歯科用語集
2019年7月28日

医院経営

「医院経営」とは?歯科用語の解説と症例を紹介

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「謝ったら負け」で、クレームに身構えていませんか?――対談が分けたのは、共感を示す謝罪と、責任を認める謝罪だった
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「謝ったら負け」で、クレームに身構えていませんか?――対談が分けたのは、共感を示す謝罪と、責任を認める謝罪だった

「謝ったら負け」で、クレームに身構えていませんか?――対談が分けたのは、共感を示す謝罪と、責任を認める謝罪だった

クレームを受けたとき、歯科医院で口にしやすい言葉は2つある。「申し訳ありません」と、「こちらに落ち度はありません」だ。1Dの対談動画「クレーム患者が常連に変わる魔法の対応とは?」は、この二択のあいだに線を一本引く。謝罪には種類があり、ためらうべきでない謝罪と、慎重に扱うべき謝罪は別物だ、という線である。題名の「常連に変わる」は出演者の経験談から来た表現で、どの患者にも当てはまる結果ではない。本稿では、出演者が語った内容と編集部の整理とを分けて書く。入口は「失敗しない」という言葉への違和感対談は、以前話題になったドラマの「私失敗しないんで」という台詞から始まる。聞き手の歯科医師は、自信は大事だとしたうえで、そう言う医師が実際にいたら困ると話す。医療安全に詳しい出演者として紹介されるもう一人は、そうした台詞は医療安全をわかっていない人が口にするものだと応じる。医療安全に詳しい出演者が強調するのは、ミスをしても事故につなげない仕組みである。歯科は部位を間違えることこそ多くないが、元に戻せない処置が非常に多い、と言う。聞き手も、臨床をしていて自分が失敗しないとは思っていない、と認める。大丈夫だと言い切った後に少しでも何かあれば、大丈夫と言ったのに、と返されるからだ。聞き手はさらに、ミスがなくてもクレームは生じる、と続ける。対応を間違えなければ、苦情を言っていた患者がかえって良い評判を残すこともある、というのがこの回の出発点である。謝罪には2種類ある、と対談は言う本題で医療安全に詳しい出演者が持ち出すのが、コンフリクトマネジメントという考え方だ。そのうえで、「謝ってはいけない」とだけ覚えている人が多いが、と前置きし、謝罪には「共感表明の謝罪」と「責任承認の謝罪」の2つがあると説明する。共感表明の謝罪は、「お騒がせしてごめんなさい」「ご心配をおかけして申し訳ございません」といった言い方で、相手の大変さに寄り添うためのものだ。出演者は、この謝罪はためらうべきではないと言う。一方の責任承認の謝罪は、こちらに責任があると認めることを指す。出演者によれば、責任を認めるとそれが証拠になってしまう。だから「謝ってはいけない」と聞いて一律に口を閉ざすのではなく、どちらの謝罪を使うかで分ける、という整理になる。編集部の言葉に直すと、クレーム対応で問われているのは謝るか謝らないかではなく、何について謝るかである。なお、法的な責任や賠償の扱いは事案ごとに違う。個別の判断は、加入している賠償責任保険の窓口や弁護士に相談することになる。患者の気持ちには段階がある医療安全に詳しい出演者は、ミスを起こされた側の患者の心理は、第1段階から第5段階まで類型化できると説明する。字幕から読み取れる範囲で並べると、次のようになる。第1段階は、健康被害から回復したい。第2段階は、なぜこうなったのか、誠意ある説明がほしい。第3段階で、謝罪をしてほしいという感情が来る。第4段階は、二度とこういうことが起きないようにしてほしい。それでもこじれると、金銭による慰謝や、医療者を懲らしめたいという感情が生まれ、最終的に第5段階に至る、という。出演者は、損害賠償や裁判にまで至ったケースは、第1段階から第4段階までの対応のまずさが原因であることが多いと述べる。だから第3段階のタイミングで共感の謝罪をきちんとする、という流れになる。聞き手は、カッとなっている人を前にしたときに、気持ちが段階的に言語化されていると助かると受け止めている。この類型は出演者の説明として紹介されたもので、本稿では出典や研究の中身までは確かめていない。対談の終盤では、この流れがあらためてまとめ直される。まずミスを事故につなげない。つながったら説明をする。次に謝ってほしいという感情が来たら謝る。自分の過失であれば謝り、過失がない場合や明らかでない場合は、責任を認める謝罪が賠償につながる証拠になりうるので、謝るところは謝る形で使い分ける。そのうえで院内でちゃんと説明する、という順番である。院内の転倒も「事故」に入る謝罪の話は治療の失敗だけに限らない。聞き手が例に挙げるのは、病院の廊下で転んでけがをしたケースだ。床が滑りやすかったからだと言われることがあり、敷地内で起きたことであればケアしなければならない場面がある、と言う。それ自体は治療のミスではない。医療安全に詳しい出演者も、歯科医院の入り口の段差でつまずいたという例を重ねる。聞き手は、「知らんがな」と思うかもしれないが、と前置きしたうえで、人によっては自分が転んだだけだと受け止める人もいれば、そうでない人もいるので、先の5段階を考えて対応すべきだと話す。事故は起こりうるという前提で考えなければいけない、という指摘である。前の医院を悪く言わない、という気のつけ方後半では、聞き手が自身の臨床での経験を2つ話す。1つ目は、別の歯科医院で「この歯はもう無理だと思う」と言われ、それまで通っていたのにほうっておかれたのではないかと怒っていた患者のケースだ。聞き手の見立てでも、その歯はかなり厳しい状態だった。そこで、すぐに対応できない点については「申し訳ないね」と伝え、残すならこういう方法がある、と説明して大学病院の受診につないだ。その後は通院が途絶えて経過は見られていないが、それ以上のトラブルにはならなかったという。聞き手が気をつけたのは、「大変だよね」という共感の謝罪はしながら、前の医院の診断や対応に非があるような話はしないことだった。2つ目は、前の医院で問題行動があったと聞いていた患者が来院したケースだ。対応したのは聞き手ではない別の歯科医師だが、そのやり取りがうまくはまり、今では来るたびに菓子を持ってくるほど関係が築けて、継続して通っているという。題名の「常連に変わる」はこの経験から来ている。ただし聞き手自身、そのときの初期対応がどうだったかはわからないと断っている。そのうえで聞き手は、仮に「前の歯医者が悪かったですね」と言ってしまうと、今の医院で同じようなことが起きたときにまた怒らせてしまうかもしれないと注意を促す。医療安全に詳しい出演者が、ここで返す一言が「共感的態度ですよ」である。聞き手は最後に、コンフリクトマネジメントのように体系化された知識はあっても、それだけでうまくいかない場面もあると言い、知識を入れたうえで注意して対応してほしいと締めくくる。編集部として持ち帰れるのは、次の2点だろう。受付やチェアサイドで「謝ったら負け」と考えて言葉が止まりそうになったら、まず相手の大変さに対する謝罪を口にしてよい。そして、自院の責任や前の医院の非について言い切る言葉は、その場では使わない。元動画を見る【歯科医必見】クレーム患者が常連に変わる魔法の対応とは?(2025年6月12日公開)
1D編集部
1時間前
「長く開ければ予約は埋まる」で、診療時間を決めていませんか?――開業初月の集患で、対談が最後に置いたのは開業前のエリア分析だった

「長く開ければ予約は埋まる」で、診療時間を決めていませんか?――開業初月の集患で、対談が最後に置いたのは開業前のエリア分析だった

「開業初月から予約が埋まる」。1Dの対談動画は、題名だけを見ると広告の打ち方を並べる回に見える。実際に挙がる策は3つで、1つ目がオンライン、2つ目が地域に出ていく活動、3つ目が開業前のエリア分析だ。ただし3つは同じ重さで語られているわけではない。前の2つは開業後も続けて手直しできるのに対し、3つ目は開業してからでは動かせない前提に関わる。そこで対談が繰り返し退けるのが、「長く開けていれば患者は来る」という考え方である。本稿では、出演者が語った内容と、編集部が読み取った整理とを分けて書く。題名の「パンパン」は出演者の表現で、どの医院でも初月が埋まるという保証ではない。最初に置かれるのは、初月の重さ話の入口は歯科ではなく、出演者の会社の近くに開店した飲食店だ。オープン時に「シャンパン1杯無料」をうたっていた。新しく開いた飲食店には人が並ぶことがある。一方で、都心のように家賃が高い激戦区では、気づくとなくなっている店も少なくない。出演者はこれを「歯科医院にも言えることではないか」と持ち出す。もう一人の出演者が応じるのは、新規開業時の内覧会の文化だ。内覧会は「スタートダッシュのためにある」と言い、理由として「家賃も変わらない」ことを挙げる。だから最初から立ち上がった方が経済性はいい、という見立てである。編集部の言葉に直すと、初月の集患は宣伝の出来栄えより、固定費が走り出す時期にどれだけ患者と接点を持てるかの問題として語られている。1つ目と2つ目は、「やる」と「ちゃんとやる」の差1つ目のオンラインについて、対談が挙げるのはGoogleマップ上の医院情報だ。動画では「Googleマイビジネス」と呼ばれている(現在の名称はGoogleビジネスプロフィール)。出演者の一人は、店を探すときはGoogleマップを使うと言い、登録して内容を埋めているかどうかで「全然違う」と述べる。理由は単純で、周りがちゃんとやっていないから、という。画面のまとめも「まずはオンライン登録して内容を埋めることが重要」で、最後の振り返りでは「『やる』だけじゃなくて『ちゃんとやる』」と言い直されている。SNSについては、出演者の評価が分かれる。地域の人に向けた発信ならリコールには結びつくという意見がある一方、バズらせて新患を獲得するという使い方には距離を置き、むしろ採用には効きそうだという声が出る。口コミの扱いや再生数の追い方は1Dの別記事で扱っているので、ここでは「オンラインは開業後も手入れを続ける土台」と受け取っておけば足りる。2つ目の地域密着型の策として挙がるのは、内覧会、地域の新聞や掲示板といったアナログな広告、地方での地元企業のテレビCM、企業などへ出向く歯科検診、訪問先の施設でスタッフ向けに開く講習会、地域でのセミナー活動だ。出演者は、こうした活動で「あの歯医者さん」という認知が得られ、「セミナーやってた先生だ」という信頼にもつながると話す。ここでも成果の数字は示されていない。語られているのは、患者になる前の地域の人と顔を合わせる場面を、開業する側から作れるということだ。3つ目だけは、開業してからでは遅い対談が「めちゃくちゃ重要」と位置づけるのが、最後の開業前の話である。開業する場所はエリアを考えて決めるはずだが、改めてそのエリアにどんな層が多いのかを見て、診療のメニューを考えておく。出演者は、これが開業前にできているかどうかで「初月の初速というのは全然違う」と言い、もう一人の出演者は「開業してからエリア変更ってできないので」と重ねる。具体例として、大きなターミナル駅の周辺なら時間を長めにとって行き来する人を取る、という考え方が示される。出演者の一人は、以前分院長を務めた医院の前院長の判断も紹介する。ベッドタウンで、山手線沿線の駅が近く、そこから少し外れて家賃が安い場所だったため、仕事終わりに来る人が多いと見た。周りの歯科医院が木曜休みばかりだったので木曜を開け、土日も診療する。そうすれば周りに溢れて来られない人たちが来るから、ちゃんと埋まる、という考え方である。これは出演者が見聞きした一医院の経験談で、同じ条件がそろわない場所にそのまま当てはまるものではない。エリアの見方としては、ファミリー層が多い場所、大学が近く学生が多い場所も挙がる。ファミリー層を狙うなら朝から17時で閉めてもいい、ともう一人の出演者は言う。画面のまとめは「どんな診療スタイル、営業時間にしていくか戦略を立てる」だ。「長く開ける」は戦略にならないここで対談がはっきり否定するのが、とにかく長く診療しようという発想だ。出演者の一人は「『長く診療しよう』というのは」と切り出し、「これはもう戦略じゃない」と言う。もう一人も、無駄だと応じる。出演者の一人は、アルバイト先の例を出す。曜日によって診療時間がまちまちで、夜遅くまで開けている日もあるが、その時間帯は特定の患者のためだけに開けているような状態になることがある。全体で見れば、ずっと長く開けていたら多分無駄だが、遅い時間でもいいというスタッフがいるから成り立っている、という説明だ。画面のまとめは「長くやれば良いってもんじゃない」である。時間の決め方は採用にも跳ね返る。経営効率だけで言えばエリアに応じて短くも長くも決めればよく、9時〜17時の医院は歯科衛生士にとってありがたいと感じる人も多いのでは、という意見が出る。もう一人の出演者は「エリアによりますけどね」と留保を付けている。編集部の読みでは、診療時間は集患の数字と人の集めやすさの両方に効く設計であり、患者の多い時間帯を見ずに延ばすと、どちらにも効かない時間が残る。開業前に、院長が書き出せること対談の3つの策を時期で並べ直すと、オンラインと地域の活動は開業後も続けて磨けるが、エリアと、そのエリアに合わせた診療時間・メニューの組み立ては開業前に決める比重が大きい。開業準備のなかで、次の3つは物件の資料と地図があれば紙に書き出せる。ひとつは、そのエリアで多い層は誰か。通勤の途中に寄る人か、子どもを連れた家族か、学生か。ふたつめは、その層が来られる時間帯に、周りの歯科医院が開いているかどうか。みっつめは、その時間に誰が働くのか。長く開ける案は、最後の問いに答えられて初めて現実的になる。いずれも、ここで挙げた例が自院にも当てはまる保証はない。それでも、開業してからでは動かせない前提を先に確かめておけば、初月に何を広告するかを決める材料にはなる。元動画を見る歯科医院の開業初月から予約が埋まる|地域No.1集患戦略(2025年6月19日公開)
1D編集部
2日前
「技工士が減るのは技工所の話」で済ませていませんか?――対談が最後に指したのは、医院から出ていく紙の指示書だった

「技工士が減るのは技工所の話」で済ませていませんか?――対談が最後に指したのは、医院から出ていく紙の指示書だった

「技工士がいなくなるのは本当か」。1Dの対談動画は、この問いを正面から立てる。司会の石川氏の答えは短い。「本当だと思いますね」(263秒)。ただし、すぐに「先10〜15年は必要なくなることはないんではないかと思うんですよ」(275秒)と続ける。減ることと、要らなくなることは別の話だ、という整理である。この話題は、歯科医院の側では「技工所の人手の問題」として聞き流されやすい。だが対談をたどると、論点は途中から発注する側、つまり歯科医院の仕事のやり方へ移っていく。本記事では、確かめられる数字と出演者の見立てを分けながら、その移り方を追う。減り方と年齢は、統計で確かめられるAI企業を運営する松岡氏は、技工士の数は「もう明らかに減っているんですよね」(91秒)と言い、高齢化が進んでいること、65歳以上が「5人に1人」という状況(123秒)、新規参入が減っていること(127秒)を挙げる。この部分は一次資料で確認できる。厚生労働省の令和6年衛生行政報告例によれば、2024年末の就業歯科技工士は31,733人で、前回(2022年末)から1,209人、率にして3.7%減った。年齢階級別では65歳以上が19.3%で最も多い区分になっている。「5人に1人」という言い方は統計と合う。入口の側も細い。歯科技工士国家試験の合格者は、2025年2月実施の回で684人(受験者733人)、2026年2月実施の回で722人(同792人)だった。一方、対談に出てくる平均年齢、免許保有者数と歯科医師数の比較、養成校の過去の校数といった数字は、今回は照合しきれなかったため本文では使わない。確かなのは、働く人が減り、その年齢層が上に厚いという構造のほうである。「いなくなる」と「仕事がなくなる」は違うでは、技工の仕事そのものはなくなるのか。石川氏の見立ては、需要は「それほど変わらない」(307秒)というものだ。理由として挙げるのは臼歯部の2級修復で、難易度が高く、コンポジットレジンの耐久性を考えると間接修復が望ましいと言われている(291〜299秒)。だから間接修復を担う技工士は必要になる、という順序である。これは出演者の臨床上の見解として受け取っておきたい。同時に、石川氏はAIとデジタルが技工の工程を大きく変えうることも認める。デジタルで印象を採り、院内でミリングまで済ませる1日治療の例(323〜339秒)、咬合面のデザインを3次元モデル上で組み立てられること(347〜355秒)。そのうえで、触った感覚を再現する部分は技工士の手作業に残るだろう、とも述べる(451〜459秒)。置き換わる工程と残る工程を分けて考えよう、という立場だ。減る理由は、技工所の努力不足だけではない松岡氏が強調するのは業界の構造である。仕事の源泉は「患者が歯科医院に来ること」であり(387秒)、技工所は「ある種下請けのような位置関係」(391秒)に置かれる。売上の上限が決まっているため、薄利多売にならざるを得ない(395〜399秒)。技工所は約2万件あり(407秒)、長く働くしかなく、高齢化で新しい機材も入れられない(411〜415秒)。歯科技工所の数は先の統計で20,278か所なので、「約2万」は実数とほぼ一致する。その先の見通しとして、松岡氏は二つの方向を挙げる。職人気質の技工士が付加価値の高い自費の補綴物を熟練の技で作る道と、機材を導入できる大型の技工所に集約される道だ(467〜481秒)。どちらに進むかは予測であり、確定した話ではない。医院の側の実感も語られる。石川氏は勤務先で一人で営む技工所に依頼しているといい(171秒)、新しい設備投資は「なかなか出来ないんですよ」(179秒)というやりとりが続く。CAD/CAM冠が中心になれば、医院としては別の技工所を検討したくなるのが現場の感覚だ、とも話す(187〜199秒)。依頼先が設備を更新できないことが、医院の選択を変えていく。ここに発注側の判断が入り込んでいる。医院から出ていく紙が、技工所の手間になっている対談の終盤、松岡氏は「歯科技工指示書って未だに紙じゃないですか」(527秒)と切り出す。石川氏も「僕は未だに紙ですから」(539秒)と応じ、複写式の用紙に書いて渡していると話す。その用紙は技工所が作って用意し、管理もしなければならない(551〜559秒)。松岡氏はこれを「明らかなDXの余地」(563秒)と呼ぶ。ただし、指示書だけを電子化しても意味がない、とも言う(595秒)。画面には「それらが全部つながったときにDXの価値が生まれる」(599秒)というテロップが出る。石川氏の言い換えでは、予約台帳、カルテ、傷病名、技工指示が連携すれば、形成の記録から「来週7番のインレーセット」「納品」までがつながる(615〜627秒)。だからアポイントまでデジタル化しないと意味がない(631秒)。技工所が減る話は、医院の予約と記録の仕方の話に着地する。院長が先に確かめられることここからは編集部の整理である。対談は、技工所を選べば解決するとも、デジタル化すれば技工士不足が止まるとも言っていない。言っているのは、技工の受け手と出し手が同じ流れの両端にいる、ということだ。そう読むと、医院で先に確かめられることがある。いま依頼している技工所は、誰が担い、何年先まで続けられる体制か。納期や再製作のやりとりに、医院側の紙や電話が何回挟まっているか。指示書に書いている情報は、カルテや予約の記録とどれだけ重複しているか。いずれも、技工所に問い合わせる前に院内で数えられる。技工士の数が減る流れを、一つの医院が変えることはできない。それでも、受け手が減るなかで「出す側の手間」を減らすことは、医院が自分で決められる範囲に残っている。元動画を見る歯科技工士がいなくなる!?【AI×デジタル】で激変する歯科業界(2025年7月3日公開)
1D編集部
2026年10月9日
「歯科医師の年収は上がる」を、自分の年収の話として聞いていませんか?――対談が挙げる3つの理由は、確かさの段階が違う

「歯科医師の年収は上がる」を、自分の年収の話として聞いていませんか?――対談が挙げる3つの理由は、確かさの段階が違う

「歯科医師の年収は今後上がっていきます」。1Dの対談動画は、この言い切りから始まる。出演者は110秒の時点で「上がります!」と答え、そこから理由を3つに整理していく。画面の左上にも「歯科医師の年収が上がる3つの理由」という見出しが出て、以後は「歯科医師・診療所の減少」「患者数・歯科医療費は減らない」「歯科医療の市場拡大」と小見出しが切り替わっていく。ただ、この話を自分の手取りの予想として受け取ると読み違える。3つの理由は、同じ強さの根拠で支えられているわけではない。統計で確認できるもの、割り算の結果として出てくるもの、まだ文書の段階にあるもの――性質の違う3つが並んでいる。本記事では、どこまでが確かめられる話で、どこからが見通しなのかを分けて読む。「上がる」と言われているのは、誰の、どの数字か動画が最初に片づけるのは、「上がる」の主語である。出演者は「インフレだからではないですね」(120秒)と断ったうえで、「令和6年度の診療報酬改定で収載されたんですけど」(125秒)「それは勤務医とか歯科衛生士とか歯科助手さんとかの話ですよね」(135秒)と続ける。賃上げを目的に新設された評価料はあるが、それは院長自身の収入の話ではない、という整理だ。ここは一次資料で確かめられる。令和6年度診療報酬改定で新設された歯科外来・在宅ベースアップ評価料について、厚生労働省保険局医療課の説明資料は、賃上げの対象となるのは「主として歯科医療に従事する職員(医師及び歯科医師を除く。)」だと明記している(令和6年度診療報酬改定と賃上げについて)。歯科衛生士・歯科技工士・歯科業務補助者などの賃金を引き上げるための点数であって、開設者である歯科医師は制度上その対象に入らない。制度としてすでに「上がる」仕組みが用意されているのは、スタッフの側である。「歯科医療者の年収は上がっていく」(115秒)という言い方と「自分の年収が上がる」という受け取り方の間には、一段の飛躍がある。動画の3つの理由は、その飛躍を埋めるために置かれた議論だと読むと構造がつかみやすい。一つめ・担い手が減る――確認できる部分と、確認できない部分一つめの理由として画面に出るのは「歯科医師・歯科診療所の減少」(205秒)である。出演者は「『医師・歯科医師・薬剤師統計』という統計があるんですけど」(250秒)と資料名を挙げ、「歯科医師数でいうと2176人とか」(255秒)「だいたい歯科医師の2%ぐらい減ってるんですよ」(260秒)と述べる。この数字は照合できる。厚生労働省の令和4(2022)年医師・歯科医師・薬剤師統計で、歯科医師数は105,267人、前回調査から2,176人・2.0%の減少。平均年齢53.0歳という点も「歯科医師の平均年齢って約53歳とかで」(285秒)という発言と合う(令和4(2022)年 医師・歯科医師・薬剤師統計の概況)。さらに、動画公開(2025年8月)より後に出た令和6(2024)年の同統計では、歯科医師数は103,652人、前回比1,615人・1.5%の減少だった(令和6(2024)年 医師・歯科医師・薬剤師統計の概況)。減少は続いているが、減り方は前回より緩んでいる。歯科診療所も、動画で語られた「今6万5千件台とかに突入したんですよ」(280秒)という水準をすでに下回り、医療施設動態調査の令和8(2026)年7月末概数で64,975施設である(医療施設動態調査)。「減っている」という向きは、一次資料でも確かめられる。一方、同じ箇所には確認できない話も混ざっている。出演者は「高齢化」と「女性歯科医師の増加」を合わせて「ダブルパンチ」(334秒)と呼び、女性歯科医師は男性と比べて「稼働率がちょっと下がるんですよね」(331秒)と述べる。ここには調査も出典も示されず、性別による働き方の差を前提にした推測になっている。本記事ではこの主張を採らない。統計で確認できるのは頭数の減少までで、「稼働量」がどう動くかは、それ自体が別に検証を要する論点である。二つめ・分母が減っても、分子が減らないなら二つめの小見出しは「患者数・歯科医療費は減らない」(215秒)。人口が減れば患者も減るのだから差し引きゼロではないか――「ニーズ側が減ったらトントンじゃね?」(400秒)という当然の反論に、出演者はこう答える。「人口の減りに対して歯科診療所に訪れる患者数って」「割と一定なんですよね」(410~420秒)。「患者数の絶対数は減るんですけど」(415秒)、「要は一人当たりの平均点が上がっているみたいな」(425秒)状態で、「トータルで考えると」「予算や医療費みたいなところは変わらない」(460~470秒)という見立てである。背景として挙がるのは、歯科医院が「健康な人も来るっていう場所になりつつある」(430秒)という変化だ。治療のためだけでなく、予防や管理のために通う人が増えれば、来院一人当たりの点数は上がる。分子にあたる歯科医療費が横ばいで、分母にあたる担い手が減るなら、「相対的に年収は上がるじゃんって話ですけど」(475秒)という結論になる。割り算そのものは筋が通っている。ただし出てくるのは全体の平均であって、個々の医院の数字ではない。出演者はこのあと「1990年代頭とかぐらいの水準になるんですよ」(485秒)「バブル末期ぐらいの水準になる」(495秒)と時期まで挙げるが、その試算の中身は示されないため、本記事では水準の話は扱わない。自院に引き寄せるなら、問われているのは「患者が何人来たか」ではなく「一人当たりで何をしているか」のほうである。三つめ・市場の拡大は、まだ点数ではなく文書の段階にある三つめの小見出しは「歯科医療の市場拡大」(570秒)。根拠として挙がるのは、「先々月ぐらいに公表された」(565秒)「『経済財政運営と改革の基本方針2025』」(570秒)、いわゆる骨太の方針である。そこに「いわゆる国民皆歯科検診みたいなもの」(580秒)が含まれており、歯周病と全身疾患の関連について「エビデンスが出てきてるってことは明らかじゃないですか」(590秒)と続く。ただし出演者自身が「僕も見てないのでちょっと分からないですけど(笑)」(535秒)と置いているとおり、この三つめは文書を読んだうえでの説明ではなく、報じられた範囲での見通しとして語られている。編集部で確認した範囲では、「経済財政運営と改革の基本方針2025」は令和7年6月13日に閣議決定されており(内閣府)、その歯科関連の記載として日本歯科医師会は「生涯を通じた歯科健診(いわゆる国民皆歯科健診)に向けた具体的な取組の推進」「歯科医師の不足する地域の分析等を含めた適切な配置の検討を含む歯科保健医療提供体制の構築と強化」などを引用している(日本歯科医師会)。方針に位置づけられていること自体は確かめられる。ただし、方針に書かれることと、点数が付くことと、実際に収入が動くことは、それぞれ別の段階である。一つめが統計の話、二つめが割り算の話だったのに対し、三つめはまだ文書の話にとどまる。出演者が「多分しれっとフェードアウトするんじゃないか」(530秒)という可能性にも触れているとおり、ここは確定した話として数えないほうがいい。「上がる」を、待っていい話として読まない動画の結論は、意外と威勢のいいものではない。「現状のパイでどうなるっていうのを予測するんじゃなくて」(645秒)「本当にでっかい施策で変えていく必要もあるぞ」(655秒)。画面には「『時代を作り上げるんだ』という主体的な努力が必要」(650秒)という大きなテロップが出る。市場が広がるかどうかは、担い手が何をするかにかかっている、という着地である。そのうえで出演者は、「小さい虫歯を見つけて削って詰める歯医者がいるので」(665秒)と言いよどみ、「『健康は口から作る』という意識で歯科医療に取り組んでほしい」(685秒)と述べる。行政の側に「歯科医師を抑制しろ」(610秒)という議論があるなかで「担い手もたくさん必要だ」(620秒)と言い返すには、その説明を日々の診療の中身で裏づける必要がある――という順番だ。これは出演者の立場からの主張であり、制度の決定を予測したものではない。タイトルは「【朗報】」で始まるが、中身は朗報の受け取り方の話だった。確かめられるのは、担い手が減っているという統計までである。その先の「だから一人当たりは上がる」は条件つきの割り算で、「市場が広がる」はまだ方針文書の段階にある。来期の計画をこの見通しの上に立てるのは早い。先に見ておきたいのは、全体の平均で起きていると言われる変化が、自院でも起きているかどうかのほうだろう。元動画を見る【朗報】歯科医師の年収は今後上がっていきます(2025年8月7日公開)
1D編集部
2026年10月6日
「紙でも回っているから」で、予約台帳を続けていませんか?――回しているのは仕組みではなく、受付に立つ人かもしれない

「紙でも回っているから」で、予約台帳を続けていませんか?――回しているのは仕組みではなく、受付に立つ人かもしれない

予約システムの話は、たいてい「便利そうだ」から始まります。1Dの対談動画「【歯科医院】予約システムを絶対導入すべき理由」は、そこから入りません。画面の章立てテロップで最初に出るのは「導入しない医院がある理由」です。導入を勧める回でありながら、対談はまず、入れていない医院の側の理屈を言葉にするところから始めます。
対談が先に説明するのは、メリットではなく「入れない理由」
出演者が挙げる理由は、意外なほど単純です。「紙の予約台帳で回っちゃっているからですよね」「回るからいっかみたいな」。実際、紙の台帳でも「回るっちゃ回るじゃないですか」と対談は認めます。そのうえで、入れない側の言い分として「いらないって思っている人も」いること、規模が小さければ「そんなに経営インパクトはないので」と判断されること、そして「めんどくさい」「分かんない」という感覚が残ることを並べます。
ここは記事として重要なところです。導入しない理由が「知らないから」ではなく「困っていないから」だと整理されると、検討の問いが変わります。問うべきは「便利かどうか」ではなく、今の台帳で回っている状態が何によって成り立っているか、になるからです。
紙でも回る。ただし、回しているのは誰か
対談はその答えを、笑いながら一言で言います。「歯科助手さんや歯科衛生士さんが頑張ってるから」。後半でも「スタッフがみんな取ってくれていると思うんですけど」という言い方が出てきます。つまり紙の台帳が回っているのは、台帳の性能ではなく、人が差分を吸収しているからだ、という見方です。これは出演者の解釈であって、何かの調査で示された結論ではありません。それでも、院長が自院を点検するときの問いとしては具体的です。
もう一方の軸は、人が頑張っても残るものです。出演者は「先生ちょっとこの前のやつ漏れてましたよ」と言われた経験を挙げ、前日や「もう1週間前とか」の連絡は「紙じゃできないので」と述べます。「僕も絶対忘れちゃうんで」という自分の患者としての感覚も添えられます。期待されているのは、来なかった人を責める仕組みではなく、「来ていなかった人がリマインドによって来る」という取りこぼしの回収です。待たせ方や遅刻への対応は、この回では扱われません。
「ペーパーレス」と「DX」は違う、と対談は線を引く
中盤で、対談は自分たちの話に注釈をつけます。画面には「ペーパーレスとDXはちょっと違う」という言葉が出ます。紙をやめて画面に置き換えただけで「何の連携もできない」なら「それDXって言わなくない?」「それじゃあんまり意味ないですよね」というわけです。
では何が違うのか。対談が例に出すのは、予約に「何の治療をしたとか」の記録が紐づく状態です。気をつけたい患者に「カルテにマークとかつけていた」、しかも「隠語にしている」という院内の工夫が語られ、それを人の記憶や符丁ではなく、いわゆるサブカルテや患者管理(CRM)として持つ、という整理になります。出演者は「その考え方は結構一般企業だと当たり前」だと言い、連携が生まれると「新しい提案ができるみたいになった」と続けます。
もっとも、ここで言われる「提案」は自費の販売の話にも触れています。本記事はその是非には立ち入りません。記録が次回の判断材料になる、という範囲で読むのが妥当なところです。
おすすめの製品は出てこない。出てくるのは機能の条件
この回のもう一つの特徴は、具体名を出さないことです。出演者は「ここでおすすめの予約システムみたいな」話はしない、と明言します。理由も率直で、「角が立つし」「これがいいとかって全部見比べたことないし」。代わりに示されるのが、章立てテロップで「これは外せない必須機能」と見出しのついた条件です。
挙がるのは三つの方向です。患者情報と「顧客管理的に連携ができるもの」。大きなテロップで出る「LINEでリマインドできる機能はあるべき」。そして、ホームページにウェブ予約の入口がある場合に、空いている枠を含めて「予約状況を一括管理できる機能があると良い」こと。最後の点について出演者は「アポ帳が患者側からも見える」状態だと言い換えます。加えて、選ぶ側の留保も置かれます。「あんまり使いにくいものを導入したくないじゃないですか」「コストバランスは考えるべきだと思うんですけど」。
製品名が出ない以上、この回は比較表の代わりにはなりません。使えるのは、自院が何を解決したいのかを先に決めるための項目として、です。
費用の話は最後に出てくるが、回収の計算は示されない
費用に触れるのは終盤です。出演者は月々の負担感に言及したうえで、「計算はできないですけど」と前置きし、患者側の使い勝手の向上まで含めれば「十分元は取れそうですけどね」と述べます。前半でも「投資に対してそこまでの不利益性はなさそうですよね」という言い方が出ますが、同時に、規模が大きくなければ回収できるかどうかが変わる、という指摘も置かれています。
本記事では、この回で挙がる金額も普及率の数字も書きません。金額は出演者がその場で口にした体感で、回収の計算は本人が示していないと述べているためです。普及率についても、出演者自身が「民間の調査しかないんですけど」「公式的な統計ではないんですけど」と断っており、調査名も年次も示されません。確かめられるのは数字ではなく、順番のほうです。紙で回っているなら、まず誰の手数でそれが成り立っているかを見る。そのうえで、前日の連絡と記録の引き継ぎを人の記憶から外せるか考える。製品を見比べるのは、その後でも遅くありません。
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元動画を見る(2025年8月14日公開)
1D編集部
2026年10月5日

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