤務。

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