コンポジットレジン修復を速く終えたいとき、まず短くしようとするのはどこだろうか。1Dの「25分間」ミニセミナー「「保険 × 高速」でCR修復を行うテクを伝授します」で、講師が時間のかかる場所として挙げたのは、レジンを盛る作業そのものではなかった。雰囲気でレジンを盛っていくと、時間を取られるのは形態修正と咬合調整だ、と講師は言う。そこを短くすれば臼歯部の修復はさらに短時間になるはずだ、というのが講義の軸になっている。本稿では、スライドと自動字幕で確認できた範囲で、講師の主張・経験と編集部の解釈を分けて整理する。
講師が最初に示すのは、接着が臨床にもたらした最も大きな利点だ。従来の2級窩洞の形成では、う蝕の大きさや対合関係に加えて、外形線を自浄域に置く「予防拡大」が外形を決める要素の1つになり、隣接面の部分を広げる必要があった。コンポジットレジン修復であれば、う蝕の部分を除去し、窩洞の外形全体を滑らかな曲線に整えれば形成は終わる、と講師は説明する。
さらに講師は、従来の修復では除去しなければならなかった部分のエナメル質を残せること、外開きの箱形の形成も不要になることを挙げる。接着によって、削る量の基準が「修復物を保持するため」から「う蝕を取り除くため」へと移った、ということだ。講師はこれを、歯科医師にとっても患者にとっても大きな福音だと表現する。
では、どうすれば修復の時間が縮むのか。講師が繰り返すのは、複雑な窩洞をできるだけ単純な窩洞に持っていくという考え方だ。前歯でも臼歯でもこれを考えるべきで、その道筋に沿ってレジンを充填していけば時間の短縮が可能になる、と講師は言う。
前歯の破折症例で講師が示す手順は、こうだ。印象を採って模型上でワックスアップをし、シリコンガイドを作る。エナメル質だけを選択的にエッチングし、水洗・乾燥の後に接着材を塗布する。このときエナメル質はエッチングされているので、エッチングパターンを壊さないようにそっと塗るという。そしてシリコンガイドを使って舌側の壁(バックウォール)を作る。この壁ができれば、あとは色調をコントロールするペーストとエナメル質用のペーストを積み上げていくだけで、想定した形ができあがる、と講師は話す。
講師が紹介するもう1つの破折症例は、高校生のころにスキーで歯を折り、20年以上もっていた修復物が昼食中に外れたという患者だ。外れた修復物をもとにシリコンガイドを作り、バックウォールを作った後、隣在歯との間に隔壁とくさびを入れて接触点を作り、隔壁を外して唇側にペーストを盛り、形態修正と研磨で終える。講師の経験として語られる症例で、その後も外れずに経過している、という。
臼歯部でも考え方は同じだ。講師は1級の複雑窩洞の症例で、まず頬側にペーストを置いて壁を作り、複雑窩洞を1級の単純窩洞に変える。そこから咬頭を1つずつ、レジンを入れて光を当てる作業を繰り返していく。2級窩洞や大きな1級窩洞では、エナメル質だけを選択的にエッチングすることを勧める、とも述べている。
この講義で講師が最も具体的に語るのが、充填のときの形のイメージだ。目標は咬頭を作ることよりも、咬頭と咬頭の間の溝を作っていくこと。そしてもう1つが、それぞれの咬頭の内斜面に沿わせることだという。講師は、これによって元あった形に戻す「原形態の回復」が可能になり、これが保存修復における形態付与の大きな原則だと説明する。
元の形はもうないのだから元には戻せない、と言われれば、そうですねと言うしかない、と講師は認める。それでも、たとえば下顎第一大臼歯なら標準的な解剖学的形態をイメージすること、そして咬頭の内面はそれぞれの歯に残っているので、そこに沿わせること。そうすれば咬合調整はごくわずかな時間で済む、と講師は話す。充填の前に歯をじっと見ていると形がだんだん見えてくるので、その形に合わせて内斜面に沿わせていく、という助言も添えている。
編集部の解釈としては、ここが講義タイトルの「高速」の中身だろう。手を速く動かすことでも工程を省くことでもなく、最初から元の形に近いものを盛ることで、後の削り直しを減らす。時間を縮める場所を、充填の後工程に見ている点が、この講義の特徴といえる。
講師は、こうした手順を支える接着の仕組みにも時間を割く。接着システムは、1970年代のトータルエッチングから始まり、3ステップ・2ステップのエッチアンドリンス、セルフエッチング、シングルステップを経て、現在多く使われるユニバーサルアドヒーシブへと進化してきた、と講師は整理する。
エナメル質については、リン酸エッチングがゴールデンスタンダードだという。スライドには「リン酸エッチングの効果」として、表層から10μmを除去(清掃作用)、粗造面の形成、接着面積の増加、表面自由エネルギーの向上(ぬれ性)、レジンタッグの形成(投錨効果)の5つが示される。講師はさらに、エナメル質の最表層は構造の異なる層でエッチングパターンができにくいため、最表層を一層削除してからエッチングする操作がある、と説明する(講師はこの層の厚みにも触れるが、スライドで確認できなかったため本稿では数値を載せない)。
象牙質は有機質と水分に富み、象牙細管の中にも組織液があり、深さによって構造が一様ではない。う蝕による変化も加わるため、一様に接着させるのは難しかったが、セルフエッチングシステムで培われた技術が高い接着耐久性につながっている、と講師は言う。ユニバーサルアドヒーシブは製品によって含まれる水の量や成分、重合方式が異なるため、組成と性質をよく理解して使う必要がある、という指摘も添えられる。間接修復では、ユニバーサルアドヒーシブをプライマーとして使い、レジンセメントと接触したところから重合が進む機能が、脱離しにくさにつながる重要な点だと講師は述べている。
講師は、コンポジットレジン修復の弱点にも触れる。まだ解決できていないのが重合収縮だという。接着していない状態で光を当てると、レジンは中心に向かって縮もうとする。窩洞の中に接着の弱いところがあれば、強いところに引かれて弱いところにギャップができる。エナメル質にはしっかり付いていても、今度はエナメル質の側に亀裂が入ることもある、と講師は説明する。こうした問題を減らすために行われているのが、フロアブルレジンによるライニングや、斜めに積み重ねていく積層充填だという。
もう1つは摩耗だ。講師は、直接咬み合う部分だけでなく、食物などによって表面のフィラーが取れて減っていくことを示し、大きなフィラーが脱落すると摩耗が大きくなると説明する。細かいフィラーを高密度に充填する技術が進み、摩耗の問題にも良好な予後が期待できるようになってきた、というのが講師の見立てだ。講義の終盤では、約10年経過した臼歯部の症例を示し、研磨性が良好だったことに注目してほしいと述べる。ただし講師自身が、これは対合歯がしっかり咬合していることや、その患者の咀嚼のパターンも関わっていると思う、と留保している。
講師の名前と所属、症例に使われた製品名、講師が挙げたエナメル質最表層の厚みや象牙細管の比較、レジンセメントの厚みなど、スライドで確認できなかった数値は扱っていない。自動字幕で聞き取りが不確かだった部分も採っていない。動画のタイトルにある保険診療での具体的な算定や材料の選び方は、YouTubeで公開されている前半部分では詳しく語られていない。本稿は講義内容の整理であり、個々の症例での術式の選択は、各自の判断と最新の製品情報に基づいて行ってほしい。
このミニセミナーはセミナーの前半部分です。続きは
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