第114回歯科医師国家試験のdentalkokushi的感想と講評
第114回歯科医師国家試験を受験された方は本当にお疲れ様でした!
今回は先日実施された第114回国試の感想と講評をdentalkokushiの視点で述べさせて頂きます。なお
YouTubeでも簡単な感想と講評を述べていますのでご覧ください。
114回国試を端的に表現すると、「解きにくい」という表現がぴったりくると思います。
内容が細かいから難しいというわけではなく、とにかく「解きにくい」という感じです。臨床実地問題では問題文や状況設定がやや抽象的になっている問題が多い印象を受けました。
その結果、予備校の解答速報もあいまいになっている部分があります。要するにどっちともとれる問題が例年よりも多かったということです。
削除・採点除外・複数解答となる問題が例年よりも多くなりそうです。このような状況ですので、採点サービスのデータだけではなんともいえません。
合格ラインの予測は困難で、3月16日の合格発表を見ないとなんともいえない状況ですが、一応参考になるデータは問題が難化したと言われている112回国試でしょうか。
112回国試では必修問題9問削除、A領域58点以上、B領域116点以上、C領域126点以上で合格でした。
114回国試では単純暗記で解ける問題がかなり減少しました。
これは比較的平易だった113回国試の反動とも解釈できますが、ここ数年の傾向から判断すると、どうやら試験委員の先生方は考えることを求めているようです。
誰が作ったのかよくわからない図表やくだらない語呂合わせを覚えて勉強をした気になって、全然何にもわかっていない人がいるということがバレてしまっているのでしょう。要するに勉強を誤解している人ですね。
勉強を誤解している人に合格して欲しくないので、聞いていることは同じだけど、聞き方を工夫して、その場で考えて欲しいというメッセージを込めているように思います。
作題を工夫して、暗記だけでは解けないようにした結果、問題文がいまいち読み取りにくくなってしまったのかもしれません。
勉強を誤解している人が歯医者になっても、毎日つらいんじゃないかと思います。
昔と比べて複雑なことが格段に増加しているからです。虫歯が洪水のようにあった時代では、歯を削って詰めて、痛かったら抜髄をして…というルーチンワークばかりだったので、バカでも歯医者はできたけど、今の時代それでは困るわけです。
A1→薬剤耐性に関する問題は予想通りでしたが、115回国試でも出題可能性が高いです。バイオアベイラビリティとも関連しますので、きちんと説明できるようにしておきましょう。
A6,A8,C34→介護保険関係は毎回頻出です。介護保険関係の全体像をまず把握して肉付けする勉強をしてください。おすすめの本は「公衆衛生がみえる」(MEDIC MEDIA)です。へんてこりんな本を使って衛生系で点数をとれない方が多いです。「公衆衛生がみえる」を使って勉強してください。
A50→舌癌の既往がある患者へのFGF-2(商品名:リグロス)投与の可否を聞いている問題でした。FGF-2の添付文書には、悪性腫瘍の既往がある者への投与が禁忌であることが明示されています。この理由はFGF-2が増殖因子の一種である点にあります。
A64→インプラント埋入時の動脈損傷が原因の窒息による死亡事故をモデルにした出題だと考えられます。
A87→老年化指数はヤマだったので、多くの方が予想していたと思います。でも100を掛け算することを忘れると間違います。
B6→認知症に関する問題は頻出ですが、MMSEには描画があることが出題されました。HDS-Rとの差異を一度確認しておいた方がよいかもしれません。
B57→直接覆髄にMTAセメントを使用する問題が出題されました。
B62→矯正用アンカースクリューが今回も出題されました。
B75→精神保健福祉センターが出題されました。正答率は低いと思いますので合否に大きな影響はありませんが、「公衆衛生がみえる」にはきちんと掲載されています。115回国試を受験予定の方は確認しておいてください。
B90→フルアーチのインプラントによる補綴が出題されました。All-On-7(?)のような設計です。CAD/CAMで製作したということを言いたかったようです。並び替え問題でしたので、現場思考が要求された問題でした。
C6→診療に関する記録の根拠法の問題ですが、消去法で解答できた問題です。
C12→在胎期間が出題されましたが、10か月=40週です。これを知らないと妊娠中の歯科治療ができないような気がします。というか、歯医者としてヤバいです。115回国試も類似問題が出るかもしれません。
C32→歯周外科に関する問題です。正答率は低いと思いますが、歯周病学の基本を聞く良い問題だと思います。115回国試でも類似問題の出題があり得ます。
C37→予想通り口腔潜在的悪性疾患が出題されました。
C51→パリ協定がようやく出題されました。ということは、115回ではSDGsがとうとう出題されるかも??
C55→歯周治療の流れを聞くよい問題です。115回も再出題される可能性があります。
C88→事例をコホート研究だと読み取る問題です。直球ですね。これは合否に影響しそうです。
C90→捨て問。本番では解くのをやめるべきでした。
D9→自然免疫の基本を聞く良い問題。NK細胞の意味がわかってないと解けない。こういう問題は合否に大きく影響するだろう。
D39→これも良い問題。医療保険者の意味がわかってないと解けない。この問題も合否に大きく影響するでしょう。
D45→GTR法の原理を問う良問です。歯周組織の再生を理解するためにはGTR法の原理を説明できることがとても重要です。というか、これわからないと歯医者としてマズイだろう。
D53→ボールアタッチメントのインプラントオーバーデンチャー。インプラントを埋入しているのは前歯部だけなので、臼歯部を維持するためのアタッチメントがないことを考えて解く問題でした。
D79→BPSDはdentalkokushiの大予言その1で
思いっきり直前に説明していました。
114回国試はパンデミックの状況で開催された国家試験となりました。昨年113回国試の際にも新型コロナウイルスの感染拡大が危惧されていましたが、ここまでの状況にはなっていませんでしたので、1年前との状況の違いに驚くばかりです。
最近の国試は問題文が良く練られていて、状況設定も絶妙な問題が多かっただけに、114回国試の問題の完成度には少し疑問を持ってしまいました。
ここからは推測に過ぎませんが、114回国試の作題の会議は100%オンラインで開催されたと思われますので、オンライン上での擦り合わせがもしかしたらうまくいかなかったのかも…しれません。
オンライン上で問題文の修正をしていった際に、微妙なニュアンスが伝わらなかった可能性もあります。
なお、大方の予想通りコロナ関係の出題もありました。COVID-19のハイリスクアプローチを問う問題でした。
YouTubeで解説していますので、ご覧ください。
現行の出題基準は114回国試で終了になります。115回国試からは新しい出題基準が適用されるはずです。新しい情報が入り次第、この歯科国試突破論や私のブログやYouTubeでもアナウンスしていきます!
ただ、新しい出題基準になってもこの傾向は変わりません。
そう、現場思考を求める傾向です。丸暗記排除という流れです。
受験生としては、国試勉強をする際に、①理由付け(≒根拠)をできる限り考えること②丸暗記をできる限り避けること③全体像を把握しながら基本を重視して勉強を進めること④枝葉末節に立ち入らないようにすること⑤自分一人では限界もあるので信頼できる先生を見つけてナビゲーションになってもらうこと、以上の点を心掛けるとよいでしょう。
でも、このようなことを国試直前に急にやっても当然のことながら成果は出にくいです。
日頃の小さな積み重ねが大きな差となって表れてくるので、日頃の小さな積み重ねを大事にしてください。
114回国試向けのLIVEオンラインセミナー(主催:ワンディー株式会社)を3回実施しましたが、いずれも好評だったようです。LIVEオンラインセミナーで私が説明した内容が114回国試でそれなりに出題されていたと思います。受講した方はお分かりですよね?
115回国試対策のLIVEオンラインセミナーも更に内容を充実させて実施する方向で現在検討中です。詳細が決まり次第お知らせします。
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