ヒスタチン

「ヒスタチン」とは?歯科用語を解説
最終更新日: 2021年10月18日

ヒスタチンとは?

ヒスタチン(histatin)とは、唾液に固有のタンパク質の一つで、ヒスチジンに富んでいる。遺伝子HTN1にコードされるヒスタチン1(38アミノ酸)と遺伝子HTN2にコードされるヒスタチン3(32アミノ酸)の2種類からなり、おもに耳下腺から分泌される。ヒスタチン2はヒスタチン1のC末端で、ヒスタチン4~12はヒスタチン3が分泌過程において分解される際に生じる。ヒスタチンは口腔細菌への抗菌作用を有し、歯周炎関連菌が分泌するトリプシン様プロテアーゼ活性を阻害する。また、ヒスタチン5はカンジダの膜に結合して強い抗真菌作用を示す。

また、歯周炎関連菌(Porphyromonas gingivalis) の分泌するトリプシン様プロテアーゼ活性を阻害するなどある種の口腔細菌に対する抗菌作用やマスト細胞(肥満細胞)からのヒスタミンの遊離を抑制する作用など、口腔粘膜での種々の侵製に対するバリアとしての役割を担う。

ヒスタチンの詳細な説明

ヒスタチンは、ヒスチジンに富む 7~38のアミノ酸数からなる唾液中のみ にみられる塩基性もしくは中性のペプチドである。

ヒスタチンは、リン酸カルシウム 結晶の成長の調節、毒性物質の中和、タンパク質分解酵素やサイトカイン作用の阻害など多彩な作用を示すペプチドである。 HTN1とHTN2の 2つの遺伝子により、ヒスタチン1とヒスタチン3が産生され、これらが分解されてヒスタチン2とヒスタチ4~12がつくられる。ヒスタチン5は、ヒスタチン3のN末端の24個のアミノ酸残基の部分のペプチドである。

ヒスタチンの微生物に対する作用としては、カンジダの細胞膜に結合して抗真菌作用を示すとともに Porphyromonas gingivalisの病原因子であるジンジパインgingipainの活性阻害、細菌間の共凝集、細菌による赤血球凝集作用の阻害を示す。なお、ヒスタチンの作用メカニズムについては、いまだに明らかにされていない。
 
 

ヒスタチンはペリクルを構成する

ペリクルは無細胞、無菌であり、 唾液由来の有機成分、すなわちムチン(MG1)、高プロリン酸性タンパク質、 スタテリン、 シスタチン、 ヒスタチン、 a-アミラーゼ、 リゾチーム、分泌型lgAなどを含む。 ペリクル全体のアミノ酸組成をみると、 酸性アミノ酸(グルタミン酸とアスパラギン酸)が約22%と多い。
 

唾液のおもな作用と成分

唾液は、消化作用、洗浄作用、潤滑・粘膜保護作用、緩衝作用、抗菌作用、などをはじめとする多くの生理作用を発揮している。 以下に唾液のおもな作用と成分を示す。

消化作用:アミラーゼ
洗浄作用:水分
潤滑・粘膜保護作用:ムチン,高プロリンタンパク質,シスタチン
抗菌作用:リゾチーム,ペルオキシダーゼ,ラクトフェリン,ヒスタチン,分泌型IgA抗体,ディフェンシン,アグルチニン
歯の成熟作用:パロチン
緩衝作用:重炭酸系(HCO₃⁻),リン酸塩系(HPO₄²⁻)
再石灰化作用:スタテリン,Ca²⁺,リン酸イオン
体液量調節作用:アルドステロン
排泄作用:水分
 

唾液の抗菌因子

唾液の抗菌因子は以下の通りである。

リゾチーム:細菌細胞壁のペプチドグリカンのN-アセチルムラミン酸とN-アセチルグルコサミンのβ-1.4グリコシド結合を加水分解し溶菌する酵素である。細菌の歯面への吸着を阻止する。
 
ペルオキシダーゼ:細菌の増殖、グルコース取り込み阻害により抗菌作用を発揮する酵素である。
 
ラクトフェリン:鉄結合性タンパク質で、鉄を含まないアポラクトフェリンとして分泌され、細菌増殖に必要な鉄を奪うことで抗菌作用を発揮する。
 
ヒスタチン:上記に記載
 
分泌型IgA抗体:唾液中の抗原となった細菌を凝集したり、口腔粘膜上皮に結合して細菌を凝集し、細菌の粘膜感染を阻止したりする。
 
ディフェンシン:抗菌作用をもつ塩基性ペプチドで、唾液腺以外に消化管や気管などの粘膜上皮細胞からも分泌される。
 
アグルチニン:唾液アグルチニンはS.mutansを結合し凝集させる抗菌因子である。


「ヒスタチン」の文献・書籍など

【読み】

ひすたちん

【文献・書籍】

『口腔生化学 第5版』, 早川太郎ら, 医歯薬出版株式会社, 2011
『口腔微生物学 第6版』, 石原和幸ら, 株式会社学建書院, 2018.

著者/監修者情報
歯科医師

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