【ミニセミナーを覗く】「ソケットリフトなら粘膜はドーム状に持ち上がる」と思っていませんか?――講師が描いたのは、教科書の図とは違う「湯呑み型」だった

【ミニセミナーを覗く】「ソケットリフトなら粘膜はドーム状に持ち上がる」と思っていませんか?――講師が描いたのは、教科書の図とは違う「湯呑み型」だった

1D編集部
2026年10月20日
歯槽頂からオステオトームで上顎洞底を押し上げると、粘膜はドームのように広く持ち上がる。教科書や雑誌によく描かれるこの図について、1Dの「25分間」ミニセミナー「サイナスリフト 症例選択と基本テクニックを超解説」の講師は「こんなふうには上がらない」と言い切る。実際には湯呑みのように細く持ち上がり、粘膜は常に張りつめている。だから移植材を詰めすぎない、上げすぎない。本稿では、この「湯呑み型」の話を軸に、窓を開ける位置や移植材の扱いについて講師が語った内容を、編集部の解釈と分けて整理する。

2つの術式と、使い分けの線

講師はまず、サイナスリフト(上顎洞底挙上術)を、上顎洞底の粘膜を剥離・挙上し、できたスペースに移植材を入れて、骨量の足りない上顎臼歯部にインプラントを埋入できるようにする処置と定義する。歯槽頂から入る方法はソケットリフトやオステオトームテクニックとも呼ばれ、もう一方は上顎洞の前壁に窓を開けるラテラル法(側方開窓法)だ。編集部が確認したところ、側壁を開窓して移植する方法の報告として1980年のBoyneとJames(J Oral Surg 38巻)、歯槽頂からオステオトームで挙上する方法として1994年のSummers(Compendium 15巻)が文献データベースに収載されている。
使い分けについて、スライドは歯槽頂テクニックを既存骨高径5mm以上、側方開窓テクニックを4mm以下に適用するとしている。この線引きは、同じ講師のセミナーを紹介した1Dの過去記事「サイナスリフトの基礎知識と起こり得る偶発症」でも取り上げている。根拠の1つとして、編集部はオステオトームに骨移植材を併用する方法の多施設後ろ向き研究(Rosenら、Int J Oral Maxillofac Implants 1999年14巻)の要旨を確認した。101人174本で、治療前の骨の高さが5mm以上なら残存率は96%以上、4mm以下では85.7%だった。短期の後ろ向き研究で、器具や移植材は施設ごとに異なる点には注意したい。

窓を開ける位置は、骨の厚さと隔壁で決める

講義の前半を占めるのは上顎洞の解剖で、そこから講師が引き出すのは「どこに窓を開けるか」という実践的な判断だ。スライドには、側壁の骨の厚さは1〜2mmで、もっとも厚いのは第一大臼歯から第二大臼歯の上あたりと示される。講師によれば、骨が薄ければすぐに上顎洞粘膜が透けて見えて開窓しやすいが、厚いところでは粘膜が確認しにくく、そのまま削り進めて穿孔させてしまうことがある。後方には動脈が走る領域もあるため、できれば前方寄りで開窓する方が安全でやりやすい、というのが講師の勧めだ。
もう1つの判断材料が隔壁である。スライドには、隔壁は主に第二小臼歯から第一大臼歯の間に見られることが多いと書かれている。講師は、隔壁があると窓を2つ開けなければならないこともあり、粘膜を剥がすときには隔壁の頂上で破れやすいと注意する。CTで隔壁の位置と高さを確かめてから開窓の位置を決める、という順序が大切だという。講師はあわせて、上顎洞底は鼻腔底より下がっていることが多く、パノラマ上で別の骨の影を洞底と取り違えると、骨があるつもりで埋入して洞内に突き出してしまう、と診断の落とし穴にも触れる。

教科書の図のようには上がらない、「湯呑み型」の粘膜

上顎洞粘膜(シュナイダー膜)は、スライドにあるとおり上皮・粘膜固有層・骨膜からなる。講師は、骨膜に骨を作る細胞があるからこそ、挙上してできたスペースに骨ができてくると説明する一方、鼻の粘膜と同様の構造でありながら弱く薄く破れやすい、とも言う。
そのうえで講師が警告として語るのが、ソケットリフトでの粘膜の上がり方だ。オステオトームで押し上げた粘膜は、教科書の図のように幅広いドーム状には上がらず、湯呑み茶碗のような形で細く持ち上がる。講師はスライド上にその形を手書きで描いて示す。こう上がると粘膜は常に緊張しているので、移植材を入れては押し込むことを繰り返すうちに、だんだん薄くなって破れてしまうことがある。そこにインプラントを埋入すれば、さらに破ける可能性も出てくる。講師の結論は「詰めすぎない、上げすぎない」だ。どこまで上がるかについて、講師は既存骨の高さと同じくらいしか上がらないと言われている、と紹介するが、これは講師が挙げる目安であり、編集部は原典を確認していない。
編集部の解釈を添えると、ドーム状の図を前提にすると「まだ入る」と感じて移植材を足したくなる。湯呑み型を前提にすれば、押し上げるほど余裕がなくなっていく、という逆の感覚で手を止められる。術者の頭の中にある図そのものを置き換える話として読める。

生着しない最大の原因は、既存骨に残った移植材

講師がインプラントが生着しない最大の原因として挙げるのも、ソケットリフトの手順に関わる。本来インテグレーションさせたいのは、元からある自分の骨の部分だ。そこに移植材のかけらが付いたまま埋入すると、時間が経ってもくっついていないことがある。だから、既存骨だった部分に移植材が付いていないことを確かめてから埋入する、と講師は言う。
移植材そのものについて、スライドは自家骨・他家骨・人工骨を単独または混合で使え、移植材料の違いによる成績は不明としている。講師自身は、腸骨の採取は患者の負担が大きく、顔面の骨とは骨のでき方も違うとして勧めず、患者の負担を考えれば人工骨を使うのが一番よいのではないか、という考えを示す。これは講師の見解として受け取ってほしい。

本稿で扱わないこと

講師は上顎洞の容積や移植量、隔壁の出現率、粘膜の厚さ、線毛運動の速さ、トラップドアの扱いと粘膜穿孔の関係を示す論文、手術の成功率などにも触れるが、スライドで確認できない数値や、原典を確認できていない報告は扱わない。抜歯後に上顎洞が拡大していくことから、抜歯が必要なら骨が吸収する前にインプラントを検討したいという講師の考えや、上顎洞と歯根の位置関係の分類、合併症への対処は、セミナーの続きで扱われる。手術の適応や術式の選択は、個々の症例の検査結果と最新の文献にもとづいて判断してほしい。

元動画を見る

このミニセミナーはセミナーの前半部分です。続きは1Dプレミアムで視聴できます。
1D編集部
著者/監修者
1D編集部

1D編集部は、臨床経験のある歯科医師・歯科衛生士・歯科技工士で構成されています。歯科業界の最新ニュースから歯科医療の臨床・学術情報、歯科医療者のためのライフスタイル記事まで、歯科医療の専門家の視点で、ただしく・おもしろいコンテンツをお届けします。

1Dプレミアム
1Dプレミアム

関連ニュース

【ミニセミナーを覗く】「ソケットリフトなら粘膜はドーム状に持ち上がる」と思っていませんか?――講師が描いたのは、教科書の図とは違う「湯呑み型」だった

【ミニセミナーを覗く】「ソケットリフトなら粘膜はドーム状に持ち上がる」と思っていませんか?――講師が描いたのは、教科書の図とは違う「湯呑み型」だった

歯槽頂からオステオトームで上顎洞底を押し上げると、粘膜はドームのように広く持ち上がる。教科書や雑誌によく描かれるこの図について、1Dの「25分間」ミニセミナー「サイナスリフト 症例選択と基本テクニックを超解説」の講師は「こんなふうには上がらない」と言い切る。実際には湯呑みのように細く持ち上がり、粘膜は常に張りつめている。だから移植材を詰めすぎない、上げすぎない。本稿では、この「湯呑み型」の話を軸に、窓を開ける位置や移植材の扱いについて講師が語った内容を、編集部の解釈と分けて整理する。2つの術式と、使い分けの線講師はまず、サイナスリフト(上顎洞底挙上術)を、上顎洞底の粘膜を剥離・挙上し、できたスペースに移植材を入れて、骨量の足りない上顎臼歯部にインプラントを埋入できるようにする処置と定義する。歯槽頂から入る方法はソケットリフトやオステオトームテクニックとも呼ばれ、もう一方は上顎洞の前壁に窓を開けるラテラル法(側方開窓法)だ。編集部が確認したところ、側壁を開窓して移植する方法の報告として1980年のBoyneとJames(J Oral Surg 38巻)、歯槽頂からオステオトームで挙上する方法として1994年のSummers(Compendium 15巻)が文献データベースに収載されている。使い分けについて、スライドは歯槽頂テクニックを既存骨高径5mm以上、側方開窓テクニックを4mm以下に適用するとしている。この線引きは、同じ講師のセミナーを紹介した1Dの過去記事「サイナスリフトの基礎知識と起こり得る偶発症」でも取り上げている。根拠の1つとして、編集部はオステオトームに骨移植材を併用する方法の多施設後ろ向き研究(Rosenら、Int J Oral Maxillofac Implants 1999年14巻)の要旨を確認した。101人174本で、治療前の骨の高さが5mm以上なら残存率は96%以上、4mm以下では85.7%だった。短期の後ろ向き研究で、器具や移植材は施設ごとに異なる点には注意したい。窓を開ける位置は、骨の厚さと隔壁で決める講義の前半を占めるのは上顎洞の解剖で、そこから講師が引き出すのは「どこに窓を開けるか」という実践的な判断だ。スライドには、側壁の骨の厚さは1〜2mmで、もっとも厚いのは第一大臼歯から第二大臼歯の上あたりと示される。講師によれば、骨が薄ければすぐに上顎洞粘膜が透けて見えて開窓しやすいが、厚いところでは粘膜が確認しにくく、そのまま削り進めて穿孔させてしまうことがある。後方には動脈が走る領域もあるため、できれば前方寄りで開窓する方が安全でやりやすい、というのが講師の勧めだ。もう1つの判断材料が隔壁である。スライドには、隔壁は主に第二小臼歯から第一大臼歯の間に見られることが多いと書かれている。講師は、隔壁があると窓を2つ開けなければならないこともあり、粘膜を剥がすときには隔壁の頂上で破れやすいと注意する。CTで隔壁の位置と高さを確かめてから開窓の位置を決める、という順序が大切だという。講師はあわせて、上顎洞底は鼻腔底より下がっていることが多く、パノラマ上で別の骨の影を洞底と取り違えると、骨があるつもりで埋入して洞内に突き出してしまう、と診断の落とし穴にも触れる。教科書の図のようには上がらない、「湯呑み型」の粘膜上顎洞粘膜(シュナイダー膜)は、スライドにあるとおり上皮・粘膜固有層・骨膜からなる。講師は、骨膜に骨を作る細胞があるからこそ、挙上してできたスペースに骨ができてくると説明する一方、鼻の粘膜と同様の構造でありながら弱く薄く破れやすい、とも言う。そのうえで講師が警告として語るのが、ソケットリフトでの粘膜の上がり方だ。オステオトームで押し上げた粘膜は、教科書の図のように幅広いドーム状には上がらず、湯呑み茶碗のような形で細く持ち上がる。講師はスライド上にその形を手書きで描いて示す。こう上がると粘膜は常に緊張しているので、移植材を入れては押し込むことを繰り返すうちに、だんだん薄くなって破れてしまうことがある。そこにインプラントを埋入すれば、さらに破ける可能性も出てくる。講師の結論は「詰めすぎない、上げすぎない」だ。どこまで上がるかについて、講師は既存骨の高さと同じくらいしか上がらないと言われている、と紹介するが、これは講師が挙げる目安であり、編集部は原典を確認していない。編集部の解釈を添えると、ドーム状の図を前提にすると「まだ入る」と感じて移植材を足したくなる。湯呑み型を前提にすれば、押し上げるほど余裕がなくなっていく、という逆の感覚で手を止められる。術者の頭の中にある図そのものを置き換える話として読める。生着しない最大の原因は、既存骨に残った移植材講師がインプラントが生着しない最大の原因として挙げるのも、ソケットリフトの手順に関わる。本来インテグレーションさせたいのは、元からある自分の骨の部分だ。そこに移植材のかけらが付いたまま埋入すると、時間が経ってもくっついていないことがある。だから、既存骨だった部分に移植材が付いていないことを確かめてから埋入する、と講師は言う。移植材そのものについて、スライドは自家骨・他家骨・人工骨を単独または混合で使え、移植材料の違いによる成績は不明としている。講師自身は、腸骨の採取は患者の負担が大きく、顔面の骨とは骨のでき方も違うとして勧めず、患者の負担を考えれば人工骨を使うのが一番よいのではないか、という考えを示す。これは講師の見解として受け取ってほしい。本稿で扱わないこと講師は上顎洞の容積や移植量、隔壁の出現率、粘膜の厚さ、線毛運動の速さ、トラップドアの扱いと粘膜穿孔の関係を示す論文、手術の成功率などにも触れるが、スライドで確認できない数値や、原典を確認できていない報告は扱わない。抜歯後に上顎洞が拡大していくことから、抜歯が必要なら骨が吸収する前にインプラントを検討したいという講師の考えや、上顎洞と歯根の位置関係の分類、合併症への対処は、セミナーの続きで扱われる。手術の適応や術式の選択は、個々の症例の検査結果と最新の文献にもとづいて判断してほしい。元動画を見る【サイナスリフト】症例選択と基本テクニックを超解説(2023年12月15日公開)このミニセミナーはセミナーの前半部分です。続きは1Dプレミアムで視聴できます。
1D編集部
1時間前
【ミニセミナーを覗く】「回転が速いほどよく削れる」と思っていませんか?――40万回転のタービンと20万回転の5倍速、講師が分けたのは速さではなくトルクだった

【ミニセミナーを覗く】「回転が速いほどよく削れる」と思っていませんか?――40万回転のタービンと20万回転の5倍速、講師が分けたのは速さではなくトルクだった

エアタービンはおよそ毎分40万回転、5倍速コントラは毎分4万回転のモーターを5倍に増速して20万回転。1Dの「25分間」ミニセミナー「5倍速コントラ 何が良いの?形成のポイントは?」で講師が示すスライドの数字だけを並べると、速いのはタービンの方だ。それでも講師は、精密な形成で5倍速の出番が増えている理由を、回転数ではなく「トルク」で説明する。本稿では、講師が語った内容と、編集部の解釈とを分けて整理する。講師が最初に確かめる、「タービン」と「5倍速」の構造の違い講師は東京都練馬区で開業する歯科医師で、医院では保険診療も行っているが、自身はセラミック修復が診療の中心だと自己紹介する。卒業後はしばらく大学病院に残っていたといい、当時から5倍速コントラはあったものの、今のように誰もが使う環境ではなかったと振り返る。自身も最初はエアタービンと等速のコントラで毎日の治療をしていたという。今でもタービンを使わないわけではない、と講師ははっきり言う。そのうえで講師が聴き手に投げるのが、タービンと5倍速の構造の違いを明確に答えられるか、という問いだ。タービンという言葉はもともと水車のように、流体のエネルギーを羽根車の回転に変えるものを指す。歯科のエアタービンは、ユニットの先のコンプレッサーで作った圧縮空気がホースを通ってヘッドに届き、カップ状の羽根車に当たってバーを回す。講師はこの回転を「およそ40万回転」とし、30万〜50万回転と言われる中で40万回転前後が多い、と説明する。一方の5倍速コントラは、風で回るのではない。ユニット側のモーターが回り、その回転がシャフトとギアを通じてヘッドに伝わり、バーを直接回す。講師は、ハンドピースを差し込むときにうまくはまらず、少し回すとパチンと収まることがあるのは、モーター側とハンドピース側の羽根の位置が合っていないからだ、と身近な場面に引き寄せて説明する。メーカーの中には、ハンドピースよりモーターの方が重要だと言うところもあるほどだという。「5倍」はギアの比で生まれ、ヘッドの大きさとも引き換えになるなぜ5倍になるのか。講師の答えはギア比である。同じ大きさの歯車どうしなら、片方が1回転すればもう片方も1回転する。大きさ、つまり歯の数が違えば、大きい歯車が1回転する間に小さい歯車は何回も回る。これが増速だ。5倍速コントラでは、根元の大きな歯車の回転を先の小さな歯車に渡すことで、毎分4万回転のモーターの回転を5倍にし、20万回転を生んでいる。スライドにも「40,000 r/min × 5 → 200,000 r/min」と示される。ただ、ギアとシャフトという「物」を中に入れる以上、5倍速コントラのヘッドはどうしても大きくなる、と講師は言う。タービンは中を空気と水が通るだけで、重要なのはヘッドの羽根車なので、それ以外を小さく作れる。講師は、最後臼歯の遠心や親知らずの分割のように奥で使うことを想定して首を曲げた型も紹介しつつ、中に収める部品の大きさに制限されるため、こうした型では5倍に届かない増速比になっているものもある、と付け加える。速く回るタービンと、止まらない5倍速講師がこの回でいちばん強調するのが、トルクの違いである。トルクとは、ある軸のまわりに回転させようとする力のモーメントのことだ。スライドにはエアタービンと1:5コントラを並べて「TORQUE」と大きく書かれている。講師の例えは扇風機や風車だ。風で回っている羽根は、指でピタッと止められてしまう。風で回るタービンも同じ理屈で、負荷がかかると回転が落ちる。これに対して、モーターの回転がギアでそのまま伝わる5倍速は、ぐっと押し当てたぐらいで止まることはない。講師は、回転数はタービンの方が非常に速いが、力をかけてずんずん進んでいくのは5倍速の方だ、とまとめる。そこから講師は、使い分けの考え方を示す。大きく素早く削って切削効率を上げたいならタービン。一方、粘るような金属の除去などは、タービンでやると途中でパチパチとはぜたり、バーが噛んで止まったりしやすい。5倍速ならトルクがそのまま伝わり、止まることなく削れる。講師は特定の器具を一律に勧めているわけではなく、目的に応じて選び分けるという話として語っている。編集部の解釈を添えると、「回転数が高い=よく削れる」という見方は、負荷がかかったときに回転を保てるかという視点が抜けやすい。カタログの最高回転数だけで器具を比べる前に、何を、どれだけの力で削る場面なのかを先に考える、という順序の話として読める。精密な形成を崩すのは「発熱」と「軸ブレ」後半で講師は、切削器具の問題点として「発熱」と「軸ブレ」の2つを挙げる。スライドもこの2語だけを大きく示す。精密な切削では慎重にやらなければならないことが多く、削れば歯は少なからず熱を持つ。そして器具の軸がぶれることが、非常に大きな問題につながるという。講師が例に出すのは、上顎第一大臼歯の修復を依頼された症例だ。広い範囲にコンポジットレジンが詰められ、何度も欠けたり物が挟まったりするので何とかしてほしい、という相談だった。以前ならクラウンの形成をしていたと思う、と講師は言う。しかし材料や技工・接着の精度が上がった今は、歯質をできるだけ残す方針を取り、頬側の咬頭は落としつつ、隣の歯との距離が非常に近い部分も削りすぎないようにして、ジルコニアによる部分被覆の修復を選んだ。患者が金属を入れたくないと希望していたことも理由に挙がる。ここで講師が「ポイントは動画ではなくマージンライン」と念を押すのが印象的だ。余分なところを削らない形成は、全周を削るクラウンの形よりマージンラインが複雑になる。形成の線が波打つのは構わないが、その線自体ががたついていたり、チッピングしていたりすると、修復物がぴったり合うマージンはできず、すべてが台無しになる。だから器具や道具、テクニックが問われる。物自体がぶれたら意味がない、と講師は言う。発熱と軸ブレにどう対処するかの具体的な話は、セミナーの続きで扱われる。講師の立場と、本稿で扱わないこと講師は冒頭で、海外メーカーの5倍速コントラについて、時々PRなどに出ていると自ら断っている。セミナーの中でもメーカー名や製品の画像が登場するが、本稿では製品名・メーカー名は扱わず、構造と使い分けの考え方に絞った。また、セミナーで示される回転数や増速比は、講師がスライドで示した代表的な値である。実際の仕様は製品ごとに異なるため、使用する器具の数値は各製品の添付文書で確認してほしい。講義冒頭で示される小臼歯の症例は、使われた材料の説明が製品名とあわせて語られるため、本稿では取り上げていない。元動画を見る【5倍速コントラ】何が良いの?形成のポイントは?(2023年12月15日公開)このミニセミナーはセミナーの前半部分です。続きは1Dプレミアムで視聴できます。
1D編集部
1日前
【ミニセミナーを覗く】「患者は健康になりたいはず」と思っていませんか?――難しいTBIで講師が外した前提は、「望む」と「努力する」の違いだった

【ミニセミナーを覗く】「患者は健康になりたいはず」と思っていませんか?――難しいTBIで講師が外した前提は、「望む」と「努力する」の違いだった

何度伝えても歯を磨かない患者に、TBI(歯みがき指導)をどう続けるか。1Dの「25分間」ミニセミナー「ムズかしいTBIの攻略法とは?」で講師が最初に崩すのは、指導のテクニックではなく、指導する側の前提である。患者は誰でも健康でいたいと思っている。そこまではその通りだが、健康のための努力を惜しまないかと言えば、そうでもない。この2つを同じものとして扱うと、難しい患者ほど指導がこじれる、という見立てだ。本稿では、講師が語った内容と、編集部が補った確認・解釈とを分けて書く。「ハードモードなTBI」とはどんな場面か講師は、臨床に週3〜4日立ちながら、医院のシステムづくりやスタッフ教育の手伝い、講演の仕事もしていると自己紹介する。歯科衛生士向けの雑誌での10年間の連載を、2冊の本にまとめているという。この回のお題が「ハードモードなTBI」だ。講師が挙げる場面は具体的である。重度の歯周病なのに何度言っても磨かない患者。10歳で、来るたびに厚いプラークが付いている子ども。「難しくてね」とごまかす人、聞いているふりをする人、腕を組んで早く終わらないかという空気を出す人、歯みがきの話はいいから治療しろと怒り出す人、威圧的で攻撃的な人。1日に1人でもこういう患者に当たると、1週間ぐらい引きずることもある、と講師は言う。講師自身がいちばん苦手だというのは、何を言われているのかわからない場面だ。痛いはずのないミラーで「痛い」と言われる。前回はローリング法で磨けと言われた、と言われるが、そんな指導をするわけがない。院長の前でそれを言われるのが最悪だ、と笑いを交えて話す。毎回説明している歯ブラシの使い方に、初めて聞いたような反応が返ってくる。答えの出ない謎は、聞き流して次の患者へこうした謎に出会ったとき、講師は理由を真剣に考えるのをやめ、聞かなかったことにしてスルーすると言う。長い経験の中で、それが正解だと思っている、という。理由は2つ挙がる。考えても答えは出ないこと。そして、答えらしきものを導いたところで、それを説明すれば患者が納得するわけではないことだ。たとえば、ミラーの冷たさを痛みと感じたのかもしれないと推測できても、冷たさについて説明を始めたところで、患者が「なるほど」となるわけではない。講師は、新幹線の車内販売で、注文と違うお菓子を渡されて同行者3人で首をひねった、という旅先の話も添える。問いただすこともできるが、苦笑いして次に行く。ハードモードのときに大事なのは次に行くことで、聞き流す・スルーする・忘れるというのは、ハードモードのTBIの中で一番大事なことかもしれない、と講師はまとめる。健康でいたい人が、努力を惜しまないとは限らないそのうえで講師が確認するのが、冒頭の前提である。患者はみんな健康でいたいと思っている。これはイエスだ。だが、健康のための努力を惜しまないかと言えば、そうでもない。人はみな健康になりたいはずで、そのための努力をするべきだ、と考えてしまう歯科関係者は多い、と講師は言う。患者の側の例も挙がる。80歳だから歯みがきもお金のかかる治療もいらない、という人。たばこは死んでもやめない、という人。薬をたくさん飲んでまで長生きしたくない、という人。歯科の側が、年を取った今だからこそ頑張りましょうと熱く語ること自体は悪くないが、そこに患者のニーズがない、という指摘だ。講師は聴き手にも問いを向ける。患者には定期的なメンテナンスが大事だと言っているが、あなた自身は人間ドックに行っているか、自分の口のメンテナンスをきちんとしているか。思っていることと、言っていることと、やっていることは同じとは限らない。磨かない患者も、その意味では私たちと同じだ、というのが講師の論理である。「中の下でいい」患者には、深追いせずに気持ちよく帰すでは、健康は「中の下」でいいと考えている患者にはどうするか。講師の答えは、深追いしないことだ。「今日もお掃除しておきましょうね」と言って、気持ちよく帰ってもらう。数か月に1回の清掃で健康が保てるわけではないことは承知のうえだ、と講師は言う。それでも、行くたびにうるさく言われるのが嫌になり、メンテナンスに来なくなるほうが患者にとって良くない。通っていれば早期に見つけられるものもあるかもしれない。孫に口が臭いと言われたのをきっかけに、歯周病と言われたことを思い出し、ちゃんと磨こうと思う日が来るかもしれない。講師は、難しい患者ほどこちらの価値観を押し付けるとうまくいかないと言い、それぞれの患者が望む健康をサポートする、という言い方をする。1本も歯を失いたくない人もいれば、あと10年自分の歯で噛めればいいという人も、たばこはやめないという人もいる。その望みの範囲で、少しでも助言をしていく。編集部の解釈を添えると、これは「指導をあきらめる」話ではなく、通院が続くことを優先順位の上に置く判断と読める。どこまで踏み込むかは患者ごとの判断で、講師の経験に基づく考え方である。子どもの歯みがきは、何のためにするのか後半で講師が取り上げるのは、母親から受けることの多い質問だ。子どもが歯みがきをさせてくれない。逃げ回る子を押さえつけ、ギャン泣きの中で磨く。夜になるとお互いに嫌な時間になる。講師はここで、そもそも子どもに歯みがきをする必要がどこにあるのか、から見直そうと言い、WHOとFAOの報告書「食事・栄養・慢性疾患予防」(2003年)を示す。スライドには「口腔衛生とう蝕予防との明確な相関関係を示す強力な根拠はない」とあり、講師は、う蝕のリスクを高めるのは砂糖の量と頻度、下げるのはフッ化物の使用だと書かれている、と説明する。講師は1986年のWHOの見解にも触れているが、編集部では原典を確認できていないため、本稿では扱わない。この報告書(WHO Technical Report Series 916)について、編集部が巻末の根拠一覧で確かめた範囲では、う蝕のリスクを高める要因として遊離糖の「頻度と量」、下げる要因としてフッ化物が挙げられており、どちらも根拠の強さは最上位の「確実」に分類されている。一方、「良好な口腔衛生・プラークがないこと」は、歯周病のリスクを下げる要因として挙げられている。歯みがきが不要だという意味ではなく、う蝕に対して何が効くのかを分けて考える材料として読むのが妥当だろう。この先、子どもへの具体的な対応にどうつながるのかは、セミナーの続きで語られる。元動画を見る【歯科衛生士必見】ムズかしいTBIの攻略法とは?(2024年9月26日公開)このミニセミナーはセミナーの前半部分です。続きは1Dプレミアムで視聴できます。
1D編集部
2026年10月17日
「歯科助手はすぐ辞めるもの」で、また求人を出していませんか?――対談が先に整えたのは、入職1日目と、点数の付かない仕事の先

「歯科助手はすぐ辞めるもの」で、また求人を出していませんか?――対談が先に整えたのは、入職1日目と、点数の付かない仕事の先

歯科助手が定着しない、という悩みは珍しくない。1Dの対談動画「歯科助手の離職率を劇的に下げる新人教育の秘訣」は、聞き手の歯科医師の「歯科助手って、めっちゃ辞めない?」という一言から始まる。対談が離職の理由として挙げるのは、本人のやる気の問題だけではない。入ってすぐの教え方と、続けた先の見通しという、医院の側で用意できる2つの仕組みである。本稿では、出演者が語った内容と編集部の整理とを分けて書く。題名の「劇的に下げる」は動画の表現で、ここに挙げる方法で離職が減るという保証ではない。辞める理由は、入ってすぐと、続けた先にある聞き手は、自分が勤める医院の職場環境は良いと思っているが、それでも在籍中に歯科助手が何人も入れ替わったと話す。離職率が高いのは肌で感じている、という。組織の運営に携わっているもう一人の出演者が挙げるのは、入職前のイメージと実際の仕事のずれだ。白衣を着た華やかなイメージで入ってくるが、実際の仕事はそれとは違い、レセプト請求のような事務も含まれる、と言う。加えて、歯科助手の多くは特に強い志があって業界に入ってくるわけではなく、そういう人のマネジメントは難しい、とも話す。聞き手はトピックを2つに分ける。1つ目は、なんとなく入った人がすぐに辞めてしまうこと。未経験で業界がわからないのに、医院は忙しくて現場で教える余裕もない。2つ目は、続けても将来が見えにくいことである。2つ目から読む:歯科助手には「点数」が付かない順番を入れ替えて、先に2つ目を見ておく。この回で、医院経営の側から見て最も具体的なのがこの部分だからだ。聞き手は、一般の会社なら勤め続ければ昇給していくが、歯科助手は難しい、と問いかける。もう一人の出演者の答えは、構造の話だった。ベースアップはあってもそれほど大きな金額にはならない。歯科助手には算定がなく、アシストについても点数が付くわけではない。だから院長から見ると、歯科助手は院長の労力を減らしてくれる存在という文脈でしか収入に結びつかず、キャリアアップがしにくい、という説明である。聞き手も、売上を上げていなければ昇給にはつながらない、と言い換える。そのうえで出演者が示す出口が、患者への説明を担う役割だ。自費の治療や矯正、補綴について患者に説明する人がいれば院長にとって重宝されるし、院長はその時間を診療に充てられる、と言う。聞き手は、トリートメントコーディネーター(TC)を例に、歯科助手として入り、一定できるようになったらTCを目指す、という院内の道筋を用意すれば辞めないのではないか、とまとめる。ここには留保も付いている。出演者は、歯科医師や歯科衛生士の知識は使うべきで、その労力は治療や予防処置に充てるべきだとしたうえで、歯科助手には一定の知識を与えることが前提だと言う。聞き手も、「ジルコニアがいいですよ」と勧めることではなく、治療したことやこれから治療することを説明するのが大事だと念を押す。売り込み役を育てるという話ではない、と読むのが妥当だろう。1つ目に戻る:入職1日目で完結させる1つ目の、すぐに辞めてしまう問題について、もう一人の出演者が最初に挙げるのはマニュアルである。院長が消毒のやり方などを口頭で教え、その人が辞めてまた同じ話を繰り返す、というのはよくあることだと言う。一度、動画でも文書でもいいので作ってしまえばいい、という提案だ。ただし、何を載せるかが問題になる。聞き手は、歯科助手向けの分厚い仕事の本を「これ読んどいて」と渡しても読まないだろう、と話す。もう一人の出演者は、歯の本数のような知識は知らなくても大した話ではなく、実務で使うもの、つまり片付けと準備があればいいと言う。聞き手が一番最初に強く教えるのは、ここは汚い、ここはきれい、という区別だ。汚れたものを素手で触るのは本人のリスクになる、と理由を添える。清潔と不潔の扱いは医院ごとに違うので、細部まで共通にはできないが、基本の考え方は教えられる、という。教える形として対談が勧めるのは動画である。必要な知識だけを短く見せれば、教える側はいちいち付きっきりにならずに済み、本人もわからなくなったら何度でも見直せる。聞き手は、入職1日目を研修の時間にして、その1日で完結させましょう、と言う。教材の費用は医院が持つ聞き手がもう一つ強調するのが、教材を誰が負担するかである。参考書を自分で買うように言われることがあるが、働いている側からすれば、その日はマイナスになる。だから教材は医院で用意し、院長が時間を取って見せてほしい、そこは徹底してほしい、と話す。もう一人の出演者は、モチベーションがあれば自分から勉強していき、歯科衛生士学校に進む人も多いと言い、それを補助している医院もあると続ける。聞き手は、そういう流れが生まれるといい、と受け止めている。2つの仕組みを、求人の前に置いてみる編集部として整理すると、この回の2つのトピックは、時間軸の前と後ろにあたる。前は、入職1日目に何を、どの順番で、誰の負担で教えるか。後ろは、点数の付かない仕事を続けた先に、どんな役割と処遇があるか。どちらも、辞めた人の代わりを探す前に、医院の側で用意しておけるものである。1Dでは歯科衛生士の採用を、勤務の終わる時刻と昇給の道筋から考える記事も出している。歯科助手の場合は資格職ではない分、入口の教え方と、院内での役割の作り方がより直接に効いてくる、というのが対談から読み取れる違いだ。いずれも出演者の経験と見立てに基づく話で、自院にそのまま当てはまるとは限らない。元動画を見る歯科助手の離職率を劇的に下げる新人教育の秘訣(2025年5月15日公開)
1D編集部
2026年10月16日
「保険診療だから潰れない」と思っていませんか?――対談が挙げた倒れ方は、売上ではなく院長の手元から始まっていた

「保険診療だから潰れない」と思っていませんか?――対談が挙げた倒れ方は、売上ではなく院長の手元から始まっていた

歯科医院は安定した商売に見える。1Dの対談動画「歯科医院が倒産しないために今すぐやめるべき行動3選」でも、聞き手の歯科医師がまずそう口にする。ところが対談は、潰れる理由を患者の減少や景気には置かない。最後に画面にまとめられる3つは、無駄遣い、院長のスタンス、算定漏れだった。どれも院長が自分で変えられる側の話である。本稿では、出演者が語った内容と編集部の整理とを分けて書く。題名の「今すぐやめるべき」は動画の表現で、これだけで倒産を防げるという保証ではない。「売上の7割を国が払う商売」でも潰れる対談の入口は、歯科医院の数の話だ。聞き手は、新しく開業する医院より閉業する医院のほうが多くなっていると切り出す。歯科医師の動態や算定に詳しい出演者として紹介されるもう一人も、閉業が開業を上回るようになってきたと応じ、資金繰りに行き詰まって閉じる例もあると話す。動画では具体的な件数も挙がるが、本稿では一次資料と突き合わせていないため数字は載せない。そのうえで出演者が強調するのが、保険診療という仕組みの特徴である。売上の7割から全部を国が出してくれるビジネスモデルだ、と言う。楽勝とは言えないが、という前置き付きだ。聞き手はこれを、7割の中に原価が収まっていれば利益は出続けるということですよね、と言い直す。出演者は「処置によりますけどね」と留保する。編集部の言葉に直すと、この回の問いは「なぜ売れないのか」ではない。売上の多くが制度で支えられているのに、なぜ手元にお金が残らないのか、である。だから対談が挙げる原因は、出ていくお金と、取りこぼしているお金の両側に分かれていく。1つ目は無駄遣い、ただし「設備」と「人の置き方」の話1つ目の無駄遣いとして聞き手が挙げるのは、地域に合わない設備投資だ。むし歯がほとんどない人が集まる地域で、マイクロスコープやCTといった「三種の神器」をそろえる例を出す。無駄かどうかは人それぞれだが、と断りながらの指摘である。材料を使いすぎる話も出るが、1Dでは材料費の見直しを別の記事で扱っているので、ここでは触れるだけにしておく。対談がより時間を割くのは人の置き方だ。算定に詳しいもう一人の出演者は、自分が開業したら、と前置きして、アシストについても点数が付くわけではないと指摘する。治療の質を求めるならアシストを付けるのはいいが、経営的な観点だけで見れば、そのぶん別のユニットで予防をしているほうがいい、という見方だ。聞き手は、アシストがあれば歯科医師も楽で患者にも良いと認めたうえで、受付の自動応答や予約、自動精算機など、自動化できる部分は増えていると話を広げる。画面のまとめも「人件費というか、人の配置も考えましょう」「自動化できるところは自動化していこうよ」である。人を減らせという話ではない。誰をどこに置くと医院の収入につながるのかを、院長が一度は数えておく、という整理だと編集部は読んだ。2つ目は院長のスタンス2つ目は、人の問題を誰の問題として見るか、である。聞き手は、もう一人の出演者が先に「スタッフが悪い」と言ったことを受けて、院長側に原因があるケースも少なくないと切り返す。例に出るのは、スタッフが全員辞めてしまった医院の話だ。出演者は、その期間は点数も下がるし、最初からちゃんとしていれば全員が離職することはない、と言う。聞き手が問題にするのは、そうした院長の受け止め方である。自分は悪くないという感覚が残っていて、地震や火事と同じような口ぶりで語る、と出演者が重ねる。画面には「原因自分なのに」「客観視したら絶対おかしいですから」と出る。聞き手は、人がいなくなって困った、で終わらせず、そういうことがあった院長は改善しましょうと話す。ここで言われているのは、全員離職のような極端な例だけではない。人が定着しないとき、まず院長自身のやり方を点検の対象に入れるかどうか、という姿勢の話である。3つ目は算定漏れと、お金の使い道3つ目は収入の取りこぼしだ。算定に詳しい出演者は、立地が良ければ算定漏れだけで潰れることはないだろうと前置きしつつ、だからこそ「少しくらい取りこぼしても大丈夫」と思われているのがまずいと言う。やったことはきちんと算定する。そのためには算定を学ぶ必要があり、点数表は自分の生命線なのに、学ぶ機会がほとんどない、と続ける。聞き手も、研修医のころは本を読んでおけと言われるだけでよくわからなかったと振り返る。出演者がとくに勧めるのは、勤務医に対する算定の教育である。対談では、個別指導の前にカルテを書き換えてきたという話を聞いて驚いたという例も出る。聞き手はそれを改ざんだと切り返す。算定を学ぶことは、取りこぼしを減らすためだけでなく、適正に記録し請求するための前提でもある、と編集部は受け取った。話の最後に聞き手が加えるのが、お金の使い道だ。個人事業主の院長にありがちなこととして、何でも経費にしてしまう例を挙げる。どこまでが経費として認められるかは税務の判断で、本稿では扱わない。出演者が言いたいのはその手前で、医院で得た利益はスタッフの教育や分院展開など、医院に再投資すべきだ、という点である。目先の楽しみに使ってしまえば医院は潰れる、と画面にも出る。3つを、手元のお金で並べ直す動画の最後に画面にまとまるのは、①無駄遣いをしない、②院長のスタンスの改め、③算定漏れが無いように、の3つだ。聞き手は、接待交際費のような出費も含めて無駄遣いをせず、保険の収益の部分をもう一度勉強してほしいと締めくくる。編集部として整理すると、3つは手元のお金の出入りに対応している。出ていくお金では、地域に合わない設備と、収入につながらない人の置き方を見直す。入ってくるお金では、やった診療をきちんと算定する。そして、その差として残ったお金を、医院を強くする方向に使う。院長のスタンスは、この3つを他人のせいにせず自分の課題として扱えるかどうか、という土台にあたる。いずれも、ここで挙げた例が自院にそのまま当てはまる保証はない。それでも、売上が制度で支えられている商売だからこそ、倒れ方は外からではなく院長の手元から始まる、というのがこの回の見立てである。元動画を見る歯科医院が倒産しないために今すぐやめるべき行動3選(2025年6月5日公開)
1D編集部
2026年10月15日

おすすめセミナー

関連用語

掲載情報について

1D(ワンディー)は、歯科医師・歯科衛生士・歯科技工士向けの情報が集まる、日本最大級の専門メディアです。

トップレベルの臨床家・研究者からオンラインで学べる「歯科セミナー」や、臨床・経営・ライフスタイルの最新情報が収集できる「歯科ニュース」など、多彩な歯科医療コンテンツを配信しています。

本サイトは、歯科医療関係者(歯科医師・歯科衛生士・歯科技工士・歯科助手・歯科学生等)を対象に、歯科医療の臨床・研究・経営等に関する情報を集約したものです。歯科医療関係者以外の一般の方に対する情報提供を目的としたものではないことをご了承ください。

また、本サイトで提供する情報について細心の注意を払っておりますが、内容の正確性・完全性・有用性等に関して保証するものではありません。詳細は利用規約をご覧ください。

1D - 歯科医師/歯科技師/歯科衛生士のセミナー視聴サービスなら
© 2026 1D inc.