アーチレングディスクレパンシーの測り方

アーチレングディスクレパンシーの測り方

1D編集部
2022年8月13日
アーチレングスディスクレパンシー」という言葉を聞いたことはありますか?あまり聞きなれない言葉かもしれません。しかし特に小児や矯正には非常に重要な要素であると言えます。

本記事では、アーチレングスディスクレパンシーについて詳しく解説していきます。

アーチレングスディスクレパンシーとは、歯の大きさとそれを収容する歯槽基底部の大きさとの不調和を指し、その値がプラスかマイナスかで歯列不正の種類も推測できます。


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    アーチレングスディスクレパンシーは、アベイラブルアーチレングスリクワイアードアーチレングスの差によって求めることができます。

    アベイラブルアーチレングスは、一側の第一大臼歯近心面からもう一側の第一大臼歯近心面までの歯槽部で、歯が排列可能なスペースである「歯列弓周長」を指します。

    リクワイアードアーチレングスは、第二小臼歯から反対側の第二小臼歯までの歯冠近遠心幅径の和を指し、アベイラブルアーチレングスとの差がマイナスであればスペースが不足しており叢生であると判断できます。その差がプラスの場合は、スペースが余っているので空隙歯列であると判断できます。

    つまりアーチレングスディスクレパンシーというのは、値がプラスであれば良くてマイナスだと悪いという単純なものではなく、その差がゼロに近い方が正常な歯列の獲得に有利といえるのです。


    アーチレングスディスクレパンシーの値がー(マイナス)の場合

    アーチレングスディスクレパンシーの値がマイナスの場合は、スペースが不足しているので叢生(=乱杭歯)と判断できます。ガタガタの歯並びで、1歯1歯が別々な方向を向いており、きれいな歯列弓を形成できない状態です。


    アーチレングスディスクレパンシーの値が+(プラス)の場合


    アーチレングスディスクレパンシーの値がプラスの場合は、スペースが余っているので空隙歯列(=すきっ歯)と判断できます。上の前歯の真ん中に不要なすき間が存在している歯並びを正中離開と呼びますが、これも空隙歯列の一種です。


    叢生(乱杭歯)のデメリットと原因

    歯並びがガタガタの叢生には、歯磨きしにくいというデメリットがあります。清掃性が悪く、不潔になりやすいことから、虫歯・歯周病のリスクが上昇しやすいです。

    また上下の歯が正常な位置で噛み合っていないため、咀嚼能率も悪いです。一部の歯や歯周組織顎関節に過剰な負担がかかり、さまざまなトラブルを引き起こす原因ともなります。


    原因① 先天的な要因

    叢生の原因となるスペース不足は、歯と顎の大きさのアンバランスに由来することが多いです。具体的には「歯に対して顎が小さい」「顎に対して歯が大きい」場合に叢生となり、どちらも先天的な要因が関連しています。


    原因② 後天的な要因

    叢生の後天的な要因としては、指しゃぶり舌突出癖口呼吸といった悪習癖が挙げられます。その他、乳歯から永久歯への生え変わりが正常に進まないことでもスペース不足を招いて叢生が引き起こされることがあります。


    原因③ 複合的な要因

    上述した先天的な要因と後天的な要因が合わさって叢生となることも珍しくあります。そもそも先天的な要因があると、口呼吸などの悪習癖が誘発されやすいだけでなく、乳歯列期う蝕などが原因で、永久歯萌出異常が生じるリスクも高まります。


    叢生(乱杭歯)の治療方法と費用

    矯正方法

    叢生の矯正方法は、小児矯正と成人矯正で異なります。


    小児矯正


    小児矯正では、不足しているスペースを作り出すために、顎の幅を広げたり、前後的な顎の長さを伸ばしたりする治療が行われます。

    最もスタンダードなのは「床矯正」です。急速拡大装置を用いれば、短期間で顎の側方拡大が可能となります。顎の側方拡大は、基本的に小児期でなければ効果が見込めません。



    成人矯正では、不足しているスペースを作り出すために、便宜抜歯を行うことが多いです。審美面や機能面において最も影響の少ない第一小臼歯や第二小臼歯を抜いて、歯を綺麗に並べるためのスペースを確保します。

    その他、歯の隣接面を少しずつ削るIPRや臼歯部遠心に移動する方法などが挙げられます。いずれもマルチブラケット装置マウスピース矯正装置を使った歯列矯正で行われる処置です。


    マルチブラケット装置(=ワイヤー矯正)

    金属製のワイヤーとブラケット歯面に設置して、歯並びを整える治療法です。ガタガタの歯並びもきれいに並べ直すことができます。



    透明な樹脂製のマウスピースを使った治療法です。ワイヤー矯正ほど適応範囲は広くありませんが、軽度から中等度の叢生であれば問題なく治せることが多いです。


    費用

    叢生の治療にかかる費用は、小児矯正の1期治療で300,000~400,000円程度、2期治療や成人矯正で行うマルチブラケット法では1,000,000円前後、マウスピース型矯正では800,000円程度の費用がかかります。いずれも叢生の重症度によって、費用も大きく変わります。


    空隙歯列のデメリットと原因

    空隙歯列では歯列内に不必要なすき間があるため、食べ物が詰まりやすく、口腔内が不衛生になることでむし歯・歯周病リスクが上昇します。また歯間部のすき間から息が漏れることから、発音障害が現れることもあります。

    多くのケースでは日常生活に支障をきたすほどの発音障害は認められませんが、人前に話す機会が多い職種の人にとっては深刻なデメリットの一つであることでしょう。


    その他、食べ物を効率良く噛めない、噛み合わせのズレによって歯や顎の関節に過剰な負担がかかる、口元のコンプレックスになる、といったデメリットが空隙歯列に伴います。

    特に上顎中切歯間に空隙がある正中離開は、口元の審美性を大きく低下させることから矯正治療によって改善したいと希望する人が多くなっています。


    原因① 歯と顎のアンバランス

    空隙歯列は、親知らずを除いた永久歯28本を並べる上でスペースが余る場合に生じる歯列不正であり、歯に対して顎が大きい、顎の大きさは標準で個々の歯のサイズが小さい、歯の本数が少ない場合に認められます。

    これらは歯と顎のアンバランスという言葉で表現することができ、先天的な要素が強い、空隙歯列の原因といえます。


    原因② 舌が大きい

    舌の大きさや位置は、顎の発育と深い関連があります。舌のサイズが大きいと歯列および顎の骨を拡大する力が働いて、空隙歯列を招くことがあります。口呼吸低位舌となり、上顎の歯列狭窄する現象とは逆のパターンといえます。

    いわゆる「巨舌症(きょぜつしょう)」では、その症状が顕著に現れますがそうした極端な例ではなくても舌が標準よりも大きく、歯列内に空隙が認められる場合は要注意です。


    原因③ 指しゃぶりなどの悪習癖

    指しゃぶりや舌で前歯を前方に押し出す癖があると、歯が外側に傾きやすく、空隙歯列を招くことが多いです。これは主に小児期における悪習癖でき、顎の発育にも大きな影響を与えます。

    舌で前歯を押し出す行為自体はそれほど強い力がかかるものではありませんが、それが毎日の習慣となると歯や顎の骨の発育に異常をもたらすほどの影響力を持つようになります。その他、うつぶせに寝る癖や頬杖をつく癖なども空隙歯列の原因となることもあります。


    空隙歯列の治療方法と費用

    治療方法

    歯列矯正

    空隙歯列の最もスタンダードな治療方法は、歯列矯正です。マルチブラケット装置マウスピース矯正装置を使って、歯列内のすき間を閉じるように歯を移動させます。

    空隙歯列は、スペースが余っていることの方が多いので、便宜抜歯が必要となるケースは珍しいといえます。空隙歯列を根本から改善することができる治療方法であり、ほとんどのケースで症状の改善が見込めます。


    修復治療

    空隙歯列の症状は、歯列矯正によって歯を移動せずとも、修復治療で対応できるケースもあります。セラミック製のチップを歯の表面に張り付けるラミネートベニアは、正中離開のケースでよく適応されます。

    コンポジットレジンを直接、盛り付けるダイレクトボンディング空隙歯列の症状を改善する修復治療としては有用です。いずれも修復材料で余分なすき間を埋めることが主な目的となります。


    補綴治療

    セラミッククラウンなどの補綴物を装着することでも空隙歯列は改善できます。セラミックは天然歯色調や質感、透明感を再現する上で非常に優れた材料であり、歯の大きさや形態の異常も改善できます。ただし、歯を大きく削らなければならないというデメリットを伴います。


    悪習癖の改善

    空隙歯列の原因が指しゃぶり舌突出癖などの悪習癖にある場合は、それらを改善しなければ歯と歯の間のすき間も解消されません。悪習癖を改善せずに歯列矯正しても、再び空隙歯列の症状が現れてしまう点に注意しなければなりません。小児期の矯正治療では、指しゃぶりや舌癖、口呼吸を改善するための装置も存在しており、早期に対処することが望ましいです。


    費用

    空隙歯列の治療にかかる費用は、治療法によって大きく変わります。歯列矯正は800,000~1,000,000円程度、修復治療は10,000~150,000円程度、補綴治療は50,000~150,000円程度となっています。小児矯正は治療のバリエーションが豊富であり、費用の目安を提示するのは難しいです。


    歯並びを悪くしないために

    叢生空隙歯列などの歯列不正不正咬合を予防するためには、まず口腔習癖に注意を払う必要があります。4~5歳になっても指しゃぶりをやめることができなかったり、舌突出癖口呼吸、爪を噛む癖などが習慣化していたりすると、歯列や顎の発育に悪影響が及んで歯並びに異常をもたらします。

    また乳歯から永久歯への生え変わりが正常に進まないことでも歯並びが悪くなることがあるため、幼児期から歯科医院の定期検診を受ける習慣を身につけることが重要といえるでしょう。

    先天的な異常に関しては対処が難しい場合が多いですが、最終的には歯列矯正などによって改善することで、お口の健康維持・増進にもつながります。


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    まとめ

    このようにアーチレングスディスクレパンシーとは、叢生の度合いを評価する上で有用な指標となります。その値がマイナスであれば乱杭歯である叢生の傾向が強く、プラスである場合はスペースが余っていることで歯列空隙が存在していることが推測できます。

    矯正治療で活用されることが多い概念ですが、修復治療や補綴治療などを検討する際にも重要な材料となることでしょう。アーチレングスディスクレパンシーの考え方や測り方も含め、詳細についてしっかり把握しておくことは大切です。
    1D編集部
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    1D編集部

    1D編集部は、臨床経験のある歯科医師・歯科衛生士・歯科技工士で構成されています。歯科業界の最新ニュースから歯科医療の臨床・学術情報、歯科医療者のためのライフスタイル記事まで、歯科医療の専門家の視点で、ただしく・おもしろいコンテンツをお届けします。

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    歯学部を放校になった「30歳・元歯学部生」の末路

    歯学部を放校になった「30歳・元歯学部生」の末路

    歯科医師国家試験の合格率は、下げ止まりの状況が続いている。厚生労働省が新規参入歯科医師を削減する動きもあるなかで、各歯学部は合格率の維持、そして優秀な学生の確保に頭を悩ませている。歯科医師国家試験が難化しているしわ寄せは、各歯学部の教員陣、ひいては在籍する歯学部生に及んでいる。臨床実習を含む現実味のないコア・カリキュラムのなかで、詰め込み型の教育を強いられているのが現状だ。多くの歯学部では、学生が在籍できる年数に限度がある。最大で12年間在籍できる歯学部もあれば、1学年につき1度の留年しか許されていない歯学部もある。勉強や実習に付いていけず、在籍限度を超えてしまった歯学部生に待ち受けているのは「放校」と呼ばれる事実上の追放処分だ。1D編集部では、今年で私立歯学部を放校になった「元・歯学部生」に取材を試みた。彼はこの春から地元である東北に帰り、歯科とは関係のない道へ進む。自分に合う職業を探す、ゼロからの再スタートを切ることになる。本記事が、歯学部が構造的に抱える教育上の欠陥に対する問題提起になれば幸いである。「ただただ、両親に申し訳ない」「至らぬ点もあるかと思いますが、本日はよろしくお願いします」。90度に近いお辞儀をして、彼は取材会場に現れた。鈴木さん(仮名)は見るからに真面目そうで、とても礼儀正しい印象の男性だ。彼は今年で31歳になる。2月中旬に発表された進級判定で留年が確定し、大学規定の在籍限度を超えてしまった。教授陣や大学事務にも掛け合ったが、なすすべなく放校という処分を受けた。「この数年間、こうなるかもしれないということは感じていました。今はまだ放校になった実感はありませんが、ただただ、両親に申し訳ないという気持ちでいっぱいです」。淡々とわれわれの質問に答える彼の表情は、勉強や実習の重圧から解放され安堵しているようにも見えた。叶えられなかった夢、守れなかった約束歯科医師になることを約束された人生だった。両親はともに歯科医師で、東北地方の地方都市にユニット10台を超える規模の歯科医院を経営している。1日に訪れる患者数も多く、地元住民から信頼されている歯科医院である。そんな両親の間で生まれ育ち、小学校の卒業文集には「お父さん、お母さんのような歯医者さんになりたい」という夢を書いた。中学・高校は地元で1番の進学校に通い、推薦入試で関東地方にある某私立歯学部に入学した。「子どもの頃から、自分は歯科医師になるものだと確信していました。歯学部での勉強はやればできるだろうという自信もあったので、まさか自分が放校になるなんて微塵も考えていませんでした」。歯科医師の資格を取り、臨床家として経験を積んだ後に両親が経営している歯科医院を継ぐーー。順風満帆に思えた彼の歯科医師としての人生は、歯学部入学後すぐに暗転することになる。「放校確定」までの顛末歯学部に入学した彼を待ち構えていたのは、休むことを許されない歯学部のカリキュラムだ。「歯学部での勉強は、想像していた以上に過酷でした。推薦入試で入学した私は、ほとんど受験勉強をしていなかった。朝が得意ではないということも相まって、1年生の冬には成績も出席も足りないという状態になりました」。人間関係のトラブルもあり、彼は1年生で留年することになる。翌年はなんとか2年生に進級したが、2年生でも留年。その後も毎年のように留年を重ね、5年生から6年生に上がることができず、あえなくタイムオーバーとなった。「歯学部に殺される」という危機感彼には、現在の歯学部の教育に対して主張したいことがある。それは、歯学部での評価方法が成績のみに限定されており、努力や人柄を無視しているということだ。「鬱になり学校に来れなくなったり、最悪の場合には自殺した人も出ています。人格的に素晴らしい人や才能がある人も、歯学部に入ると殺されてしまう」と憤る。さらに、歯学部が歯科医師国家試験の予備校と化している点についても指摘する。「大学側の目的は、国家試験の合格率。学生のことを合格率のパーセンテージとしか見ていません。合格率を上げて、大学の権威を保つということしか関心が無いのだと思います」と続ける。おわりに歯科医師になる資質がない者は、歯科医師になるべきではない。国民や患者に対する責任があるからだ。歯科医師国家試験は、基本的資質を有さない者を弾く機能として、重要な役割を担っている。しかし、弾かれた者にも人生がある。毎年、十数名の「歯のことを10年以上勉強した何でも無い人」が誕生しているのだ。資質を有さないと思われる者には、歯学部低学年時から他のキャリアを提案するなどの大学側の仕組みが必要である。さらに言えば、現在の歯科医師国家試験の合格率偏重の歯学教育は、本当に国民や患者のためになっているだろうか。歯学部が「予備校化」したことで、本来研究や臨床という役割を担うべき大学教員のリソースが国家試験対策に奪われ、本来あるべき大学としての機能を失っていないだろうか。われわれにも正解はわからないが、歯学部が抱える教育上の諸問題は、国民の健康な生活のために、もっと議論されるべきテーマである。※個人特定防止の為、内容やプロフィールを一部脚色しています。
    1D編集部
    2025年12月8日

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