軟口蓋とは、口蓋の後方部分の骨の裏打ちがない柔軟性に富む部分をいう。
口蓋は固有口腔の上壁(天井)を構成する唯一の要素であり、口腔と鼻腔を隔てている。口蓋の前方と側方は歯列によって囲まれ、上方に円盤状に突出している。
前方の骨に裏打ちされた厚い口腔粘膜で覆われている部位は硬口蓋(hard palate、骨口蓋)という。その後方で内部に厚い口蓋腱膜と口蓋筋のある柔軟性に富み嚥下や発音によって上下する部位を軟口蓋(soft palate)という 。
硬口蓋の後方に続く可動性の部位で、後方端は細く伸びた口蓋垂で終わり、口峡の一部を構成している。 軟口蓋はいくつかの口蓋筋で構成され、口蓋腺を含む粘膜によって覆われている。粘膜上皮は鼻腔側と口腔側で異なり口腔側は硬口蓋と同じ重層扁平上皮だが、非角化または角化の程度は弱い。
また、咽頭側は鼻腔から続く多列線毛上皮で覆われている。
(ii) 口蓋帆 palatine velum, 口蓋垂 uvula
軟口蓋の後部を口蓋帆といい、最後部の突起を口蓋垂という。嚥下の際に水や食塊が咽頭に送られるときには、口蓋は挙上して咽頭鼻部を塞ぎ、鼻腔との交通を遮断する。
以下の5 つの筋が軟口蓋の運動にかかわっている。口蓋の下方に位置する。筋は口峡の構成にもかかわっている。 これらの筋は主に舌咽神経と迷走神経で構成される咽頭神経叢pharyngeal plexus の支配を受ける。
ただし、口蓋帆張筋は咀咽筋などと同じく三叉神経(下顎神経)の支配を受ける。
口蓋帆張筋 tensor veli palatini
蝶形骨の蝶形骨棘と舟状窩、耳管膜性板から起始し 蝶形骨の翼状突起内側板の下端にある翼突鉤pterygoid hamulus で内側に向かって直角に曲がり 口蓋腱 palatine aponeurosis に停止する。 収縮する。収縮すると口蓋帆は下降する。
口蓋帆挙筋 levator veli palatini
側頭岩の岩様部および耳管軟骨より起始し、口蓋腱膜に停止する。 収縮により口蓋帆を挙上する。
口蓋垂筋muscle of uvula
口蓋骨後端の後鼻棘から起始し、口蓋の正中部を後下方に走り、口蓋垂に停止する。 収縮により口蓋垂を挙上する。
口蓋筋 palato glossus
ロ蓋腱膜に起始し、口蓋舌弓の中を縦走して、舌縁および舌背に停止する。 口峡を閉鎖する。
口蓋咽頭筋 palatopharyngeus
ロ蓋腱膜および口蓋正中面に起始し、口蓋咽頭弓の中を縦走し、甲状軟骨および咽頭縫線に停止する。 筋束の中には耳管軟骨から起始するものがあり、耳管咽頭筋 salpingopharyngeus として区別することがある。 咽頭と喉頭を挙上して口峡をする。
一次口蓋と二次口蓋
口蓋はその発生機序により 一次口蓋と二次口蓋に分けられる 。一次口蓋は前歯を含む扇形の領域で 内側鼻突起から発生する。 一次口蓋以外の領域が二次口蓋で 左右の第一鰓弓上顎突起から内側に伸びる口蓋突起(口蓋板)が 正中部で鼻中隔とともに癒合してつくられる。
血管
口蓋へは主に顎動脈の枝である下行口蓋動脈 descending palatine artery から分かれた大口蓋動脈greater palatine artery と小口蓋動脈 lesser palatine artery がそれぞれ硬口蓋・口蓋側歯と口蓋のほとんどのに分布する。 切歯部では切歯孔から現れる鼻口蓋動脈が分布する。 口蓋には顔面動脈の枝である上行口蓋動脈ascending palatine artery も分布する。
リンパ管
口蓋に分布するリンパ管は 主に顎下リンパ節に流入する。
神経
最も主な感覚神経は、上顎神経の枝である大口蓋神経 greater palatine nerveと小口蓋神経 lesser palatine nerve で それぞれ硬口蓋粘膜、口蓋側歯肉と軟口蓋粘膜に分布する。切歯部は上顎神経の翼口蓋神経節から分かれ、蝶口蓋孔を通る後鼻枝から分かれた、鼻口蓋神経nasopalatine nerve が分布する。この神経は切歯孔から出て周囲の口蓋粘膜に分布する。