エアタービンはおよそ毎分40万回転、5倍速コントラは毎分4万回転のモーターを5倍に増速して20万回転。1Dの「25分間」ミニセミナー「5倍速コントラ 何が良いの?形成のポイントは?」で講師が示すスライドの数字だけを並べると、速いのはタービンの方だ。それでも講師は、精密な形成で5倍速の出番が増えている理由を、回転数ではなく「トルク」で説明する。本稿では、講師が語った内容と、編集部の解釈とを分けて整理する。
講師が最初に確かめる、「タービン」と「5倍速」の構造の違い
講師は東京都練馬区で開業する歯科医師で、医院では保険診療も行っているが、自身はセラミック修復が診療の中心だと自己紹介する。卒業後はしばらく大学病院に残っていたといい、当時から5倍速コントラはあったものの、今のように誰もが使う環境ではなかったと振り返る。自身も最初はエアタービンと等速のコントラで毎日の治療をしていたという。今でもタービンを使わないわけではない、と講師ははっきり言う。
そのうえで講師が聴き手に投げるのが、タービンと5倍速の構造の違いを明確に答えられるか、という問いだ。タービンという言葉はもともと水車のように、流体のエネルギーを羽根車の回転に変えるものを指す。歯科のエアタービンは、ユニットの先のコンプレッサーで作った圧縮空気がホースを通ってヘッドに届き、カップ状の羽根車に当たってバーを回す。講師はこの回転を「およそ40万回転」とし、30万〜50万回転と言われる中で40万回転前後が多い、と説明する。
一方の5倍速コントラは、風で回るのではない。ユニット側のモーターが回り、その回転がシャフトとギアを通じてヘッドに伝わり、バーを直接回す。講師は、ハンドピースを差し込むときにうまくはまらず、少し回すとパチンと収まることがあるのは、モーター側とハンドピース側の羽根の位置が合っていないからだ、と身近な場面に引き寄せて説明する。メーカーの中には、ハンドピースよりモーターの方が重要だと言うところもあるほどだという。
「5倍」はギアの比で生まれ、ヘッドの大きさとも引き換えになる
なぜ5倍になるのか。講師の答えはギア比である。同じ大きさの歯車どうしなら、片方が1回転すればもう片方も1回転する。大きさ、つまり歯の数が違えば、大きい歯車が1回転する間に小さい歯車は何回も回る。これが増速だ。5倍速コントラでは、根元の大きな歯車の回転を先の小さな歯車に渡すことで、毎分4万回転のモーターの回転を5倍にし、20万回転を生んでいる。スライドにも「40,000 r/min × 5 → 200,000 r/min」と示される。
ただ、ギアとシャフトという「物」を中に入れる以上、5倍速コントラのヘッドはどうしても大きくなる、と講師は言う。タービンは中を空気と水が通るだけで、重要なのはヘッドの羽根車なので、それ以外を小さく作れる。講師は、最後臼歯の遠心や親知らずの分割のように奥で使うことを想定して首を曲げた型も紹介しつつ、中に収める部品の大きさに制限されるため、こうした型では5倍に届かない増速比になっているものもある、と付け加える。
講師がこの回でいちばん強調するのが、トルクの違いである。トルクとは、ある軸のまわりに回転させようとする力のモーメントのことだ。スライドにはエアタービンと1:5コントラを並べて「TORQUE」と大きく書かれている。
講師の例えは扇風機や風車だ。風で回っている羽根は、指でピタッと止められてしまう。風で回るタービンも同じ理屈で、負荷がかかると回転が落ちる。これに対して、モーターの回転がギアでそのまま伝わる5倍速は、ぐっと押し当てたぐらいで止まることはない。講師は、回転数はタービンの方が非常に速いが、力をかけてずんずん進んでいくのは5倍速の方だ、とまとめる。
そこから講師は、使い分けの考え方を示す。大きく素早く削って切削効率を上げたいならタービン。一方、粘るような金属の除去などは、タービンでやると途中でパチパチとはぜたり、バーが噛んで止まったりしやすい。5倍速ならトルクがそのまま伝わり、止まることなく削れる。講師は特定の器具を一律に勧めているわけではなく、目的に応じて選び分けるという話として語っている。
編集部の解釈を添えると、「回転数が高い=よく削れる」という見方は、負荷がかかったときに回転を保てるかという視点が抜けやすい。カタログの最高回転数だけで器具を比べる前に、何を、どれだけの力で削る場面なのかを先に考える、という順序の話として読める。
後半で講師は、切削器具の問題点として「発熱」と「軸ブレ」の2つを挙げる。スライドもこの2語だけを大きく示す。精密な切削では慎重にやらなければならないことが多く、削れば歯は少なからず熱を持つ。そして器具の軸がぶれることが、非常に大きな問題につながるという。
講師が例に出すのは、上顎第一大臼歯の修復を依頼された症例だ。広い範囲にコンポジットレジンが詰められ、何度も欠けたり物が挟まったりするので何とかしてほしい、という相談だった。以前ならクラウンの形成をしていたと思う、と講師は言う。しかし材料や技工・接着の精度が上がった今は、歯質をできるだけ残す方針を取り、頬側の咬頭は落としつつ、隣の歯との距離が非常に近い部分も削りすぎないようにして、ジルコニアによる部分被覆の修復を選んだ。患者が金属を入れたくないと希望していたことも理由に挙がる。
ここで講師が「ポイントは動画ではなくマージンライン」と念を押すのが印象的だ。余分なところを削らない形成は、全周を削るクラウンの形よりマージンラインが複雑になる。形成の線が波打つのは構わないが、その線自体ががたついていたり、チッピングしていたりすると、修復物がぴったり合うマージンはできず、すべてが台無しになる。だから器具や道具、テクニックが問われる。物自体がぶれたら意味がない、と講師は言う。発熱と軸ブレにどう対処するかの具体的な話は、セミナーの続きで扱われる。
講師は冒頭で、海外メーカーの5倍速コントラについて、時々PRなどに出ていると自ら断っている。セミナーの中でもメーカー名や製品の画像が登場するが、本稿では製品名・メーカー名は扱わず、構造と使い分けの考え方に絞った。
また、セミナーで示される回転数や増速比は、講師がスライドで示した代表的な値である。実際の仕様は製品ごとに異なるため、使用する器具の数値は各製品の添付文書で確認してほしい。講義冒頭で示される小臼歯の症例は、使われた材料の説明が製品名とあわせて語られるため、本稿では取り上げていない。
このミニセミナーはセミナーの前半部分です。続きは
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