ファルカプラスティとは、根分岐部病変に対する処置法のひとつで、清掃性の改善と器具の到達性を容易にすることを目的として行われる根分岐部形成術のことを指します。ファルカプラスティは、LindheとNymanの分類で1度あるいは2度の場合に適用されます。ファルカプラスティは「ファーケーションプラスティ」とも呼ばれています。ファルカプラスティには「オドントプラスティ」と「オステオプラスティ」の2種類があり、オドントプラスティでは、狭い分岐部入り口の歯質を切削し拡大します。歯槽骨形態が不整な場合には、フラップ手術を併用してオステオプラスティを行って分岐部入り口を広げます。根分岐部病変が軽度な症例では、フラップを開かずに、オドントプラスティのみで修正可能なケースもあります。
根分岐部病変とは、歯周病が多根歯の分岐部に及んだもので、解剖学的形態が複雑なために治療が難しい病変であるとされています。大臼歯は咬合を支持するために大切な部位であり、根分岐部病変の治療や予防は、歯周炎患者の歯列や咬合機能を回復、維持するために重要となることが多くあります。
根分岐部病変の進行・組織破壊の程度は、エックス線写真による根分岐部の骨吸収像の読影や、ファーケーションプローブ:furcation probe(根分岐部用探針)を直接、根分岐部に挿入することで確認可能です。
根分岐部における歯周組織の水平方向への破壊程度の代表的な検査・分類法は2つ存在します。1つは、Glickmanの根分岐部病変の分類(Glickman`s furcation classification)。もう一つは、LindheとNymanの根分岐部病変の分類(Lindhe & Nyman`s furcation classification)です。根分岐部病変の分類法として他には、垂直的破壊程度を基準としたTarnowとFretcherの分類(1984)もあります。
これら根分岐部病変の分類は、病変の進行程度の把握や予後判定にきわめて有用です。またそれと同時に、必要な治療法を選択する際の指針となるたります。したがって、今日の臨床においてこれらは一口腔単位の歯周治療計画を立案する上で、欠かせない検査項目となっています。
ファルカプラスティのうち「オドントプラスティ」は、エナメル突起やエナメル真珠などの歯質を除去して根分岐部の入口を拡大することによって、歯根の形態を修正し、根分岐部の自浄性や清掃性を高める根分岐部病変に対する処置法です。オドントプラスティは、「歯の形成術」とも呼ばれています。オドントプラスティの際に出来た成形面はう蝕に罹患しやすいため十分に研磨する必要があります。また、オドントプラスティにおいては生活歯の歯質削除に伴う術後の知覚過敏に注意が必要です。
エナメル突起とは、セメント-エナメル境から根分岐部方向へ突出したエナメル質の突起のことを指します。同部における歯肉とエナメル質との付着は上皮性付着のため、炎症性病変に伴う付着の破壊・喪失が結合組織性付着部位よりも生じやすく、進行しやすいとされています。
エナメル突起の出現頻度は、30~50%で頬側に多く、歯種別では下顎第一大臼歯で最も多く見られます。なおエナメル突起は、セメント-エナメル境から根尖方向へ突出している度合いで以下の3段階に分類されます(Mastersらの分類)。
Ⅰ級(CEJから根分岐部への軽度な突出)
Ⅱ級(中等度の突出)
Ⅲ級(根分岐部に達する突出)
なお、エナメル滴については歯根部に出現する異所性エナメル質のことを指しており、歯冠と根分岐部の連続性はなく、出現頻度は稀とされています。
ファルカプラスティのうち「オステオプラスティ」は、根分岐病変になっている部位周辺の骨形態を修正することによって、根分岐部の自浄性や清掃性を高める根分岐部病変に対する処置法です。オステオプラスティは「歯槽骨整形術」とも呼ばれています。
ファルカプラスティは、以下の手順により行われます。
フラップ手術により歯肉弁を剥離
スケーリング・ルートプレーニング(SRP)
肉芽組織の除去
オドントプラスティおよびオステオプラスティ
フラップを戻して縫合