リンガルアーチ(舌側弧線装置)

「リンガルアーチ(舌側弧線装置)」とは?歯科用語を解説
最終更新日: 2021年07月01日

リンガルアーチ(舌側弧線装置)とは?

リンガルアーチ(舌側弧線装置)とは、持続的な矯正力を発揮することによって、歯の傾斜移動を行う矯正装置である。

リンガルアーチ(舌側弧線装置)はMershon, J. V.が考案し、1918年に発表された。舌側に装着し粘膜に沿っているので、外見的にあまり目立たない。また、種々の付加物をろう着したり、デザインを多少変えたりしてさまざまな用途に用いることが可能であり、優れた拡張性を有する。

リンガルアーチ(舌側弧線装置)は下顎第一大臼歯を固定源として、これに補助弾線を介して持続的な矯正力を作用させる。可撤式のリンガルアーチ(舌側弧線装置)と固定式のリンガルアーチ(舌側弧線装置)があるが、歯の移動様式はどちらも傾斜移動である。


リンガルアーチ(舌側弧線装置)の構造

リンガルアーチ(舌側弧線装置)の構造は、以下のような要素からなる。

  • 維持バンド:第一大臼歯に装着する。ときには第二乳臼歯に装着することもある。

  • 主線:0.9mmの矯正用弾線を用い、被移動歯以外の歯の舌側歯頚部の歯肉に接して、出来るだけなめらかなカーブを描くように屈曲する。これは被移動歯の歯頚部の一点で接していれば、歯間乳頭に沿うような細かい屈曲は必要ない。また主線の長さを多少調節したり、大臼歯を整直する場合には、小臼歯付近または他の部分にバーティカルループを曲げ込む。

  • 補助弾線:0.5mmの矯正用弾力線で、主線にろう着してから種々の形に屈曲し、持続的な矯正力で歯を移動させる。弾線は主線の下を通して被移動歯の歯頚部に接触させ、装置装着時に活性化させて、歯の唇側・頬側移動、近遠心移動を行う。

  • 維持装置(STロック):主線を維持バンドに接続する部分で、ここで主線の着脱が出来る。維持装置は以下の様なタイプに分けられる。

  1. ダブルチューブタイプ:維持バンドに維持管をろう着し、それに脚部を挿入する。脚部の脱落を防ぐために、維持線(止め)を維持管の下に接触させる。取り外すときはスケーラーなどで、L字型の維持線下端を維持管の下端から外す。脚部の近心は第一・第二小臼歯の中間で主線とろう着され、主線と一体になっている。脚部の遠心はSTロックの形がデザインされ、脚部の二つの垂直部が維持管に挿入されている。
  2. 半円管と半円線のタイプ:維持管と半円線が、幅広の半円形になっている。
  3. 固定式: 主線と維持装置がろう着され、着脱出来ないが強固である。そのため、保定や保隙、加強固定(顎間固定装置の固定源など)に適している。 

リンガルアーチ(舌側弧線装置)の補助弾線

リンガルアーチ(舌側弧線装置)の補助弾線の種類としては、以下のようなものがある。

  • 単式弾線:おもに切歯の唇側移動に用いられる。
  • 複式弾線:歯の唇側・頬側移動に用いられる。折り返して二重に屈曲されるために、弾力を持っており持続的に作用する。
  • 指様弾線:前歯や小臼歯の近遠心移動に使用。U字型に屈曲され、粘膜に接しながら歯の隣接面歯頚部に適合される。
  • 連続弾線:小臼歯の頬側移動に用いられる。丸みを帯びた長方形で両端が主線にろう着される。

リンガルアーチ(舌側弧線装置)の適応

リンガルアーチ(舌側弧線装置)が適応されるのは、以下のような症例である。
  • 1歯~数歯の位置異常
  • 歯列弓狭窄(軽度)
  • 顎間固定の固定源
  • 保隙
  • 保定
  • 加強固定

リンガルアーチ(舌側弧線装置)の使用法

リンガルアーチ(舌側弧線装置)は、ほぼ1か月に1回の来院ごとに、被移動歯が正常な位置に移動するまで、歯科医師が補助弾線の活性化を行う。患者は、リンガルアーチの補助弾線や主線を指で触ったり、食物の咀嚼時に変形させないよう注意し、また、不潔になることがないよう、日々丁寧にブラッシングを行っていく必要がある。

リンガルアーチ(舌側弧線装置)のうち、主線が維持装置のところで取り外しが出来るタイプは、来院ごとに歯科医師が主線を取り外し、補助弾線を活性化(※)してから再装着する。リンガルアーチ(舌側弧線装置)のうち主線がバンドにろう着されたタイプでは、口腔内で補助弾線を広げるように調整するか、あるいはバンドとともに主線を取り外し同様に補助弾線を調整して、バンドから再装着する。

※活性化:例えば複式弾線では、歯の移動方向(唇側・頬側)に補助弾線を広げるように調整し、装着時に広げたものを圧縮するようにして補助弾線を歯に接触させると、圧縮した弾線がもとに戻ろうとする復元力が矯正力として働くことを指している。



「リンガルアーチ(舌側弧線装置)」の文献・書籍など

【読み】

りんがるあーち(ぜっそくこせんそうち)

【文献・書籍】

『歯科矯正学 第5版』, 相馬邦道ら, 医歯薬出版株式会社, 2017.
『歯科医師国家試験参考書New Text ⑤ 小児・矯正』, 麻布デンタルアカデミー, 株式会社干乃コーポレーション, 2019.

著者/監修者情報
歯科医師

歯科医師。文系大学卒業後、歯学部に再入学。歯学部卒業後に歯科医師免許を取得したのち、歯科医師として勤務する傍らワンディー株式会社でライターとして勤務。