もし、目の前の患者がアナフィラキシーを起こしたら?

1D編集部
2023年11月3日
アナフィラキシーの生涯有病率は0.3〜5.1%とされ、日本では年間50〜80名弱がアナフィラキシーで死亡しているとされる。また患者に複数回、問題無く使用できていた医薬品等であっても、アナフィラキシーを生じることがあるため注意が必要だ。

ただ歯科の臨床現場では頻回に遭遇するものではないため、対応に自信の無い人も多いだろう。今回は歯科におけるアナフィラキシーについて、症状や適切な対応等を解説していく。

歯科におけるアナフィラキシー

アナフィラキシーの原因になりやすい抗原としては、ラテックスや薬剤が挙げられる。ラテックスアレルギー患者のうち30〜50%は、クリ、バナナ、アボカド、キウイフルーツなどを口にした際にアナフィラキシー反応を起こすことがある。そのため問診時にこれらを摂取したときの状態をよく聞いておくことが重要である。

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アナフィラキシーが生じやすいタイミング

周術期においては、アナフィラキシーのうち90%が麻酔導入時に見られる。これはアナフィラキシーが生じる原因となる、薬剤やラテックスなどへの暴露が麻酔導入時に集中しているためである。

また冒頭で述べた通り、これまで問題無く使用できていた医薬品等であってもアナフィラキシーを生じることがある。もちろん逆に、初めて使用した際に生じることもある。加えてアナフィラキシー症状が落ち着いた後も、数時間〜72時間を経過したあ後に再度同様の症状が現れることがある。

アナフィラキシーの症状

患者がアナフィラキシーを起こしたとき、以下のような顔貌・外見の変化が起こる。

口腔内

口唇・舌の腫脹

顔面周囲

顔面蒼白・浮腫
粘膜の膨張・流涙
鼻閉・鼻水

呼吸

嗄声
喘鳴
気管支けいれん
チアノーゼ
呼吸困難

全身

血圧低下
頻脈あるいは徐脈
発汗
悪心・嘔吐
昏迷・意識喪失
けいれん
心停止

皮膚・粘膜

紅斑
発赤
かゆみ
じんましん など

その他、アナフィラキシーを起こしている本人の自覚症状としては以下が挙げられる。

死んでいくような不安感
金属臭のような味
めまい
発汗
目のかゆみ
腹痛・下痢 など

症状により症状の出方はさまざまであるが、参考までに、それぞれの症状の出現頻度は以下の通りである。

皮膚症状

膨疹・血管性浮腫:85〜90%
紅潮:45〜55%
かゆみ:2〜5%

呼吸器症状

呼吸困難・喘鳴:45〜50%
上気道浮腫:50〜60%
鼻症状:15〜20%

循環器症状

めまい・失神・血圧低下:30〜35%

腹部症状

悪心・嘔吐・下痢・腹痛:25〜35%

その他

頭痛:5〜8%
胸痛:4〜6%
けいれん:1〜2%

なお周術期においては、麻酔がかかっていることで患者からの訴えが無かったり、滅菌ドレープ等で顔・体が覆われているため症状や外見の変化に気づきにくかったりするため注意が必要だ。

アナフィラキシー発生時の対応

アナフィラキシーによる死亡は、気道の血管性浮腫や気管支けいれんによる低酸素血症と、ショックによる循環の虚脱により起こる。一般的な歯科臨床(外来)での対応方法と、手術室での対応方法に分けて解説する。

外来での対応

一般的な歯科臨床においては、アナフィラキシーと診断されたら即座にアドレナリンを外側大腿広筋に筋注する。
投与量は以下の通りである。
成人:0.3mg
小児(体重15kg以上):0.15mg
成人(0.3mg)の場合、投与量は以下の通りである。

方法①:空のシリンジを使用する場合

1A(1mg/1ml)のアドレナリンを、1mlのシリンジに0..3mlだけ吸って注射

方法②:すでにアドレナリンが充填された「アドレナリン注0.1%シリンジ「テルモ」(1ml)®」を使用する場合

まず0.7mlを捨て、0.3mlのみ注射
(1mlのままで0.3mlのみ筋注するのは難しく、過量投与を防ぐため)

方法③:エピペン®を使用する場合

(便利だが、コスト面や使用期限が短いという欠点あり)
1
安全キャップを外す
2
大腿をしっかり押さえて固定する
3
オレンジ色の部分を注射部位に対して垂直に当て、「カチッ」と音がするまで強く押し付ける。押しつけたまま数秒間待つ
4
オレンジ色の部分が伸びたことを確認する

外側大腿広筋への筋注により、10分未満で最大血中濃度に達する。上腕三角筋への筋注よりも平均の最大血中濃度が高く、効果の発現も早いとされている。

またアナフィラキシー発症後はできるだけ早く、また経時的に採血を行うことが推奨される。

手術室での対応

アドレナリンの静注を行う。これは麻酔時にはすでに静脈路が確保されていること、また血圧計や心電図モニターが装着済みであることなどが理由である。投与方法は以下の通りである。

1
20倍アドレナリン溶液(1A(1mg/1ml)を20mlに希釈したもの)を準備
2
1.を1ml(50μg)緩徐に静脈内投与
3
効果が得られなければさらに1ml投与

高リスク患者へのアドレナリン投与

多数の全身疾患を持つ患者や、心疾患を有する高齢者などにおいては、「アドレナリン投与は禁忌なのでは」と考えてしまうかもしれない。しかしアナフィラキシーによるリスクの方がはるかに高く、アナフィラキシーにおけるアドレナリン投与の絶対的禁忌は存在しない。

アナフィラキシー時にアドレナリンを迅速に投与することのベネフィットは明らかであり、したがって、躊躇すべきではない。

参考文献

歯科臨床におけるアナフィラキシーの診断と対応(PDF
アナフィラキシーガイドライン2022(PDF
エピペン公式サイト(URL
著者/監修者
1D編集部
歯科医師

1D編集部は、臨床経験のある歯科医師・歯科衛生士・歯科技工士で構成されています。歯科業界の最新ニュースから歯科医療の臨床・学術情報、歯科医療者のためのライフスタイル記事まで、歯科医療の専門家の視点で、ただしく・おもしろいコンテンツをお届けします。

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1D編集部
2024年5月12日

【特集取材】2024年米国歯内療法専門医協会(AAE)年次総会に参加してきました(寺岡 寛先生)

AAEは毎年1回年次総会(annual session)が北米の様々な地域で開催される。今年はカリフォルニア州のロスアンジェルスであった。カリフォルニア州は西海岸に位置し温暖な気候として知られている。日本人にとってはドジャースに入団した大谷翔平選手の本拠地と言うとわかりやすいのかもしれない。私も友人たちとドジャースタジアムに行き試合を見てきた。AAEの年次総会は4月の17日~20日の4日間開催され世界中から多くの歯科医師が訪れる。2016年のサンフランシスコ、2018年のモントリオール(カナダ)以来の3回目の参加となった。4日間を通して多くの魅力的なレクチャーが行われるが、見たいレクチャーが複数同時刻に行われどの公演を見ようかとというジレンマがある。また、隣に座ってレクチャーを聞いているのが世界的に高名な歯内療法医ということさえよくある。携帯電話で専用のアプリがあるのでそこから日程を確認出来、お気に入りのレクチャーを保存できるので日程の確認に非常に便利である。今回、総会への参加と1Dさんに執筆させて頂く機会を得たので体験記として情報を共有したいと思う。因みに筆者は日本で歯内療法専門医として幾つかの医院に出向し診療をしており通常の歯内療法は元より断髄を得意としている。尚、以下に使用している略語を書いておくので参考にして頂けると幸いである。<略語一覧>AAE(アメリカ歯内療法専門医協会)、ESE(ヨーロッパ歯内療法学会)、VPT(生活歯髄温存療法)、NSRCT(非外科的根管治療)、IDPC(間接覆髄法)、DPC(直接覆髄法)、ECR(歯頸部外部吸収)、ICR(侵襲性歯頸部吸収)、TSP(トロントスタディプログラム)、USC(南カリフォルニア大学)、ヒポクロ(次亜塩素酸ナトリウム)木ノ本喜史先生(左から4番目)と現地で集合した友人達と記念撮影(筆者は左から3番目)1日目(4月17日)私は現地には時差の関係で16日に到着したが総会が始まったのが17日なので1日目とする。最初に聞いたレクチャーは「Conundrum of Pulpal Diagnosis Part 1, 2」(歯髄診断の困難性パート1, 2)である。現在、歯髄の診断名は実際の臨床の状態を正しく反映していないと議論され、その診断名自体を新しいものに改善すべきという意見もある。ヨーロッパ歯内療法学会会長のDr. H. F. Duncanは出血や痛みへの過敏さは診断に有用ではなく、より歯髄への深い理解が重要であると述べた。意外に感じたのが歯髄をマイクロスコープ下で直視することに関しても否定的であった。私見では日本のDr.泉英之が提唱しているエアーでの歯髄が根管壁から離れると、その歯髄は保存不可能な歯髄であるといった所見や歯髄の正常を拡大下で確認することは非常に重要な因子であると思っている。Dr. Kenneth. M. Hargreavesは世界的に使用されている歯内療法の教科書Pathway’s of the pulpの編集者であるが今後はバイオマーカー、特にMMP-9による歯髄の診断が役に立つだろうと結論づけた。理由はバイオマーカーを使用することはパーソナライズし、術者の主観性を排除することにより信頼性が向上する検査法になり得るからである。最後のスピーカーのDr. Claudia Brizuelaは可逆性歯髄炎と不可逆性歯髄炎の診断にはFGF, IL-6, IL-1α, TIMP-1が有効かもしれないとした。しかしながらこれらはラボレベルでは有用であるかもしれないが、それをチェアサイドで使用できるようにすることが今後の重要な課題であると筆者は思う。続いてDr. Adham. A. AzimのThrough & Through Lesions Explained(スルーアンドスルー病変の解説)である。Dr. Azimは筆者と同い年(39歳)であるが、過去にバッファロー大学で歯内療法科の大学院生を統括するディレクターを行っており、現在はパシフィック大学の准教授という非常に才能に優れている先生である。筆者は2018年の総会で1度レクチャーを受けている。その時は逆根管治療(歯根端切除)でXP-Endoを使用した清掃を行うという新しく革新的な事を行う先生だな、と感銘を受けたことを思い出す。今回のタイトルのスルーアンドスルーというのは病変が大きく頬側骨、口蓋側の骨共に吸収している状態である。この状態で通常の逆根管治療を行った場合、瘢痕による治癒が得られるかもしれないが線維性結合組織による瘢痕治癒となるため、将来的にインプラントが必要になった場合に骨がなく埋入ができなかったり、新たに骨造成が必要であったりと問題となる。そのため出来るだけ逆根管治療時に骨による治癒が望まれるためタイトルとして決めたとのことだった。この理由に関しては筆者も同意見であるため今回のレクチャーを受講した。この病態を理解するためにはまず病変のステージを分類することが重要で、そのステージにより処置法が異なる。因みにDr. Azimは6月1日から行われる日本歯科顕微鏡学会の年次総会で後述するDr. Shanon Patel, Jerry Linと共に招聘されている。その時には今回のタイトルでハンズオンに参加する予定となっているので、その予習が今回でき今から非常に楽しみである。より臨床的に今回の分類とステージ別の処置法を理解できることだろう。レクチャー後に友人と質問をしにいった。2日目(4月18日)Dr. Shanon PatelのManagement of External Cervical Resorption (Surgical vsNon-Surgical:侵襲性歯頸部吸収への対応(外科的 vs 非外科的))であった。Dr. PatelはCBCTの歯内療法領域での使用で高名な先生である。本邦でも著書が日本語訳されて市販されている。侵襲性歯頸部吸収はICR(Invasive Cervical Resorption)とも呼ばれ、しばしばう蝕と間違われることがある。本病態に関し古くからHeithersayの分類が使用されてきたが同演者らによる、より細かく分類された新基準がヨーロッパ歯内療法学会(ESE)から発表されている。X線撮影をした際に偶然見つかることが約半数。原因は様々であるが不正咬合、矯正治療や管楽器奏者に多いとされている。近年ではネコに特有なウィルスがヒトに感染し原因になり得ることも言われている。以前と比較して症例数は増えてきていることを指摘し、悪い意味で過小評価をされていると言及していた。我々が思っているよりも実際には多くのケースが見過ごさられているだろうという意味である。また診断については従来のエックス線検査のみでは限界があるため、CBCTで検査を行うことの重要性も語られた。主題に関してどのような場合には外科的・非外科的に処置するのか、実際の症例を用いて説明され非常に理解しやすかった。余談ではあるが私自身、ECRで悩んでいる症例があるので6月に来日された際にはまた記録を元に相談させて下さい、とお願いをしておいた。セルフィーを一緒にしてもらったが慣れておらず画像がブレてしまった。続いてControversies in VPT:IPC vs DPC vs Pulpotomy Part 1,2(歯髄温存療法における論争:間接覆髄法 vs 直接覆髄法 vs 断髄パート1, 2)である。スピーカーはDr. Stephene Simon, Ashraf Fauad, Nasrin Taha, Domenico Ricucciの各レクチャーとディスカッションであった。今更ではあるがVPTとはVital Pulp Therapy(歯髄温存療法)の略であり、覆髄法と断髄法が含まれる。このセッションの各スピーカーはVPTに非常に精通した歯内療法医と言える。このセッションを含む本年のVPTに関わるセッションは10と非常に多かった。以前からVPTへの注目は大変に上昇していたが、本年で最高潮となったことだろう。因みにVPTに関するAAE総会でのレクチャーは私が調べた限りでは2016年0、17年0、18年1、19年3、20年1、21年5、22年?、23年4、24年10である。最初のスピーカーはDr. Tahaでヨルダン大学の教授で、現在ではコンセンサスになりつつある不可逆性歯髄炎における断髄の高い成功率を報告した。発表当初(現在も?)はかなりの反対意見があったものの、現在では2021年にAAEが発表した断髄のガイドラインにも記載の通り受け入れられつつあるように思う。このパートでは非特異的う蝕除去は特異的う蝕除去よりも成功率が高く、露髄をしたとしても断髄や抜髄を行えば予知性の高い治療となるとのことであった。これはESEが推奨をしている、いわゆるステップワイズエキスカベーションよりも断髄・抜髄のほうが予知性が高い処置であると私は解釈をしている。続いてDr. Fauadは各個人の炎症性ケミカルメディエーターを用いて歯髄炎が鑑別できるかもしれないとの展望を示した。その上でVPTのみならず、各個人に対するパーソナライズドされた歯内療法が必要ではないかと提唱していた。一般的なVPTの予後に関する因子として写真にあるように、カリエスの深さ、宿主の炎症反応、無菌的処置、覆髄材、症状をあげていた。その中でも興味深かったのが歯髄壊死を起こし根尖性歯周炎(+)の患者で疼痛を感じない歯髄炎、いわゆるPainless Pulpitisが生じていたのは40%であった報告(Michaelson and Holland IEJ 2002)を引用していた。頻度はここまで多くないにしても臨床家であれば歯冠崩壊している患者さんに、今までの痛みのヒストリーを聞いた際に別にそんなに痛くなかったと答える患者に1度は遭遇したことがあるのではないだろうか。3番手のスピーカーはDr. Ricucciである。Dr. Ricucciに関してはここで改めて解説をする必要がないほどの高名な臨床家である。彼の非常に美しい切片像は歯内療法のみならず歯科会に大きな影響をもたらしたことは疑いようがない。彼の今回の主張は写真の通り非常に明確で、彼の臨床結果やその切片を用いて説明したうえで特異的う蝕除去は推奨されないということであった。ここで興味深いのがDr. 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Yoshiがレクチャーを行った。彼は筆者も3期に卒業したDr. Shimon Friedman率いるTSP(トロントスタディプログラム)を運営し通訳をしている関係上、トロント大学をはじめとする教授陣の講義を毎年みておりその影響が伺えた。痛みとは何か、から始まり近年におけるNSRCT(Non-Surgical Root Canal Treatment:非外科的根管治療)と外科的歯内療法の統計処理を行った成功率の比較、その上で外科的歯内療法前に非外科的根管治療を行われたものの方が長期の成功率は高いという結果であった(Huang JOE 2020)。本研究では咬合をサンプル数は少ないものの、咬合があったものでは治癒が悪かったとも報告しており、写真はDr. Yoshiの症例をそれを示したものである。また私の好きな論文の1つである、外科的歯内療法が失敗した歯に非外科的根管治療を行った場合の成功率(84.82%)を報告した研究(Appel IEJ 2023)も引用されていた。一方のDr. Azimは非外科的根管治療が失敗した場合のその原因を列挙し、それが再根管治療では改善できない際に外科的歯内療法により歯を保存するのが良いと説明した。因みにその改善できない場合というのが1根管内の除去困難なバイオフィルム、2根尖孔外感染、3真性嚢胞、4アクチノマイセス菌の感染、5処置上のエラーである。誤解のないように付記しておくとこれら全て術前には分かりようがない場合もあり得る。言い換えると、外科的な処置を行い初めて分かる場合もあり、外科的歯内療法の術前には分からない場合もある。他方で非外科的根管治療がなぜ失敗するのかも考察をしており、その原因は1外科処置上のエラー、2破折である。彼のこのレクチャーにおける結論としては、再根管治療が失敗に終わり抜歯をしなければならない場合に外科的歯内療法が適応となる。場合によっては外科的歯内療法の方が歯質保全という意味で保存的になり得るということである。両者の結論としては非外科的根管治療も外科的歯内療法も必要である、という至極真っ当な意見である。本公演後にDr. YoshiがDr. Jean-Yves Cochetと一緒にいたので話しかけさせてもらった。Dr. Cochetは医科と歯科の免許を持つダブルドクターであり医科の方では耳鼻科、歯科では歯内療法というユニークな経歴の持ち主である。耳鼻科が専門であるため上顎洞のアプローチはお手の物で歯根端切除時にも躊躇なく上顎洞を触るとのことであった。既に何度か日本でハンズオンをやられているが、受講ができなかったのでぜひ来年は来て下さいと両名に交渉をしておいた。3日目はここまでで午前が終了し、午後からは名門のUSC(University of SouthernCalifornia南カリフォルニア大学)のクリニック見学をさせて頂いた。AAEのセッションとは外れるので、最後のプライベートをまとめた項に記載するので、もしご興味がある方がいらっしゃったら見て頂けると幸いである。4日目(20日最終日)最終日は参加人数もだいぶ少なくなったものの、まだまだ魅力的なレクチャーが残っている。日本人に限らず早めに帰った方もいれば、観光を楽しむ方もいれば、私のような人間もいて様々である。この日の最初はDR. Marga ReeのLessons Learned in 45 Years of Endodontics(45年の歯内療法の経験から私が学んだこと)である。この手のタイトルでは抽象的な内容で昔の歴史的な事が語られるかと思われるかもしれない。だがDr. Reeは非常に革新的な歯内療法専門医であり視点が異なる。彼女の凄いところは常に新しいことにチャレンジを行い、術式に様々に工夫を行うことである。例としてはDr. 月星光博が考案した方法だと記憶しているが、意図的再植時に歯を回転させソケット側とドナー歯側の歯根膜の分布を変え、喪失した歯根膜を回復させるという方法である。また彼女の結論としては長く経過を見ればみるほど歯根破折をみる機会が多くなる。破折を回避するためには歯質を可及的に温存する必要があり、そういった治療法をすべきということだ。念の為に上記の写真の彼女の処置に関する推奨の日本語訳を付記しておく。・歯内療法の診断を確立する・プローブの値を確認する(歯根破折との関連)・補綴物を除去しクラックの進展を再確認する・必要があるなら歯内療法を行い、歯冠部歯質を可及的に温存する・クラックを有する歯は全口頭被覆を行い、側方運動の干渉や過度な咬合は避ける・クラックがある場合には患者に予知性が下がるかもしれないことを助言しておく続いてDr. WitherspoonとDr. Benjamin BarborkaのVital Pulp Therapy in Clinical Practice(VPTの臨床)である。Dr. Witherspoonは2018年の総会でもVPTのレビューをレクチャーで行っていたので、6年間でどう変化をしたのかが楽しみであった。一方のスピーカーが少し話したらスピーカーが入れ替わるといった、1人のスピーカーが話し続ける通常のセッションとは異なる進行であった。両者の連携が非常によくスムースな進行であった。ワシントンでの保険データを利用したものでVPTが行われた割合は、全歯内療法処置のうち20%であり、1%程度が歯内療法専門医により行われた。VPTの占める割合はこれくらいかと思うが(私も全処置のうちVPTが30%程度)、殆どのVPTは一般歯科医師により行われているとのことであった。断髄に関しては止血時に生食を使用するかヒポクロを使用するかという論争がある。日本では生食を使用する先生が多いように昨今は感じるが、私はヒポクロを使用する。理由としては詳しくは割愛するが、使用に際して欠点がほぼないからである。本公演でも研究論文ベースでレビューされその有用性が強調されていた。覆髄材ではMTAと水酸化カルシウムが比較され、長期経過の成功率ではMTA71%、水酸化カルシウム59%とMTAに軍配が上がるようである。Dr. Witherspoonは以前より保存可能な歯髄をViable Pulp、不可能な歯髄をNon-Viable pulpと呼称している。私はSavable, Non-Savableと呼んでいるがほぼ同一である。根管治療との成功率の比較では両者に有意差はなく、術後に疼痛発生に関しては断髄の方が少ない傾向にある。また幾つかの論文においてはVPTは根管治療と比較し準備する道具も少なく容易でテクニックセンシティブではないとしているが、彼らは否定的で筆者も同意である。両者も非特異的う蝕除去と特異的う蝕除去についてもレビューをしていたが、5年予後という期間では成功率に有意差はなかったようである。しかしながらDr. Ricucciが指摘したように、また2024に発表されたレビュー(Fraser J, Evid Based Dent 2024)では深いカリエスに対しては推奨されていないとのことである(写真赤線部)。本会最後に受講をしたのがDr. Ronald Ordinola-ZapataのPresent Status ofIntracanal Medicaments(現在の根管貼薬の立ち位置)であった。現在、アメリカでコストなどの問題から1回法が多いと聞く。再根管治療でも1回法が殆どであるという歯内療法専門医の意見も聞くことがある。筆者の知る限りでは現在、再根管治療の1回法の成功率を前向きに調査したものは1論文である。また研究対象歯は前歯のみであることからエビデンスレベルは不足しているものの研究結果では有意差はない。それでは複数回法で用いる根管貼薬は全くをもって不要なものなのだろうか。そんな疑問を払拭してくれるレクチャーであった。病変が大きく排膿が止まらず複数回法にせざるを得ない場合や、年齢による治癒遅延が見込まれる場合には貼薬を行うべきであるということを研究論文から引用していた。筆者の私見では全ての症例に適応するにはまだエビデンスは少ないが、1回法治療は歯種で制限されるものではなく、解剖などの他の制限される因子がなければ行って差し支えないと考えている。実際に根尖性歯周炎を有する大臼歯を1回法で行った症例も良好に治癒している。しかしながら、複数回法で行う症例も多いので貼薬を筆者にとっても必要なものである。以上が私のAAEの体験記である。LosAngeles滞在記以下は私の趣味というか仕事以外の記録である。成田空港からLos Angelesまでは直行便があり、行きは追い風の影響か10時間で帰りは向かい風で11時間30分であった。行きはWi-Fiが使えずプレゼンも進まず苦労をした記憶がある。帰りはWi-Fiにアクセスでき本執筆を行っていたのであまり苦労した記憶がない。気候は温暖で雨が少なくドライであるが今の時期の気温は意外なことに日本の方が高い。寒くも暖かくもないという感じであった。時差は日本が16時間進んでいるため時差ボケで眠れず苦労をした。18時ころでも写真のような明るさなので日はとても長い。まず今回の訪米で感じるのがほぼ全てものがめちゃくちゃ高いということである。異次元の円安ということもあるが米国では1人前の量が日本人には多い。大食漢の私でも多いと感じるレベルである。そして味付けは店のグレードにもよるだろうが非常にシンプルで、この味でその値段!?と驚くことはよくある。私はあまり食べ歩かなかったが、写真のようなブランチでも4000円以上した。ワッフル状のパンケーキにシロップ、フライドチキンが2つとソフトクリームのような見た目で決してソフトクリームではないものがついたものである。ソフトクリームよりも何かもっと脂っぽいものであった。そのため私はWhole foods marketというスーパー(日本で言う成城石井なので少しお高い)のデリをよく買ってホテルで食べていた。基本何でも高いがなぜか水が1ガロン(3.5リットル)で1.3$と激安なのが謎である。下のようにコストコのような見た目である。滞在したホテルはMillennium Biltmore Hotel。由緒あるホテルらしく、よく言えば伝統的ではある。しかしながらリノベーションが行われていないようで50年前にタイムスリップしたような内装ではある。私はあまり気にならないタイプなので気に入ってはいた。ここからが今回の旅の第二の目的であるUSCへの訪問である。ディレクターの先生との連絡がうまく行っておらず若干入れ違いのようになったのだが結局、大学院クリニックの見学と21日に大学内の1室で行われた卒業生パーティにも参加をさせてもらえた。卒業生パーティの方は残念ながらカメラの電池がなくなりまた、携帯電話を紛失したため写真が取れなかったが見学時には写真をとれたので幾つか載せたい。卒業生パーティの方は予めディレクターから時間あるなら来なよ、と言って貰えていたが面識がないので顔を合わせても自分が連絡してきた歯科医師とはわかるはずがない。そのため最後のセッションで座長をされていたのでレクチャー後に話しかけた。私はその前日に拾ったUberの中に携帯電話を置き忘れるという有り得ないようなミスをして交通手段がなかったのだが、残っていた卒業生の先生もパーティに参加されるようで一緒に送っていただいた。パーティでは当然、9割5分が面識のない先生(写真で見たことのある高名な先生は沢山おられたが)達ばかりであったがとても優しく受け入れて頂けた。USCは米国でもトップクラスの学費の高さでも有名であるが、歯内療法科を卒業された先生はやっぱりUSCが一番いい!と仰られていた。暗くなるとUSC周辺やダウンタウン周辺は危険であるため、まだ日があるうちにおいとまをした。交通手段がないのにどうホテルまで帰ったかと言うと、偶然知ったのだが大学からダウンタウンまで無料のバスが出ていて、唯一持っていたタブレットと大学内のWi-Fiで情報を探し無事乗れた。バス停が分かりづらかったが、いかにもアメリカの白人のおっちゃんって方に尋ねたらとても親切に教えてくれた。バスが来て自分が乗るまでちゃんと確認してくれてたので非常にいいおっちゃんである。今回、他国で携帯を失くし現在日本でも切符をいちいち買わなくてはならないという煩雑さもあるが、総じて楽しかった。私は23日まで滞在をしていたが、正直帰る際になったら現地に残りたいとさえ感じた。ここからは海外に行かれる方への注意喚起だが、日本で携帯電話に依存していればいるほど海外で亡くした際には非常に苦労をする。パンデミックのせいかバスの支払いも現金やクレジットカードで直接読み込むという支払い方法は不可で、クレジットカードで予めウェブ経由で購入しておくか、携帯でアプリをダウンロードして支払うか(私のタブレットはGoogle Playが入っているはずだがなぜかアプリをダウンロードできず、この方法を使用できなかった)、しか方法がなかった。 また、日本で使用している各種サイト、銀行やYahoo!にすらログインする際には、普段と違う環境でアクセスすると最近は2段階認証ということで携帯電話にSMSが送られ認証しなければサイトにすら入れない(Yahoo Mailが使用できない)。上記のようにタブレットの使用にもかなりの制限があったが、今回持っていかなかったら無事に日本には帰ってこられなかっただろう。そのため、海外に行かれる方にはPC・携帯のみではなく最低更にもう1つ連絡手段を持ったほうがいい。ベストは携帯電話の2台持ちだろう。もしくはiPadにすることをおすすめする。他には詐欺もある。4日目にスーツを着て昼食を食べに行く際には黒人の2人組に話しかけられ「このカメラで俺等の写真を撮ってくれ」と言われた。この時点で既に怪しいわけだが、これはよくある無理やり何かを買わせる詐欺(?)である。まずはその写真を取らせて、片方が「この相棒はすごく有名な歌手・ラッパーなんだぜ」といい、頼んでもいないのにCDを出してきて自分でサインをする。その後になぜか私にもペンを私てきてサインをするように言ってくる。私はこの手の詐欺を知っていたので、この時点で「ありがとう、でもいらないよ」と言い立ち去った。そこで私がサインしていたらこのCDを駄目にした、金を払えと言ってきただろう。親切心に漬け込んだ詐欺もあるので注意が必要だ。ロスアンジェルスは基本、夜は単独行動は危険なのでそれに比べると日本は超安全というのを実感する。あと食べ物が安くて美味しい。さて、夜は更け現在20時になるわけだが、この体験記も書き終えようやく自宅に到着をする。携帯電話を明日からどうするか考えて今日はゆっくり休むこととする。最後まで読んでいただいた先生がどの程度おられるか分からないが、お読みいただいた先生には感謝です。お読み頂きありがとうございました!
寺岡 寛
2024年5月1日
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