【ミニセミナーを覗く】「抜歯の第一選択はヘーベル」と思っていませんか?――講師が転位歯に使うのはミラーの柄とマレット

【ミニセミナーを覗く】「抜歯の第一選択はヘーベル」と思っていませんか?――講師が転位歯に使うのはミラーの柄とマレット

1D編集部
2026年11月8日
抜歯の第一選択となる器具はどれか。A:ヘーベル(エレベーター)、B:鉗子、C:指。1Dの「25分間」ミニセミナー「【難抜歯】残根・湾曲・転位の攻略法を学びましょう」で、講師は早い段階でこの三択をスライドに出す。正解は鉗子だ。ヘーベル1本で抜くほうが上手に見える、学生時代にヘーベルで抜けないとだめだと教わった――そう感じてきた先生もいるだろう、と講師は言う。講師自身、入局前はそう思っていたそうだ。基本を押さえたうえで、講師は転位歯に対して、ミラーの柄とマレットを使う方法まで紹介する。前半部分の講義を、スライドと自動字幕で確認できた範囲で整理する。

侵襲の大きさを決めるもの

講師が最初に取り上げるのは、抜歯や外科処置の「侵襲が大きい」とは何で決まるのか、という問いだ。スライドに並ぶのは、切開・剥離の大きさ、骨の削除量、加えた力の大きさ、処置時間の4つ。講師の答えは「全部正解」で、厳密にはこれらが合わさって侵襲の大きさが決まると言う。
そのうえで講師は、開業医が外来で局所麻酔下に行う抜歯のレベルでは、大部分を占めるのは処置時間だと言われている、と続ける。この点について根拠となる文献はスライドで確認できなかったため、本稿では講師の説明として扱う。講師は自身の経験にも触れ、簡単に済んだ抜歯は術後の経過もよく、切開や剥離をしなくても時間がかかった抜歯は術後の痛みの訴えが多かったと思う、と振り返る。処置時間が短くなれば患者の負担が減り、医院としてもその分の時間をほかの処置に回せる、というのが講師の見方だ。セミナーのねらいは、抜歯が途中で止まる事態を少しでも減らし、処置時間を短くすることだと講師は述べている。

手技の前に置かれる「構え」

技術の話に入る前に、講師は抜歯に臨む構えに時間を割く。手技と関係ないと思わないでほしい、と前置きしたうえで、これは患者のためだけでなく、自分がトラブルに巻き込まれるのを最小限にするためでもあると言う。講師自身は、これまで多くの抜歯を行ってきて、抜歯に関するトラブルは一度もないと話している(講師本人の経験談である)。
講師は抜歯を、体の一部を取るという意味で腕を切るのと同じだと考えていると言う。抜歯に強い抵抗感を持つ患者もいる。だから必要性を十分に説明し、納得してもらってから抜く。同意書は、術後のトラブル回避や抜歯部位の取り違えを防ぐうえで、あるに越したことはない。ただし大事なのは書面ではなく患者の心からの同意だ、と講師は言う。残根の抜歯では、必要に応じて切開・剥離や分割を行うことがある。これを事前に説明せずに進めると、信頼を大きく損ねかねない。
術中の配慮として講師が挙げるのは、麻酔から痛くないように注意し、できるだけリラックスしてもらうこと。若手がやりがちなのは、抜く歯ばかりに集中して、器具で口角を必要以上に広げ、術部ではないところに痛みを与えてしまうことだという。痛いときは我慢せずに教えてほしいと一言添え、術中も声をかけながら、引っ張りすぎないようにする。そして焦らないこと。抜けないと思ったら一呼吸置き、可能なら患者にも一息ついてもらう。術者の焦りはスタッフにも患者にも伝わる、と講師は言う。

基本は鉗子、残根ではヘーベルが主役

冒頭の三択に戻ると、講師は、多くの教科書の最初のほうに抜歯の基本は鉗子抜歯だと書かれているはずだ、と言う。基本すぎて見落とされている、というのが講師の見立てだ。つかめる歯質があれば、極端な話、残根であっても鉗子抜歯が基本になる。一方で、つかめる歯質が残っていない残根の抜歯では、主役はヘーベルになる。
抜歯の原則として、講師はスライドに5つを挙げる。解剖学的知識の習得、術前診査・治療計画の立案、器具の選択、直視・直達、正しいポジショニング。なかでも「直視・直達」はこの後も繰り返し出てくる重要な言葉だとして、頭に叩き込んでほしいと言う。ポジショニングについては、どこがよいと一概には言えず、経験を積んで自分の見やすくやりやすい位置を探すしかない、というのが講師の考えだ。講師自身は、例えば左側の抜歯では左側に回り込んで処置し、無理に覗き込まない姿勢をとっていると言う。上手な先生の臨床を見学する機会があれば、手元だけでなく、どの位置に座っているかも見ておくと勉強になる、と講師は勧める。

転位歯に、ミラーの柄とマレット

残根抜歯の具体的な手技は、YouTubeで公開されている前半部分にはほとんど含まれておらず、講義は転位歯の抜歯へと進む。講師によれば、転位歯の抜歯を詳しく記載した文献は少ない。口蓋側や舌側に転位した歯では、ヘーベルを入れる方向が限られ、意外と難しい。スライドに挙がる一般的な方法は、グルーブを掘る、分割する、セパレーターで隙間を作っておく、の3つ。セパレーターについては、矯正の先生に聞いたところ最低でも20分以上は入れておく必要があるとのことで、あまり効率的ではないかもしれない、と講師は話す(講師が聞いた話としての紹介である)。
そのうえで講師が紹介するのが、講師自身が「ミラーマレットテクニック」と名づけた方法だ。講師は、これは自分が考えたもので明確なエビデンスがあるわけではなく、実践的な内容として受け取ってほしいと断っている。スライドに示された適応は、単根歯であること(多くても2根まで)、極度の湾曲根でないこと、明らかな骨癒着がないこと、できるだけ未処置歯であること、頸椎ヘルニアなど頸に痛みがないこと。歯をたたいて脱臼させる方法なので、根が多い、湾曲している、癒着があると根が折れるリスクが高まる、と講師は説明する。コアが入っている歯では、その部分から折れてしまうことがある。講師の方法をまねた先生から、コアの入った歯で歯冠が折れて残根になってしまったと言われた、という話も講師は紹介している。衝撃が加わるため、めまいの症状がある人にも行わない、と講師は言う。
使用器具としてスライドに挙がるのは、ミラートップを外したミラーの柄、マレット、抜歯部位に応じた鉗子だけだ。マレットは医療用のものを使ってほしい、と講師は念を押す。手技はスライドに順番に示される。適応を確認し、通法どおり麻酔し、ミラーを抜歯予定の歯の咬頭にあてる。左手でしっかりミラーを把持してマレットでたたく。いきなり強くではなく最初は軽めに、トン、トンのリズムで2回目に強くたたき、これを繰り返して脱臼させる。脱臼すると音が変わり、そうなったら強くたたいてよい。最後は鉗子で抜去する。たたく方向について、スライドでは根尖方向にたたく図にバツ印が付けられており、講師は歯冠方向、少なくとも水平方向にたたくよう説明する。最初に軽くたたくのは、ミラーが滑らないか、あてる位置を見極めるためでもあるという。
講師が示した動画の症例では、処置時間は1〜2分ほどで、歯は破折なく抜けている。ヘーベルを使わないので歯周組織の損傷も軽く、この症例の術後の痛みもほぼなかったと講師は話す。ただしこれは講師が示した症例についての説明で、一般的な成績として示されたものではない。また講師は、この方法は書籍(スライドにはデンタルダイヤモンド社『開業医のための安全・確実な抜歯術』の誌面が示される)に記載されている、探針の先端を切断し、誘導孔を作ってマレットで脱臼させる方法の変法にあたると自ら説明している。探針より接触面積が大きく安定しやすいこと、滑ったときにも鋭利でないことを、ミラーの柄を使う利点として挙げる。一方で、ミラーの柄が入らない細い隙間には、探針を使う元の方法が有効だという。なお、本稿ではこの書籍の原典は確認していない。

抜けた後に、もう一歩

講義の最後に、講師は抜歯が終わってからの気遣いを挙げる。抜歯が大変であるほど、抜けた瞬間に気が緩みやすい。スライドにあるのは、根尖が折れていないか再度確認すること(抜去歯を見て、必要に応じて術後にエックス線写真を撮る)と、骨鋭縁がないか確認することだ。怪しいのに何も言わずに済ませることはやめてほしい、と講師は言う。
骨鋭縁について講師は、抜歯後に必ず周囲の歯肉を指で軽く触って確かめていると話す。指で触れて分かるほどの鋭縁があれば、創部の治癒に伴って口腔内に出てきてしまい、患者からは抜歯したはずなのに歯が残っている、痛みが消えないといった訴えにつながる。その場合は骨やすりやラウンドバーで丸め、削片が残らないよう洗浄してきれいにする。ここまで配慮できれば完璧だと思う、と講師は締めくくる。
なお、講義の終盤で講師が紹介するおすすめの器具は、製品名が中心になるため本稿では扱わない。講師自身も、器具がなくても今回の内容ができれば抜けるので、最初はどの医院にもある器具で抜けるようになってほしい、と話している。講師名や、自動字幕で聞き取りが不確かな部分も載せていない。本稿は講義内容の整理であり、実際の適応や術式の判断は、各自の責任で行ってほしい。

元動画を見る

このミニセミナーはセミナーの前半部分です。続きは1Dプレミアムで視聴できます。
1D編集部
著者/監修者
1D編集部

1D編集部は、臨床経験のある歯科医師・歯科衛生士・歯科技工士で構成されています。歯科業界の最新ニュースから歯科医療の臨床・学術情報、歯科医療者のためのライフスタイル記事まで、歯科医療の専門家の視点で、ただしく・おもしろいコンテンツをお届けします。

1Dプレミアム
1Dプレミアム

関連ニュース

【ミニセミナーを覗く】「抜歯の第一選択はヘーベル」と思っていませんか?――講師が転位歯に使うのはミラーの柄とマレット

【ミニセミナーを覗く】「抜歯の第一選択はヘーベル」と思っていませんか?――講師が転位歯に使うのはミラーの柄とマレット

抜歯の第一選択となる器具はどれか。A:ヘーベル(エレベーター)、B:鉗子、C:指。1Dの「25分間」ミニセミナー「【難抜歯】残根・湾曲・転位の攻略法を学びましょう」で、講師は早い段階でこの三択をスライドに出す。正解は鉗子だ。ヘーベル1本で抜くほうが上手に見える、学生時代にヘーベルで抜けないとだめだと教わった――そう感じてきた先生もいるだろう、と講師は言う。講師自身、入局前はそう思っていたそうだ。基本を押さえたうえで、講師は転位歯に対して、ミラーの柄とマレットを使う方法まで紹介する。前半部分の講義を、スライドと自動字幕で確認できた範囲で整理する。侵襲の大きさを決めるもの講師が最初に取り上げるのは、抜歯や外科処置の「侵襲が大きい」とは何で決まるのか、という問いだ。スライドに並ぶのは、切開・剥離の大きさ、骨の削除量、加えた力の大きさ、処置時間の4つ。講師の答えは「全部正解」で、厳密にはこれらが合わさって侵襲の大きさが決まると言う。そのうえで講師は、開業医が外来で局所麻酔下に行う抜歯のレベルでは、大部分を占めるのは処置時間だと言われている、と続ける。この点について根拠となる文献はスライドで確認できなかったため、本稿では講師の説明として扱う。講師は自身の経験にも触れ、簡単に済んだ抜歯は術後の経過もよく、切開や剥離をしなくても時間がかかった抜歯は術後の痛みの訴えが多かったと思う、と振り返る。処置時間が短くなれば患者の負担が減り、医院としてもその分の時間をほかの処置に回せる、というのが講師の見方だ。セミナーのねらいは、抜歯が途中で止まる事態を少しでも減らし、処置時間を短くすることだと講師は述べている。手技の前に置かれる「構え」技術の話に入る前に、講師は抜歯に臨む構えに時間を割く。手技と関係ないと思わないでほしい、と前置きしたうえで、これは患者のためだけでなく、自分がトラブルに巻き込まれるのを最小限にするためでもあると言う。講師自身は、これまで多くの抜歯を行ってきて、抜歯に関するトラブルは一度もないと話している(講師本人の経験談である)。講師は抜歯を、体の一部を取るという意味で腕を切るのと同じだと考えていると言う。抜歯に強い抵抗感を持つ患者もいる。だから必要性を十分に説明し、納得してもらってから抜く。同意書は、術後のトラブル回避や抜歯部位の取り違えを防ぐうえで、あるに越したことはない。ただし大事なのは書面ではなく患者の心からの同意だ、と講師は言う。残根の抜歯では、必要に応じて切開・剥離や分割を行うことがある。これを事前に説明せずに進めると、信頼を大きく損ねかねない。術中の配慮として講師が挙げるのは、麻酔から痛くないように注意し、できるだけリラックスしてもらうこと。若手がやりがちなのは、抜く歯ばかりに集中して、器具で口角を必要以上に広げ、術部ではないところに痛みを与えてしまうことだという。痛いときは我慢せずに教えてほしいと一言添え、術中も声をかけながら、引っ張りすぎないようにする。そして焦らないこと。抜けないと思ったら一呼吸置き、可能なら患者にも一息ついてもらう。術者の焦りはスタッフにも患者にも伝わる、と講師は言う。基本は鉗子、残根ではヘーベルが主役冒頭の三択に戻ると、講師は、多くの教科書の最初のほうに抜歯の基本は鉗子抜歯だと書かれているはずだ、と言う。基本すぎて見落とされている、というのが講師の見立てだ。つかめる歯質があれば、極端な話、残根であっても鉗子抜歯が基本になる。一方で、つかめる歯質が残っていない残根の抜歯では、主役はヘーベルになる。抜歯の原則として、講師はスライドに5つを挙げる。解剖学的知識の習得、術前診査・治療計画の立案、器具の選択、直視・直達、正しいポジショニング。なかでも「直視・直達」はこの後も繰り返し出てくる重要な言葉だとして、頭に叩き込んでほしいと言う。ポジショニングについては、どこがよいと一概には言えず、経験を積んで自分の見やすくやりやすい位置を探すしかない、というのが講師の考えだ。講師自身は、例えば左側の抜歯では左側に回り込んで処置し、無理に覗き込まない姿勢をとっていると言う。上手な先生の臨床を見学する機会があれば、手元だけでなく、どの位置に座っているかも見ておくと勉強になる、と講師は勧める。転位歯に、ミラーの柄とマレット残根抜歯の具体的な手技は、YouTubeで公開されている前半部分にはほとんど含まれておらず、講義は転位歯の抜歯へと進む。講師によれば、転位歯の抜歯を詳しく記載した文献は少ない。口蓋側や舌側に転位した歯では、ヘーベルを入れる方向が限られ、意外と難しい。スライドに挙がる一般的な方法は、グルーブを掘る、分割する、セパレーターで隙間を作っておく、の3つ。セパレーターについては、矯正の先生に聞いたところ最低でも20分以上は入れておく必要があるとのことで、あまり効率的ではないかもしれない、と講師は話す(講師が聞いた話としての紹介である)。そのうえで講師が紹介するのが、講師自身が「ミラーマレットテクニック」と名づけた方法だ。講師は、これは自分が考えたもので明確なエビデンスがあるわけではなく、実践的な内容として受け取ってほしいと断っている。スライドに示された適応は、単根歯であること(多くても2根まで)、極度の湾曲根でないこと、明らかな骨癒着がないこと、できるだけ未処置歯であること、頸椎ヘルニアなど頸に痛みがないこと。歯をたたいて脱臼させる方法なので、根が多い、湾曲している、癒着があると根が折れるリスクが高まる、と講師は説明する。コアが入っている歯では、その部分から折れてしまうことがある。講師の方法をまねた先生から、コアの入った歯で歯冠が折れて残根になってしまったと言われた、という話も講師は紹介している。衝撃が加わるため、めまいの症状がある人にも行わない、と講師は言う。使用器具としてスライドに挙がるのは、ミラートップを外したミラーの柄、マレット、抜歯部位に応じた鉗子だけだ。マレットは医療用のものを使ってほしい、と講師は念を押す。手技はスライドに順番に示される。適応を確認し、通法どおり麻酔し、ミラーを抜歯予定の歯の咬頭にあてる。左手でしっかりミラーを把持してマレットでたたく。いきなり強くではなく最初は軽めに、トン、トンのリズムで2回目に強くたたき、これを繰り返して脱臼させる。脱臼すると音が変わり、そうなったら強くたたいてよい。最後は鉗子で抜去する。たたく方向について、スライドでは根尖方向にたたく図にバツ印が付けられており、講師は歯冠方向、少なくとも水平方向にたたくよう説明する。最初に軽くたたくのは、ミラーが滑らないか、あてる位置を見極めるためでもあるという。講師が示した動画の症例では、処置時間は1〜2分ほどで、歯は破折なく抜けている。ヘーベルを使わないので歯周組織の損傷も軽く、この症例の術後の痛みもほぼなかったと講師は話す。ただしこれは講師が示した症例についての説明で、一般的な成績として示されたものではない。また講師は、この方法は書籍(スライドにはデンタルダイヤモンド社『開業医のための安全・確実な抜歯術』の誌面が示される)に記載されている、探針の先端を切断し、誘導孔を作ってマレットで脱臼させる方法の変法にあたると自ら説明している。探針より接触面積が大きく安定しやすいこと、滑ったときにも鋭利でないことを、ミラーの柄を使う利点として挙げる。一方で、ミラーの柄が入らない細い隙間には、探針を使う元の方法が有効だという。なお、本稿ではこの書籍の原典は確認していない。抜けた後に、もう一歩講義の最後に、講師は抜歯が終わってからの気遣いを挙げる。抜歯が大変であるほど、抜けた瞬間に気が緩みやすい。スライドにあるのは、根尖が折れていないか再度確認すること(抜去歯を見て、必要に応じて術後にエックス線写真を撮る)と、骨鋭縁がないか確認することだ。怪しいのに何も言わずに済ませることはやめてほしい、と講師は言う。骨鋭縁について講師は、抜歯後に必ず周囲の歯肉を指で軽く触って確かめていると話す。指で触れて分かるほどの鋭縁があれば、創部の治癒に伴って口腔内に出てきてしまい、患者からは抜歯したはずなのに歯が残っている、痛みが消えないといった訴えにつながる。その場合は骨やすりやラウンドバーで丸め、削片が残らないよう洗浄してきれいにする。ここまで配慮できれば完璧だと思う、と講師は締めくくる。なお、講義の終盤で講師が紹介するおすすめの器具は、製品名が中心になるため本稿では扱わない。講師自身も、器具がなくても今回の内容ができれば抜けるので、最初はどの医院にもある器具で抜けるようになってほしい、と話している。講師名や、自動字幕で聞き取りが不確かな部分も載せていない。本稿は講義内容の整理であり、実際の適応や術式の判断は、各自の責任で行ってほしい。元動画を見る【難抜歯】残根・湾曲・転位の攻略法を学びましょう(2024年4月9日公開)このミニセミナーはセミナーの前半部分です。続きは1Dプレミアムで視聴できます。
1D編集部
42分前
【ミニセミナーを覗く】「咬合平面はカンペル平面に平行なら正解」と思っていませんか?――講師が見せた「顔が曲がって見える」義歯

【ミニセミナーを覗く】「咬合平面はカンペル平面に平行なら正解」と思っていませんか?――講師が見せた「顔が曲がって見える」義歯

咬合平面はカンペル平面とほぼ平行にする。補綴の基本として覚えている先生は多いはずだ。1Dの「25分間」ミニセミナー「【咬合再構成】初学者のための考え方と咬合器を用いた実践法」の前半の最後に、講師はある義歯の症例を示す。装着されていた義歯の咬合平面は、フェイスボウで見るとカンペル平面にほぼ平行で、講師の言葉では補綴学的には何も間違っていない。それでも患者は、顔が曲がって見えると言って作り直しを希望していた。そこへ至るまでに講師が積み上げる、咬合再構成の前提を、スライドと自動字幕で確認できた範囲で整理する。デジタルの前に、アナログの基礎講義の冒頭のスライドには「Analog before Digital」と書かれている。講師自身、フェイススキャナーや口腔内スキャナーを臨床で使っていると言う。そのうえで、デジタル機器を使えば難しい咬合治療が簡単になる、顎位の決定が楽になる、というわけでは決してない、というのが講師の考えだ。カメラのような身近な機械なら初心者ほどデジタルが楽だが、咬合に関しては逆だと講師は言う。デジタルの利点を引き出すにも、土台になるアナログの知識と技術が要る。講師はまた、顎位の決め方や咬合論には現時点で統一見解がないとして、講義の内容はあくまで現時点の自分の考えだと断っている。本稿もその前提で読んでほしい。講師が示す咬合治療の流れは5段階だ。咬合治療の診断と分類、上顎(咬合平面の診断と決定)、下顎(咬合高径と適正下顎位の決定)、治療計画の決定と確定的歯科治療、補綴装置製作。前半部分で扱われるのは、主に最初の2つである。顎位を変えるのか、変えないのか最初の診断で講師が問うのは、全顎的な治療が必要かどうか、言い換えれば顎位を変えるかどうかだ。スライドには、修復治療の分類とBeckerの分類が挙がる。Beckerの分類のスライドでは、既存の咬頭嵌合位(MIP)を採用して顎位を変更しない場合として、単冠、少数歯のクラウンブリッジ、少数歯の部分床義歯、少数歯のインプラント補綴が並ぶ。中心位(CR)を採用して顎位を変更する場合は、総義歯、支台歯形成後に咬合接触が失われる・安定しない場合、大規模な部分床義歯で残存歯の咬合接触がない・安定しない場合、適正な咬合高径で咬合接触がない場合、咬合挙上が必要な場合だ。講師は、日常臨床の大部分は前者にあたるのではないかと見ている。その例として示されるのが、上顎の欠損で噛めない、前歯がよく外れる、左上の奥歯がときどき腫れて痛む、という3つの主訴の症例だ。検査で歯根破折も見つかったが、既存の咬頭嵌合位は安定していた。スライドのキーポイントは「既存の顎位に調和した欠損補綴治療」。欠損部はインプラントで補ったが、咬合関係は基本的に変えていない、と講師は言う。一方で、重度の歯周病があり咬合高径も下がっていそうな患者を前にすると、どうやって顎位を決めるか、という方法に意識が向きやすい。講師はその前に診断を置く。スライドには、異常なのか、どの程度異常なのか、異常と判断する理由は何か、という3つの問いが並ぶ。正常と異常を分ける基準を持ったうえで、はじめて歯科治療に介入する、というのが講師の順序だ。フェイスボウトランスファーで、何が見えるようになるか咬合再構成が必要と判断したら、講師はまず上顎、つまり咬合平面の診断と決定から始める。石膏模型を作り、フェイスボウトランスファーを行う。スライドでは、フェイスボウによって2つの後方基準点と1つの前方基準点からなる平面で位置づけられた上顎模型を咬合器に付着する一連の操作、という専門用語集の定義が引かれている。講師が挙げる効果は2つだ。1つは、生体の開閉口路軸と咬合器の開閉口路軸が一致(実際には近似)すること。模型が正しい位置に付着されていないと、下顎の開閉口路が一致せず、咬合器上では適正に見えても口腔内では早期接触が生じたり、調整量が増えたりする、とスライドは説明する。もう1つは、咬合器ごとに決まっている基準平面と、目の前の患者の咬合平面との関係が、咬合器上で見えるようになることだ。さらにスライドには、下顎を中心位で付着しておけば、切歯点で10mm程度の開閉口であれば下顎は蝶番運動のみとされ、その範囲内なら咬合器上で咬合高径を変えて作った補綴装置も口腔内に適応できる、という説明がある。講師は、これによって咬合器を使った間接法で咬合再構成ができると言う。この数値はスライドが引く文献に基づく講師の説明で、本稿では原典を確認していない。カンペル平面を基準に、ずれの量を見る基準平面は咬合器によって異なり、主なものにカンペル平面やフランクフルト平面がある。講師が臨床で使っている半調節性咬合器は、カンペル平面を基準にしたものと、正中矢状面を基準にしたものの2つだという。カンペル平面基準を選ぶ理由として、講師は、咬合平面がカンペル平面とほぼ平行とされていることを挙げ、スライドでは学会のガイドラインや書籍、論文の記述を引いている(本稿では原典を確認していない)。咬合器の上弓がカンペル平面を表しているので、上弓を見ながら仮想咬合平面を設定できる、と講師は言う。症例は、右下のブリッジが痛む、噛み合わせが悪くて噛みにくい、という40代の女性。ブリッジは約5年前に他院で装着されたもので、検査では支台歯に歯根破折があった。少数歯欠損で咬頭嵌合位は安定しているため、顎位は変えない治療になる。それでもフェイスボウトランスファーを行い、カンペル平面基準の咬合器に模型を付着すると、既存の咬合平面がカンペル平面に対して大きく傾いていることがわかった。講師によれば、その逸脱量は口腔内を肉眼で見た印象よりずっと大きかったという。対合歯が挺出し、咬合平面が乱れたままブリッジが装着されていた。挺出していることはパノラマや口腔内写真でもわかるが、どの程度かを判断するのは難しい、と講師は言う。スライドに書かれた要点は「異常か正常か」「どの程度異常か」の2つだ。術後は、可能な限りカンペル平面に平行になるよう咬合平面を是正して欠損補綴を行った、と講師は説明する。カンペル平面に平行でも、顔が曲がって見える義歯冒頭の義歯の症例は、この流れの最後に置かれている。患者は、今の義歯だと顔が曲がって見えるとして作り直しを希望していた。上顎の義歯は約3年前に作ったものだという。口腔内写真だけを見ると目立たないが、顔貌に合わせると咬合平面がかなり傾いて見える。ところが、カンペル平面基準のフェイスボウを装着して見ると、その咬合平面はカンペル平面にほぼ平行だった。スライドの文字は「咬合平面はカンペル平面にほぼ平行」。講師はここで、なぜこうなったのかを考えなければならないと言い、理由として、後方基準点に使った外耳道の高さに左右差があることを挙げる。YouTubeで公開されている前半部分は、ここで終わる。編集部の読みとして、この症例が示しているのは、基準平面に平行という条件を満たすことと、患者の顔に調和していることが、いつも同じにはならないという点だ。フェイスボウトランスファーで咬合器上に見えるようになるのは、選んだ基準平面との関係である。その基準点自体に左右差がある患者では、何を基準に咬合平面を決めるかをもう一段考える必要がある。どう判断するかは、講義の続きで扱われる。本稿で扱わないこと講師の名前や経歴、医院の規模、紹介された書籍、スライドに写る咬合器の製品名は扱っていない。修復治療の分類の名称と各クラスの内容は、スライドの表記と自動字幕で十分に確認できなかったため採っていない。10mmという数値や、ガイドライン・論文の記述は、スライドに示された講師の説明として記載し、原典では照合していない。症例の詳しい処置内容(インプラントの本数や骨造成の方法など)も、自動字幕の聞き取りが不確かな部分は載せていない。本稿は講義内容の整理であり、実際の診断や治療方針は、各自の判断に基づいて行ってほしい。元動画を見る【咬合再構成】初学者のための考え方と咬合器を用いた実践法(2024年4月11日公開)このミニセミナーはセミナーの前半部分です。続きは1Dプレミアムで視聴できます。
1D編集部
1日前
【ミニセミナーを覗く】「試適の後は、そのまま装着」と思っていませんか?――講師がまず挙げるのは内面の汚染除去

【ミニセミナーを覗く】「試適の後は、そのまま装着」と思っていませんか?――講師がまず挙げるのは内面の汚染除去

補綴装置を口腔内で試適し、適合を確かめたら、あとは接着するだけ。そう考えていると、見落としやすい工程がある。1Dの「25分間」ミニセミナー「【CAD/CAM】補綴物・修復物セットに欠かせないポイント」で、講師は、試適を1回した時点で補綴装置の内面は必ず汚染されている、と言う。講師がまとめのスライドで接着操作の勘所の1番目に置くのも「試適後の汚染除去」だ。本稿では、スライドと自動字幕で確認できた範囲で、講師の主張と編集部の解釈を分けて整理する。有機のセメントで、無機の材料をつなぐ講義の内容は4つに分かれている。接着レジンセメント使用の勘所、CAD/CAMクラウン・インレー、レジン支台築造(直接法・間接法)、象牙質レジンコーティングだ。YouTubeで公開されている前半部分で扱われるのは、主に1つ目の接着レジンセメントの話である。講師はその前置きとして、有機化合物と無機化合物の違いを確認する。金属やセラミックスは無機、コンポジットレジンはレジンの部分が有機でフィラーが無機、エナメル質や象牙質は無機成分を多く含みながら有機成分も含む複合体だ。そして接着性レジンセメントは有機化合物に分類される。有機どうしをつなぐのは比較的簡単だが、接着の相手は金属やセラミックスといった無機であることが多い。割れた茶碗を家で接着して直そうとするか、と講師は問いかける。それでも診療室では、欠けた陶材焼付冠を直してほしいという要求が来る。だからこそ有機と無機を橋渡しする術式が要る、というのが講師の説明だ。その橋渡し役が、接着性モノマー、メタルプライマー、シランカップリング剤である。講師によれば、いずれもレジン側に絡みつく部分と、無機の相手にくっつく部分を持ち、後者の形の違いで呼び名が分かれる。何を塗るかは、材料で決まるスライドには、接着レジンセメントで装着する場合の冠内面処理材が整理されている。ノンシリカ系(酸化物系)のジルコニアを使ったフルジルコニアクラウンにはMDPやホスホン酸系モノマー。シリカ系の二ケイ酸リチウムのクラウンにはシランカップリング剤。ハイブリッドレジンはコンポジットレジンにシリカのフィラーが入っているので、CAD/CAM冠にもシランカップリング剤を使う、と講師は言う。歯質側の処理は、エッチング、プライミング、ボンディングの3つの要素からなる。かつてはこれを別々の液で3回行うスリーステップだったが、術者の失敗や時間、患者の負担を減らすために2ステップ、1ステップへと簡略化されてきた。講師は、いまは1ステップが主流になっていると見ている。試適した内面は、必ず汚れているCAD/CAM冠の症例で、講師は装着の流れを示す。仮着していたプロビジョナルを外して清掃し、出来上がった冠を試適してから装着する。この試適で内面は汚染されるので、どう清掃するかが接着をうまく使うポイントになる。スライドで示されるのは、MDPを配合したクリーニング剤を内面に塗ってこすり、水洗・乾燥で汚れを流してから、シランカップリング剤を塗る手順だ。ジルコニアの接着ブリッジでも、講師は同じ問いを立てる。試適後の汚染除去は、装着直前のアルミナサンドブラスト処理が第1選択。サンドブラストが使えない環境なら、クリーニング剤を使って水洗・乾燥する。ラミネートベニアについても、第1選択はサンドブラストで、次にクリーニング剤、それもなければリン酸エッチング材のリン酸を流用する方法が考えられる、と講師は言う。まとめのスライドでは、ジルコニアへのMDP処理に「厚塗り厳禁」と添えられている。編集部の読みとして、この講義で「試適後」が強調されるのは、試適が適合を確かめる工程であると同時に、接着面を汚す工程でもあるからだ。確認のための一手間が、そのままでは接着の阻害因子になる。ベニアと接着ブリッジの装着手順ラミネートベニアの試適では、主に適合を確認する。爪のような形のものなので、この段階で咬合を確かめるのは難しい、と講師は言う。支台歯形成はエナメル質内にとどめるのが基本なので、歯面にはリン酸エッチングが効く。隣の歯に余剰セメントが付かないようストリップスで保護し、気泡が入らないようセメントを一方向から押し込んで正しい位置に圧接する。スライドの手順では、はみ出した余剰セメントを綿球や小筆、マイクロブラシで除去し、ベニアの中央部に3〜5秒の仮照射をして位置を仮固定する。この段階では簡単に外れるほどの強度しかないので、隣接面のセメントをフロスで取るときは引き抜き方に注意が要る、と講師は念を押す。余剰セメントを除いたら、ベニア表面を切縁、中央部から歯頸部、近心部、遠心部の4つに分け、それぞれ10秒ずつ光照射する。ベニアは基本的に咬合接触がないように作るが、干渉がないかは最後に確認する。ジルコニアの接着ブリッジでは、講師はリン酸処理の範囲に触れる。形成した部分だけを処理すればよいと考えがちだが、スライドでは、装着面に加えて隣接部を少し越えた舌側まで処理範囲が塗られている。さらに、唇側の鼓形空隙からも接着レジンセメントを押し込むと、セメントが補綴装置を両側から挟み込むように保持し、脱落のリスクが一気に下がるように実感している、と講師は言う。これは講師自身の実感として語られている。光照射は重合収縮に配慮し、唇側と舌側からそれぞれ10秒、1つの支台装置につき合計40秒以上、というのがスライドの指示だ。光を当てても、裏側には届かないまとめのスライドは、確実な接着操作のためのリスクを2段階に分けている。ハイリスクは唾液・血液の混入とブラキシズム。中程度のリスクは、呼気に含まれる水蒸気と、完全に重合するまでの固定だ。患者は装着中も呼吸しているので、呼気の水分が接着の阻害因子になりうる、と講師は言う。固定について、講師は、光照射をしたらもう大丈夫だと思う人が非常に多いと指摘する。しかし補綴装置の裏側には意外と光が届いておらず、化学重合による硬化が重要になる。全体で40秒照射しても、それで終わりではなく、しばらくしっかり押さえておくことで脱落のリスクをかなり減らせる、というのが講師の考えだ。脱落などの失敗のリスクファクターとして、スライドにはさらに、エナメル質形成不全や酸蝕症(接着力が発揮されず脱離の危険性が高い)、重度の摩耗症(ブラキシズム)や短縮歯列(荷重が高く破損の危険性が高い)が挙げられている。適応をよく勘案したうえで補綴装置を決めてほしい、と講師は言う。前半部分の最後には、CAD/CAM冠・インレーの話の入口として、保険の請求件数の推移を示すグラフが映る。パラジウム合金の全部金属冠が減り、CAD/CAM冠がシェアを伸ばしてきた、というのが講師の読みだ。グラフの数値は一次資料で照合していないため、本稿では載せない。本稿で扱わないこと講師の名前と所属、スライドや動画に出てくる製品名は扱っていない。自動字幕で聞き取りが不確かだった部分、スライドで確認できなかった待ち時間などの数値も採っていない。光照射の秒数や処理範囲はスライドに基づく講師の方法であり、製品ごとの指示や添付文書では照合していない。本稿は講義内容の整理であり、実際の材料選択や装着手順は、各製品の指示と各自の判断に基づいて行ってほしい。元動画を見る【CAD/CAM】補綴物・修復物セットに欠かせないポイント(2024年4月10日公開)このミニセミナーはセミナーの前半部分です。続きは1Dプレミアムで視聴できます。
1D編集部
2日前
【ミニセミナーを覗く】「中間サイズのファイルは遠回り」と思っていませんか?――#10から#15で先端径は1.5倍

【ミニセミナーを覗く】「中間サイズのファイルは遠回り」と思っていませんか?――#10から#15で先端径は1.5倍

根管内に折れたファイルが残ったとき、どう取り出すか。そこに関心が向きがちだが、1Dの「25分間」ミニセミナー「【根管内異物】トラブル回避と除去のコツ、教えます」で、講師が最初に時間を割くのは、折らないための話だ。その中で講師が示すのが、スライドの表にある数字である。#10のKファイルから#15へ進むと、先端径は0.10mmから0.15mmへと50%増える。間に#12を挟めば、#15へ進むときの増加は25%で済む。中間サイズのファイルを使うと手順は増えるが、講師はこれを「急がば回れ」と表現する。本稿では、スライドと自動字幕で確認できた範囲で、講師の主張と編集部の解釈を分けて整理する。除去の話の前に、「起こさない」を置く講師は講義の内容を5つに分けて示す。器具破折の発生原因とその予防、根管内異物を除去すべきか否か、除去の方法、除去後の根管充填、そしてファイル以外の異物とその除去方法だ。根管内異物の除去は偶発症への対応であり、まずそれを起こさないことが一番重要になる、というのが、この順番の理由だと講師は説明する。予防の話はさらに4つに分かれる。使用するステンレスファイルの選択、Ni-Tiロータリーファイルとモーターの選択、複雑な根管形態へのアクセス、超音波洗浄用チップの使い方である。YouTubeで公開されている前半部分で扱われるのは、このうち予防と、除去すべきか否かの判断の途中までだ。Hファイルと、伸びて曲がったファイルステンレスファイルについて、講師がまず挙げる原因はHファイルの使用だ。Hファイルは切削効率がよい一方で、根管壁に食い込みやすい。食い込んだ状態でリーミングの動きをしてしまうと、根管内で破折が起きる。そのため予防としては、Hファイルを使わず、リーミングとファイリングの両方ができるKファイルを使うことが推奨される、と講師は言う。それでもHファイルを使いたいなら、#10や#15のような細い段階では使わず、ある程度拡大した後、たとえば#30前後以降で使うといった配慮が要る、というのが講師の補足だ。2つ目の原因は、伸びて曲がったファイルの使用である。講師は、ファイルを滅菌して使い続けるうちに、スライドの写真のように伸びて曲がったファイルを使ってしまうことも多いのではないか、と指摘する。無理をすると、ちょうど伸びた中央のあたりで破断する。できる限り新しいファイルを使い、それが難しくても、使う前に曲がりや伸びがないかを必ず確認する必要がある、と講師は言う。#10から#15で先端径は1.5倍――中間サイズのファイル3つ目が、本稿のタイトルに置いた中間サイズのKファイルだ。通常のKファイルは#10、#15、#20と5刻みで並ぶが、その間を埋める#12、#17、#22といった番手のファイルがある。スライドには用途として下顎前歯、狭窄根管、緩やかな湾曲根管が挙げられており、講師はこうした場面で特にこれを使うことを勧める。理由として講師が示すのが、番手ごとの先端径と増加率の表だ。#10から#15へ進むと、先端径は0.10mmから0.15mmになり、前の番手から50%増える。その先も#20で33%、#25で25%、#30で20%と、よく使う#40までの範囲では、前の番手からの増加率が大きい。講師によれば、一度にそれだけ太いファイルを入れることになるので、根管から逸脱しやすく、レッジを作ったり、無理な力がかかったりしやすい。一方、#10と#15の間に#12を入れれば、#15へ進むときの増加率は25%で済む。表の右側、中間サイズを挟んだ並びでは、#15より先の増加率がおおむね6〜18%に収まっている(表の数値は、先端径どうしの比で編集部も計算して確かめた)。前に使ったファイルに近い太さで少しずつ拡大していけるので、過度な力をかけずに済み、レッジなどが起きにくくなり、ファイル破折のリスクも下げられる、と講師は言う。講師は、拡大のステップが増えて時間がかかるのではないか、という反論も想定している。ファイルの使用本数は確かに増える。しかし、レッジやファイル破折が起きるリスクを下げられるので、結果的には治療の効率も、患者からの信頼も上がるのではないか、というのが講師の答えだ。「急がば回れ」という言葉が使われるのはここである。Ni-Tiロータリーは、ファイルとモーターとアクセスで選ぶNi-Tiロータリーファイルについて、講師は、従来型は破折しやすい構造だったと説明する。断面の中心と回転の中心が一致し、同じ半径の位置で刃が根管壁に食い込む。切削効率は上がるが、食い込んで大きなトルクがかかると、そこを破断点として折れる。これに対し最近は、断面の中心を回転の中心からずらしたオフセットデザインや、ラジアルランドと呼ばれる形状のファイルが出ており、根管壁への接触箇所を減らして破折しにくくしている。講師はこうしたファイルへの切り替えを1つの選択肢として挙げる。接触箇所が減る分、Ni-Tiロータリーの中では切削効率はやや下がるが、手用ファイルより拡大形成は速い、という留保も添える。モーターについては、まず、各メーカーがファイルとの組み合わせで設定しているトルクや回転数を忠実に守ること。過剰に与えると破折の原因になる。そのうえで、食い込みすぎると逆回転するトルクリミット機能を持つモーターや、正逆の往復回転で動かすモーターを選ぶことが、破折の防止につながる、と講師は言う。また、Ni-Tiロータリーでも上下に動かすペッキングの動作が要るので、開口量が狭く十分にペッキングできない患者では、モーターはあまり使わないほうがよいのではないか、というのが講師の考えだ。複雑な根管形態では、湾曲・屈曲根管が典型的な原因になる。講師は、一度根管治療された歯で、屈曲部から先が触られていないまま根尖部に病変がある症例のエックス線写真を示す。このまま無理に処置するとファイルを折りやすい。そこで、歯科用CBCTで根管形態を3方向から確認し、立体的なイメージを持つことが非常に重要だと講師は言う。再根管治療では途中にレッジができていて根尖付近まで通しにくいことが多く、手用ファイルで無理に通そうとすると、その中で折れる。根尖方向へ通すための専用ファイルや、グライドパス用のNi-Tiロータリーファイルを取り入れることも予防策として挙げられる。超音波チップは、周波数と「上下に動かす」最後が超音波洗浄用チップだ。講師は、根管洗浄に超音波を使う歯科医師が増えていると見たうえで、チップも使い方を守らなければ破折すると注意を促す。まず、装置ごとに推奨される周波数などの設定に必ず従うこと。設定を上げてしまうと、あっという間に破断する。チップは先端側で折れるほど除去が難しくなる。もう1つは、チップを少し上下に動かすことだ。一か所に置いたままにすると、そこにエネルギーが集中して破折しやすい。少し上下させることで先端へのエネルギーの集中を防げ、洗浄効果も上がる、と講師は動画を示しながら説明する。講師は予防の話をこう締めくくる。どれだけ忠実に行っても、ファイルが絶対に折れないという保証はない。誰もわざと折るわけではないが、起きれば患者との信頼関係にも影響する。だからこそ、適切な使用方法と根管形成の基本に忠実であることが大事だ、という。折れたら取るべきか――6つの判断材料それでも折れてしまったとき、あるいは他院で折れたファイルが残った患者が来たとき、本当に除去すべきか。講師はその判断材料として6項目を挙げる。術者の技術、炎症の有無、ファイルが破折したタイミング、破折部位、偶発症のリスク、患者要因だ。術者の技術について講師は、知識と技術と経験から、自分が除去できるかを判断する必要があると言う。無理なら専門の歯科医師への依頼を考える。また、根管内異物の除去にはマイクロスコープがないと厳しいのではないか、除去に使う器具類が揃っているか、も判断材料になる。炎症の有無では、右上4番の根管内に異物がある症例が示される。根尖部相当に圧痛があり、垂直打診痛もある。歯周病由来の可能性も考えられるが、こうした条件からは根管内の感染が原因と考えられ、異物を除去する必要性が出てくるのではないか、と講師は言う。破折のタイミングについては、抜髄の途中で折れた場合は残髄につながる状況も考えられるので除去すべきだが、ある程度抜髄ができて根管形成の段階で折れた場合は、除去しないという選択もありうるかもしれない、という。前半部分で説明されるのはここまでで、残りの3項目と、実際の除去方法、除去後の根管充填、ファイル以外の異物の話は続きにあたる。編集部の読みとして、この講義で中間サイズのファイルが目を引くのは、破折を「運が悪かった」で片づけず、拡大のたびに先端径が何割増えるかという数字に置き換えている点だ。遠回りに見える手順が、何を減らしているのかが表で見える。本稿で扱わないこと講師の名前と所属、スライドや動画に出てくる製品名・メーカー名は扱っていない。自動字幕で聞き取りが不確かだった部分も採っていない。先端径と増加率はスライドの表に基づくもので、規格の原典では照合していない。本稿は講義内容の整理であり、個々の症例での器具の選択や除去の判断は、診査の結果と各自の判断に基づいて行ってほしい。元動画を見る【根管内異物】トラブル回避と除去のコツ、教えます(2024年4月4日公開)このミニセミナーはセミナーの前半部分です。続きは1Dプレミアムで視聴できます。
1D編集部
2026年11月5日
【ミニセミナーを覗く】「色がついたところを削れば咬合調整」と思っていませんか?――講師が最初に置く「足せない・戻せない」

【ミニセミナーを覗く】「色がついたところを削れば咬合調整」と思っていませんか?――講師が最初に置く「足せない・戻せない」

咬合紙で色がついたところを削って落とせば、咬合調整は終わる。そう考えたことのある歯科医師は少なくないのではないか。1Dの「25分間」ミニセミナー「【咬合調整】咬合の基礎知識と削合のポイント」で、講師はこの講義を「咬合アレルギー」のある歯科医師に向けたものだと位置づけ、全顎やフルマウスではなく、1本の歯をきちんと調整できることを目的に掲げる。そのうえで最初に置くのが、削合についての3つの前提だ。本稿では、スライドと自動字幕で確認できた範囲で、講師の主張・経験と編集部の解釈を分けて整理する。削合は「足せない」「戻せない」「相手を選ぶ」講師が挙げる1つ目の前提は、削合は歯を削るだけで、足すことができないという点だ。足して合わせたいなら、クラウンごとやり替えるか、それこそフルマウスで治療することになる。だから削合による調整は限定的なものだと分かっていなければならない、と講師は言う。2つ目は、後戻りができないこと。削るだけなので、患者から元の状態に戻してほしいと言われても戻せない。色がついたところだけを単純に調整していくのは結構怖いことになる。ここが邪魔だと分かったうえで、そこを狙って調整することが大事だ、と講師は話す。3つ目は、意外にも相手を選ぶということだ。どんな調整をしても気になって仕方がない人もいる。講師はこれを、車幅と道路の幅にたとえる。道幅が広ければ、クランクがあっても余裕を持って通れる。しかし道幅が狭いと、すぐに脱輪してしまう。この人は大丈夫かと相手をよく見たうえで行い、やりすぎればそれはそれで戻せないので、どこでやめるかがすごく大事になる、と講師は言う。顎を動かす筋肉と、ブレーキ役の筋肉講師は、咬合の基礎知識として、まず顎の運動に関わる筋肉を整理する。口を開けるときは、外側翼突筋が顎を前に出し、顎二腹筋の前腹などが後ろに引く。閉じるときは側頭筋、咬筋、内側翼突筋が締める。側方運動や前方運動、後方への運動でも、それぞれ主に働く筋肉がある。大まかに言えば、前に出るときは外側翼突筋、後ろに引くときは側頭筋だと考えるとよい、と講師は説明する。講師が付け加えるのが、拮抗筋の働きだ。主に動かす筋肉だけでは動きが急になりすぎるので、ブレーキをかけながら動くようになっている。そのため、たとえば閉じる動きのときにトラブルがあれば、緊張が出るのは主に動かしている筋肉とは限らず、拮抗筋の側に出る可能性もある。これを頭の片隅に置いておいてほしい、と講師は言う。後で触れる触診の話につながる前置きだ。第一大臼歯の形を、自分の手で描いて覚える次に講師が「すごく大事」とするのが、歯の解剖学的形態、とりわけ咬合面形態だ。中でも第一大臼歯は鍵となる歯で、これが理解できると他の歯も理解しやすい、として、講師は上下の第一大臼歯に絞って説明する。上顎第一大臼歯では咬頭頂の位置と隆線、いちばん深い窩、そこから伸びる溝。講師は、この溝が深いことを理解し、ここに対合歯が入るイメージを持っておくよう促す。下顎第一大臼歯では、隆線がないと思われがちな中央付近を、くぼんだ状態としてイメージしておくこと。上顎の咬頭がそこに入り、上が杵、下が臼のような関係になる、と講師はたとえる。溝の走り方には個人差があり、Y字型が多いが、十字型やX型の人もいる。第二大臼歯では十字型が多い、というのが講師の示すおおまかなイメージだ。調整のときに大事になるので覚えておいてほしい、と講師は言う。形態をどう覚えるかについて、講師の答えは単純だ。描いて覚えた、という。最初に描いた第一大臼歯の絵はひどいものだったと自身の絵を見せ、教科書や模型を見ながら10枚描くだけでも違い、100枚描けば周りと比べて大きな差になるはずだ、と話す。これが分かっていないとダイレクトボンディングなどもできない、とも講師は付け加える(講師の挙げる参考書籍の名前は本稿では扱わない)。咬合様式は「どこで当たっているか」の分類講師は咬合様式についても簡単に触れる。上下の歯がまっすぐ当たった状態から顎をずらしたときに、どのように当たっているかを分類したものだ、と講師は説明する。作業側で犬歯だけが当たるのか、犬歯も奥歯も当たるのか、奥歯だけなのか。作業側で当たっているときに、反対側も当たっているのか。上下のどちらの機能咬頭が当たっているのか。こうした分類がある、という。講師は、こうした当たり方が咀嚼運動に深く関わること、咀嚼のときの顎の動きは複雑で、限界運動の範囲では現れない動きがあることにも触れる。ただし今回の講義は1本の臼歯の干渉を取る話なので、ガイドの話や咀嚼運動に合わせた調整は扱わない、と線を引いている。削る前の審査――問診、動画、触診、セントリック講義の後半で講師が示すのは、自身が臨床で行っている咬合の審査だ。まず問診では、しみるのか、歯肉が腫れているのか、割れたのかといった現状を聞き、それがいつからなのかを時系列でたどる。咬合と全身の関係が疑われる訴え、たとえば肩こりがある場合も、それがブリッジを入れた後からなのか、それ以前からなのか、永久歯列が完成したころからなのかを整理しておくと、本当に咬合から来ているのかが分かってくる、と講師は言う。口腔内では骨隆起やすり減り、咬合関係を見る。講師が勧めるのが、顎の動きの動画撮影だ。顎運動の計測機器を使わなくても、正面から動画を撮れば、動きの偏りや速さの違いが比べられる。咬合の治療に入り込むときは、必ず治療前に撮り、終わった後と比べて評価する。良くなっていれば、治療がうまくいったというフィードバックが得られる、と講師は説明する。触診では、咬筋、側頭筋、耳の後ろのあたり、首を横に倒す筋肉などを触る。講師の医院では項目を簡略化しているという。講師が説明する触診の目的の1つは、治療の前の感触を患者自身に感じてもらい、終わった後に軽くなっていることを感じてもらうことだ。最後にセントリックのずれを見る。開け閉めのスタート地点がずれていれば、動き出しから無理がかかる。講師はこれを、陸上の短距離走で自分のレーンだけ少しずれた位置からスタートさせられる状況にたとえる。何度も繰り返せば、足をくじきそうになる、というわけだ。講師は、下顎をリラックスさせた状態で上の歯を前に出すように促すと下顎が下がり、その位置で噛ませる、という簡便な取り方を紹介している。編集部の解釈としては、講師が「1本の歯をきちんと調整する」話の前に、これだけの準備を置いていること自体が、冒頭の問いへの答えになっている。色がついたところは、削る候補の1つにすぎない。足せず、戻せないからこそ、どこが本当に邪魔なのかを確かめてから削る、ということだ。本稿で扱わないこと講師の名前と所属、講師が紹介する参考書籍・セミナー・オンラインサロン・動画チャンネルの名前、講師が挙げる人物名は扱っていない。自動字幕で聞き取りが不確かだった部分も採っていない。実際の削合の手順とテクニックは、YouTubeで公開されている前半部分には含まれていない。本稿は講義内容の整理であり、個々の患者の咬合調整は、診査の結果と各自の判断に基づいて行ってほしい。元動画を見る【咬合調整】咬合の基礎知識と削合のポイント(2024年4月2日公開)このミニセミナーはセミナーの前半部分です。続きは1Dプレミアムで視聴できます。
1D編集部
2026年11月4日

おすすめセミナー

関連用語

掲載情報について

1D(ワンディー)は、歯科医師・歯科衛生士・歯科技工士向けの情報が集まる、日本最大級の専門メディアです。

トップレベルの臨床家・研究者からオンラインで学べる「歯科セミナー」や、臨床・経営・ライフスタイルの最新情報が収集できる「歯科ニュース」など、多彩な歯科医療コンテンツを配信しています。

本サイトは、歯科医療関係者(歯科医師・歯科衛生士・歯科技工士・歯科助手・歯科学生等)を対象に、歯科医療の臨床・研究・経営等に関する情報を集約したものです。歯科医療関係者以外の一般の方に対する情報提供を目的としたものではないことをご了承ください。

また、本サイトで提供する情報について細心の注意を払っておりますが、内容の正確性・完全性・有用性等に関して保証するものではありません。詳細は利用規約をご覧ください。

1D - 歯科医師/歯科技師/歯科衛生士のセミナー視聴サービスなら
© 2026 1D inc.