【カエル】2億年前に退化した「歯」再び萌出 進化理論揺るがす珍事

文・構成:1D編集部 | 投稿日: 2021年11月21日
その小さなカエルの標本は、米・フロリダ自然史博物館に保管されている。カエルの歯はほとんどの種類において上顎だけに萌出しているが、フクロアマガエル属の一種・ガストロテカ・グエンテリという種類のカエルには、上下顎の歯が揃っている。唯一の例外だ。学術誌「Evolution」に先日、その研究報告が掲載された。

下顎の歯が再び生えた唯一のカエル

ガストロテカ・グエンテリは、アンデス山脈の雲霧林に生息しているが、その姿が最後に目撃されたのは1996年のこと。その形態や生態は長らく謎に包まれており、これまで下顎に歯っぽい構造物があることは確認されていたものの、それが本当に歯なのかは証明できていなかった。

フロリダ大学の爬虫両生類学者・ダニエル・パルー氏は、その謎の解明に取り組んだ。数十年前から保存されていたガストロテカ・グエンテリの標本をCTを用いて解析し、カエルとしては例外的に、上下顎に歯が萌出していることを突き止めた。

もちろん、正真正銘の歯だ。「歯のように見える下顎の一部」というわけではなく、きちんとエナメル質と象牙質から構成されているという。

進化理論の「常識」を揺るがす事実

そもそも、カエルの下顎の歯は、約2.3億年前に退化している。ここではなぜ退化したのかは割愛するが、ガストロテカ・グエンテリの下顎に再び歯が萌出してきたのは、約500万〜1700万年前と推測されている。退化した形質が、再び現れたのである。

これは、ベルギーの生物学者ルイ・ドロにより提唱された「ドロの法則」に反する現象である。これは「生物はたとえ以前存在したときと同じ存在条件におかれていても以前の状態にきっかりと戻ることはない」という法則で、進化学において認められてきた。ガストロテカ・グエンテリの下顎の歯の再進化は、この法則を否定する証拠となり得る。



再進化の理由は「遺伝子」にあった?

今回明らかになったガストロテカ・グエンテリの下顎の歯は、上顎の歯とよく似ていたという。アリゾナ大学の進化生物学者ジョン・ウィーンズ氏は、「上顎の歯を作るための遺伝子ネットワークがまだ機能していたから、下顎に歯を作ることも容易だった」と指摘する。

ほとんどのカエルには上顎の歯が萌出しているわけだから、歯を作るための遺伝子は機能しているということであり、理論的には、これから数百万年のうちにカエルに下顎の歯が生えてきても不思議ではない。

今回の研究は、これまで認められてきた「ドロの法則」に反する事象として、非常に価値のある研究であったと考えられる。

参考文献

  1. 『上下の歯が生えそろったカエル、はじめて確認、唯一無二』, ナショナル・ジオグラフィック, 2021年11月12日.
  2. 『進化論揺らぐ? カエルの下の歯が復活』, ナショナル・ジオグラフィック, 2011年2月4日.
  3. Gould, S.J. (1970). “Dollo on Dollo’s law: irreversibility and the status of evolutionary laws”. Journal of the History of Biology 3: 189–212. 
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