質の高いダイレクトボンディングを行うために、特徴や治療の中で使用するボンディング材について把握しておきましょう。
ダイレクトボンディングとは、レジンにセラミックの粒子を混ぜたハイブリッドセラミックでおこなう直接的な詰め物のことを指します。
白い詰め物としてコンポジットレジンが有名ですが、長期間使用すると変色したり、摩耗する点が欠点であり、それらをある程度補えるのがダイレクトボンディングです。セラミックの粒子が加わることで強度や審美性が上がるため、コンポジットレジンよりも長持ちします。
間接法は、型取りをして詰め物や被せ物を口腔外で作成し、接着する方法を指します。一方で治療開始から終了までをお口の中で行う方法を直接法といい、ダイレクトボンディングやコンポジットレジンがそれに当てはまります。
間接法よりも直接法の方が歯を削る量が少なく、境目が分かりにくいメリットもあることから、歯の健康だけでなく審美性も重視したい方におすすめです。
また、人工物と天然歯の間にすき間ができにくいため、二次う蝕などのトラブルも間接法にくらべて多くはありません。治療法として選択が可能な場合は、積極的に提案してみましょう。
30代の男性の方です。6年前に入れた右下第一大臼歯のインレーを白くしたいとご希望があり、ダイレクトボンディングをすることになりました。
入っていたインレーを除去して目立った虫歯がないかをチェックします。幸い虫歯はなく、追加で歯を削らずにダイレクトボンディングの治療を開始できました。
詰めた後は噛み合わせをチェックして必要であれば調整、問題がなければ終了です。間接法よりも二次う蝕のリスクは低いですが、良い状態を維持するためにも定期検診をおすすめします。
間接法の場合、製作した詰め物や被せ物がすでに硬い状態で届くため、虫歯のある部位よりも少し広く削る必要があり、場合によっては神経を残せない可能性もゼロではありません。
一方で直接法は流動性のある素材を窩洞に入れた後に硬化させるため、問題のある部位のみを削ることができます。間接法にくらべてヒビや破折のリスクは少ないといえるでしょう。
使用する接着剤にもよりますが、間接法より接着力が悪くなることはほぼありません。接着力が高ければそれだけ脱離や二次う蝕のリスクも少なくなります。劣化のしやすさは接着剤の種類によって異なるため、事前にご確認ください。
質の高いお手入れと、定期検診を合わせることでより長く使い続けることが可能です。
間接法の場合、歯科医師のやり方によっては境目の溝が目立ってしまうことがありますが、直接法であるダイレクトボンディングはフィット性が高く、境目が目立つ心配がありません。そのうえセラミックが含まれているため、天然歯に近い色合いで仕上げられます。
セラミックには表面に汚れや傷がつきにくいという特徴があることから、虫歯や歯周病予防にも効果的です。
間接法だと最低でも2回の来院が必要ですが、直接法であるダイレクトボンディングは1回で済み、患者様の負担を減らすことができます。型取りも必要ないため、高齢者や嘔吐反射のある方には特におすすめの治療と言えるでしょう。
ただし、歯髄保護でMTAセメントを使用した場合などは2回の通院が必要です。
金属修復時にスライスカットで削ってある歯など、歯質の裏打ちがないようなケースでは詰めた後に欠けてしまう恐れがありますが、ダイレクトボンディングではそれを補修修理することが可能です。欠けた部分の補修のみで十分なケースも多いことから、時短効果も期待できます。
フィット性の高いダイレクトボンディングは、間接法にくらべて虫歯の発生リスクが少ない傾向にあります。歯は耐えられる治療回数に限りがあり、繰り返せばそれだけヒビや破折といったトラブルが起こりやすくなるため、注意が必要です。
再トラブルを防ぐことが歯を長持ちさせるポイントと言えるでしょう。
ダイレクトボンディングは自費診療となるため、歯科用顕微鏡であるマイクロスコープを用いておこなわれるケースも少なくありません。健全歯質保存と虫歯の除去を徹底することから、治療時間は1時間以上かかってしまうこともあります。
すでに広範囲に被せ物をしている歯の場合は、咬合接触が全くないケースが少なくありません。咬合維持が難しい歯はダイレクトボンディングの対象外であるため、別の治療法をご提案致します。
使用する素材にレジンが含まれているため、コンポジットレジン充填ほどではありませんが、長期間使用することで着色がみられる場合があります。艶の消失や部分破損も珍しくはありません。再研磨や修理で歯を削らずに対応致します。
セルフエッチングシステムは、1ステップと2ステップに分類できます。
エナメル質をリン酸でエッチングして、その後水洗します。きれいに落とせたら次はエアーで乾燥させ、エナメル質と象牙質の両方にボンディング材を塗布します。エッチング時に象牙質に流れ込まないよう、ご注意ください。
こちらはエッチングをしなくても、十分接着が可能です。そのかわり、セルフエッチングプライマーを十分に塗布する必要があります。
近年では1ステップの製品が多くなっていますが、ボンディング材に含まれる水や有機溶媒は、モノマー成分や触媒などをうまく混ぜ合わせるため効果がある反面、ボンディング材の重合を阻害する因子でもあります。
また、硬化後のボンディング層の機械的性質の低下の原因となることから、接着修復の劣化をまねく危険性もゼロではありません。メーカーの取り扱い指示を忠実に守れる場合にのみおすすめします。
1ステップと2ステップでは、メリットとデメリットがそれぞれ異なり、1ステップが広まった現在でも2ステップの方が良いという歯科医師もいます。
性能の違いを理解するためにも、どちらも一度は使ってみることをおすすめします。
詰め物の一種であるダイレクトボンディング法は、レジンの中にセラミックの粒子が含まれているため、レジン単体であるコンポジットレジン充填よりも持ちがよく、審美性も高い傾向にあります。直接治療ではもっとも満足度の高い治療といっても過言ではありません。
良い状態を長持ちさせるためにも、使用するボンディング材の特徴にも目を向けて、質の高い治療を目指しましょう。