クリアランスの定義と臨床での活用法。歯科医師・歯科衛生士が知っておくべき処置と症例のポイント

クリアランスの定義と臨床での活用法。歯科医師・歯科衛生士が知っておくべき処置と症例のポイント

1D編集部
2024年6月1日

クリアランスとは何か

クリアランスとは、歯科治療において特定の処置や材料が適切に機能するために必要な空間や距離を指す。特に、義歯やインプラント治療においては、周囲の組織との関係性が重要であり、クリアランスが不足すると、機能や審美性に悪影響を及ぼす可能性がある。

クリアランスの適切な設定は、治療の成功に直結するため、歯科医師や歯科衛生士はその重要性を理解し、臨床において適切に判断する必要がある。

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    クリアランスの種類とその重要性

    クリアランスには、主に「垂直クリアランス」と「水平クリアランス」が存在する。垂直クリアランスは、義歯やクラウンの高さを決定する要素であり、水平クリアランスは、隣接する歯や組織との距離を示す。

    これらのクリアランスを適切に設定することで、義歯の安定性や快適性を向上させることができる。特に、インプラント治療においては、周囲の骨や軟組織との関係が重要であり、クリアランスの不足はインプラントの失敗につながることがある。

    クリアランスを考慮した処置の手順

    クリアランスを考慮した処置には、まず初めに診査を行い、患者の口腔内の状態を把握することが重要である。次に、必要なクリアランスを計算し、適切な材料や技術を選定する。

    具体的な手順としては、まず模型を作成し、クリアランスを測定する。その後、義歯やクラウンの設計を行い、最終的な製作に移る。これらの手順を通じて、クリアランスを適切に設定することで、治療の成功率を高めることができる。

    クリアランスに関する症例と注意点

    クリアランスに関連する症例としては、義歯の製作やインプラント治療が挙げられる。これらの症例では、クリアランスの設定が不適切であると、義歯の脱落やインプラントの失敗を引き起こす可能性がある。

    注意点としては、患者の口腔内の変化や治療後の経過観察が重要である。特に、インプラント治療後は、周囲の組織の状態を定期的にチェックし、必要に応じてクリアランスの調整を行うことが求められる。

    クリアランスのメリットとデメリット

    クリアランスを適切に設定することには多くのメリットがある。例えば、義歯の安定性や快適性が向上し、患者の満足度が高まる。また、インプラント治療においては、周囲の組織との適切な関係が保たれることで、治療の成功率が向上する。

    一方で、クリアランスの設定が不適切である場合、治療の失敗や患者の不快感を引き起こす可能性があるため、十分な注意が必要である。

    クリアランスの診断と導入のコツ

    クリアランスの診断には、口腔内の詳細な観察と模型作成が不可欠である。これにより、患者の口腔内の状態を正確に把握し、適切なクリアランスを設定するための基礎データを得ることができる。

    導入のコツとしては、過去の症例を参考にし、クリアランスの設定に関する経験を積むことが重要である。また、最新の研究やガイドラインを常に確認し、知識をアップデートすることも求められる。

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    左下の第二乳臼歯がない状態で来院した子ども。保護者は、このまま放っておいていいのか、何か治療が必要ではないかと尋ねる。1Dの「25分間」ミニセミナー「【咬合誘導】実践で使える知識と技術を学びましょう」で、講師が受講者に投げかけたのはこの場面だった。おそらく齲蝕で抜歯されたのだろう、それなら保隙が必要だ――そう頭に浮かんだまま、すぐ保護者に治療方針を話してよいのか。講師は、その前にやっておかなければならないことがある、と言う。本稿では、スライドと自動字幕で確認できた範囲で、講師の主張・経験と編集部の解釈を分けて整理する。「見守る」ことまで含む、広い意味の咬合誘導講師はまず言葉の整理から入る。咬合誘導とは、乳歯列から永久歯列に至る小児期の咬合の発育を正常に誘導する概念と方法をいう、というのが専門用語集の定義だと紹介する。そのうえで、広い意味では小児歯科の臨床で行われるあらゆる処置が咬合誘導にあたる、とも言われる。分かりにくいこの「広い意味」について、講師は小児歯科の学会誌の創刊号にある説明を紹介する。乳歯の萌出前から永久歯の咬合が完成するまでの間、歯列や顎、顔は変化を重ねる。その間、正しくあるべき姿にあるかを見守り、少しでも乱れを見つけたらその原因を追求し、除去に最善の努力を払う――という考え方だ。講師は、通常の治療と違って「見守る」ことが含まれている点に、広い意味を持たせる理由があると説明する。一方で、日常的に行われているのは狭い意味の咬合誘導、つまり装置や訓練、あるいはその併用による治療だ。講義はこちらを中心に進む、と講師は断っている。静的咬合誘導と動的咬合誘導、そして矯正との線引き講師は、狭い意味の咬合誘導を2つに分ける。静的咬合誘導は保隙とほぼ同じ意味で、乳歯を早く失った症例で、歯列にできた空隙を永久歯の萌出まで保持すること。動的咬合誘導は、歯列や咬合の発育過程に異常が認められる、あるいは予見される場合に、積極的に働きかけて改善を図ること。こちらには動的咬合誘導装置が用いられる。小児歯科の咬合誘導と矯正治療はどこが違うのか、とよく聞かれる、と講師は言う。明確な線引きが定められているわけではないとしたうえで、講師の整理はこうだ。混合歯列期に行う小児歯科の動的咬合誘導は、矯正歯科でいう一期治療と重なる、同じものと言ってよい。一方で、保隙や乳歯列期に歯の位置や咬合を変える治療、齲蝕処置や通常の外科処置などは、主に小児歯科が担う、という。重度の外科処置は口腔外科の協力を得ることもある、という留保も添えている。保護者に話す前に、確かめること冒頭の症例に戻る。講師がまず挙げるのは医療面接だ。左下の第二乳臼歯がないのは、本当に齲蝕で抜歯されたからなのか。実はまだ萌出していないだけ、という可能性もある。これは聞いてみなければ分からない、と講師は言う。抜歯された記憶があるなら、その経緯を問診で確かめればよい。前後の歯、たとえば後継の小臼歯の歯胚の状態が分かればよいので、デンタルエックス線写真でも間に合う、と講師は説明する。しかし未萌出だった場合は、それが今どうなっているのかを確かめる必要があり、エックス線画像が欠かせない。萌出できずに埋まっているなら、年齢によっては抜歯を考える必要が出てくる。その下には後継永久歯が控えているはずなので、より広い範囲の異常を予見して、パノラマなどで確認する、という。講師はもう1つ、この症例では前歯がわずかに噛み合っていない、開咬の状態も気になると指摘する。欠損した1歯だけでなく、こうしたところも含めてトータルに見て、必要な検査を行い、治療方針を決める。頭に浮かんだ装置を口にする前に、ここまでを挟むことが求められる、というのが講師の主張だ。模型で見る「歯列弓の幅」と「歯の大きさ」保隙や動的咬合誘導が必要かどうかを判断するうえで、講師が重要だとするのが診断用模型の作成だ。口の中を見ただけでも、使えそうな装置の見当はつく。しかし、その治療に本当に意味があるのか、その装置が本当に適しているのかは、模型を使った分析で確かめる必要がある、と講師は言う。乳歯列と混合歯列とでは計測する箇所が違うので、注意が必要だ、とも。計測した値は、日本人の平均的な値と比べて大きいのか小さいのかを確認する。それを記載するのがポリゴン図表で、乳歯列用と、混合歯列期のヘルマンの咬合発育段階に応じた表が準備されている、と講師は説明する。スライドの例では、歯列弓の幅が平均より狭いという所見が示される。講師が念頭に置いておくよう促すのが、個々の歯の大きさだ。永久歯の歯冠幅が平均より小さい場合は問題になることが少ない。しかし平均より大きい場合は、動的咬合誘導で歯列弓を平均程度まで広げても、きれいには並ばないことがある。予定している治療が十分な結果を得られる方法かどうかを考えるうえで、歯冠幅の確認も重要になる、と講師は言う。保隙より先に、大臼歯を戻すべき場合講義の後半では、混合歯列期に用いる歯列周長分析の手順が紹介される。第一大臼歯の近心面から、各歯の接触点を結ぶ滑らかな弧で反対側の第一大臼歯の近心面までをつなぐのが歯列周長。正中のずれ、前歯の唇舌的な傾き、第一大臼歯の咬合関係を確認したうえで、前歯の実測値と側方歯群の予測値を求め、四分の一顎ごとにスペースの過不足を数値で表す、という流れだ(予測に用いる式や表の詳細は、本稿では扱わない)。そのうえで講師は、冒頭の症例の結論を示す。第二乳臼歯を抜歯して時間がたつと、後方の第一大臼歯が近心に移動することがよく起こる。その結果、側方歯群の萌出余地が不足する。歯列周長分析でその不足が大きいと分かった場合は、保隙という選択肢ではなく、まず第一大臼歯を遠心に移動させて(リゲイン)十分な萌出余地を確保し、そのうえで保隙をする、という2段階の治療が必要になる、と講師は説明する。編集部の解釈としては、冒頭の問いの答えはここにある。保隙装置そのものが間違いなのではなく、抜歯なのか未萌出なのか、すでにスペースが失われていないかを確かめないまま装置を決めることが問題になる。広い意味の咬合誘導が「見守る」ことを含むという講義の入り口は、この確認の手順と地続きになっている。本稿で扱わないこと講師の名前と所属、ポリゴン図表の数値、歯列周長分析で用いる回帰式や予測表の具体的な値は扱っていない。自動字幕で聞き取りが不確かだった部分も採っていない。動的咬合誘導装置の種類や使い方は、YouTubeで公開されている前半部分では詳しく語られていない。本稿は講義内容の整理であり、個々の患者の検査・装置の選択は、各自の判断と必要に応じた専門医との連携のもとで行ってほしい。元動画を見る【咬合誘導】実践で使える知識と技術を学びましょう(2024年3月30日公開)このミニセミナーはセミナーの前半部分です。続きは1Dプレミアムで視聴できます。
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    初めてインプラントを埋入するとき、ドリルを骨に当てた瞬間に先端が滑っていく。1Dの「25分間」ミニセミナー「【オペ動画で学ぶ】初心者のためのインプラント埋入術」で、講師が手術映像を止めて見せたのは、この場面だった。バーを最初から立てて使おうとすると流されてしまうので、横にしてバーの腹をしっかり当て、骨を削っていくのがポイントだ、と講師は言う。表面の硬い骨を越えるところまではラウンドバーで進め、溝が掘れてから縦に使う。本稿では、スライドと自動字幕で確認できた範囲で、講師の主張・経験と編集部の解釈を分けて整理する。「骨の中にネジを入れる」――最初に押さえる本質講師は、新卒の歯科医師を採用して育てる医療法人の立場から、インプラントをやったことのない歯科医師がどこでつまずくかに詳しい、と前置きする。講義のメインタイトルとして掲げるのは「研修医でもできるインプラント」。本当にできるのかとよく言われるが、自分ができるケースをしっかり見極めて、それを確実にやることがいちばん大事だ、と講師は話す。講師は、埋入の流れを短い映像でまず見せる。歯肉を切って開くと骨が出てくる。そこにインプラントを入れるための穴を開け、ネジを入れ、切った歯肉を縫って終わる。これだけ見るとシンプルで、あとはこの過程を細かくしていくだけだという。本質的には骨の中にネジを入れることなので、そんなに怖がらなくていい、と講師は言う。編集部の解釈としては、これは手術を簡単だと言っているのではなく、手順を細かく分けたときに、どの工程が何のためにあるのかを見失わないための整理だろう。講師自身が、ケースの見極めを何よりも先に置いている点は読み落とさないでおきたい。切開の前に骨を探り、継ぎ目を確かめる手術の最初に講師が挙げるのは、骨がどこにあるかを探針で確認することだ。インプラントに限らないが、探針で歯肉の上から骨の位置を確かめ、この辺りに骨があると見てから手術を始めるようにしている、と講師は話す。切開について講師が具体的に注意するのは、歯肉溝の切開と歯槽頂の切開の継ぎ目だ。この部分が切れていないことが多いので、もう一度確認し、切れていなければメスに戻る。骨までしっかり当てて切れていれば、剥離子で思い切りこじ開けなくても、歯肉溝と歯槽頂の角のところから引っ掛けるとすっとフラップが開く、と講師は説明する。剥離子は「剥がす」という名前から、ぐいぐいねじ込むイメージを持たれがちだが、切開が入っていれば力はいらない、ということだ。両刃のメスについては、口腔内から取り出すときに患者の唇を切ってしまうリスクがあるので、最初はあまり使わないほうがよい、とも講師は述べる。頬側のフラップを押さえるアシスタントも初めてのことが多いので、見やすい位置に自分で剥離子を持っていき、「ここで押さえて」と渡すのがよい、という助言もあった。バーを横に使い、深度ゲージで方向を確かめる骨の形成で講師が最初のステップとするのは、骨表面の平坦化だ。ラウンドバーで表面をならしていく。そのうえで、表面の皮質骨に穴を開けるところから始める。ここで冒頭の、バーを横に使うという話が出てくる。皮質骨の厚さは患者によって違うが、それを越えるとぐっと入り込む感触があり、そこからは海綿骨になる。そこまではラウンドバーでしっかり進めてよい、と講師は言う。講師は抜歯即時埋入の映像でも、同じ理由でラウンドバーを使っていると説明する。いきなりインプラント用のバーで削ると先端が流されるため、ラウンドバーでバーを固定するための引っかかりを作る。ラウンドバーはふだんう蝕を取るときに使い慣れているので、ストレートのバーより自由な方向に形を作りやすい、というのが講師の見立てだ。パイロットドリルでの形成では、近遠心的な方向と頬舌的な方向を、右・左・上といろいろな方向から自分の目で見てチェックすること。少し形成したところで一度深度ゲージを入れて方向を確認し、問題がなければ先へ進むこと。バーはずっと踏み込み続けるのではなく、予定の深さが近づいたらゆっくり進めること。講師はこれらを、ドリルを替えるたびに繰り返し確認する手順として見せている。インプラントを入れるときは、形成した方向と同じ方向に入るよう、垂直方向に力をかけながら回していくことを忘れないように、とも言う。なお講師は、埋入時のトルクの設定や形成の長さについて自身の値を挙げているが、機種や製品、症例によって異なるため、本稿では数値を扱わない。縫合は「単純縫合を確実に」講師は縫合について、通常のインプラントでは全層弁でフラップを開いてそれを戻すだけなので、特別な技術は必要なく、単純縫合をしっかりすることがすべてだと話す。ただ、それが意外と初めての歯科医師には難しいとして、模型で糸の巻き方と締める方向を示している。講師が添えるのは、経験が少ないうちは縫った糸が1本、2本と普通に外れてくるので、少し多めに縫っておいたほうがよい、という助言だ。1歯欠損なら近心と遠心を1本ずつ縫えばおおむね足りるが、2本だけだとどちらかが外れたときに困る、という理由だ。水平マットレスや垂直マットレスなどの縫合は、慣れてから行えばよい、と講師は言う。骨が柔らかい症例では、別の注意がいる講義の後半で講師が示すのは、上顎で骨が柔らかい症例だ。フラップを開いたら、まず中に肉芽が残っていないかを鋭匙や探針で確認する。ある症例では、ラウンドバーで上部を確認しただけで、ドリルを一度も使わずにインプラントが入ってしまうほど中が柔らかかった、と講師は話す。抜歯窩が閉鎖しきっていない場合には、こうしたこともあるという。骨が柔らかいときは、バーの回転をごくゆっくりにする。高速で削ると骨が飛んでしまうので、方向を見ながら丁寧に進める、と講師は説明する。2本を埋入するときは、1本目の位置に深度ゲージを入れたまま残りを形成すると方向を合わせやすい、という工夫も示される。さらに講師は、埋入後に確認したところ頬側の薄い骨が揺れていて、フラップを少し大きく開けてみると破折していた、という症例も見せる。このような場合は骨造成(GBR)が必要になり、骨補填材を入れてメンブレンで覆い、縫合して終えたという。編集部の解釈としては、「簡単に見える」手順の中で、骨の状態に応じて判断を変える場面がどこにあるかを示すための症例だろう。本稿で扱わないこと講師の名前と所属、医療法人の規模、研修医が担当する症例数の表、使用しているインプラントの製品名、トルクの設定値や形成の長さ、縫合糸の太さなどは扱っていない。自動字幕で聞き取りが不確かだった部分も採っていない。本稿は講義内容の整理であり、インプラント治療は症例の見極めと十分な研修のもとで行い、術式や器材の選択は各自の判断と製品の取扱説明書に基づいて行ってほしい。元動画を見る【オペ動画で学ぶ】初心者のためのインプラント埋入術(2024年3月24日公開)このミニセミナーはセミナーの前半部分です。続きは1Dプレミアムで視聴できます。
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    2026年11月1日
    【ミニセミナーを覗く】「CRの時間は、詰める作業で決まる」と思っていませんか?――講師が挙げたのは形態修正と咬合調整

    【ミニセミナーを覗く】「CRの時間は、詰める作業で決まる」と思っていませんか?――講師が挙げたのは形態修正と咬合調整

    臼歯の2級窩洞を、保険の限られた時間でコンポジットレジン修復する。時間を詰めたいとき、まず急ぎたくなるのは充填そのものかもしれない。1Dの「25分間」ミニセミナー「「保険 × 高速」でCR修復を行うテクを伝授します」で、講師が時間のかかる場所として挙げたのは、別のところだった。雰囲気でレジンを盛っていくと、時間を取られるのは形態修正と咬合調整だという。だから講師は、充填の前に歯の形をよく見て、咬頭そのものより咬頭と咬頭の間の溝をつくるイメージで積んでいく。本稿では、スライドと自動字幕で確認できた範囲で、講師の主張・経験と編集部の解釈を分けて整理する。時間がかかるのは、詰めた後だったスライドに映る講義のタイトルは「GPのための保険適応CRテクニック」。講師は冒頭で、どこがポイントで時間を短縮できるのかを考えたいと話す。講義の中で講師が繰り返すのは、手を速く動かすことではなく、迷わない形に持っていくことだ。前歯でも臼歯でも、できるだけ単純な窩洞に持っていき、その道筋に沿って充填すれば時間を短縮できる、と講師は言う。そのうえで講師がはっきり指摘するのが、時間を食う工程だ。自分の雰囲気でレジンを盛っていくと、何に時間がかかるかというと形態修正と咬合調整だ、と講師は話す。逆に、もともとの歯の形に沿って積めば、咬合調整はごくわずかな時間で済む。ここを短くすれば、臼歯の修復はさらに短時間になるはずだ、というのが講師の見立てだ。編集部の解釈としては、講師の言う「高速」は充填操作の速さではなく、後戻りの工程を減らすことに重心がある。以下では、その前提となる接着の話から、充填の組み立て方、残る課題までを順に見る。接着が、窩洞の形を変えた講師が最初に振り返るのは、歯質への接着がもたらした変化だ。金属修復のために2級窩洞を形成する場合、外形はう蝕の大きさや対合関係などで決まり、そこに予防拡大、つまり外形線を自浄域まで広げる考え方が入ってくる。講師はスライドの図で、隣接面側の拡大が必要になる窩洞を示す。一方、コンポジットレジン修復なら、う蝕を除去し、窩洞の外形をなめらかな曲線に整えれば窩洞形成は終わる、と講師は説明する。金属修復では除去しなければならない、支えのないエナメル質も残せる。外開きの箱形の形態も要らない。講師はこれを、歯科医師にとっても患者にとっても大きな恩恵だと位置づける。スライドには「接着システムの変遷」として、第1世代から第8世代までの流れが道のように描かれ、最後にユニバーサルアドヒーシブが置かれている。講師はトータルエッチングに始まり、プライマーの開発、エッチ&リンス、セルフエッチングを経てユニバーサルアドヒーシブへ進化してきたと整理し、いまはこれらを使い分けられる時代だと話す。窩洞を単純にする考え方は前歯でも同じだ。講師は前歯の破折症例で、模型上のモックアップからシリコーンガイドをつくり、口蓋側の壁(バックウォール)を先につくる手順を示す。バックウォールができれば、あとは象牙質の色を調整するペーストを置き、その上にエナメル質のペーストを置いて積み上げていくだけで、想定した形ができあがる、と講師は言う。若いころのけがで折れた前歯の修復が外れた症例では、外れた修復物をもとにシリコーンガイドをつくってバックウォールを再現し、隣在歯との接触はセクショナルマトリックスとウェッジでつくってから仕上げている。この症例は講師の経験として紹介されたもので、その後の経過年数は本稿では扱わない。エナメル質と象牙質は、同じようにはくっつかない講師は、エナメル質を対象にした接着では、リン酸エッチングがゴールデンスタンダードだと話す。スライドには「リン酸エッチングの効果」として、表層の除去(清掃作用)、粗造面の形成、接着面積の増加、表面自由エネルギーの向上(ぬれ性)、レジンタッグの形成(投錨効果)が並ぶ(除去される厚みの数値もスライドにあるが、編集部で原典を確認していないため載せない)。講師はさらに、エナメル質の最表層は構造のはっきりしない層でエッチングパターンができにくいため、最表層を一層だけ削ってからエッチングする操作があると説明する。削る量はごくわずかでよい、というのが講師の説明だ。象牙質はより複雑だ。講師によれば、象牙質は有機質と水分に富み、内部に象牙細管があって、その中には組織液が入っている。細管はエナメル質に近いところでは細く数も少ないが、歯髄に近づくほど数が増え、径も太くなる。う蝕による変化の影響も受ける。こうした一様でない象牙質に均一に接着させるのは難しい技術だったが、2ステップのセルフエッチングシステムで培われた機能性モノマーの技術が、いまの高い接着耐久性につながっている、と講師は言う。臨床の手順として講師が勧めるのは、エナメル質だけを選択的にリン酸エッチングするセレクティブエッチングだ。小さな窩洞ではする場合としない場合があるが、2級窩洞や大きな1級窩洞では勧める、と講師は話す。そのとき象牙質にはできるだけリン酸エッチング材が付かないよう注意する。ユニバーサルアドヒーシブについては、機能性モノマーが鍵で、水の含有量は製品によって大きく違い、重合方式が異なる製品もあるため、組成と性質をよく知って使う必要がある、とも付け加える。咬頭ではなく、咬頭と咬頭の間の溝をつくる講義の中心は、臼歯の充填の組み立て方だ。講師がコンポジットレジンを選ぶ理由として挙げるのは、操作性に加えて、不透明性と透明性のバランス、そして研磨性だ。研磨性は非常に重要だと講師は強調する。講師が示す1級複雑窩洞の症例では、セレクティブエッチング、水洗・乾燥、アドヒーシブの塗布の後にライニングを行い、まず頬側にレジンペーストを置いて頬側の面を立ち上げる。こうして1級複雑窩洞を1級単純窩洞の形に変える。そのうえで、咬頭を1つずつ、レジンを入れて形を整え、光を当てる、を繰り返して充填を終える。このとき講師が勧めるのは、咬頭をつくるというより、咬頭と咬頭の間に溝をつくっていくイメージだ。もう1つのポイントは、咬頭の内斜面に沿わせること。隆線をつくるのではなく、隆線と隆線の間に溝をつくり、溝を中心に考える、と講師は繰り返す。それによって、もともとあった形に戻す「原形態の回復」が可能になるという。もとの形はもうないのだから戻せない、と言われればそうだとしか言えない、と講師も認める。そのうえで講師は、2つの手がかりを挙げる。1つは、その歯の一般的・標準的な解剖学的形態をイメージすること。もう1つは、咬頭の内面はそれぞれの歯が持っているので、それに沿わせることだ。充填の前にじっと見ていると歯の形がだんだん見えてくるので、その形に合わせて内斜面に沿わせて積んでいけばよい、と講師は言う。冒頭で触れた形態修正と咬合調整の時間は、ここで決まる。重合収縮と摩耗は、まだ残る課題講師は、接着が進んでもまだ解決できていないのが重合収縮だと話す。接着していない自由な状態なら、光を当てるとレジンは中心に向かって収縮しようとする。しかし窩洞の中に接着の弱いところがあると、強いところに引かれ、弱いところにはギャップができる。エナメル質にしっかり付いた側へペーストが寄っていくこともある。光の方向に向かって収縮するという話は、伝説的なところもある、と講師は付け加える。エナメル質に強く付いた場合には、逆にエナメル質側に亀裂が入ることもある。講師は、レジンを含浸させる処置で亀裂を埋めれば問題はないと言われている、と伝聞として紹介する。重合収縮は、エナメル質の微小な亀裂、辺縁の微小漏洩、歯髄への刺激の原因にもなりうる。これを減らすために行われている方法として、講師はフロアブルレジンによるライニングと、斜めに積んでいく積層充填を挙げる。もう1つの課題として講師が示すのが摩耗だ。直接咬み合う部分が減っていくことに加え、食物などでフィラーが脱落して全体が減っていく。大きなフィラーがあると、そのフィラーだけが抜けて摩耗が大きくなる。そこで細かいフィラーを使い、操作性と光の拡散性を補うためにクラスターを組み合わせる、といった工夫が進み、細かいフィラーを高密度に充填できるようになって、摩耗にも良好な予後が期待できるようになってきている、と講師は話す。講師は最後に、臼歯部の修復の長期経過を示し、研磨面がほとんど変わっていないことに注目してほしいと述べる。ただし、対合歯としっかり咬み合っていることや、患者の咀嚼のパターンも関係するだろう、と講師自身が留保している。本稿で扱わないこと講師の名前と所属、講師が使うコンポジットレジンや接着材の製品名、象牙細管の密度や直径などスライドや字幕に出てくる数値のうち編集部で原典を確認していないもの、症例の経過年数、患者の留学先での治療の話は扱っていない。接着システムの各世代が登場した年代も、自動字幕の聞き取りが不確かなため載せていない。間接修復で使うコンタクトキュア(タッチキュア)の話も講義に含まれるが、本稿は直接修復に絞った。自動字幕で聞き取りが不確かだった部分も採っていない。本稿は講義内容の整理であり、材料の扱いは各製品の添付文書に従ってほしい。元動画を見る「保険 × 高速」でCR修復を行うテクを伝授します(2024年3月22日公開)このミニセミナーはセミナーの前半部分です。続きは1Dプレミアムで視聴できます。
    1D編集部
    2026年10月31日

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