歯科用語集
2022年3月15日

モデリングコンパウンド

「モデリングコンパウンド」とは?歯科用語の解説と症例を紹介

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モデリングコンパウンドとは?

モデリングコンパウンドとは、杉の一種であるカウリの樹脂もしくはコパール樹脂に可塑性のステアリン酸を数%加え作られた熱可塑性材料です。モデリングコンパウンドには、義歯床粘膜面の概形印象を対象としたインプレッションコンパウンドと、個人トレーの作製に用いられるトレーコンパウンドがあります。
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モデリングコンパウンドの組成

モデリングコンパウンドの組成は、以下のように構成されています。

<モデリングコンパウンドの組成(重量%)>
カウリ樹脂 : 40%
硬質ワックス : 6~7%
ステアリン酸 : 3~4%
フィラー : 50%
顔料 : 少量

モデリングコンパウンドは、カウリ樹脂と硬質ワックスを主成分とし、可塑性であるステアリン酸が数%加えられて作られます。熱可塑性の印象材には、口腔内温度よりもわずかに高い温度で十分な流れを生じ、細部を再現できるだけの流動性を備え、かつ口腔内の温度では流れが極めて少なくなることが要求されます。

ステアリン酸を添加すると、口腔内温度での流れが大きくなりすぎるので、それを抑制するため滑石やチョークなどの不活性微粉末をフィラーとして加えています。また、フィラーは、印象材の熱膨張率を低下させるほか、モデリングコンパウンドが歯や口腔粘膜に粘着するのを抑制する働きを担っています。

モデリングコンパウンドの硬化機構

モデリングコンパウンドは、温度変化によって粘性が変化する熱可塑性材料で、50~60℃の温湯中もしくは火炎で軟化し、口腔内の温度で硬化します。

モデリングコンパウンドが一定の融点を示さず、温度の変化によって粘性が変化するのは、低分子量の有機化合物の混合物であることによります。モデリングコンパウンドに長時間荷重を作用させると変形する(流れる)性質があります。

モデリングコンパウンドの使用方法

モデリングコンパウンドは、一般的に個人トレーの作製に用いられます。しかし、熱膨張係数は300~400×10⁻⁶/℃と大きいため、印象を口腔内から取り出すと0.3%くらいの熱収縮が生じます。

モデリングコンパウンドの使用方法は、義歯の機能印象を採得する場合、まず通常60℃の温水中にコンパウンドを浸漬します。次にモデリングコンパウンドを中心まで軟化したのち、既成トレーに盛って45℃くらいの温度で口腔内に圧接します。浸漬しすぎると低分子量の成分が溶出し、滑らかさが失われてしまいます。

歯肉頬移行部の形態は、はじめに盛り上げたコンパウンドの量や圧接時の操作方法によって変化し、義歯の維持に直接影響します。

臨床的には、一度採得した印象の辺縁を削除したのち、局所を小火炎で軟化して再び圧接するという操作を何回か繰り返し、顎堤周囲可動組織の動的状態(歯肉頬移行部の形態)の印象を採得します(筋圧形成)。これを個人トレーとして精密印象材を組み合わせた連合印象による印象採得が行われます。

モデリングコンパウンドによる概形印象採得

モデリングコンパウンドは、概形印象の代表的な印象材としても知られています。モデリングコンパウンドは熱可塑性であるため、辺縁を部分的に形成しながら、最終的に義歯床全周の筋の動態を記録することが出来ます。

患者自身による口腔の機能運動と、術者による補助的な口唇や頬の運動(筋圧形成)により、印象の辺縁が形成されます。上下顎ともに、印象材が硬化する時間内にこれらの運動を適切に行うことが必要です。

モデリングコンパウンドを用いた概形印象採得の手順

1
トレーの選択 : トレーの具備すべき要件として、変形しないこと、賦形や調整が可能なこと、滅菌できること、などが挙げられます。これらの要件を満たすモデリングコンパウンド用トレーのひとつは、金属製のブリタニアトレーです。トレーの大きさは顎堤の形態に合わせて数種類が揃えられています。
2
モデリングコンパウンドの圧接と筋圧形成 : 筋圧形成を行うために、患者自身による口腔の機能運動を指示します。義歯床を取り囲む表情筋、外舌筋と咀嚼筋などの機能運動によって辺縁が形成されます。全部床義歯は義歯周囲の筋によって維持される(筋圧維持)とともに、脱離されることを理解しておく必要があります。

関与する筋
維持に作用する筋 : 口輪筋、頬筋、内舌筋、モダイオラス
脱離に作用する筋 :  咬筋、内側翼突筋、顎舌骨筋、オトガイ舌筋、オトガイ筋、下唇下制筋

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