ハッチンソン歯

「ハッチンソン歯」とは?歯科用語を解説
最終更新日: 2021年08月02日

ハッチンソン歯とは?

ハッチンソン歯とは、先天梅毒の三徴候(ハッチンソン三徴候)のひとつで、永久歯の上顎中切歯切縁に半月状のくぼみを認め、歯冠は正常歯よりも小さく細い歯のことである。ハッチンソン歯は上顎中切歯以外に、上顎の側切歯や犬歯にもしばしばみられることがある。ハッチンソン歯は、イギリスの医師であるHutchinsonにより発見された。


ハッチンソン三徴候とは?

先天梅毒は、ハッチンソン歯の他にも実質性角膜炎内耳性難聴を伴うことにより診断される(ハッチンソンの三徴候)。

梅毒によるもう一つの歯冠形態異常:フルニエ歯 とは?

フルニエ歯とは、先天梅毒により形成不全・臼歯の咬頭発育不全を起こした歯のことである。先天性梅毒の原因菌である梅毒トレポネーマの毒素が歯胚に直接影響を与えることで、臼歯部の咬頭発育不全を起こす(ハッチンソン歯は前歯部の歯冠形態異常)。

フルニエ歯はエナメル質の石灰化不全により生じ、特に第一大臼歯に好発する。フルニエ歯は英語ではFournier toothといい「ムーン歯(Moon's tooth)」「桑実状臼歯」とも呼ばれている。

梅毒とは?

梅毒とは、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)による感染症のことである。梅毒には、母子感染(経胎盤感染)による先天梅毒と性行為での感染による後天梅毒(性感染症)がある。後天梅毒がその殆どを占める。

梅毒の臨床症状

梅毒では感染後3~6週間程度の潜伏期を経て、経時的に様々な臨床症状が逐次出現する。その間症状が軽快する時期があり治療開始が遅れることにつながる。 

早期顕症梅毒 第 Ⅰ 期  : 感染部位の病変
感染後約3週間後に梅毒トレポネーマが進入した局所に、初期硬結、硬性下疳(潰瘍)が形成される。無痛性の所属リンパ節腫脹を伴うことがある。無治療でも数週間で軽快する。 

早期顕症梅毒 第 II 期梅毒  : 血行性に全身に移行
第 I 期梅毒の症状が一旦消失したのち4〜10週間の潜伏期を経て、手掌・足底を含む全身に多彩な皮疹、粘膜疹、扁平コンジローマ、梅毒性脱毛等が出現する。発熱、倦怠感等の全身症状に加え、泌尿器系、中枢神経系、筋骨格系の多彩な症状を呈することがある。

第 I 期梅毒と同様、数週間〜数ヶ月で無治療でも症状は軽快する。早期顕症梅毒症例で髄膜炎や眼症状などの脳神経症状を示すものは、早期神経梅毒と呼び晩期梅毒の神経梅毒とは区別する。

潜伏梅毒
梅毒血清反応陽性で顕性症状が認めらないものをさす。第 I 期と第 II 期の間、第 II 期の症状消失後の状態を主にさす。

第 II 期梅毒の症状が消失後、再度第 II 期梅毒症状を示すことがあるが、これは感染成立後1年以内に起こることから、この時期の潜伏梅毒を早期潜伏梅毒と呼ぶ。これに対応して、感染成立後1年以上たつ血清梅毒反応陽性で無症状の状態を後期潜伏梅毒と呼ぶ。

晩期顕症梅毒
無治療の場合、約1/3で晩期症状が起こってくる。長い(数年〜数十年)の後期潜伏梅毒の経過から、長い非特異的肉芽腫様病変(ゴム腫)、進行性の大動脈拡張を主体とする心血管梅毒、進行麻痺、脊髄癆等に代表される神経梅毒に進展する。

先天梅毒
梅毒に罹患している母体から胎盤を通じて胎児に伝播される多臓器感染症である。

先天梅毒とは?

先天梅毒とは、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)が経胎盤性に母子感染することによる感染症のことを指している。先天梅毒は、出生後数週以降に発症する早期先天梅毒と、学童期以降(5~18歳)に発症する晩期先天梅毒に分けられる。

【早期先天梅毒(出生後数週以降に発症)の特徴 】
  • 皮疹(バラ疹など)
  • 肝脾腫
  • Parrot凹溝(放射状の口囲亀裂瘢痕)
  • Parrotの仮性麻痺(骨軟骨炎の痛みによる)
  • 鼻閉

【後期先天梅毒(学童期以降に発症)の特徴 】
  • 皮疹(扁平コンジローマなど)
  • ハッチンソン三徴 : ハッチンソン歯、実質性角膜炎、内耳性難聴

先天梅毒においては、妊娠初期に梅毒血清反応を調べ、必要があれば速やか(妊娠16~20週以前)にペニシリン投与を開始することが望ましい。梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)の胎内感染の有無は、出産前は羊水や臍帯血、出生後は新生児の血清から、TPHAやFTA-ABS検査で特異的IgM抗体を検出して判断する。

梅毒の治療法

梅毒の治療には、ペニシリン系とセフェム系の抗生物質が有効である。感染からの経過が長いと、長期の治療を必要とする。

梅毒の予防法

梅毒の予防法として、パートナー同士の感染有無の確認がまん延防止に必要である。また、不特定多数との性行為、特に感染力の強い第 Ⅰ 期及び第 Ⅱ 期の感染者との性行為を避けることが予防における基本である。



「ハッチンソン歯」の文献・書籍など

【読み】

はっちんそんし

【文献・書籍】

『歯内治療学 第4版』, 中村洋ら, 医歯薬出版株式会社, 2012.
『病気がみえる Vol.6 第2版』, 岡庭豊ら, 株式会社メディックメディア, 2018.

著者/監修者情報
歯科医師

歯科医師。文系大学卒業後、歯学部に再入学。歯学部卒業後に歯科医師免許を取得したのち、歯科医師として勤務する傍らワンディー株式会社でライターとして勤務。