これからの時代、ますます重要な産業として位置づけられる歯科医療。なかでも、歯科衛生士という職種が果たす役割が非常に大きいことは疑いありません。
しかし、ご存知のとおり歯科衛生士の需要と供給のバランスは崩れかけています。近年では有効求人倍率が20倍を超えるなど、経営の課題として痛感している院長先生も多いのではないでしょうか。データを見ても、歯科医院側の人材ニーズと就業歯科衛生士数は大きくギャップしています。
特に、都市部と非都市部における地域偏在は大きな課題です。東北地方の太平洋側および関東地方においては、歯科衛生士が不足している傾向が特に強いという研究があります。特に北海道や福島県では歯科衛生士不足の傾向が顕著です。
一方で、東北地方の日本海側および西日本では、歯科衛生士の不足はそこまで顕著ではありません。特に、秋田県や山形県では歯科衛生士のリソースは比較的充実しています。
また、歯科衛生士の少ない地域には歯科助手が多く、歯科衛生士が多い地域には歯科助手が少ないという逆相関も見られるということがわかっています。
これらの問題を放置しておけば、切れ目のない歯科医療の円滑な提供が困難になりかねません。「歯科衛生士不足時代」における処方せんとは、いったい何なのか。このイシューを、ワンディー株式会社代表取締役で歯科医師の松岡周吾が分析します。
日本歯科医師会が行った調査によれば、歯科衛生士は日本全国で4.7万名不足しています。一方で、歯科衛生士のライセンスを持っているが就業していない「未就業歯科衛生士」の人数のうち、再就業が可能な歯科衛生士数は4.9万名と推計されています。このマッチングが実現できれば、歯科衛生士不足は解決できます。
その上で、女性が99.9%以上を占める歯科衛生士という職種においては、ライフイベントの影響も考慮した永く働ける歯科医院側の環境の構築が課題となっています。産休や育休、復職支援や再就職支援など、キャリアの継続を考慮した働き方の提案が必要です。
これからの歯科医療の円滑な供給を守るために、どのような戦略や取り組みが必要なのか。ともに考える機会となれば幸いです。
こんな方におすすめ
👉 歯科医療の需給に関する現状と今後に関心がある
👉 今後医院規模を拡大し採用を強化していく予定だ
👉 歯科衛生士の働き方に関する業界課題を知りたい
講義目次
有効求人倍率「22.5倍」の衝撃
定員割れが慢性化する歯科衛生士校
歯科衛生士に期待される役割とは?
歯科衛生士は日本海側に偏在している
「休眠」歯科衛生士にまつわる課題
離職の原因は「院長との関係」である
1992年、千葉県生まれ。鶴見大学歯学部在学中から個人でアプリ開発を行う。歯科医師国家試験の対策アプリを開発し、新卒歯科医師の約8割が利用するまで成長させる。2016年に歯科医師免許を取得。東京歯科大学大学院博士課程に進学後は、医事・衛生法規や歯科医療管理、社会保障制度など歯科保健医療が抱える種々の問題について専攻。同大学院中退後の2017年にワンディー株式会社を創業。