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「歯科助手はすぐ辞めるもの」で、また求人を出していませんか?――対談が先に整えたのは、入職1日目と、点数の付かない仕事の先

「歯科助手はすぐ辞めるもの」で、また求人を出していませんか?――対談が先に整えたのは、入職1日目と、点数の付かない仕事の先

歯科助手が定着しない、という悩みは珍しくない。1Dの対談動画「歯科助手の離職率を劇的に下げる新人教育の秘訣」は、聞き手の歯科医師の「歯科助手って、めっちゃ辞めない?」という一言から始まる。対談が離職の理由として挙げるのは、本人のやる気の問題だけではない。入ってすぐの教え方と、続けた先の見通しという、医院の側で用意できる2つの仕組みである。本稿では、出演者が語った内容と編集部の整理とを分けて書く。題名の「劇的に下げる」は動画の表現で、ここに挙げる方法で離職が減るという保証ではない。辞める理由は、入ってすぐと、続けた先にある聞き手は、自分が勤める医院の職場環境は良いと思っているが、それでも在籍中に歯科助手が何人も入れ替わったと話す。離職率が高いのは肌で感じている、という。組織の運営に携わっているもう一人の出演者が挙げるのは、入職前のイメージと実際の仕事のずれだ。白衣を着た華やかなイメージで入ってくるが、実際の仕事はそれとは違い、レセプト請求のような事務も含まれる、と言う。加えて、歯科助手の多くは特に強い志があって業界に入ってくるわけではなく、そういう人のマネジメントは難しい、とも話す。聞き手はトピックを2つに分ける。1つ目は、なんとなく入った人がすぐに辞めてしまうこと。未経験で業界がわからないのに、医院は忙しくて現場で教える余裕もない。2つ目は、続けても将来が見えにくいことである。2つ目から読む:歯科助手には「点数」が付かない順番を入れ替えて、先に2つ目を見ておく。この回で、医院経営の側から見て最も具体的なのがこの部分だからだ。聞き手は、一般の会社なら勤め続ければ昇給していくが、歯科助手は難しい、と問いかける。もう一人の出演者の答えは、構造の話だった。ベースアップはあってもそれほど大きな金額にはならない。歯科助手には算定がなく、アシストについても点数が付くわけではない。だから院長から見ると、歯科助手は院長の労力を減らしてくれる存在という文脈でしか収入に結びつかず、キャリアアップがしにくい、という説明である。聞き手も、売上を上げていなければ昇給にはつながらない、と言い換える。そのうえで出演者が示す出口が、患者への説明を担う役割だ。自費の治療や矯正、補綴について患者に説明する人がいれば院長にとって重宝されるし、院長はその時間を診療に充てられる、と言う。聞き手は、トリートメントコーディネーター(TC)を例に、歯科助手として入り、一定できるようになったらTCを目指す、という院内の道筋を用意すれば辞めないのではないか、とまとめる。ここには留保も付いている。出演者は、歯科医師や歯科衛生士の知識は使うべきで、その労力は治療や予防処置に充てるべきだとしたうえで、歯科助手には一定の知識を与えることが前提だと言う。聞き手も、「ジルコニアがいいですよ」と勧めることではなく、治療したことやこれから治療することを説明するのが大事だと念を押す。売り込み役を育てるという話ではない、と読むのが妥当だろう。1つ目に戻る:入職1日目で完結させる1つ目の、すぐに辞めてしまう問題について、もう一人の出演者が最初に挙げるのはマニュアルである。院長が消毒のやり方などを口頭で教え、その人が辞めてまた同じ話を繰り返す、というのはよくあることだと言う。一度、動画でも文書でもいいので作ってしまえばいい、という提案だ。ただし、何を載せるかが問題になる。聞き手は、歯科助手向けの分厚い仕事の本を「これ読んどいて」と渡しても読まないだろう、と話す。もう一人の出演者は、歯の本数のような知識は知らなくても大した話ではなく、実務で使うもの、つまり片付けと準備があればいいと言う。聞き手が一番最初に強く教えるのは、ここは汚い、ここはきれい、という区別だ。汚れたものを素手で触るのは本人のリスクになる、と理由を添える。清潔と不潔の扱いは医院ごとに違うので、細部まで共通にはできないが、基本の考え方は教えられる、という。教える形として対談が勧めるのは動画である。必要な知識だけを短く見せれば、教える側はいちいち付きっきりにならずに済み、本人もわからなくなったら何度でも見直せる。聞き手は、入職1日目を研修の時間にして、その1日で完結させましょう、と言う。教材の費用は医院が持つ聞き手がもう一つ強調するのが、教材を誰が負担するかである。参考書を自分で買うように言われることがあるが、働いている側からすれば、その日はマイナスになる。だから教材は医院で用意し、院長が時間を取って見せてほしい、そこは徹底してほしい、と話す。もう一人の出演者は、モチベーションがあれば自分から勉強していき、歯科衛生士学校に進む人も多いと言い、それを補助している医院もあると続ける。聞き手は、そういう流れが生まれるといい、と受け止めている。2つの仕組みを、求人の前に置いてみる編集部として整理すると、この回の2つのトピックは、時間軸の前と後ろにあたる。前は、入職1日目に何を、どの順番で、誰の負担で教えるか。後ろは、点数の付かない仕事を続けた先に、どんな役割と処遇があるか。どちらも、辞めた人の代わりを探す前に、医院の側で用意しておけるものである。1Dでは歯科衛生士の採用を、勤務の終わる時刻と昇給の道筋から考える記事も出している。歯科助手の場合は資格職ではない分、入口の教え方と、院内での役割の作り方がより直接に効いてくる、というのが対談から読み取れる違いだ。いずれも出演者の経験と見立てに基づく話で、自院にそのまま当てはまるとは限らない。元動画を見る歯科助手の離職率を劇的に下げる新人教育の秘訣(2025年5月15日公開)
1D編集部
1時間前
「保険診療だから潰れない」と思っていませんか?――対談が挙げた倒れ方は、売上ではなく院長の手元から始まっていた

「保険診療だから潰れない」と思っていませんか?――対談が挙げた倒れ方は、売上ではなく院長の手元から始まっていた

歯科医院は安定した商売に見える。1Dの対談動画「歯科医院が倒産しないために今すぐやめるべき行動3選」でも、聞き手の歯科医師がまずそう口にする。ところが対談は、潰れる理由を患者の減少や景気には置かない。最後に画面にまとめられる3つは、無駄遣い、院長のスタンス、算定漏れだった。どれも院長が自分で変えられる側の話である。本稿では、出演者が語った内容と編集部の整理とを分けて書く。題名の「今すぐやめるべき」は動画の表現で、これだけで倒産を防げるという保証ではない。「売上の7割を国が払う商売」でも潰れる対談の入口は、歯科医院の数の話だ。聞き手は、新しく開業する医院より閉業する医院のほうが多くなっていると切り出す。歯科医師の動態や算定に詳しい出演者として紹介されるもう一人も、閉業が開業を上回るようになってきたと応じ、資金繰りに行き詰まって閉じる例もあると話す。動画では具体的な件数も挙がるが、本稿では一次資料と突き合わせていないため数字は載せない。そのうえで出演者が強調するのが、保険診療という仕組みの特徴である。売上の7割から全部を国が出してくれるビジネスモデルだ、と言う。楽勝とは言えないが、という前置き付きだ。聞き手はこれを、7割の中に原価が収まっていれば利益は出続けるということですよね、と言い直す。出演者は「処置によりますけどね」と留保する。編集部の言葉に直すと、この回の問いは「なぜ売れないのか」ではない。売上の多くが制度で支えられているのに、なぜ手元にお金が残らないのか、である。だから対談が挙げる原因は、出ていくお金と、取りこぼしているお金の両側に分かれていく。1つ目は無駄遣い、ただし「設備」と「人の置き方」の話1つ目の無駄遣いとして聞き手が挙げるのは、地域に合わない設備投資だ。むし歯がほとんどない人が集まる地域で、マイクロスコープやCTといった「三種の神器」をそろえる例を出す。無駄かどうかは人それぞれだが、と断りながらの指摘である。材料を使いすぎる話も出るが、1Dでは材料費の見直しを別の記事で扱っているので、ここでは触れるだけにしておく。対談がより時間を割くのは人の置き方だ。算定に詳しいもう一人の出演者は、自分が開業したら、と前置きして、アシストについても点数が付くわけではないと指摘する。治療の質を求めるならアシストを付けるのはいいが、経営的な観点だけで見れば、そのぶん別のユニットで予防をしているほうがいい、という見方だ。聞き手は、アシストがあれば歯科医師も楽で患者にも良いと認めたうえで、受付の自動応答や予約、自動精算機など、自動化できる部分は増えていると話を広げる。画面のまとめも「人件費というか、人の配置も考えましょう」「自動化できるところは自動化していこうよ」である。人を減らせという話ではない。誰をどこに置くと医院の収入につながるのかを、院長が一度は数えておく、という整理だと編集部は読んだ。2つ目は院長のスタンス2つ目は、人の問題を誰の問題として見るか、である。聞き手は、もう一人の出演者が先に「スタッフが悪い」と言ったことを受けて、院長側に原因があるケースも少なくないと切り返す。例に出るのは、スタッフが全員辞めてしまった医院の話だ。出演者は、その期間は点数も下がるし、最初からちゃんとしていれば全員が離職することはない、と言う。聞き手が問題にするのは、そうした院長の受け止め方である。自分は悪くないという感覚が残っていて、地震や火事と同じような口ぶりで語る、と出演者が重ねる。画面には「原因自分なのに」「客観視したら絶対おかしいですから」と出る。聞き手は、人がいなくなって困った、で終わらせず、そういうことがあった院長は改善しましょうと話す。ここで言われているのは、全員離職のような極端な例だけではない。人が定着しないとき、まず院長自身のやり方を点検の対象に入れるかどうか、という姿勢の話である。3つ目は算定漏れと、お金の使い道3つ目は収入の取りこぼしだ。算定に詳しい出演者は、立地が良ければ算定漏れだけで潰れることはないだろうと前置きしつつ、だからこそ「少しくらい取りこぼしても大丈夫」と思われているのがまずいと言う。やったことはきちんと算定する。そのためには算定を学ぶ必要があり、点数表は自分の生命線なのに、学ぶ機会がほとんどない、と続ける。聞き手も、研修医のころは本を読んでおけと言われるだけでよくわからなかったと振り返る。出演者がとくに勧めるのは、勤務医に対する算定の教育である。対談では、個別指導の前にカルテを書き換えてきたという話を聞いて驚いたという例も出る。聞き手はそれを改ざんだと切り返す。算定を学ぶことは、取りこぼしを減らすためだけでなく、適正に記録し請求するための前提でもある、と編集部は受け取った。話の最後に聞き手が加えるのが、お金の使い道だ。個人事業主の院長にありがちなこととして、何でも経費にしてしまう例を挙げる。どこまでが経費として認められるかは税務の判断で、本稿では扱わない。出演者が言いたいのはその手前で、医院で得た利益はスタッフの教育や分院展開など、医院に再投資すべきだ、という点である。目先の楽しみに使ってしまえば医院は潰れる、と画面にも出る。3つを、手元のお金で並べ直す動画の最後に画面にまとまるのは、①無駄遣いをしない、②院長のスタンスの改め、③算定漏れが無いように、の3つだ。聞き手は、接待交際費のような出費も含めて無駄遣いをせず、保険の収益の部分をもう一度勉強してほしいと締めくくる。編集部として整理すると、3つは手元のお金の出入りに対応している。出ていくお金では、地域に合わない設備と、収入につながらない人の置き方を見直す。入ってくるお金では、やった診療をきちんと算定する。そして、その差として残ったお金を、医院を強くする方向に使う。院長のスタンスは、この3つを他人のせいにせず自分の課題として扱えるかどうか、という土台にあたる。いずれも、ここで挙げた例が自院にそのまま当てはまる保証はない。それでも、売上が制度で支えられている商売だからこそ、倒れ方は外からではなく院長の手元から始まる、というのがこの回の見立てである。元動画を見る歯科医院が倒産しないために今すぐやめるべき行動3選(2025年6月5日公開)
1D編集部
1日前
「謝ったら負け」で、クレームに身構えていませんか?――対談が分けたのは、共感を示す謝罪と、責任を認める謝罪だった

「謝ったら負け」で、クレームに身構えていませんか?――対談が分けたのは、共感を示す謝罪と、責任を認める謝罪だった

クレームを受けたとき、歯科医院で口にしやすい言葉は2つある。「申し訳ありません」と、「こちらに落ち度はありません」だ。1Dの対談動画「クレーム患者が常連に変わる魔法の対応とは?」は、この二択のあいだに線を一本引く。謝罪には種類があり、ためらうべきでない謝罪と、慎重に扱うべき謝罪は別物だ、という線である。題名の「常連に変わる」は出演者の経験談から来た表現で、どの患者にも当てはまる結果ではない。本稿では、出演者が語った内容と編集部の整理とを分けて書く。入口は「失敗しない」という言葉への違和感対談は、以前話題になったドラマの「私失敗しないんで」という台詞から始まる。聞き手の歯科医師は、自信は大事だとしたうえで、そう言う医師が実際にいたら困ると話す。医療安全に詳しい出演者として紹介されるもう一人は、そうした台詞は医療安全をわかっていない人が口にするものだと応じる。医療安全に詳しい出演者が強調するのは、ミスをしても事故につなげない仕組みである。歯科は部位を間違えることこそ多くないが、元に戻せない処置が非常に多い、と言う。聞き手も、臨床をしていて自分が失敗しないとは思っていない、と認める。大丈夫だと言い切った後に少しでも何かあれば、大丈夫と言ったのに、と返されるからだ。聞き手はさらに、ミスがなくてもクレームは生じる、と続ける。対応を間違えなければ、苦情を言っていた患者がかえって良い評判を残すこともある、というのがこの回の出発点である。謝罪には2種類ある、と対談は言う本題で医療安全に詳しい出演者が持ち出すのが、コンフリクトマネジメントという考え方だ。そのうえで、「謝ってはいけない」とだけ覚えている人が多いが、と前置きし、謝罪には「共感表明の謝罪」と「責任承認の謝罪」の2つがあると説明する。共感表明の謝罪は、「お騒がせしてごめんなさい」「ご心配をおかけして申し訳ございません」といった言い方で、相手の大変さに寄り添うためのものだ。出演者は、この謝罪はためらうべきではないと言う。一方の責任承認の謝罪は、こちらに責任があると認めることを指す。出演者によれば、責任を認めるとそれが証拠になってしまう。だから「謝ってはいけない」と聞いて一律に口を閉ざすのではなく、どちらの謝罪を使うかで分ける、という整理になる。編集部の言葉に直すと、クレーム対応で問われているのは謝るか謝らないかではなく、何について謝るかである。なお、法的な責任や賠償の扱いは事案ごとに違う。個別の判断は、加入している賠償責任保険の窓口や弁護士に相談することになる。患者の気持ちには段階がある医療安全に詳しい出演者は、ミスを起こされた側の患者の心理は、第1段階から第5段階まで類型化できると説明する。字幕から読み取れる範囲で並べると、次のようになる。第1段階は、健康被害から回復したい。第2段階は、なぜこうなったのか、誠意ある説明がほしい。第3段階で、謝罪をしてほしいという感情が来る。第4段階は、二度とこういうことが起きないようにしてほしい。それでもこじれると、金銭による慰謝や、医療者を懲らしめたいという感情が生まれ、最終的に第5段階に至る、という。出演者は、損害賠償や裁判にまで至ったケースは、第1段階から第4段階までの対応のまずさが原因であることが多いと述べる。だから第3段階のタイミングで共感の謝罪をきちんとする、という流れになる。聞き手は、カッとなっている人を前にしたときに、気持ちが段階的に言語化されていると助かると受け止めている。この類型は出演者の説明として紹介されたもので、本稿では出典や研究の中身までは確かめていない。対談の終盤では、この流れがあらためてまとめ直される。まずミスを事故につなげない。つながったら説明をする。次に謝ってほしいという感情が来たら謝る。自分の過失であれば謝り、過失がない場合や明らかでない場合は、責任を認める謝罪が賠償につながる証拠になりうるので、謝るところは謝る形で使い分ける。そのうえで院内でちゃんと説明する、という順番である。院内の転倒も「事故」に入る謝罪の話は治療の失敗だけに限らない。聞き手が例に挙げるのは、病院の廊下で転んでけがをしたケースだ。床が滑りやすかったからだと言われることがあり、敷地内で起きたことであればケアしなければならない場面がある、と言う。それ自体は治療のミスではない。医療安全に詳しい出演者も、歯科医院の入り口の段差でつまずいたという例を重ねる。聞き手は、「知らんがな」と思うかもしれないが、と前置きしたうえで、人によっては自分が転んだだけだと受け止める人もいれば、そうでない人もいるので、先の5段階を考えて対応すべきだと話す。事故は起こりうるという前提で考えなければいけない、という指摘である。前の医院を悪く言わない、という気のつけ方後半では、聞き手が自身の臨床での経験を2つ話す。1つ目は、別の歯科医院で「この歯はもう無理だと思う」と言われ、それまで通っていたのにほうっておかれたのではないかと怒っていた患者のケースだ。聞き手の見立てでも、その歯はかなり厳しい状態だった。そこで、すぐに対応できない点については「申し訳ないね」と伝え、残すならこういう方法がある、と説明して大学病院の受診につないだ。その後は通院が途絶えて経過は見られていないが、それ以上のトラブルにはならなかったという。聞き手が気をつけたのは、「大変だよね」という共感の謝罪はしながら、前の医院の診断や対応に非があるような話はしないことだった。2つ目は、前の医院で問題行動があったと聞いていた患者が来院したケースだ。対応したのは聞き手ではない別の歯科医師だが、そのやり取りがうまくはまり、今では来るたびに菓子を持ってくるほど関係が築けて、継続して通っているという。題名の「常連に変わる」はこの経験から来ている。ただし聞き手自身、そのときの初期対応がどうだったかはわからないと断っている。そのうえで聞き手は、仮に「前の歯医者が悪かったですね」と言ってしまうと、今の医院で同じようなことが起きたときにまた怒らせてしまうかもしれないと注意を促す。医療安全に詳しい出演者が、ここで返す一言が「共感的態度ですよ」である。聞き手は最後に、コンフリクトマネジメントのように体系化された知識はあっても、それだけでうまくいかない場面もあると言い、知識を入れたうえで注意して対応してほしいと締めくくる。編集部として持ち帰れるのは、次の2点だろう。受付やチェアサイドで「謝ったら負け」と考えて言葉が止まりそうになったら、まず相手の大変さに対する謝罪を口にしてよい。そして、自院の責任や前の医院の非について言い切る言葉は、その場では使わない。元動画を見る【歯科医必見】クレーム患者が常連に変わる魔法の対応とは?(2025年6月12日公開)
1D編集部
2日前
「長く開ければ予約は埋まる」で、診療時間を決めていませんか?――開業初月の集患で、対談が最後に置いたのは開業前のエリア分析だった

「長く開ければ予約は埋まる」で、診療時間を決めていませんか?――開業初月の集患で、対談が最後に置いたのは開業前のエリア分析だった

「開業初月から予約が埋まる」。1Dの対談動画は、題名だけを見ると広告の打ち方を並べる回に見える。実際に挙がる策は3つで、1つ目がオンライン、2つ目が地域に出ていく活動、3つ目が開業前のエリア分析だ。ただし3つは同じ重さで語られているわけではない。前の2つは開業後も続けて手直しできるのに対し、3つ目は開業してからでは動かせない前提に関わる。そこで対談が繰り返し退けるのが、「長く開けていれば患者は来る」という考え方である。本稿では、出演者が語った内容と、編集部が読み取った整理とを分けて書く。題名の「パンパン」は出演者の表現で、どの医院でも初月が埋まるという保証ではない。最初に置かれるのは、初月の重さ話の入口は歯科ではなく、出演者の会社の近くに開店した飲食店だ。オープン時に「シャンパン1杯無料」をうたっていた。新しく開いた飲食店には人が並ぶことがある。一方で、都心のように家賃が高い激戦区では、気づくとなくなっている店も少なくない。出演者はこれを「歯科医院にも言えることではないか」と持ち出す。もう一人の出演者が応じるのは、新規開業時の内覧会の文化だ。内覧会は「スタートダッシュのためにある」と言い、理由として「家賃も変わらない」ことを挙げる。だから最初から立ち上がった方が経済性はいい、という見立てである。編集部の言葉に直すと、初月の集患は宣伝の出来栄えより、固定費が走り出す時期にどれだけ患者と接点を持てるかの問題として語られている。1つ目と2つ目は、「やる」と「ちゃんとやる」の差1つ目のオンラインについて、対談が挙げるのはGoogleマップ上の医院情報だ。動画では「Googleマイビジネス」と呼ばれている(現在の名称はGoogleビジネスプロフィール)。出演者の一人は、店を探すときはGoogleマップを使うと言い、登録して内容を埋めているかどうかで「全然違う」と述べる。理由は単純で、周りがちゃんとやっていないから、という。画面のまとめも「まずはオンライン登録して内容を埋めることが重要」で、最後の振り返りでは「『やる』だけじゃなくて『ちゃんとやる』」と言い直されている。SNSについては、出演者の評価が分かれる。地域の人に向けた発信ならリコールには結びつくという意見がある一方、バズらせて新患を獲得するという使い方には距離を置き、むしろ採用には効きそうだという声が出る。口コミの扱いや再生数の追い方は1Dの別記事で扱っているので、ここでは「オンラインは開業後も手入れを続ける土台」と受け取っておけば足りる。2つ目の地域密着型の策として挙がるのは、内覧会、地域の新聞や掲示板といったアナログな広告、地方での地元企業のテレビCM、企業などへ出向く歯科検診、訪問先の施設でスタッフ向けに開く講習会、地域でのセミナー活動だ。出演者は、こうした活動で「あの歯医者さん」という認知が得られ、「セミナーやってた先生だ」という信頼にもつながると話す。ここでも成果の数字は示されていない。語られているのは、患者になる前の地域の人と顔を合わせる場面を、開業する側から作れるということだ。3つ目だけは、開業してからでは遅い対談が「めちゃくちゃ重要」と位置づけるのが、最後の開業前の話である。開業する場所はエリアを考えて決めるはずだが、改めてそのエリアにどんな層が多いのかを見て、診療のメニューを考えておく。出演者は、これが開業前にできているかどうかで「初月の初速というのは全然違う」と言い、もう一人の出演者は「開業してからエリア変更ってできないので」と重ねる。具体例として、大きなターミナル駅の周辺なら時間を長めにとって行き来する人を取る、という考え方が示される。出演者の一人は、以前分院長を務めた医院の前院長の判断も紹介する。ベッドタウンで、山手線沿線の駅が近く、そこから少し外れて家賃が安い場所だったため、仕事終わりに来る人が多いと見た。周りの歯科医院が木曜休みばかりだったので木曜を開け、土日も診療する。そうすれば周りに溢れて来られない人たちが来るから、ちゃんと埋まる、という考え方である。これは出演者が見聞きした一医院の経験談で、同じ条件がそろわない場所にそのまま当てはまるものではない。エリアの見方としては、ファミリー層が多い場所、大学が近く学生が多い場所も挙がる。ファミリー層を狙うなら朝から17時で閉めてもいい、ともう一人の出演者は言う。画面のまとめは「どんな診療スタイル、営業時間にしていくか戦略を立てる」だ。「長く開ける」は戦略にならないここで対談がはっきり否定するのが、とにかく長く診療しようという発想だ。出演者の一人は「『長く診療しよう』というのは」と切り出し、「これはもう戦略じゃない」と言う。もう一人も、無駄だと応じる。出演者の一人は、アルバイト先の例を出す。曜日によって診療時間がまちまちで、夜遅くまで開けている日もあるが、その時間帯は特定の患者のためだけに開けているような状態になることがある。全体で見れば、ずっと長く開けていたら多分無駄だが、遅い時間でもいいというスタッフがいるから成り立っている、という説明だ。画面のまとめは「長くやれば良いってもんじゃない」である。時間の決め方は採用にも跳ね返る。経営効率だけで言えばエリアに応じて短くも長くも決めればよく、9時〜17時の医院は歯科衛生士にとってありがたいと感じる人も多いのでは、という意見が出る。もう一人の出演者は「エリアによりますけどね」と留保を付けている。編集部の読みでは、診療時間は集患の数字と人の集めやすさの両方に効く設計であり、患者の多い時間帯を見ずに延ばすと、どちらにも効かない時間が残る。開業前に、院長が書き出せること対談の3つの策を時期で並べ直すと、オンラインと地域の活動は開業後も続けて磨けるが、エリアと、そのエリアに合わせた診療時間・メニューの組み立ては開業前に決める比重が大きい。開業準備のなかで、次の3つは物件の資料と地図があれば紙に書き出せる。ひとつは、そのエリアで多い層は誰か。通勤の途中に寄る人か、子どもを連れた家族か、学生か。ふたつめは、その層が来られる時間帯に、周りの歯科医院が開いているかどうか。みっつめは、その時間に誰が働くのか。長く開ける案は、最後の問いに答えられて初めて現実的になる。いずれも、ここで挙げた例が自院にも当てはまる保証はない。それでも、開業してからでは動かせない前提を先に確かめておけば、初月に何を広告するかを決める材料にはなる。元動画を見る歯科医院の開業初月から予約が埋まる|地域No.1集患戦略(2025年6月19日公開)
1D編集部
2026年10月12日
「技工士が減るのは技工所の話」で済ませていませんか?――対談が最後に指したのは、医院から出ていく紙の指示書だった

「技工士が減るのは技工所の話」で済ませていませんか?――対談が最後に指したのは、医院から出ていく紙の指示書だった

「技工士がいなくなるのは本当か」。1Dの対談動画は、この問いを正面から立てる。司会の石川氏の答えは短い。「本当だと思いますね」(263秒)。ただし、すぐに「先10〜15年は必要なくなることはないんではないかと思うんですよ」(275秒)と続ける。減ることと、要らなくなることは別の話だ、という整理である。この話題は、歯科医院の側では「技工所の人手の問題」として聞き流されやすい。だが対談をたどると、論点は途中から発注する側、つまり歯科医院の仕事のやり方へ移っていく。本記事では、確かめられる数字と出演者の見立てを分けながら、その移り方を追う。減り方と年齢は、統計で確かめられるAI企業を運営する松岡氏は、技工士の数は「もう明らかに減っているんですよね」(91秒)と言い、高齢化が進んでいること、65歳以上が「5人に1人」という状況(123秒)、新規参入が減っていること(127秒)を挙げる。この部分は一次資料で確認できる。厚生労働省の令和6年衛生行政報告例によれば、2024年末の就業歯科技工士は31,733人で、前回(2022年末)から1,209人、率にして3.7%減った。年齢階級別では65歳以上が19.3%で最も多い区分になっている。「5人に1人」という言い方は統計と合う。入口の側も細い。歯科技工士国家試験の合格者は、2025年2月実施の回で684人(受験者733人)、2026年2月実施の回で722人(同792人)だった。一方、対談に出てくる平均年齢、免許保有者数と歯科医師数の比較、養成校の過去の校数といった数字は、今回は照合しきれなかったため本文では使わない。確かなのは、働く人が減り、その年齢層が上に厚いという構造のほうである。「いなくなる」と「仕事がなくなる」は違うでは、技工の仕事そのものはなくなるのか。石川氏の見立ては、需要は「それほど変わらない」(307秒)というものだ。理由として挙げるのは臼歯部の2級修復で、難易度が高く、コンポジットレジンの耐久性を考えると間接修復が望ましいと言われている(291〜299秒)。だから間接修復を担う技工士は必要になる、という順序である。これは出演者の臨床上の見解として受け取っておきたい。同時に、石川氏はAIとデジタルが技工の工程を大きく変えうることも認める。デジタルで印象を採り、院内でミリングまで済ませる1日治療の例(323〜339秒)、咬合面のデザインを3次元モデル上で組み立てられること(347〜355秒)。そのうえで、触った感覚を再現する部分は技工士の手作業に残るだろう、とも述べる(451〜459秒)。置き換わる工程と残る工程を分けて考えよう、という立場だ。減る理由は、技工所の努力不足だけではない松岡氏が強調するのは業界の構造である。仕事の源泉は「患者が歯科医院に来ること」であり(387秒)、技工所は「ある種下請けのような位置関係」(391秒)に置かれる。売上の上限が決まっているため、薄利多売にならざるを得ない(395〜399秒)。技工所は約2万件あり(407秒)、長く働くしかなく、高齢化で新しい機材も入れられない(411〜415秒)。歯科技工所の数は先の統計で20,278か所なので、「約2万」は実数とほぼ一致する。その先の見通しとして、松岡氏は二つの方向を挙げる。職人気質の技工士が付加価値の高い自費の補綴物を熟練の技で作る道と、機材を導入できる大型の技工所に集約される道だ(467〜481秒)。どちらに進むかは予測であり、確定した話ではない。医院の側の実感も語られる。石川氏は勤務先で一人で営む技工所に依頼しているといい(171秒)、新しい設備投資は「なかなか出来ないんですよ」(179秒)というやりとりが続く。CAD/CAM冠が中心になれば、医院としては別の技工所を検討したくなるのが現場の感覚だ、とも話す(187〜199秒)。依頼先が設備を更新できないことが、医院の選択を変えていく。ここに発注側の判断が入り込んでいる。医院から出ていく紙が、技工所の手間になっている対談の終盤、松岡氏は「歯科技工指示書って未だに紙じゃないですか」(527秒)と切り出す。石川氏も「僕は未だに紙ですから」(539秒)と応じ、複写式の用紙に書いて渡していると話す。その用紙は技工所が作って用意し、管理もしなければならない(551〜559秒)。松岡氏はこれを「明らかなDXの余地」(563秒)と呼ぶ。ただし、指示書だけを電子化しても意味がない、とも言う(595秒)。画面には「それらが全部つながったときにDXの価値が生まれる」(599秒)というテロップが出る。石川氏の言い換えでは、予約台帳、カルテ、傷病名、技工指示が連携すれば、形成の記録から「来週7番のインレーセット」「納品」までがつながる(615〜627秒)。だからアポイントまでデジタル化しないと意味がない(631秒)。技工所が減る話は、医院の予約と記録の仕方の話に着地する。院長が先に確かめられることここからは編集部の整理である。対談は、技工所を選べば解決するとも、デジタル化すれば技工士不足が止まるとも言っていない。言っているのは、技工の受け手と出し手が同じ流れの両端にいる、ということだ。そう読むと、医院で先に確かめられることがある。いま依頼している技工所は、誰が担い、何年先まで続けられる体制か。納期や再製作のやりとりに、医院側の紙や電話が何回挟まっているか。指示書に書いている情報は、カルテや予約の記録とどれだけ重複しているか。いずれも、技工所に問い合わせる前に院内で数えられる。技工士の数が減る流れを、一つの医院が変えることはできない。それでも、受け手が減るなかで「出す側の手間」を減らすことは、医院が自分で決められる範囲に残っている。元動画を見る歯科技工士がいなくなる!?【AI×デジタル】で激変する歯科業界(2025年7月3日公開)
1D編集部
2026年10月9日
「歯科医師の年収は上がる」を、自分の年収の話として聞いていませんか?――対談が挙げる3つの理由は、確かさの段階が違う

「歯科医師の年収は上がる」を、自分の年収の話として聞いていませんか?――対談が挙げる3つの理由は、確かさの段階が違う

「歯科医師の年収は今後上がっていきます」。1Dの対談動画は、この言い切りから始まる。出演者は110秒の時点で「上がります!」と答え、そこから理由を3つに整理していく。画面の左上にも「歯科医師の年収が上がる3つの理由」という見出しが出て、以後は「歯科医師・診療所の減少」「患者数・歯科医療費は減らない」「歯科医療の市場拡大」と小見出しが切り替わっていく。ただ、この話を自分の手取りの予想として受け取ると読み違える。3つの理由は、同じ強さの根拠で支えられているわけではない。統計で確認できるもの、割り算の結果として出てくるもの、まだ文書の段階にあるもの――性質の違う3つが並んでいる。本記事では、どこまでが確かめられる話で、どこからが見通しなのかを分けて読む。「上がる」と言われているのは、誰の、どの数字か動画が最初に片づけるのは、「上がる」の主語である。出演者は「インフレだからではないですね」(120秒)と断ったうえで、「令和6年度の診療報酬改定で収載されたんですけど」(125秒)「それは勤務医とか歯科衛生士とか歯科助手さんとかの話ですよね」(135秒)と続ける。賃上げを目的に新設された評価料はあるが、それは院長自身の収入の話ではない、という整理だ。ここは一次資料で確かめられる。令和6年度診療報酬改定で新設された歯科外来・在宅ベースアップ評価料について、厚生労働省保険局医療課の説明資料は、賃上げの対象となるのは「主として歯科医療に従事する職員(医師及び歯科医師を除く。)」だと明記している(令和6年度診療報酬改定と賃上げについて)。歯科衛生士・歯科技工士・歯科業務補助者などの賃金を引き上げるための点数であって、開設者である歯科医師は制度上その対象に入らない。制度としてすでに「上がる」仕組みが用意されているのは、スタッフの側である。「歯科医療者の年収は上がっていく」(115秒)という言い方と「自分の年収が上がる」という受け取り方の間には、一段の飛躍がある。動画の3つの理由は、その飛躍を埋めるために置かれた議論だと読むと構造がつかみやすい。一つめ・担い手が減る――確認できる部分と、確認できない部分一つめの理由として画面に出るのは「歯科医師・歯科診療所の減少」(205秒)である。出演者は「『医師・歯科医師・薬剤師統計』という統計があるんですけど」(250秒)と資料名を挙げ、「歯科医師数でいうと2176人とか」(255秒)「だいたい歯科医師の2%ぐらい減ってるんですよ」(260秒)と述べる。この数字は照合できる。厚生労働省の令和4(2022)年医師・歯科医師・薬剤師統計で、歯科医師数は105,267人、前回調査から2,176人・2.0%の減少。平均年齢53.0歳という点も「歯科医師の平均年齢って約53歳とかで」(285秒)という発言と合う(令和4(2022)年 医師・歯科医師・薬剤師統計の概況)。さらに、動画公開(2025年8月)より後に出た令和6(2024)年の同統計では、歯科医師数は103,652人、前回比1,615人・1.5%の減少だった(令和6(2024)年 医師・歯科医師・薬剤師統計の概況)。減少は続いているが、減り方は前回より緩んでいる。歯科診療所も、動画で語られた「今6万5千件台とかに突入したんですよ」(280秒)という水準をすでに下回り、医療施設動態調査の令和8(2026)年7月末概数で64,975施設である(医療施設動態調査)。「減っている」という向きは、一次資料でも確かめられる。一方、同じ箇所には確認できない話も混ざっている。出演者は「高齢化」と「女性歯科医師の増加」を合わせて「ダブルパンチ」(334秒)と呼び、女性歯科医師は男性と比べて「稼働率がちょっと下がるんですよね」(331秒)と述べる。ここには調査も出典も示されず、性別による働き方の差を前提にした推測になっている。本記事ではこの主張を採らない。統計で確認できるのは頭数の減少までで、「稼働量」がどう動くかは、それ自体が別に検証を要する論点である。二つめ・分母が減っても、分子が減らないなら二つめの小見出しは「患者数・歯科医療費は減らない」(215秒)。人口が減れば患者も減るのだから差し引きゼロではないか――「ニーズ側が減ったらトントンじゃね?」(400秒)という当然の反論に、出演者はこう答える。「人口の減りに対して歯科診療所に訪れる患者数って」「割と一定なんですよね」(410~420秒)。「患者数の絶対数は減るんですけど」(415秒)、「要は一人当たりの平均点が上がっているみたいな」(425秒)状態で、「トータルで考えると」「予算や医療費みたいなところは変わらない」(460~470秒)という見立てである。背景として挙がるのは、歯科医院が「健康な人も来るっていう場所になりつつある」(430秒)という変化だ。治療のためだけでなく、予防や管理のために通う人が増えれば、来院一人当たりの点数は上がる。分子にあたる歯科医療費が横ばいで、分母にあたる担い手が減るなら、「相対的に年収は上がるじゃんって話ですけど」(475秒)という結論になる。割り算そのものは筋が通っている。ただし出てくるのは全体の平均であって、個々の医院の数字ではない。出演者はこのあと「1990年代頭とかぐらいの水準になるんですよ」(485秒)「バブル末期ぐらいの水準になる」(495秒)と時期まで挙げるが、その試算の中身は示されないため、本記事では水準の話は扱わない。自院に引き寄せるなら、問われているのは「患者が何人来たか」ではなく「一人当たりで何をしているか」のほうである。三つめ・市場の拡大は、まだ点数ではなく文書の段階にある三つめの小見出しは「歯科医療の市場拡大」(570秒)。根拠として挙がるのは、「先々月ぐらいに公表された」(565秒)「『経済財政運営と改革の基本方針2025』」(570秒)、いわゆる骨太の方針である。そこに「いわゆる国民皆歯科検診みたいなもの」(580秒)が含まれており、歯周病と全身疾患の関連について「エビデンスが出てきてるってことは明らかじゃないですか」(590秒)と続く。ただし出演者自身が「僕も見てないのでちょっと分からないですけど(笑)」(535秒)と置いているとおり、この三つめは文書を読んだうえでの説明ではなく、報じられた範囲での見通しとして語られている。編集部で確認した範囲では、「経済財政運営と改革の基本方針2025」は令和7年6月13日に閣議決定されており(内閣府)、その歯科関連の記載として日本歯科医師会は「生涯を通じた歯科健診(いわゆる国民皆歯科健診)に向けた具体的な取組の推進」「歯科医師の不足する地域の分析等を含めた適切な配置の検討を含む歯科保健医療提供体制の構築と強化」などを引用している(日本歯科医師会)。方針に位置づけられていること自体は確かめられる。ただし、方針に書かれることと、点数が付くことと、実際に収入が動くことは、それぞれ別の段階である。一つめが統計の話、二つめが割り算の話だったのに対し、三つめはまだ文書の話にとどまる。出演者が「多分しれっとフェードアウトするんじゃないか」(530秒)という可能性にも触れているとおり、ここは確定した話として数えないほうがいい。「上がる」を、待っていい話として読まない動画の結論は、意外と威勢のいいものではない。「現状のパイでどうなるっていうのを予測するんじゃなくて」(645秒)「本当にでっかい施策で変えていく必要もあるぞ」(655秒)。画面には「『時代を作り上げるんだ』という主体的な努力が必要」(650秒)という大きなテロップが出る。市場が広がるかどうかは、担い手が何をするかにかかっている、という着地である。そのうえで出演者は、「小さい虫歯を見つけて削って詰める歯医者がいるので」(665秒)と言いよどみ、「『健康は口から作る』という意識で歯科医療に取り組んでほしい」(685秒)と述べる。行政の側に「歯科医師を抑制しろ」(610秒)という議論があるなかで「担い手もたくさん必要だ」(620秒)と言い返すには、その説明を日々の診療の中身で裏づける必要がある――という順番だ。これは出演者の立場からの主張であり、制度の決定を予測したものではない。タイトルは「【朗報】」で始まるが、中身は朗報の受け取り方の話だった。確かめられるのは、担い手が減っているという統計までである。その先の「だから一人当たりは上がる」は条件つきの割り算で、「市場が広がる」はまだ方針文書の段階にある。来期の計画をこの見通しの上に立てるのは早い。先に見ておきたいのは、全体の平均で起きていると言われる変化が、自院でも起きているかどうかのほうだろう。元動画を見る【朗報】歯科医師の年収は今後上がっていきます(2025年8月7日公開)
1D編集部
2026年10月6日
「紙でも回っているから」で、予約台帳を続けていませんか?――回しているのは仕組みではなく、受付に立つ人かもしれない

「紙でも回っているから」で、予約台帳を続けていませんか?――回しているのは仕組みではなく、受付に立つ人かもしれない

予約システムの話は、たいてい「便利そうだ」から始まります。1Dの対談動画「【歯科医院】予約システムを絶対導入すべき理由」は、そこから入りません。画面の章立てテロップで最初に出るのは「導入しない医院がある理由」です。導入を勧める回でありながら、対談はまず、入れていない医院の側の理屈を言葉にするところから始めます。
対談が先に説明するのは、メリットではなく「入れない理由」
出演者が挙げる理由は、意外なほど単純です。「紙の予約台帳で回っちゃっているからですよね」「回るからいっかみたいな」。実際、紙の台帳でも「回るっちゃ回るじゃないですか」と対談は認めます。そのうえで、入れない側の言い分として「いらないって思っている人も」いること、規模が小さければ「そんなに経営インパクトはないので」と判断されること、そして「めんどくさい」「分かんない」という感覚が残ることを並べます。
ここは記事として重要なところです。導入しない理由が「知らないから」ではなく「困っていないから」だと整理されると、検討の問いが変わります。問うべきは「便利かどうか」ではなく、今の台帳で回っている状態が何によって成り立っているか、になるからです。
紙でも回る。ただし、回しているのは誰か
対談はその答えを、笑いながら一言で言います。「歯科助手さんや歯科衛生士さんが頑張ってるから」。後半でも「スタッフがみんな取ってくれていると思うんですけど」という言い方が出てきます。つまり紙の台帳が回っているのは、台帳の性能ではなく、人が差分を吸収しているからだ、という見方です。これは出演者の解釈であって、何かの調査で示された結論ではありません。それでも、院長が自院を点検するときの問いとしては具体的です。
もう一方の軸は、人が頑張っても残るものです。出演者は「先生ちょっとこの前のやつ漏れてましたよ」と言われた経験を挙げ、前日や「もう1週間前とか」の連絡は「紙じゃできないので」と述べます。「僕も絶対忘れちゃうんで」という自分の患者としての感覚も添えられます。期待されているのは、来なかった人を責める仕組みではなく、「来ていなかった人がリマインドによって来る」という取りこぼしの回収です。待たせ方や遅刻への対応は、この回では扱われません。
「ペーパーレス」と「DX」は違う、と対談は線を引く
中盤で、対談は自分たちの話に注釈をつけます。画面には「ペーパーレスとDXはちょっと違う」という言葉が出ます。紙をやめて画面に置き換えただけで「何の連携もできない」なら「それDXって言わなくない?」「それじゃあんまり意味ないですよね」というわけです。
では何が違うのか。対談が例に出すのは、予約に「何の治療をしたとか」の記録が紐づく状態です。気をつけたい患者に「カルテにマークとかつけていた」、しかも「隠語にしている」という院内の工夫が語られ、それを人の記憶や符丁ではなく、いわゆるサブカルテや患者管理(CRM)として持つ、という整理になります。出演者は「その考え方は結構一般企業だと当たり前」だと言い、連携が生まれると「新しい提案ができるみたいになった」と続けます。
もっとも、ここで言われる「提案」は自費の販売の話にも触れています。本記事はその是非には立ち入りません。記録が次回の判断材料になる、という範囲で読むのが妥当なところです。
おすすめの製品は出てこない。出てくるのは機能の条件
この回のもう一つの特徴は、具体名を出さないことです。出演者は「ここでおすすめの予約システムみたいな」話はしない、と明言します。理由も率直で、「角が立つし」「これがいいとかって全部見比べたことないし」。代わりに示されるのが、章立てテロップで「これは外せない必須機能」と見出しのついた条件です。
挙がるのは三つの方向です。患者情報と「顧客管理的に連携ができるもの」。大きなテロップで出る「LINEでリマインドできる機能はあるべき」。そして、ホームページにウェブ予約の入口がある場合に、空いている枠を含めて「予約状況を一括管理できる機能があると良い」こと。最後の点について出演者は「アポ帳が患者側からも見える」状態だと言い換えます。加えて、選ぶ側の留保も置かれます。「あんまり使いにくいものを導入したくないじゃないですか」「コストバランスは考えるべきだと思うんですけど」。
製品名が出ない以上、この回は比較表の代わりにはなりません。使えるのは、自院が何を解決したいのかを先に決めるための項目として、です。
費用の話は最後に出てくるが、回収の計算は示されない
費用に触れるのは終盤です。出演者は月々の負担感に言及したうえで、「計算はできないですけど」と前置きし、患者側の使い勝手の向上まで含めれば「十分元は取れそうですけどね」と述べます。前半でも「投資に対してそこまでの不利益性はなさそうですよね」という言い方が出ますが、同時に、規模が大きくなければ回収できるかどうかが変わる、という指摘も置かれています。
本記事では、この回で挙がる金額も普及率の数字も書きません。金額は出演者がその場で口にした体感で、回収の計算は本人が示していないと述べているためです。普及率についても、出演者自身が「民間の調査しかないんですけど」「公式的な統計ではないんですけど」と断っており、調査名も年次も示されません。確かめられるのは数字ではなく、順番のほうです。紙で回っているなら、まず誰の手数でそれが成り立っているかを見る。そのうえで、前日の連絡と記録の引き継ぎを人の記憶から外せるか考える。製品を見比べるのは、その後でも遅くありません。
元動画を見る
元動画を見る(2025年8月14日公開)
1D編集部
2026年10月5日
「口コミを増やす方法」を探していませんか?――対談が先に分けるのは、低評価をなくす話と、高評価を増やす話

「口コミを増やす方法」を探していませんか?――対談が先に分けるのは、低評価をなくす話と、高評価を増やす話

口コミの評価を上げたい、という相談は、たいてい「どう増やすか」の話から始まります。1Dの対談動画「歯科医院が口コミ高評価を獲得するための戦略とは」は、そこから入りません。画面に出るのは「高評価を増やす」と「低評価をなくす」という二つの言葉で、対談はまずこの二つを分けます。どちらも星の数を動かす話ですが、向き合う相手が違うからです。
星の数が重いのは、患者が探す場所がそこにあるからだ
対談が重要性の根拠に置くのは、患者の探し方です。出演者は「飲食店とかでもとりあえず見るじゃないですか」と前置きし、「みんなGoogleマップで探してますからね、歯医者とか」と続けます。画面にも「口コミ獲得は超重要」というテロップが出ます。「Googleに牛耳られてますからね」という言い方は出演者の表現ですが、議論の前提はそこで固定され、以降は「これは基本Googleマップの話なので」と範囲を限って進みます。
もう一つ置かれるのは、一件の重さです。出演者は、書いた人が一人でも「結構めちゃくちゃ拡散性が高い」と述べ、「流されやすい性質はありますからね、人間」と付け加えます。そして「良いものも当然一緒で」「結構単純なものなので」と、負の方向にも正の方向にも同じ力が働くという見方を示します。ここまでは、評価を上げたいという話ではなく、評価が効いてしまう理由の説明です。
対談が最初にするのは、「なくす」と「増やす」を分けること
「どうやったら高評価を獲得できるんですか?」という問いに対し、画面には「高評価を獲得する方法」という見出しが出て、その下に「高評価を増やす」「低評価をなくす」という二つが並びます。順番としては、低評価の側が先に扱われます。
分ける理由は、中身が違うからです。低評価には、診療への不満だけでなく「事実無根だったりとか」が混じる、と出演者は言います。一方で高評価は、書いてもらう相手が目の前の患者です。同じ星の数を動かす作業に見えても、前者は投稿した誰かへの対処で、後者は日々の診療と伝え方の話になります。編集部の整理としては、この二つを一つの「口コミ対策」にまとめてしまうと、打ち手を取り違えやすい、という読み方ができます。
低評価は、消す話ではなく、相手が誰かの話になる
低評価について、出演者は「Googleの口コミって削除できないんですよ」と述べます。だから働きかける先は媒体ではなく「投稿した人に」なり、「内容証明を送るというパワープレイですけど」という手段や、「これはもう容赦なく弁護士の先生を使って訴える」という選択が語られます。出演者自身も「いかついですよね」と言い添えています。
ここは、記事として踏み込める範囲が限られます。削除の可否や法的手段の見込みは、投稿の内容と媒体の規定、そして法律の専門家の判断によって変わります。動画内では請求できる金額にも言及がありますが、根拠となる事案や算定の説明は示されないため、本記事では扱いません。実際に動くときに最初に確かめるべきなのは、金額ではなく、その投稿が媒体の削除基準に当たるかどうかと、弁護士に相談すべき事案かどうかの切り分けだと言えます。
付随して出てくるのは、書く人が偏るという話です。出演者は「結構関係ない歯科医院の口コミとか見ちゃうんですけど」と自分の習慣を挙げつつ、強い言葉を書く「キャラクター」はいる、満足した人は「わざわざ書かないですからね」と述べます。星の平均は患者の満足の平均ではない、という前提は、ここから読み取れます。
「増やす」側の前提に置かれるのは、依頼の文面ではなく信頼だ
では高評価を増やすコツは何か。問われた出演者の答えは「真摯に向き合って頑張るみたいなところしかないとは思うんですけど」でした。期待されたテクニックが出てこないという意味ではなく、画面にはこの区間で「患者さんからの信頼を得ることが前提」という一文が大きく表示されます。対談の結論に近い位置に置かれているのは、この一文です。
具体例として挙がるのは、診療室の外の接点です。「夏祭りみたいなのがあったら出展したりとか」という例から、「地域とか地盤で評価を集めていくみたいな」という方向が示されます。出演者はこれを簡単だとは言わず、「なかなか難しいところなのかなとは思いますね」と留保しています。医院の努力で星が上がると保証する話ではありません。
同時に、全員から高評価は取れないという前提も置かれています。日々の意見は「バイネームで言われていることもあるんじゃないかというぐらい」届き、「嫌いな人は嫌いですから」とも語られます。信頼を前提に置くという言い方は、評価をゼロリスクにする方法ではなく、動かせる場所がそこにしかないという意味だと読めます。
「書いてくださいね」と「星5つけてくださいね」の間に、線がある
依頼の仕方については、対談のなかで線引きが示されます。出演者は「『口コミ書いてくださいね』はややOKだったと思うんですけど」とし、「『星5つけてくださいね』みたいな」依頼は「買収みたいになっちゃって」と退けます。歯科治療をして何かを渡す例も、言いかけたところで自分で打ち切っています。
「その他にテクニカルに高評価を集める方法」についても触れられます。ウェブサイト上で星5を付けさせるようなツールの存在が挙げられ、しかし「今言ったみたいなのは『ダメだろ』っていうことが分かると思うので」と続きます。代わりに語られるのは、「星1〜5まで選んでどうしますか?」と委ねる形と、「すごく良くしていただいてありがとうございます」という言葉から始まるやりとりです。出演者はそれを、要は「ポジティブな評価だったら評価お願いします」ということだ、と自分で言い直しています。
この線引きは、感覚の問題ではなく規定の問題でもあります。Googleのユーザー投稿コンテンツ ポリシーは「評価の操作」として、「クチコミの投稿や否定的なクチコミの修正または削除と引き換えに、インセンティブ(金銭的報酬、割引、無料の商品やサービスなど)を提供する行為」を禁じています(出典:Google マップ ユーザー投稿コンテンツ ポリシー https://support.google.com/contributionpolicy/answer/7400114?hl=ja / ビジネス プロフィール側の案内では「虚偽のエンゲージメントと見なされ、固く禁じられています」と記載 https://support.google.com/business/answer/3474122?hl=ja )。また、事業者が第三者に依頼して投稿させる表示は、景品表示法のいわゆるステルスマーケティング規制(令和5年10月1日施行)の対象になり得ます。消費者庁は、広告には「企業がインフルエンサー等の第三者に依頼・指示するものも含まれます」としています(出典:消費者庁 https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/stealth_marketing/ )。
なお、「満足した人にだけ声をかける」という依頼の仕方そのものを禁じる明文は、上記の日本語のポリシー文面では確認できませんでした。編集部としては、禁止・容認のどちらとも断定しません。確かめられるのは、対価を渡す依頼は明確に禁止されていること、そして対談の出演者自身が、星の数を指定する依頼には「ダメだろ」と線を引いていることです。自院で文面を決める前に、使っている媒体の現行規定を一度読み直すのが順番だと言えます。
元動画を見る
元動画を見る(2025年9月11日公開)
1D編集部
2026年10月4日
「開業すれば、思うように診療できる」で準備していませんか?――手に入るのは診療環境で、先に減るのは診療の時間

「開業すれば、思うように診療できる」で準備していませんか?――手に入るのは診療環境で、先に減るのは診療の時間

開業の理由をたずねると、返ってくるのはたいてい診療環境の話です。使いたい機材、やりたい治療、自分の判断で進められる診療。1Dの対談動画「「こんなはずじゃなかった…」開業後に後悔しないために知るべき3つの落とし穴」は、その動機を否定しません。ただ、開業で手に入るものと、開業後に減っていくものは別の種類だ、という整理から入ります。
落とし穴は、診療の腕の話ではない
対談が最初に置くのは、勤務医の開業動機です。出演者は「割と勤務医の先生で多いのが」と前置きして、「自分の城で自分のこの診療環境で好きに治療ができるという」期待を挙げます。そのうえで、「自分の診療の城を持ちたい!」という意図だとうまくいかないことが多い、と続けます。
理由として置かれるのは、開業が診療の延長ではないという一点です。「会社はシンプルに起業しているわけじゃないですか」と並べられ、考えることは違う、と整理されます。出演者は「実際やってみたらそのギャップに苦しむ人は多い」と述べ、歯科医師は開業する人が7割ぐらいだという見方も口にします(この割合は出演者の発言で、動画内に出典は示されません)。
そして画面には「歯科医師が開業前後に感じるギャップ」という見出しのテロップが出て、以降は「コスト意識の違い」「スタッフマネジメントの難しさ」「採用の難しさ」という三つの小見出しが順に切り替わっていきます。落とし穴という言葉は使われていても、避けられない罠の紹介ではなく、知っていれば驚かずに済むことの列挙として語られています。
一つめ・コスト意識の違い――院長の時間は、診療以外へ流れていく
「歯科医師は診療がメインじゃないですか」。そう確認したうえで、開業すると途端にそれ以外の業務が増える、という話になります。出演者が挙げる体感は具体的で、歯科医院の院長の業務時間のうち「7〜8割は歯科医師じゃなくてもいい業務に使っている」という言い方が出ます。これは出演者の見立てであって調査の数字ではなく、本人も待っている時間なども含めたトータルの話だと補っています。
中身として挙がるのは、「非医療業務とまでは言わないけれども」という留保つきの、いろいろな雑務です。お金の扱いも入ります。診療だけに集中していたところから、「この材料は〇〇円だ」とかが自分で分かってしまう。勤務医のときは視界に入らなかったものが、開業後は診療のあいだも視界に入り続けます。「こんなはずじゃなかった…」が生まれるのは、診療が下手になったからではなく、診療に充てられる時間と注意の配分が変わるからだ、という筋です。
二つめ・スタッフマネジメントの難しさ――「人間関係」で止めると、打ち手が出てこない
二つめのテロップが出るのは、話題が人に移ったところです。歯科衛生士も歯科助手もほぼ女性で、若い人が多く、ライフイベントによる離職も起きる。そのうえで出演者は、人間関係が原因でみんな辞めていくという研究がある、という言及をします。
対談がそこから一歩進めるのは、その人間関係が誰と誰のものかという点です。歯科衛生士同士ではなく、院長を指しているのではないか。「原因は院長にある」という言い方まで出ますが、研究の名称も出典も動画内では挙がらないため、ここは出演者の解釈として読むのが妥当です。
いずれにしても、ここで必要になるのは診療の技術とは別の仕事です。「自分のCRだけで食っていけるという人は本当にごく一握り」で、マネジメントをしなければならない――「自分なりの診療がしたい」と意気込んで開業した人ほど、この部分が重く効いてきます。
三つめ・採用の難しさ――採れる採用と、採れない採用は別物である
三つめで対談が分けているのは、同じ「採用」でも性質が違う二つです。
開業時のオープニングスタッフは人気の求人で、「多少条件が普通でも全然応募が来る傾向にある」と言います。問題はその後で、運営していくなかで必要になる欠員の募集では、応募が全然来ない。しかも開業した後すぐ辞めてしまうアルバイトや助手もいる、という話が重なります。新規開業という珍しさが効いているあいだと、一人分の欠けを埋めたいだけの募集とでは、応募する側から見た魅力がそもそも違う、という理解になります。開業前の採用がうまくいったことは、その後の採用の予告にはなりません。
出演者は有効求人倍率が20倍を超えていると言われる、とも述べています。この数字の出典も動画内では示されていませんが、採用は本当に採れない、という言い方は対談のなかで繰り返されます。
ギャップは、分解してから準備する
対談の締め方は、脅しではありません。出演者は、開業前後で感じるのではないかというギャップを分解して、雑務が多い、マネジメントが大変だ、というところまで具体にしてから準備してほしい、という言い方をします。先に経験した側からは「開業前よりも想像を超えて大変だよ」という声も紹介されます。
裏を返せば、分解できたものは準備の対象になります。診療以外の時間が何にどれだけ使われるのか、開業時の採用と欠員補充の採用をどう分けて考えるのか。開業の判断そのものを止める話ではなく、「こんなことあるんだな」を開業後ではなく開業前に済ませておく、という提案です。
対談そのものは、具体的な手順書ではありません。出演者も、いろいろな問題が待ち受けていると伝えたうえで「頑張ってください」と送り出す程度の締め方をしています。それでも、開業で手に入るのは診療環境であって時間ではない、という一点だけは、開業計画のどの段階にいても自分の前提と突き合わせられるはずです。
元動画を見る
元動画を見る(2025年9月25日公開)
1D編集部
2026年10月3日
「開業はいつにするか」から考えていませんか?――先に動かなくなるのは、引退する側の日付だった

「開業はいつにするか」から考えていませんか?――先に動かなくなるのは、引退する側の日付だった

開業のタイミングは、たいてい手前から考える。研鑽を何年積むか、資金がいつ貯まるか、勤務先でどこまで任されるか。1Dの対談動画「歯科医師が後悔しないキャリアの歩み方」は、その順番を逆から置く。先に置かれるのは開業ではなく引退で、そこから手前を数えると、同じ一年の重さが変わって見えてくる。
対談が先に置くのは、開業ではなく引退の話
対談は「歯科医師も当然引退するタイミングがくる」という一言から入り、画面には「独立・引退のタイミング」というテロップが出る。いつ独立すべきかを論じる回でありながら、独立の話の前に引退の話が置かれている。
出演者が挙げる引退の理由は、身体のことだけではない。「目が見えなくなるとか腰が痛くなるとか」に続けて、「それ以外に引退すべき理由」として「もう疲れちゃった」という言い方が出る。長く続いたスタッフが辞めた、個別指導が入った、子育てが終わった――そうした場面が並び、「じゃあセカンドライフを送ろう」という流れはよく聞く、と語られる。
つまり引退は、ある日の体調で決まるというより、いくつもの事情が重なったところで決まる。出演者はそれを「なんとなくで開業して、なんとなくのモチベーションで独立してしまうと」という言い方と対にして置いている。決め方が曖昧なまま始めたものは、終わり方も曖昧になる、という含みである。
引退の日付が動かないなら、手前の一年の意味が変わる
この回の背骨は、中盤の一文にある。「つまり引退するタイミングっていうのは一定なので」。
そこから先の計算は単純である。「歯科医師として稼働できる年数って限りがある」「65歳・70歳で引退するとしても、できる年数は限られている」。具体的には「35歳で開業して65歳で引退したら30年間しかできないわけですよ」と言う。だから「なるべく早めに開業した方が生涯年収は上がる」し、「ゴールを考えた上で開業のタイミングを考える」ことになる。
この見方が効いてくるのは、途中の遅れをどう数えるかのところである。出演者は歯学部の留年を例に出し、失っているのは学費と生活費の一年ぶんだけではない、と言う。「留年することによって最後の一年が押し出されちゃっている」。終わりが動かないのだから、手前で一年遅れれば、削られるのは最も脂の乗った時期ではなく、最後の一年である。
留年に限った話ではない。勤務先を決めかねて過ごした一年も、開業を見送った一年も、同じ計算に乗る。なお対談で挙がる留年費用の金額は出演者がその場で口にしたもので、大学や学年によって異なる。ここで確かなのは金額ではなく、押し出される先が決まっているという構造のほうである。
それでも「早いほどいい」で終わらない
対談は早期開業を勧めて終わらない。すぐに反対側の事情が置かれる。「自分のスキルとかいろんなことを身に付けないと開業できない」と考えれば「研鑽を積む期間」が要る。35歳で開業するなら勤務は10年ほどで、「10年で習得できるものがどれくらいあるのか」という問いが残る。
出演者は自分の経験も挟む。久しぶりに支台歯形成をやってみたら「ガッタガタで『こんな感じだっけ?』って思って」、「できそうだなって思っていたけど、もう全然できない」。手は離れた分だけ落ちる、という実感である。
結局、対談が置くのは答えではなく二つの向きだ。生涯年収で考えれば早いほうがいい。技術で考えれば積む時間が要る。出演者の言葉では「いつ・どこのタイミングでそのスキルを身に付けて、どれぐらいで開業するか・独立するか」を「設計していかなきゃいけない」。どちらかが正解なのではなく、両方が同じ一本の時間を取り合っている。
引退の時期は、自分の都合だけでは決まらない
引退の側にも、自分で動かせない要素がある。「ある程度アクシデントがない限りは」、60歳・70歳になれば30代ほど細かいものは見えず、「多少の衰えは出てくるのが予見される」。ここまでは自分の話である。
もう一つは相手の話だ。「後継者がいるか・いないか」。出演者は「継がせることができる相手がいるのかみたいなのも、だいたい分かるじゃないですか」と言い、それを早く知ることの意味をこう置く。引退するタイミングと継ぐタイミングが同じでは「もうちょっと遅い」。「継ぐ相手がいないんだな」と気づいた瞬間から、「キャリアプランとしてそこは設計していかなきゃいけない」。
引退の日付は自分で選べても、渡す相手が現れる日付は選べない。だから気づく時期のほうを早める、という順序である。
閉めるのか、渡すのか
医院をやめる出口は一つではない。対談では「M&Aという売却する」道と、「シンプルに親族なのか、関係性の高い勤務医とかに継承もしくは承継する」道が並べられる。
出演者はここで、いま起きていることとして「歯科診療所は微減している」と述べる。この点は統計で確かめられる。厚生労働省の令和6(2024)年医療施設(動態)調査によれば、歯科診療所は同年10月1日現在で66,378施設、前年から440施設の減少である。歯科医院の数が一気に増えた時期に開業した院長が「だいたい今65歳とかに差し掛かっている」という対談の見立ては、この減り方と地続きに置かれている。
だから閉めるのはもったいない、と出演者は言う。何十年も続けた医院には「そこに根づいている患者さん」がいて、「地域医療に貢献している医療機関が一つなくなってしまう」ことになる。「引退だ」と言って「閉める」と言えば、その患者はもう誰にも診てもらえない。
ただし渡す側にも難しさがある。親族への承継は「やりやすい側面もあるけど、やりにくい側面はめちゃくちゃあるでしょうね」と語られ、継ぐつもりだった子がうまくいかずに辞めた例も挙がる。第一選択肢が子どもであること自体は否定されないが、そこで決まるとは限らない。
対談の二人は最後に「引退もクソもない、まだ若造二人で話した結論ですけれども」と断っている。だから、この回から持ち帰れるのは引退の作法ではない。出口の日付が先に決まっていると仮に置いてみると、手前の一年ごとの意味が変わる――その置き方のほうである。そして出演者は、考え始める時期について「実はもうちょい早い方が」「早めに考えておかないといけない」と言い添えている。
元動画を見る(2025年10月30日公開)
1D編集部
2026年10月2日

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