リーマーやファイルの違いを的確に見極められますか?また歯科医師が歯髄腔の太さや長さによって、様々な種類を使い分けているのはご存知でしょうか?
本記事では、それぞれわかりやすい図と共に詳しく解説していきます。
う蝕が進行すると、歯の神経と血管で構成される歯髄にまで感染が広がります。この段階を「C3」と呼び、神経を除去しなければならない治療(抜髄、麻酔を使用するため麻抜ともいう)になります。
リーマーやファイルで根管内に残っている神経などの汚染物質を取り除いたり、歯根の先の感染している病巣(根尖病巣)を除去する根管治療が必要となります。リーマーやファイルは清掃器具の種類です。
リーマーは、根管治療の際に歯の神経を取り除いたり、根管を拡大させたりする際に用いる器具です。歯の神経を取り除くことを抜髄と呼び、リーマーだけでなく、抜髄針であるクレンザーも併用します。根管の拡大・形成ではファイルも使用し、それぞれ太さや長さの異なるものが用意されています。
ファイルとは、リーマーと同じ根管形成器具のひとつです。針のように細く、先端にドリルのようなねじれやギザギザが付与されていることから、根管内の汚染物質を効率良く取り除けます。ファイルにはいくつかの種類があり、根管の太さや長さに合わせて最適なものを選択します。
リーマーは、根管治療に使用する器具で、先端がドリルのような形をしています。基本的には回転(リーミング)させることで、根管内の汚れを取り除いていきます。ヘッドの部分には△の中に数字が書かれており、それがリーマーのサイズを示しています。
Kファイルもリーマーと同様、先端にドリルのような構造が付与された器具です。使用方法も基本はリーミングで、器具を回転させることで根管壁を削ったり、根管内の汚染物質を絡めとったりします。ヘッドの部分には□でサイズ番号が記載されています。
Hファイルもリーマー・Kファイルと同じ根管形成器具ですが、先端の構造がドリル状ではなく、ギザギザな凹凸が付与されており、使用目的と見た目が少し異なります。Hファイルは基本的にファイリングと呼ばれる上下運動で根管内の汚れを取り除きます。
根管の長さは歯によって異なるため、ファイルにもいろいろな長さが用意されています。21mm、25mm、28mm、31mmなど、ファイルの長さがはかなり細分化されており、その都度、最適なものを選ぶ必要があります。
根管は長さ同様、太さにも個人差が現れます。また根管の拡大は精密に行っていく必要があるため、ファイルの太さは長さ以上に細分化されている点に注意しなければなりません。ファイルの太さは号数と色で分類されています。
ファイルの太さを表す号数は、カラーコード化されています。白色、黄色、赤色、青色、緑色、黒色の順番で「5」ずつ号数が上がっていきます。
白色 #15/#45
黄色 #20/#50
赤色 #25/#55
青色 #30/#60
緑色 #35/#70
黒色 #40/#80
であることを意味します。ですから、まずは色のサイクルを覚えることをおすすめします。
出発点を#15として、白・黄・赤・青・緑・黒というサイクルを暗記してしまえば、あとは号数を5ずつ上げていくだけなので迷うことはありません。色の順番には医学的な意味などは特にないため、それぞれ覚えやすいゴロを作ると良いでしょう。
ちなみに6号は桃色、8号は灰色、10号は紫色となっており、上述した規則性に外れることからこれらは丸暗記する必要があります。
ファイルには「中間ファイル」と呼ばれる少し特殊なものも用意されています。中間ファイルとは文字通り中間的な号数・太さのファイルで、#12、#17、#22、#27、#32、#37が該当します。
カラーコードはひとつ手前の号数のパステルカラーとなっており、比較的見極めやすいです。中間ファイルを活用すると、ファイルの先端径の急激な上昇を防ぐことができるため、根管へのストレスを軽減できます。
具体的には、先端径の増加率を50%から20%程度まで抑えることが可能です。根管形成にかかる時間も短縮できることから、非常に有用な器具といえるでしょう。
Kファイルはリーミング、Hファイルはファイリングといったように、それぞれの器具の基本的な動かし方は厳守するようにしましょう。例えば、Hファイルで回転運動であるリーミングを行ってしまうと、根管壁を傷つけてしまうおそれがあります。
ファイルの先端が折れていたり、彎曲していたりするような場合は、使用を中止して破棄しましょう。正常ではない状態のファイルを使って根管治療を進めると、根管内に深刻なダメージが及びます。
当然ではありますがそれぞれの根管の長さ、太さに合ったファイルを使う必要があります。また治療を急ぐあまり号数をどんどん上げていってしまうと、根管形成が不十分となり、適切な根管充填が行えなくなる点にご注意ください。
アシスタントはリーマーやファイル以外にも、ラバーダムや綿栓、根管充填に使用する薬剤や器材などを準備しなければなりません。
ラバーダムとは、根管治療を行う歯以外をゴム製のシートで覆う処置です。ラバーダムシートやクランプ、フォーセップス、ラバーダムパンチ、フレームなどを一連のセットとして準備する必要があります。
綿栓(めんせん)とは、根管内を乾燥させるために使用する道具です。
歯科医師は処置中何度か使用する場合が多いため、一見地味な作業であるかもしれませんが、アシスタントが綿栓を作ることができればスムーズに診療が進むことは間違いありません。アシストに就く際には手際よくこなせるように、日頃から巻き方を練習しておくことが大切です。
ペーパーポイントを使用している歯科医院であれば事前に巻いておく必要はないかもしれませんが、担当の歯科医師に確認してみましょう。
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歯科医療者の皆さま、ぜひご活用ください!
ここでは根管治療で必ず使用するリーマーやファイルといった、根管形成器具について解説しました。リーマーやファイルにはいくつかの種類があり、それぞれ太さや長さが異なるため、治療の状況に応じて最適なものを用意して使用する必要があります。
また根管という繊細な部位への処置となることから、根管形成器具の使用法には十分な注意を払わなければなりません。歯科医師とアシスタントの連携が非常に常用となる処置と言えるでしょう。