【完全保存版】歯科医院での「子どもの虐待」発見マニュアル

【完全保存版】歯科医院での「子どもの虐待」発見マニュアル

1D編集部
2022年2月6日

虐待発見における歯科医院の役割

虐待は、子どもに対する最も重大な権利侵害である。成長や人格形成に多大な悪影響を与えるだけでなく、次の世代に引き継がれる恐れもあり、それを早期発見し対応するための社会システムが必要だ。

子どもの虐待は、児童虐待の防止等に関する法律(児童虐待防止法)によれば、4つに分けることができる。「虐待」を聞くと想起されやすい殴る・蹴るなどの身体的暴行や性的暴行だけでなく、ネグレクトや心理的虐待も含む。

児童虐待防止法の第5条には、歯科医師を含む児童の福祉に職務上関係のある者は「児童虐待を発見しやすい立場にあることを自覚し、児童虐待の早期発見に努めなければならない」と明記されている。

また、歯科医療者が虐待を受けていると思われる子どもを発見した場合には、「児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者は、速やかに、これを市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所(中略)に通告しなければならない」とも定められている(同法第6条)。

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    「通告義務」は守秘義務より優先される

    われわれ歯科医療者には、職業上知り得た患者個人の秘密を守る義務がある。しかし児童虐待防止法においては、虐待から子どもを守ることが最優先であり、通告義務は守秘義務よりも優先されると明示されている。

    本記事でこれから述べる通り、歯科医療者が発見することのできる虐待の徴候は客観性が高く、とても重要な情報になる。不自然な口腔外傷やランパントカリエス、通院を途中で辞めてしまうなど、確証因子を得やすい環境にある。

    児童虐待防止法では、通告の対象が「児童虐待を受けた児童」ではなく「児童虐待を受けた "と思われる" 児童」と定められている(2004年改正)。

    虐待の事実が必ずしも明らかではなく、結果的に誤りであったとしても、通告によって刑事上、民事上の責任が問われることはない。子どもを守るために、相談・通告というアクションを起こす必要があるのだ。

    日本小児歯科学会は『子ども虐待防止対応ガイドライン(2009)』にて、子どもの虐待の発見のために「社会的認識の転換」が必要であると訴えている。

    30年連続で増え続ける子どもの虐待

    子どもの虐待は、30年連続で増え続けている。最近のデータ(2020年)では、児童相談所に相談される子どもの虐待の件数は年間で20万件を超えている。実に1日で548件もの相談が寄せられている計算だ。6歳未満の子どもでは、1000人に2.2人の割合で虐待が発生しているとのデータもある。

    われわれ歯科医療者は、子どものSOSを受け止めきれていない可能性がある。歯科医院で虐待に気付くためには、「医学的に説明がつきにくいこと」「不自然と思われること」を見逃さないことが重要である。

    例えば「繰り返される外傷」や「つじつまの合わない事故」、「放置されたランパントカリエス」などだ。保護者は嘘をつく場合がある。歯の破折口腔粘膜の損傷を転倒によるものとして来院した場合でも、その嘘を見抜くことが必要である。

    代表的な徴候を以下に示す。これらの徴候が必ずしも虐待に起因しているとは限らないが、虐待を疑う根拠にはなり得る。

    歯科医院で見られる「虐待所見」とは?

    それでは、子どもの虐待を発見するための「歯科的所見」には、どんなものが挙げられるだろうか。特に1歳6か月児健診や3歳児健診、就学時歯科健診を担当する歯科医師は、虐待をスクリーニングする役割が期待されており、注意深く診察をする必要がある。

    歯科医療者として最もわかりやすいのは、多数の未処置歯歯肉の腫脹の存在だろう。虐待されている子どもは、そうでない子どもと比べて約7倍の未処置歯がある。また、口腔清掃不良によるプラークの沈着歯肉の腫脹も代表的な徴候だ。

    以下に子どもの虐待を疑うべき歯科的所見をまとめる。顔面や口腔の損傷は、偶発的損傷か故意による損傷かを見極めることが重要である。例えば受傷時期の異なる外傷痕の混在、受傷状況の説明と臨床所見の不一致、子どもと両親の説明内容の食い違いなどがあれば、グレーに近いと言える。

    小児臨床で感じる「違和感」を大切に

    子どもの虐待に関するニュースが後を絶たない。つい先日も、東京・大田区の自宅アパートに娘を9日間放置し脱水症と飢餓で死亡させ、保護責任者遺棄致死の罪などに問われた裁判が取り沙汰されたばかりだ。被告である彼女もまた、幼少期は虐待の被害者であった。

    「ひどい親だな」で片付けてしまってはいけない。「母親なのだから、子どもを愛情豊かに養育できるはずだ」「母親なのだから、耐えて頑張るべきだ」という固定観念が、虐待の発見を遅らせる。少なくともわれわれ歯科医療者は、その認識を改めるべきである。

    虐待が疑われるケースの経験がある歯科医師は少ない上に、経験があったとしても通告する歯科医師はさらに少なく、通告することに不安を感じているという報告もある。虐待を疑ったら、なるべく早めに院内で検討し、通告の意思決定をすることが重要である。

    本記事が、小児臨床における虐待発見の気付きの一助となれば幸いである。

    参考文献

    1. 一般社団法人 日本小児歯科学会『子ども虐待防止対応ガイドライン』2009年6月(URL
    2. 厚生労働省雇用均等・児童家庭局総務課『子ども虐待対応の手引き(平成25年8月 改正版)』2013年8月(URL
    3. 厚生労働省『令和2年度 児童相談所での児童虐待相談対応件数』2021年8月(URL
    4. 室賀麗, 遠藤圭子, 杉本久美子『歯科保健医療職における児童虐待への意識と対応に関する調査』小児歯誌, 46:407-414, 2008.
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    1D編集部は、臨床経験のある歯科医師・歯科衛生士・歯科技工士で構成されています。歯科業界の最新ニュースから歯科医療の臨床・学術情報、歯科医療者のためのライフスタイル記事まで、歯科医療の専門家の視点で、ただしく・おもしろいコンテンツをお届けします。

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    Masahiro Morita
    2025年12月11日
    歯学部を放校になった「30歳・元歯学部生」の末路

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    1D編集部
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    【速報】3Dプリントデンチャーが保険適用へ

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    1D編集部
    2025年11月13日
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