隔壁

「隔壁」とは?歯科用語を解説
最終更新日: 2021年12月05日

隔壁とは?

歯科用語における隔壁は、「歯内療法学においての隔壁」と「保存修復学においての隔壁」がある。本項目ではその両方に言及する。

歯内療法学においての隔壁

隔壁とは、ラバーダム防湿を行う際に歯冠部の崩壊が大きくてラバーダムクランプがかけられない場合、または装着できても隙間から唾液が根管へ侵入する場合に歯冠部の暫間修復を行うことである。隔壁を作ることにより、ラバーダムが患歯にかかるようになり、患歯は無菌的環境のもとで根管治療ができるようになる。隔壁をつくる術式は「隔壁形成法」という。

保存修復学においての隔壁

前歯や臼歯の複雑窩洞において、窩洞の開放側面に一時的に人工壁を設け(隔壁「マトリックス」という)、窩洞を単純窩洞化し、填塞操作の便宜をはかる方法を隔壁法という。保持器具(マトリックスリテーナー)を用いて金属やプラスチックのバンドを歯に固定する方法、ステンレスやプラスチック製のストリップスをその都度切り出し付形して使用する即製法、あるいは既製のマトリックスを使用する既製法に分類される。


歯内療法での隔壁の形成方法

今日の臨床では隔壁形成はコンポジットレジンを使って行うことが多い。根管口がコンポジットレジンで封鎖されないように、予めストッピングなどの撤去しやすい仮封材を根管口に置いておくこともある。

歯内療法での隔壁の形成手順

以下に接着性コンボジットレジンを使用した一般的な隔壁形成法について記すが、個々の症例により隔壁の形成法は異なることを理解すべきである。

  1. 遊離エナメル質と軟化象牙質を確実に除去(接着性コンポジットレジンを使用する場合、歯冠の形態回復のために遊離エナメル質を多少残してもよい)
  2. 歯髄腔、特に根管口付近をストッビングなどの材料にて封鎖
  3. マトリックスバンドを装着したトッフルマイヤー型リテーナーなど補助的器具を使用し、歯面処理後、接着性コンポジットレジンにて隔壁を作製

保存修復学の隔壁の目的

保存修復学における隔壁の目的としては、以下の点が挙げられる。

  • 窩洞の開放面を封鎖することで窩洞を単純化
  • 修復操作の容易化
  • 隣接面などの形態付与の容易化
  • 接触点の回復の容易化
  • ウェッジ(くさび)と併用することで、窩洞を歯肉や滲出液などから隔離
  • 隣接面の窩洞形成時に隣在歯を保淡
  • 成形修復時の十分な填塞圧の付与

保存修復学の隔壁の注意点

保存修復学における隔壁の注意点としては、以下が挙げられる。

  • 金属製マトリックスによる歯周組織の損傷に留意
  • リテーナーによる歯周組織の損傷に留意
  • 既製のマトリックスは保持器具を用いないため、位置のずれが生じないように確実な固定
  • 成形修復材の逸出防止のため、ウェッジなどを用いた歯肉側窩緑部における密着性を確実にしたマトリックスの応用

保存修復学の隔壁の種類

保存修復学における隔壁には、「前歯部」「臼歯部」がある。

【前歯部】
前歯の隣接面窩洞(3、4級)、破折歯においては、透明なポリエステルストリップスが一般的に用いられる。他に、切縁およびその隅角の修役に用いるポリエステル製やアルミニウム製のクラウンフォーム、コーナーマトリックスなどがある。

【臼歯部】
2級やMOD窩洞などの臼歯の複雑窩洞においては、専用の保持器具にマトリックスバンドを装着して用いる。マトリックスバンドは、薄く(38〜50μm)強さがあり、修復材料と反応しないステンレス製ストリップスがよく用いられる。マトリックスバンドは、各々のリテーナーに対応し、歯や窩洞に応じた種々のものが用意されている。歯の豊隆を、雑用エキスカや球状バーニッシャーなどで付与する。



「隔壁」の文献・書籍など

【読み】

かくへき

【文献・書籍】

『歯内治療学 第4版』, 中村洋ら, 医歯薬出版株式会社, 2012
『保存修復学21 第5版』, 田上順次ら, 株式会社永末書店, 2017.
『エンドドンティクス 第2版』, 興地隆史ら, 株式会社永末書店, 2018.
『歯内治療学 第5版』, 勝海一郎ら, 医歯薬出版株式会社, 2018.

著者/監修者情報

歯科医師

歯科医師。文系大学卒業後、歯学部に再入学。歯学部卒業後に歯科医師免許を取得したのち、歯科医師として勤務する傍らワンディー株式会社でライターとして勤務。

感染根管治療の症例リスト

【VPT(Vital Pulp Treatment:生活歯髄切断法)】
Pt:特記すべき既往のない中年女性
S:連結されたFMCの下に歯間ブラシが通らないことが気になっていた。症状はない。
O:パントモ上でも分かるほどの隣接面カリエス(根面におよぶ)。6番はノンバイタル、7番はバイタル。
A:深いが、症状ないため間接覆髄でいけると思った。
P:1.5hアポ FMC・C除去、バルクベース裏装、TEK作成
D:予想よりも縁下深くCがあり、さらに露髄確実だったため途中でプラン変更した。
まず電メスで歯肉除去して縁下Cを取りきる。スケーラーで根面滑沢にした後、ボスミンガーゼを隣接縁下に留置した状態でVPTを実施した。セラカルで直接覆髄し、洗浄および止血は浸麻液に浸した滅菌綿球で行った。当日は6番のコア作るところまででTEKは作れなかった。
C:現在術後1m経っているがVital(+)である。
今後の課題として歯肉が上がってきた時、バルクベース面は弱い上皮性付着になってしまうと考えられるのでレングス等の歯周外科処置を同日実施できるようになること。より良いIsolation技術の習得。

写真1枚目:FMC・メタルコアおよびある程度のC除去したとこ
写真2枚目:縁下C取り切ってスケーラーする前
写真3・4枚目:直接覆髄前の洗浄、止血、簡易乾燥
写真5枚目:直接覆髄後
写真6枚目:隔壁フィッティング
写真7枚目:バルクベース充填、研磨後

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【Direct(ラバーダムを使ったCR症例)】
Pt:特記すべき既往のない中年女性。元歯科医師。
S:昔に海外で入れたセラミックが動いている気がする。あまり歯を削られたくない。
O:5番遠心に入っていたセラミックインレー脱離。
A:ただのC2。昔、海外の先生にも歯をあまり削られたくない旨をお伝えしたとのこと。だからこの形のインレー窩洞、接着不良の可能性か。
P:初めてのラバーダムを使ったCR 一応1hアポ
D:Direct Bonding
C:当時外来には口腔外科標榜ということもあってかレジン充填器が2種類しかなかった(現在は個人購入したものを使っている)。形が綺麗かというとそうでもない。ボンディングも1液性を使用している。ただエッチングはG−Fixに入ってるので代用したり短針使ったりと工夫した記憶がある。更に言うならラバーダムによるIsolationがまだ下手である。

写真1枚目:初診時
写真2枚目:カリエスチェッカーを用いてC除去後
写真3枚目:コンポジタイト(Garrison)を隔壁に使用
写真4枚目:まずは壁を作る
写真5枚目:下層から積層充填、咬合面はエステライトアステリアのOcEを使用
写真6枚目:術後

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【L.O.T】
37感染根管処置を開始しようと思ったら縁下までCあったため、まずは挺出→隔壁→感染根管治療→レチク→形成印象と考えています。
大臼歯の挺出は初めてなんですが、これ、大丈夫でしょうか?
矯正力強くするためにエラスティックを2本にしたこと、固定源ワイヤーに溝を掘り矯正方向を規制しているとこが個人的に工夫したところです。
ちょくちょく技工士さんにお願いしてワイヤー曲げてもらって挺出をトライしたりしますが、ブラケット付けてやったことは未だありません。L.O.T関連でオススメな本があれば是非教えていただきたいです。

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