口コミの評価を上げたい、という相談は、たいてい「どう増やすか」の話から始まります。1Dの対談動画「歯科医院が口コミ高評価を獲得するための戦略とは」は、そこから入りません。画面に出るのは「高評価を増やす」と「低評価をなくす」という二つの言葉で、対談はまずこの二つを分けます。どちらも星の数を動かす話ですが、向き合う相手が違うからです。
星の数が重いのは、患者が探す場所がそこにあるからだ
対談が重要性の根拠に置くのは、患者の探し方です。出演者は「飲食店とかでもとりあえず見るじゃないですか」と前置きし、「みんなGoogleマップで探してますからね、歯医者とか」と続けます。画面にも「口コミ獲得は超重要」というテロップが出ます。「Googleに牛耳られてますからね」という言い方は出演者の表現ですが、議論の前提はそこで
固定され、以降は「これは基本Googleマップの話なので」と範囲を限って進みます。
もう一つ置かれるのは、一件の重さです。出演者は、書いた人が一人でも「結構めちゃくちゃ拡散性が高い」と述べ、「流されやすい性質はありますからね、人間」と付け加えます。そして「良いものも当然一緒で」「結構単純なものなので」と、負の方向にも正の方向にも同じ力が働くという見方を示します。ここまでは、評価を上げたいという話ではなく、評価が効いてしまう理由の説明です。
対談が最初にするのは、「なくす」と「増やす」を分けること
「どうやったら高評価を獲得できるんですか?」という問いに対し、画面には「高評価を獲得する方法」という見出しが出て、その下に「高評価を増やす」「低評価をなくす」という二つが並びます。順番としては、低評価の側が先に扱われます。
分ける理由は、中身が違うからです。低評価には、診療への不満だけでなく「事実無根だったりとか」が混じる、と出演者は言います。一方で高評価は、書いてもらう相手が目の前の患者です。同じ星の数を動かす作業に見えても、前者は投稿した誰かへの対処で、後者は日々の診療と伝え方の話になります。編集部の整理としては、この二つを一つの「口コミ対策」にまとめてしまうと、打ち手を取り違えやすい、という読み方ができます。
低評価について、出演者は「Googleの口コミって削除できないんですよ」と述べます。だから働きかける先は媒体ではなく「投稿した人に」なり、「内容証明を送るというパワープレイですけど」という手段や、「これはもう容赦なく弁護士の先生を使って訴える」という選択が語られます。出演者自身も「いかついですよね」と言い添えています。
ここは、記事として踏み込める範囲が限られます。削除の可否や法的手段の見込みは、投稿の内容と媒体の規定、そして法律の専門家の判断によって変わります。動画内では請求できる金額にも言及がありますが、根拠となる事案や算定の説明は示されないため、本記事では扱いません。実際に動くときに最初に確かめるべきなのは、金額ではなく、その投稿が媒体の削除基準に当たるかどうかと、弁護士に相談すべき事案かどうかの切り分けだと言えます。
付随して出てくるのは、書く人が偏るという話です。出演者は「結構関係ない歯科医院の口コミとか見ちゃうんですけど」と自分の習慣を挙げつつ、強い言葉を書く「キャラクター」はいる、満足した人は「わざわざ書かないですからね」と述べます。星の平均は患者の満足の平均ではない、という前提は、ここから読み取れます。
「増やす」側の前提に置かれるのは、依頼の文面ではなく信頼だ
では高評価を増やすコツは何か。問われた出演者の答えは「真摯に向き合って頑張るみたいなところしかないとは思うんですけど」でした。期待されたテクニックが出てこないという意味ではなく、画面にはこの区間で「患者さんからの信頼を得ることが前提」という一文が大きく表示されます。対談の結論に近い位置に置かれているのは、この一文です。
具体例として挙がるのは、診療室の外の接点です。「夏祭りみたいなのがあったら出展したりとか」という例から、「地域とか地盤で評価を集めていくみたいな」という方向が示されます。出演者はこれを簡単だとは言わず、「なかなか難しいところなのかなとは思いますね」と留保しています。医院の努力で星が上がると保証する話ではありません。
同時に、全員から高評価は取れないという前提も置かれています。日々の意見は「バイネームで言われていることもあるんじゃないかというぐらい」届き、「嫌いな人は嫌いですから」とも語られます。信頼を前提に置くという言い方は、評価をゼロリスクにする方法ではなく、動かせる場所がそこにしかないという意味だと読めます。
「書いてくださいね」と「星5つけてくださいね」の間に、線がある
依頼の仕方については、対談のなかで線引きが示されます。出演者は「『口コミ書いてくださいね』はややOKだったと思うんですけど」とし、「『星5つけてくださいね』みたいな」依頼は「買収みたいになっちゃって」と退けます。歯科治療をして何かを渡す例も、言いかけたところで自分で打ち切っています。
「その他にテクニカルに高評価を集める方法」についても触れられます。ウェブサイト上で星5を付けさせるようなツールの存在が挙げられ、しかし「今言ったみたいなのは『ダメだろ』っていうことが分かると思うので」と続きます。代わりに語られるのは、「星1〜5まで選んでどうしますか?」と委ねる形と、「すごく良くしていただいてありがとうございます」という言葉から始まるやりとりです。出演者はそれを、要は「ポジティブな評価だったら評価お願いします」ということだ、と自分で言い直しています。
この線引きは、感覚の問題ではなく規定の問題でもあります。Googleのユーザー投稿コンテンツ ポリシーは「評価の操作」として、「クチコミの投稿や否定的なクチコミの修正または削除と引き換えに、インセンティブ(金銭的報酬、割引、無料の商品やサービスなど)を提供する行為」を禁じています(出典:Google マップ ユーザー投稿コンテンツ ポリシー https://support.google.com/contributionpolicy/answer/7400114?hl=ja / ビジネス プロフィール側の案内では「虚偽のエンゲージメントと見なされ、固く禁じられています」と記載 https://support.google.com/business/answer/3474122?hl=ja )。また、事業者が第三者に依頼して投稿させる表示は、景品表示法のいわゆるステルスマーケティング規制(令和5年10月1日施行)の対象になり得ます。消費者庁は、広告には「企業がインフルエンサー等の第三者に依頼・指示するものも含まれます」としています(出典:消費者庁 https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/stealth_marketing/ )。
なお、「満足した人にだけ声をかける」という依頼の仕方そのものを禁じる明文は、上記の日本語のポリシー文面では確認できませんでした。編集部としては、禁止・容認のどちらとも断定しません。確かめられるのは、対価を渡す依頼は明確に禁止されていること、そして対談の出演者自身が、星の数を指定する依頼には「ダメだろ」と線を引いていることです。自院で文面を決める前に、使っている媒体の現行規定を一度読み直すのが順番だと言えます。