「開業すれば、思うように診療できる」で準備していませんか?――手に入るのは診療環境で、先に減るのは診療の時間

「開業すれば、思うように診療できる」で準備していませんか?――手に入るのは診療環境で、先に減るのは診療の時間

1D編集部
2026年10月3日
開業の理由をたずねると、返ってくるのはたいてい診療環境の話です。使いたい機材、やりたい治療、自分の判断で進められる診療。1Dの対談動画「「こんなはずじゃなかった…」開業後に後悔しないために知るべき3つの落とし穴」は、その動機を否定しません。ただ、開業で手に入るものと、開業後に減っていくものは別の種類だ、という整理から入ります。

落とし穴は、診療の腕の話ではない

対談が最初に置くのは、勤務医の開業動機です。出演者は「割と勤務医の先生で多いのが」と前置きして、「自分の城で自分のこの診療環境で好きに治療ができるという」期待を挙げます。そのうえで、「自分の診療の城を持ちたい!」という意図だとうまくいかないことが多い、と続けます。
理由として置かれるのは、開業が診療の延長ではないという一点です。「会社はシンプルに起業しているわけじゃないですか」と並べられ、考えることは違う、と整理されます。出演者は「実際やってみたらそのギャップに苦しむ人は多い」と述べ、歯科医師は開業する人が7割ぐらいだという見方も口にします(この割合は出演者の発言で、動画内に出典は示されません)。
そして画面には「歯科医師が開業前後に感じるギャップ」という見出しのテロップが出て、以降は「コスト意識の違い」「スタッフマネジメントの難しさ」「採用の難しさ」という三つの小見出しが順に切り替わっていきます。落とし穴という言葉は使われていても、避けられない罠の紹介ではなく、知っていれば驚かずに済むことの列挙として語られています。

一つめ・コスト意識の違い――院長の時間は、診療以外へ流れていく

「歯科医師は診療がメインじゃないですか」。そう確認したうえで、開業すると途端にそれ以外の業務が増える、という話になります。出演者が挙げる体感は具体的で、歯科医院の院長の業務時間のうち「7〜8割は歯科医師じゃなくてもいい業務に使っている」という言い方が出ます。これは出演者の見立てであって調査の数字ではなく、本人も待っている時間なども含めたトータルの話だと補っています。
中身として挙がるのは、「非医療業務とまでは言わないけれども」という留保つきの、いろいろな雑務です。お金の扱いも入ります。診療だけに集中していたところから、「この材料は〇〇円だ」とかが自分で分かってしまう。勤務医のときは視界に入らなかったものが、開業後は診療のあいだも視界に入り続けます。「こんなはずじゃなかった…」が生まれるのは、診療が下手になったからではなく、診療に充てられる時間と注意の配分が変わるからだ、という筋です。

二つめ・スタッフマネジメントの難しさ――「人間関係」で止めると、打ち手が出てこない

二つめのテロップが出るのは、話題が人に移ったところです。歯科衛生士も歯科助手もほぼ女性で、若い人が多く、ライフイベントによる離職も起きる。そのうえで出演者は、人間関係が原因でみんな辞めていくという研究がある、という言及をします。
対談がそこから一歩進めるのは、その人間関係が誰と誰のものかという点です。歯科衛生士同士ではなく、院長を指しているのではないか。「原因は院長にある」という言い方まで出ますが、研究の名称も出典も動画内では挙がらないため、ここは出演者の解釈として読むのが妥当です。
いずれにしても、ここで必要になるのは診療の技術とは別の仕事です。「自分のCRだけで食っていけるという人は本当にごく一握り」で、マネジメントをしなければならない――「自分なりの診療がしたい」と意気込んで開業した人ほど、この部分が重く効いてきます。

三つめ・採用の難しさ――採れる採用と、採れない採用は別物である

三つめで対談が分けているのは、同じ「採用」でも性質が違う二つです。
開業時のオープニングスタッフは人気の求人で、「多少条件が普通でも全然応募が来る傾向にある」と言います。問題はその後で、運営していくなかで必要になる欠員の募集では、応募が全然来ない。しかも開業した後すぐ辞めてしまうアルバイトや助手もいる、という話が重なります。新規開業という珍しさが効いているあいだと、一人分の欠けを埋めたいだけの募集とでは、応募する側から見た魅力がそもそも違う、という理解になります。開業前の採用がうまくいったことは、その後の採用の予告にはなりません。
出演者は有効求人倍率が20倍を超えていると言われる、とも述べています。この数字の出典も動画内では示されていませんが、採用は本当に採れない、という言い方は対談のなかで繰り返されます。

ギャップは、分解してから準備する

対談の締め方は、脅しではありません。出演者は、開業前後で感じるのではないかというギャップを分解して、雑務が多い、マネジメントが大変だ、というところまで具体にしてから準備してほしい、という言い方をします。先に経験した側からは「開業前よりも想像を超えて大変だよ」という声も紹介されます。
裏を返せば、分解できたものは準備の対象になります。診療以外の時間が何にどれだけ使われるのか、開業時の採用と欠員補充の採用をどう分けて考えるのか。開業の判断そのものを止める話ではなく、「こんなことあるんだな」を開業後ではなく開業前に済ませておく、という提案です。
対談そのものは、具体的な手順書ではありません。出演者も、いろいろな問題が待ち受けていると伝えたうえで「頑張ってください」と送り出す程度の締め方をしています。それでも、開業で手に入るのは診療環境であって時間ではない、という一点だけは、開業計画のどの段階にいても自分の前提と突き合わせられるはずです。

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1D編集部は、臨床経験のある歯科医師・歯科衛生士・歯科技工士で構成されています。歯科業界の最新ニュースから歯科医療の臨床・学術情報、歯科医療者のためのライフスタイル記事まで、歯科医療の専門家の視点で、ただしく・おもしろいコンテンツをお届けします。

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落とし穴は、診療の腕の話ではない
対談が最初に置くのは、勤務医の開業動機です。出演者は「割と勤務医の先生で多いのが」と前置きして、「自分の城で自分のこの診療環境で好きに治療ができるという」期待を挙げます。そのうえで、「自分の診療の城を持ちたい!」という意図だとうまくいかないことが多い、と続けます。
理由として置かれるのは、開業が診療の延長ではないという一点です。「会社はシンプルに起業しているわけじゃないですか」と並べられ、考えることは違う、と整理されます。出演者は「実際やってみたらそのギャップに苦しむ人は多い」と述べ、歯科医師は開業する人が7割ぐらいだという見方も口にします(この割合は出演者の発言で、動画内に出典は示されません)。
そして画面には「歯科医師が開業前後に感じるギャップ」という見出しのテロップが出て、以降は「コスト意識の違い」「スタッフマネジメントの難しさ」「採用の難しさ」という三つの小見出しが順に切り替わっていきます。落とし穴という言葉は使われていても、避けられない罠の紹介ではなく、知っていれば驚かずに済むことの列挙として語られています。
一つめ・コスト意識の違い――院長の時間は、診療以外へ流れていく
「歯科医師は診療がメインじゃないですか」。そう確認したうえで、開業すると途端にそれ以外の業務が増える、という話になります。出演者が挙げる体感は具体的で、歯科医院の院長の業務時間のうち「7〜8割は歯科医師じゃなくてもいい業務に使っている」という言い方が出ます。これは出演者の見立てであって調査の数字ではなく、本人も待っている時間なども含めたトータルの話だと補っています。
中身として挙がるのは、「非医療業務とまでは言わないけれども」という留保つきの、いろいろな雑務です。お金の扱いも入ります。診療だけに集中していたところから、「この材料は〇〇円だ」とかが自分で分かってしまう。勤務医のときは視界に入らなかったものが、開業後は診療のあいだも視界に入り続けます。「こんなはずじゃなかった…」が生まれるのは、診療が下手になったからではなく、診療に充てられる時間と注意の配分が変わるからだ、という筋です。
二つめ・スタッフマネジメントの難しさ――「人間関係」で止めると、打ち手が出てこない
二つめのテロップが出るのは、話題が人に移ったところです。歯科衛生士も歯科助手もほぼ女性で、若い人が多く、ライフイベントによる離職も起きる。そのうえで出演者は、人間関係が原因でみんな辞めていくという研究がある、という言及をします。
対談がそこから一歩進めるのは、その人間関係が誰と誰のものかという点です。歯科衛生士同士ではなく、院長を指しているのではないか。「原因は院長にある」という言い方まで出ますが、研究の名称も出典も動画内では挙がらないため、ここは出演者の解釈として読むのが妥当です。
いずれにしても、ここで必要になるのは診療の技術とは別の仕事です。「自分のCRだけで食っていけるという人は本当にごく一握り」で、マネジメントをしなければならない――「自分なりの診療がしたい」と意気込んで開業した人ほど、この部分が重く効いてきます。
三つめ・採用の難しさ――採れる採用と、採れない採用は別物である
三つめで対談が分けているのは、同じ「採用」でも性質が違う二つです。
開業時のオープニングスタッフは人気の求人で、「多少条件が普通でも全然応募が来る傾向にある」と言います。問題はその後で、運営していくなかで必要になる欠員の募集では、応募が全然来ない。しかも開業した後すぐ辞めてしまうアルバイトや助手もいる、という話が重なります。新規開業という珍しさが効いているあいだと、一人分の欠けを埋めたいだけの募集とでは、応募する側から見た魅力がそもそも違う、という理解になります。開業前の採用がうまくいったことは、その後の採用の予告にはなりません。
出演者は有効求人倍率が20倍を超えていると言われる、とも述べています。この数字の出典も動画内では示されていませんが、採用は本当に採れない、という言い方は対談のなかで繰り返されます。
ギャップは、分解してから準備する
対談の締め方は、脅しではありません。出演者は、開業前後で感じるのではないかというギャップを分解して、雑務が多い、マネジメントが大変だ、というところまで具体にしてから準備してほしい、という言い方をします。先に経験した側からは「開業前よりも想像を超えて大変だよ」という声も紹介されます。
裏を返せば、分解できたものは準備の対象になります。診療以外の時間が何にどれだけ使われるのか、開業時の採用と欠員補充の採用をどう分けて考えるのか。開業の判断そのものを止める話ではなく、「こんなことあるんだな」を開業後ではなく開業前に済ませておく、という提案です。
対談そのものは、具体的な手順書ではありません。出演者も、いろいろな問題が待ち受けていると伝えたうえで「頑張ってください」と送り出す程度の締め方をしています。それでも、開業で手に入るのは診療環境であって時間ではない、という一点だけは、開業計画のどの段階にいても自分の前提と突き合わせられるはずです。
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元動画を見る(2025年9月25日公開)
1D編集部
2時間前
「開業はいつにするか」から考えていませんか?――先に動かなくなるのは、引退する側の日付だった

「開業はいつにするか」から考えていませんか?――先に動かなくなるのは、引退する側の日付だった

開業のタイミングは、たいてい手前から考える。研鑽を何年積むか、資金がいつ貯まるか、勤務先でどこまで任されるか。1Dの対談動画「歯科医師が後悔しないキャリアの歩み方」は、その順番を逆から置く。先に置かれるのは開業ではなく引退で、そこから手前を数えると、同じ一年の重さが変わって見えてくる。
対談が先に置くのは、開業ではなく引退の話
対談は「歯科医師も当然引退するタイミングがくる」という一言から入り、画面には「独立・引退のタイミング」というテロップが出る。いつ独立すべきかを論じる回でありながら、独立の話の前に引退の話が置かれている。
出演者が挙げる引退の理由は、身体のことだけではない。「目が見えなくなるとか腰が痛くなるとか」に続けて、「それ以外に引退すべき理由」として「もう疲れちゃった」という言い方が出る。長く続いたスタッフが辞めた、個別指導が入った、子育てが終わった――そうした場面が並び、「じゃあセカンドライフを送ろう」という流れはよく聞く、と語られる。
つまり引退は、ある日の体調で決まるというより、いくつもの事情が重なったところで決まる。出演者はそれを「なんとなくで開業して、なんとなくのモチベーションで独立してしまうと」という言い方と対にして置いている。決め方が曖昧なまま始めたものは、終わり方も曖昧になる、という含みである。
引退の日付が動かないなら、手前の一年の意味が変わる
この回の背骨は、中盤の一文にある。「つまり引退するタイミングっていうのは一定なので」。
そこから先の計算は単純である。「歯科医師として稼働できる年数って限りがある」「65歳・70歳で引退するとしても、できる年数は限られている」。具体的には「35歳で開業して65歳で引退したら30年間しかできないわけですよ」と言う。だから「なるべく早めに開業した方が生涯年収は上がる」し、「ゴールを考えた上で開業のタイミングを考える」ことになる。
この見方が効いてくるのは、途中の遅れをどう数えるかのところである。出演者は歯学部の留年を例に出し、失っているのは学費と生活費の一年ぶんだけではない、と言う。「留年することによって最後の一年が押し出されちゃっている」。終わりが動かないのだから、手前で一年遅れれば、削られるのは最も脂の乗った時期ではなく、最後の一年である。
留年に限った話ではない。勤務先を決めかねて過ごした一年も、開業を見送った一年も、同じ計算に乗る。なお対談で挙がる留年費用の金額は出演者がその場で口にしたもので、大学や学年によって異なる。ここで確かなのは金額ではなく、押し出される先が決まっているという構造のほうである。
それでも「早いほどいい」で終わらない
対談は早期開業を勧めて終わらない。すぐに反対側の事情が置かれる。「自分のスキルとかいろんなことを身に付けないと開業できない」と考えれば「研鑽を積む期間」が要る。35歳で開業するなら勤務は10年ほどで、「10年で習得できるものがどれくらいあるのか」という問いが残る。
出演者は自分の経験も挟む。久しぶりに支台歯形成をやってみたら「ガッタガタで『こんな感じだっけ?』って思って」、「できそうだなって思っていたけど、もう全然できない」。手は離れた分だけ落ちる、という実感である。
結局、対談が置くのは答えではなく二つの向きだ。生涯年収で考えれば早いほうがいい。技術で考えれば積む時間が要る。出演者の言葉では「いつ・どこのタイミングでそのスキルを身に付けて、どれぐらいで開業するか・独立するか」を「設計していかなきゃいけない」。どちらかが正解なのではなく、両方が同じ一本の時間を取り合っている。
引退の時期は、自分の都合だけでは決まらない
引退の側にも、自分で動かせない要素がある。「ある程度アクシデントがない限りは」、60歳・70歳になれば30代ほど細かいものは見えず、「多少の衰えは出てくるのが予見される」。ここまでは自分の話である。
もう一つは相手の話だ。「後継者がいるか・いないか」。出演者は「継がせることができる相手がいるのかみたいなのも、だいたい分かるじゃないですか」と言い、それを早く知ることの意味をこう置く。引退するタイミングと継ぐタイミングが同じでは「もうちょっと遅い」。「継ぐ相手がいないんだな」と気づいた瞬間から、「キャリアプランとしてそこは設計していかなきゃいけない」。
引退の日付は自分で選べても、渡す相手が現れる日付は選べない。だから気づく時期のほうを早める、という順序である。
閉めるのか、渡すのか
医院をやめる出口は一つではない。対談では「M&Aという売却する」道と、「シンプルに親族なのか、関係性の高い勤務医とかに継承もしくは承継する」道が並べられる。
出演者はここで、いま起きていることとして「歯科診療所は微減している」と述べる。この点は統計で確かめられる。厚生労働省の令和6(2024)年医療施設(動態)調査によれば、歯科診療所は同年10月1日現在で66,378施設、前年から440施設の減少である。歯科医院の数が一気に増えた時期に開業した院長が「だいたい今65歳とかに差し掛かっている」という対談の見立ては、この減り方と地続きに置かれている。
だから閉めるのはもったいない、と出演者は言う。何十年も続けた医院には「そこに根づいている患者さん」がいて、「地域医療に貢献している医療機関が一つなくなってしまう」ことになる。「引退だ」と言って「閉める」と言えば、その患者はもう誰にも診てもらえない。
ただし渡す側にも難しさがある。親族への承継は「やりやすい側面もあるけど、やりにくい側面はめちゃくちゃあるでしょうね」と語られ、継ぐつもりだった子がうまくいかずに辞めた例も挙がる。第一選択肢が子どもであること自体は否定されないが、そこで決まるとは限らない。
対談の二人は最後に「引退もクソもない、まだ若造二人で話した結論ですけれども」と断っている。だから、この回から持ち帰れるのは引退の作法ではない。出口の日付が先に決まっていると仮に置いてみると、手前の一年ごとの意味が変わる――その置き方のほうである。そして出演者は、考え始める時期について「実はもうちょい早い方が」「早めに考えておかないといけない」と言い添えている。
元動画を見る(2025年10月30日公開)
1D編集部
1日前
「売上を倍にしたい」で、新患集めから考えていませんか?――3つの事例のうち2つは、すでにある部屋の使い道の話だった

「売上を倍にしたい」で、新患集めから考えていませんか?――3つの事例のうち2つは、すでにある部屋の使い道の話だった

売上を倍にしたい、と院長が考えるとき、最初に浮かぶのはたいてい新患をどう増やすかである。1Dの対談動画「歯科医院の売上を倍増させる3つの戦略」で紹介される3つの医院を並べてみると、その順番が必ずしも自明ではないことが見えてくる。新患を増やした事例は3つのうち1つで、残る2つは、すでに医院の中にあった部屋の使い道を変えた話だった。売上は「客数×客単価」に分解される対談でまず置かれるのは、目標の立て方ではなく分解の仕方である。出演者は「客数×客単価ですよね」と言い、続けて「患者数×患者単価ですよね」と言い換え、さらに「保険診療の場合はレセプト枚数×レセプト点数ですよね」と重ねる。画面には「歯科診療所における売上の方程式」というテロップが出る。分解しておく意味は、打ち手を数えるのをやめられることにある。集患も、広告も、自費のカウンセリングも、並べれば無数にある。だが掛け算に直せば、動かせる変数は二つしかない。どれをやるかではなく、どちらを動かすつもりなのかが先に決まる。「保険診療の場合はレセプト枚数×レセプト点数」という言い換えは、単なる置き換えではない。枚数はその月に何人を診たかであり、点数は一人あたり何を算定したかである。そして点数は診療報酬の点数表で決まっていて、医院の側で値づけできるものではない。保険の範囲で単価を動かそうとすれば、算定できるものを漏らさないか、算定できる処置そのものを増やすか、という方向に限られてくる。対談が自費や物販の話へ進んでいくのは、この制約を前提にしていると読める。回転を上げるレバーは、診療の質とぶつかるでは客数側から、と考えたときに出演者が指摘するのは、その道の窮屈さである。患者数を増やすには「(診療を)ぶん回すか」「というレバーしかない」と述べ、それは「診療の質の担保という点においてはあまり望ましいことでは必ずしもない」と続ける。メンテナンスを30分でできたとしても、それがベストとは限らない、という言い方をしている。だから「客単価に増収の活路を見出すっていうのは理にかなっている」と整理する。ただし対談は、客数を捨てろとは言っていない。少し後で「客数も客単価も、どっちも売上を上げる」「どっちも重要なファクター」と言い直している。退けられているのは客数そのものではなく、一人あたりの診療時間を削って枠を増やすというやり方のほうである。客数を伸ばした医院は、開業前の時間を使っていた1つ目の事例は、SNS運用で新患を集めた医院である。開業前からInstagramで「開業しますよ」という発信を続け、開業前の時点でフォロワーが増えていき、内覧会の時点ですでに新患の予約が入っていた、と紹介される。開業してから集め始めたのではなく、まだ患者がいない期間を使って積み上げていた点が、この事例の要点になっている。副次的な効果として、衛生士や助手の採用が採用費をかけずにできた、「Instagram見て応募しました」という応募があった、という話も添えられる。ただしこれらは出演者が伝え聞いた個別の事例で、編集部で裏づけたものではない。同じ運用をすれば同じ結果になる、という話ではない。出演者自身も「患者集めはローカルのビジネス」であり「グローバルではない」と断り、地図に紐づくMEOは「地域性がすごく絞られてくる」と、届く範囲の違いを区別している。残る2つは、部屋を増やさずに使い道を変えている2つ目は、カウンセリングルームである。経営を指南するセミナーで「自費率を上げるんだったらカウンセリングルームを作りなさい」と言われ、なかった医院が実際に作った、という事例として紹介される。注目したいのは売上側ではなく費用側で、出演者は「人にかかる費用ってそんなに増えてない」「休憩室だったところを潰してだったら増益ですよね」と言う。新しく人を雇ったわけでも、増築したわけでもない。すでにある面積の割り当てを変えただけ、という構図になっている。3つ目は、物販と待合室である。ここで対談が面白いのは、紹介された売上額をその場で検算していることだ。歯ブラシの単価を1,000円、500円と置き直し、「2000本ですね」「歯ブラシ2,000本、無理ですね」「どんなに歯がいっぱいあっても歯ブラシの本数は一定ですからね」と確かめていく。つまり一品目では説明がつかない。帰りに「ちょっと買っていこう」とフロスなども含めて選ばれる状態、「ちょっと微増かもしれないけれども、それが全部重なる」状態が、待合室という誰の医院にもある空間で起きているという話になる。なお、この回で挙げられる金額はいずれも出演者が「曰く」「らしくて」と伝聞として述べたもので、一次資料で確かめられる数字ではない。本稿で金額を書かないのはそのためで、いくら増えるかではなく、何が変わったのかだけを受け取っておきたい。金額の話の前に、自院はどちらを動かせるか3つを並べ直すと、動かした変数は客数が1つ、客単価が2つである。そして客単価側の2つは、新しい投資というより、持っているものの使い道の再配分だった。空間が余っている医院と、人手に余裕がない医院と、開業前でまだ患者がいない医院とでは、手をつけられる場所が違う。倍にするための正解が一つあるのではなく、自院で先に動くのはどちらか、という問いのほうが先にある。出演者も、戦略の紹介にとどめて「具体的にどういうふうにすべきか」は別に学ぶ必要がある、と述べている。この動画から持ち帰れるのは手順ではなく、掛け算のどちらを動かすつもりなのかを決めておく、という一手前の整理である。元動画を見る(2025年11月6日公開)
1D編集部
2日前
「患者が減るから」で、2040年を語っていませんか?――先に足りなくなるのは、診る側かもしれない

「患者が減るから」で、2040年を語っていませんか?――先に足りなくなるのは、診る側かもしれない

2040年問題という言葉が対談の主題に置かれます。画面に出る定義は「日本の少子高齢化や人口減少により2040年頃に深刻化すると予測される社会経済問題の総称」。出演者はまず、時間の近さを確かめます。まもなく2026年を迎える。つまり2040年まで15年を切った、と。この話題は、歯科医院では「人が減る」つまり「患者が減る」という形で受け取られがちです。ところが対談は、そこで止まりません。減るのは患者だけではない、という指摘から始まります。患者も減る。ただし、減り方が速いのは歯科医師のほうだ出演者が根拠に挙げるのは、厚生労働省の医師・歯科医師・薬剤師統計です。もう歯科医師が減る時代ですよ、と言ったうえで、一方で患者も減るんですよ、と続けます。そのうえで置かれるのが、この記事の背骨に当たる一文です。患者の減り具合に対して、歯科医師の減り具合のほうが大きい。理由として語られるのは、年齢構成です。歯科医師は一般の人口に比べて年齢の高い層が厚く、その層がこれから引退していく。だから歯科医師は足りなくなっていく、という順序になります。なお、動画のなかでは平均年齢の具体的な数値も語られますが、統計の数字とは一致しないため、ここでは数値としては扱いません。使えるのは「引退期に向かう層が厚い」という構造のほうです。構造そのものは確かめられます。令和6(2024)年12月31日現在の同統計で、歯科医師の総数は103,652人。前回の令和4年調査から1,615人、率にして1.5%の減少でした。歯科医師が増え続ける時代はすでに終わっており、減少は予測ではなく、直近の調査で起きたことです。画面には「特に地方における歯科医療の安定的な提供体制が揺らぐ可能性がある」というテロップが添えられます。足りなくなり方は、地域ごとに同じではない対談はここから地域の話に移ります。地方はそもそも歯科医師がいない、もうできていますもんね、という短いやりとりがあり、無歯科医地区の話が出ます。車を運転できなくなるといった事情も重なって、受療の機会そのものが失われることが起こる。もう本当にどうしようもないような状況がある、とも言われます。この点は一次資料で確認できます。厚生労働省の令和7年度の調査(令和7年10月末日現在)で、無歯科医地区は全国で750地区、そこに暮らす人は196,640人でした。前回の令和4年度調査は784地区・188,647人ですから、地区の数は34減った一方で、そこに住む人は7,993人増えています。地区が減ったから解消に向かっている、と読める数字ではありません。ただし、この数字は「地方で開業すべきだ」という話ではありません。対談でもそういう勧め方はされていません。ここで押さえておきたいのは、同じ「歯科医師が足りない」でも、都市部と無歯科医地区では意味がまったく違うということです。出演者はのちほど、東京の都心部と北海道の無歯科医地区では、という並べ方でこの差に触れています。「患者が減る」より先に起きるのは、「来られない患者が増える」対談の後半に、もう一段の言い換えが出てきます。外来に来られない患者さんが絶対に増えるわけですよ、という一文です。人口が減っても、高齢の人や持病を抱えた人の割合は増える。その人たちは歯科の必要がなくなるのではなく、歯科医院まで来られなくなる。出演者はここで、供給が足りていない領域だという見方を示します。後期高齢者や要介護の人も含めて、必要としている人の数に対して診る側が足りていない。だから放置されている患者さんがたくさんいるわけですよ、と。ここで語られているのは、需要が消えるのではなく、需要が外来という形では現れなくなる、という変化です。なお、対談のなかで有病者の割合を示す具体的な統計は提示されていません。この部分は出演者の見立てとして受け取るのが妥当です。ただ、見立ての向きは前半の話と一貫しています。診る側が減っていくところへ、外来では拾えない患者が増えていく。主戦場が変わる、という言い方その先で出演者が使うのが「主戦場」という言葉です。居宅における訪問診療の推進が政策のトピックになっていることに触れ、そこが主戦場になると思うんですよね、と言います。2040年になった時を想像すると、基本、主戦場は訪問ですよ、と。極端な言い方として、すべての開業医が訪問診療に行くくらいの心持ちで、という表現も出てきます。もちろん、若い人向けの治療も予防管理も大事だという断りは入っています。外来をやめるという話ではありません。変わるのは重心です。そしてこの重心の移動は、医院ごとの思いつきではなく、制度の設計に沿っているというのが対談の整理です。画面には「これからの時代は地域包括ケアシステムでしかないんですよ」というテロップが出て、すべての医療政策の根底にあるのは地域包括ケアという思想だ、と説明されます。団塊の世代が75歳以上となる2025年を目処に、住まい・医療・介護・予防・生活支援を一体で提供し、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けられるようにする。その枠組みに、歯科も参画する側として入っていくことになります。出演者が挙げる2040年以降の方策は、地域包括ケアシステムと訪問診療、そしてDXの三つでした。15年を、待つ時間ではなく準備する時間として使う対談の締めくくりで出演者が言うのは、この15年でしっかりと地盤を固めて、自分たちも含めて地域包括ケアに参画していかなければならない、ということでした。学生時代に覚えた用語として通り過ぎるのではなく、自院の仕事として置き直す、という意味です。2040年という数字は遠く見えますが、15年後に自分が何歳で、そのとき今の患者が何歳になっているかは、すぐに計算できます。今の患者のうち、通院がだんだん難しくなっている人は誰か。その人が来られなくなったとき、どこへ引き継がれるのか。近隣の在宅医療や施設と、名前の分かる関係があるか。地域で誰がどこまで担っているかを知っているか。こうした問いに答えを用意することが、訪問診療の件数を増やすことと同じではありません。対談も、訪問を始めれば医院が安泰になるとは言っていません。言われているのは順序のほうです。診る側が減り、来られない患者が増えるという前提を先に受け入れておけば、2040年が来てから慌てずに済む。15年という残り時間は、その前提に合わせて自院の形を変えるには十分な長さで、何もしないまま過ごすには長すぎます。元動画を見る【2040年問題】歯科医師が生き残るためには(2025年11月20日公開)
1D編集部
2026年9月30日
「年収1億円」、それは年商の話になっていませんか?――1億円の手前にあるのは、腕ではなく医院の規模

「年収1億円」、それは年商の話になっていませんか?――1億円の手前にあるのは、腕ではなく医院の規模

歯科医師は年収1億円に届くのか。対談でこの問いが出たとき、出演者の一人が「億単位のお金を稼ぎたい」と口にします。すると、もう一人がすぐに聞き返します。年商ですか、と。返ってきた答えは「所得が1億円になりたい」でした。
わずか数秒のやりとりですが、この記事の論点はここに尽きます。年収1億円という言葉は、医院に入ってくるお金の話としても、自分の手元に残るお金の話としても使えてしまう。どちらで話しているのかを決めないまま「1億円は可能か」を論じても、答えは出ません。出演者はこの先、所得のほうで話を進めます。
「1億円」を所得と決めた瞬間、必要な年商が決まる
対談は、そこから逆算に入ります。出演者が置く前提はひとつだけです。年商のだいたい20%を自分の役員報酬にする、と設定した場合。これは業界の平均値として示されたものではなく、話を単純化するために出演者がその場で置いた仮の数字です。記事としてもそのまま持ち出すべきではありませんが、逆算の道筋を見るには足ります。
この前提を置くと、年収1億円には年商5億円の歯科医院が要る、という結論が出ます。出演者はここで、あなたが超スーパードクターだったとしても、どんなに高く自費診療を売っても、と付け加えます。腕前の話をいったん脇に置いても、割り算の答えは変わらないからです。5億円という数字について、出演者自身が「5億円もなかなかいかない」と言っています。
月4,000万円を診療日で割ると、1日いくらになるか
年商5億円を月に均すと、だいたい4,000万円ちょっと。それを診療日で割ると、1日当たり約200万円になります。対談ではこの数字が出たところで「お〜」という声が上がります。年商5億円は遠い目標として聞こえますが、1日200万円に割り戻すと、自分の診療室の風景と比べられる数字に変わるからです。
ここで出演者が挙げるのが、開業医が一人でユニット3台を回している状態です。その形で診療を続けているかぎり無理だ、というのが対談の結論でした。理由は腕でも診療単価でもなく、1日に確保できる枠の数です。逆にユニットが10台ある規模なら年商5億円は見えてくる、という見立ても示されます。ただしこれは、全員が歯科医師ではないこと、自費が上乗せされることを含んだ概算で、実際の点数や単価まで詰めた試算ではありません。
腕を磨いて増えるのは、医療収入のほうである
対談の終盤で、出演者は別の角度から同じことを言います。歯科医師は勉強して腕を磨けば自費の売上が上がる。医療収入を上げようと思えば、いくらでも上げられる仕組みになっている、と。
これは、腕を磨く意味がないという話ではありません。ただ、腕によって動くのは医院に入ってくるお金のほうであり、それが自分の所得になるかどうかは別の設計に依存します。冒頭で年商と所得を分けた理由が、ここで効いてきます。自費が伸びても、そのぶん人と設備が増えていれば、手元に残る割合は変わりません。1億円を所得で語ると決めた以上、追うべき指標は売上ではなく、売上のうち何%を自分の報酬として取り出せるか、という構造のほうになります。
「プレイヤーではなく経営者として」という言い方
では、どうすれば規模のほうを動かせるのか。対談で示される道は、組織を大きくしていくしかない、というものです。特に地方で、人が定着し、定期管理が回り、必要な処置がきちんと自費につながる医院をつくる。そのうえで規模を積み上げる。画面には「プレイヤーではなく経営者として組織を大きくする力が求められる」というテロップが出ます。
さらに上を見るなら、分院展開をして自分が理事長となり、役員報酬を上げていく方法もある、と出演者は言います。そして「経営者に脱皮しないと、年商10億円というものにはいかないでしょうね」と続けます。ここで語られているのは、より多く診療する話ではなく、診療する人を増やして、その全体から自分の報酬を取り出す立場に移る話です。対談では、そもそも開業そのものが最初の壁として一つある、とも確認されています。
なお、診療者のままでも高い収入に届く働き方は存在します。対談では、週2日で来ているフリーランスの矯正医の例が挙がりました。ただしこれは出演者が人づてに聞いた金額で、一次資料の裏づけはありません。そういう働き方があるという範囲で受け取るのが妥当です。
1億円を目指さない院長にも、この逆算は使える
この対談が扱っているのは、年収1億円という極端な目標です。多くの院長にとっては自分の目標ではないでしょう。それでも、逆算の手順そのものは目標額を入れ替えれば同じように使えます。ほしいのは所得か年商か。所得なら、年商の何%を自分の報酬として取り出す前提なのか。その前提で必要な年商はいくらか。それを診療日で割ると、1日いくらになるか。最後に、その1日を今のユニット数と人員で受けきれるか。
この順番で降りていくと、足りないのが腕なのか、枠なのか、人なのかが分かれます。出演者が繰り返し言っていたのは、どんなに高く自費を売っても割り算の答えは変わらない、ということでした。売上を伸ばす工夫の前に、自分がどの数字を目標にしているのかを言い直してみる。対談の出発点にあった「年商ですか?」という問い返しは、1億円を目指さない医院でも同じように効きます。
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歯科医師は年収1億円稼げるのか(2026年2月5日公開)
1D編集部
2026年9月29日

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