東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科医歯学専攻老化制御学講座摂食嚥下リハビリテーション学分野の講師陣が機能評価・リハビリから最新の研究や取り組みを語り尽くシリーズ「戸原ゼミ」。
摂食嚥下リハビリテーションの第一人者、戸原教授をアンカーにお招きし全6回にわたって「摂食嚥下」を徹底的に深掘りします。
今回は、戸原教室の研究をいかにして地域のクリニック、訪問診療で活かすかという点について講師の山口先生にお話しいただきます。
●
エコーを用いた口腔周囲筋評価について
エコーは、咬筋、舌、舌骨上筋群など口腔周囲筋の筋性質(量、質)やその加齢変化がわかります。舌は食べる時も、眠る時も重要な器官なので、舌の筋性質は嚥下のみならず、睡眠時の呼吸、つまり閉塞性睡眠時無呼吸症のリスクまで推測できる可能性があります。特に地域のクリニックでは、医科歯科連携は待っているだけでは絶対にできません。“食”と“睡眠”で地域のクリニックでも可能な医科歯科連携の形を考えてみたいと思います。
●
フレンチシェフと3Dフードプリンターを使ったレシピ開発
摂食嚥下障害の患者さんは多くおられ、その対応としてきざみ食やペースト食など嚥下調整食が提供されます。しかし、嚥下調整食は低食欲、低栄養、サルコペニアなどとの関連が報告されています。摂食嚥下障害の方に美味しい料理を提供できるレストランは少ないです。摂食嚥下障害対応のレストランも集めた摂食嚥下関連医療資源マップのご紹介、フレンチシェフと3Dフードプリンターを使ったレシピ開発などご紹介します。嚥下障害対応可能なレストランが増えて、外出のきっかけになれば、高齢者のフレイル対策にもなるでしょう。摂食嚥下障害患者の外出支援によるフレイル対策、その中で歯科医院が担える役割、新しい価値を考えてみたいと思います。
●
おいしく、ついつい食べてしまう食環境設計のコツ
認知症に代表される、先行期の摂食嚥下障害の患者さんは訓練では改善しません。訓練で改善しない摂食嚥下障害への対応は、食環境の調整が大事です。例えば、ソースをかける、食欲をそそる写真を飾る、BGMを調整するなどで対象者の摂取量は有意に増加することがわかっています。これらは食行動科学の領域でエビデンスが蓄積されています。エビデンスベースなおいしく、ついつい食べてしまう食環境設計のコツをお伝えします。これはぜひ、訪問診療に従事する歯科衛生士などに担って欲しい役割です。