歯科衛生士の給料や年収は?キャリアアップの方法を解説

歯科衛生士の給料や年収は?キャリアアップの方法を解説

1D編集部
2021年6月11日

歯科衛生士の給料や年収は?キャリアアップの方法を解説

本ページでは、歯科衛生士の給料や年収について詳しく解説しています。また、歯科衛生士が給料や年収を上げていくためのキャリアアップの方法や、歯科衛生士が給料を上げていくための方法についても解説しています。

歯科衛生士は給料が高いって本当?」「歯科衛生士はどれくらいの年収がもらえるの?」「歯科衛生士としてキャリアアップしていくためには?」「退職金はどれくらいもらえるの?」という皆さんの疑問にお答えいたします。

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    歯科衛生士の給与・年収

    早速、歯科衛生士の給与・年収について見ていきましょう。歯科衛生士の給与・年収は、正社員かパート・アルバイトかといった雇用形態や、職場の種類や規模によって異なります。

    平均月給は?

    歯科衛生士の平均月給は、厚生労働省の2019年の賃金構造基本統計調査によれば、残業手当込みで268,700円。年収で言えば3,704,800円で、全国平均だと400万円弱というデータが示されています。このデータの調査対象となった歯科衛生士の平均年齢は34.9歳です。

    パートや派遣の場合の時給は?

    歯科衛生士のほとんどは女性が占めているため、結婚や出産などライフステージの影響を受けやすい現実があると思います。そんな時に、歯科衛生士という国家資格を持っていれば、歯科医院などでパート・アルバイトという雇用形態で、非常勤でも働くことが可能です。

    それでは、歯科衛生士としての業務をパート・アルバイトで行った場合の、平均時給はどれくらいなのでしょうか。

    これはきちんとしたデータはありませんが、筆者が複数の歯科衛生士求人サイトや歯科医院の求人を調査したところ、時給1,300〜1,400円という歯科医院が多いようです。安い歯科医院で時給1,100円程度、高いところでは時給2,000円の歯科医院もあります。

    一般的なパート・アルバイトや派遣での平均時給は1,000円〜1,400円程度であるため、歯科衛生士は高時給で働くことができる職業であるということが言えます。

    なお、歯科衛生士は原則として派遣として働くことはできません。労働者派遣法で、歯科衛生士や歯科医師を含む医療従事者の派遣は禁止されているためです(紹介予定派遣や、産休や育休の歯科衛生士の代替業務などは例外として可能です)。

    その際の、派遣の歯科衛生士として働いた場合の平均時給も、パート・アルバイトと同様の時給1,300〜1,400円程度という歯科医院が多い印象でした。

    年齢別の給料は?

    次に、歯科衛生士の年齢別の給料事情について見ていきましょう。

    前提として、歯科衛生士は給料が上がりやすい職業ではありません。企業の一般職の場合だと、主任 -> 係長 -> 課長 -> 次長 -> 部長といった肩書きに応じて昇給していく仕組みがあると思います。

    しかし多くの歯科衛生士が働く歯科医院は、一般企業よりも小規模の事業体であることが多く、役職や昇給のシステムもあいまいであることが多いです。「院長に辞めたいと伝えたら給料が上がった」というのも、歯科業界あるあるな話です。

    一方で、統計上は年齢が上がるごとに給料は上がっていきます。大学病院や総合病院の歯科など、しっかりとした昇給のシステムがある組織で長く仕事を続けていると給料が上がっていく側面があるほか、一般の歯科医院でも歯科衛生士長やマネージャーになることで、その手当がつくケースが多いようです。



    職場の規模によっても給料は違う

    また、勤務している職場の規模・種類によっても、給料は異なります。先述の厚生労働省の2019年の賃金構造基本統計調査によれば、1,000名以上の職場で勤務している歯科衛生士の給料は、それ以外の職場に勤務している歯科衛生士の給料と比べて、高い傾向にありました。

    しかし、歯科衛生士で1,000人以上の規模の職場で働いているケースが多いとは考えにくく、母数が少ないためたまたま高く出ているとも考えられます。

    いずれにしても、これを読んでいる読者の方を含め多くの歯科衛生士は数名〜20名程度の規模の歯科医院で働いている・働くことが大半だと思いますから、人数規模はそこまで考慮しなくても良いでしょう。


    ボーナスについて

    賃金構造基本統計調査によれば、歯科衛生士の年間賞与・ボーナスの平均額は480,400円です。

    昇給について

    先述したように、歯科衛生士は他の職業と比べて給料が上がりやすい職業ではありません。歯科衛生士として昇給していくためには、自分の臨床やマネジメントのスキルを向上させていき、それを歯科医院の院長先生にプレゼンすることでお互いに納得して良いお給料で働けることが、ベストなのではないでしょうか。

    歯科衛生士の働き方と給料ランキング

    次に、歯科衛生士の働き方や、「どこで働けば給料が高いの?」と悩んでいる方に、働く場所別の歯科衛生士の給料について解説していきましょう。

    3位:歯科医院(月給22~40万円)

    歯科衛生士の大半は、一般的な歯科医院に勤務しています。また、歯科衛生士口腔のヘルスケアを担うプロフェッショナルな職種であり、歯科医院で歯科衛生士業務に従事することが社会から求められています。

    そのため「歯科衛生士としてのキャリアのなかで給料を上げていきたい」と考えている方にとっては、歯科医院で働くことは第一に考える選択肢になることでしょう。

    前章で解説したように、歯科衛生士のお給料事情は年収で言えば370万円程度、月給で言えば27万円程度でした。歯科衛生士の求人を見ていただければわかるように、お給料の良い歯科医院だと月給40万円程度の求人もあります。

    このように「歯科医院で歯科衛生士として働く」なかでも、条件(給料)の良い歯科医院・条件(給料)の悪い歯科医院は存在します。お給料を上げる手っ取り早い方法は、働く歯科医院を変える(転職する)ことでしょう。

    2位:歯科関連企業(月給25~60万円)

    歯科関連企業に勤務する歯科衛生士も、近年増加していると言われています。歯科関連企業とは、例えば1Dのような歯科医療者向けに記事・セミナーを配信するメディア企業や、歯科関連書籍や雑誌を刊行している出版社、歯科医院向けの電子カルテなどを手がけるシステム会社、歯科医療機器・歯科材料を製造している歯科メーカー、またはそれを歯科医院に卸しているディーラーなど多数あります。

    歯科関連企業で活躍している歯科衛生士の職種・ポジションは、歯科医院に対する営業やサポート、専門知識を活かした商品の企画などが挙げられます。

    「実際、歯科衛生士になってはみたものの、臨床現場に立つことが自分のやりたいことではないかもしれない」「医療職だけではなくて、自分のキャリアを考えた時に他の業務内容も経験してみたい」「歯科業界を他の職種の視点から見てみたい」という方は少なくないと思いますので、そうした考えを持っている歯科衛生士は歯科関連企業への転職・就職を検討してみるのも良いでしょう。

    歯科関連企業は歯科医院と比べて役職や昇給の仕組みが整っていることも多く、年齢やスキル向上に応じて昇給も見込めますし、歯科医院で歯科衛生士業務を行うよりも給料は高いことが多いです。

    ただ、やはり歯科医院への転職・就職と比べると採用・選考のフローも多く、倍率も高い傾向にあります。また、歯科関連企業で働くとなれば、基本的なPCスキルやビジネスコミュニケーションスキルなど、歯科医院での業務には求められていないことも求められるようになるため、違った考え方が必要かもしれません。

    1位:フリーランスになる(月給40万円〜)

    すべての歯科衛生士におすすめできる方法ではありませんが、「フリーランス歯科衛生士になる」という方法もあります。

    歯科衛生士として一通りの臨床スキルをスキルを身に付けた後、自分なりのオリジナリティ(スタッフの教育・マネジメントが得意、など)を身に付けることができれば、自分の市場価値は上がっていきます。

    どこの歯科医院でも通用するスキルや、多くの歯科医院が求める(ニーズのある)スキルを体得していれば、院長先生は時給5,000円でも自分の歯科医院で働いてほしいと思うことでしょう。

    このように、正社員やパートという括りではなく、フリーランス・個人事業主として歯科衛生士の業務を行う歯科衛生士が少しずつ増えています。自分の裁量で、歯科医院側にOKされれば自分が望んだ給料で働けるため、給料はもちろん高くなります。

    また、執筆や出版、セミナーへの登壇や歯科医院へのコンサルティングなど、仕事をもらえれば歯科衛生士業務以外の仕事でも報酬を受け取ることができるため、そこもフリーランス歯科衛生士の年収に効いてくるポイントと言えます。

    しかし、自分のスキルは不十分であったり、求めている給料と歯科医院が払っても良い給料とにギャップがある場合は、正社員の歯科衛生士の方が安定して稼げるということにもなりかねません。フリーランス歯科衛生士という職業は、あくまでも自己責任であるということは注意しておかなければならないでしょう。

    歯科衛生士になるには?

    本ページでは、歯科衛生士の給料・年収について解説してきました。それでは、歯科衛生士になるにはどうすれば良いのでしょうか。すでに歯科衛生士の資格をお持ちの方は飛ばしていただいて構いません。

    国家試験に合格する必要がある

    歯科衛生士になるには、歯科衛生士国家試験に合格する必要があります。歯科衛生士国家試験は1年に1回行われる試験で、例年であれば毎年3月上旬に行われ、3月下旬に合格発表があります。試験に合格すると、多くの歯科衛生士は数日後の4月から歯科医院で働くことになります。

    歯科衛生士国家試験の合格率は、過去5年間を平均しても約95%程度と、高い水準にあります。看護師国家試験は90%程度、理学療法士国家試験は83%程度、介護福祉士国家試験は69%程度、診療放射線技師国家試験は80%程度と他の医療系・コメディカル系職種と比較しても、歯科衛生士国家試験の合格率は高いということがわかるでしょう。

    以前本サイト1D(ワンディー)でも取り上げましたが、約95%の合格率でも不合格となってしまうケースもあります。興味のある方は、ぜひこちらの記事もお読みください。

    >> どうして私だけ。合格率9割の歯科衛生士国家試験に「落ちた」女たち

    しかし、歯科衛生士国家試験を受験するためには、歯科衛生士養成機関を卒業する必要があります。これを卒業するか卒業見込みでないと、歯科衛生士国家試験の受験資格はありません。歯科衛生士養成機関には、大学から短期大学、専門学校といった種類があります。

    歯科衛生士養成機関の多くは3年制です(大学の場合は4年制の場合があります)。平成21年以前は2年制の学校も存在しましたが、平成22年以降はすべての歯科衛生士養成機関の最低修業年数は3年以上となりました。

    このため、歯科衛生士は誰でもすぐにチャレンジできるという資格ではなく、3年以上の講義や実習を経て、ようやく受験資格を得ることができる国家資格です。

    歯科衛生士キャリアアップは?

    次に、歯科衛生士としてのキャリアアップについて解説をしていきましょう。

    認定資格を取得する

    学会や団体が発行している、歯科衛生士の認定資格を取得することもひとつの方法です。歯科医師の場合、各分野の学会が「認定医」「専門医」「指導医」などの認定資格を発行していることが多いですが、歯科衛生士にも取得できる認定資格が存在します。

    例えば、特定非営利活動法人日本歯周病学会が発行する認定歯科衛生士や、一般社団法人日本歯科審美学会が認定している「ホワイトニングコーディネーター」の認定資格などがあります。

    >> 【歯科衛生士】ホワイトニングコーディネーターの取り方を解説!

    需要が多い場所で働く

    キャリアアップをする主な目的が、自分の給料を上げたいという目的の場合、歯科衛生士の需要が多い場所・地域を見つけて働くというのも手です。

    あくまで一般論ですが、ものの値段は需要と供給によって決まっています。つまり、例えば東京の都心部で優秀な歯科衛生士が欲しい歯科医院は、高い給料を歯科衛生士に払っても歯科医院の経営全体でペイできるほどの、患者さんからの需要・ニーズがあります。

    歯科衛生士養成機関を卒業して、新卒で入社した歯科医院の給料や待遇がさほど良くなくても、次に就職した歯科医院の給料や待遇が良くなっていれば、自分のスキルに投資もできますし、キャリアアップできているということになります。

    「どこで、誰と働くか?」という問題は、歯科衛生士キャリアを形成する上でとても大事なことなので、定期的に見直していきたいものです。

    思い切って転職する・フリーランスになる

    歯科衛生士としてキャリアアップする上で、「思い切って転職する」「フリーランス歯科衛生士になる」など、環境をガラリを変えてしまうのもアリかもしれません。

    人は自分の置かれた環境によって成長したり、または成長が止まってしまったり、最悪の場合には悪いクセが付いてしまったりします。歯科医院でも、治療に対して熱を入れていない院長先生や、間違った治療を行なっている院長先生に下で働き続けることは、歯科衛生士としてのキャリアアップにおいて悪影響です。

    フリーランス歯科衛生士になるには、先ほどご説明した通りハイリスク・ハイリターンですから、誰しもがそこを目指せば良いということではありません。しかし、思い切って職場を変えてみる・転職することは、もっとキャリアアップしてみたい歯科衛生士にとって良い選択かもしれません。

    歯科衛生士の退職金

    ちなみに、歯科衛生士は退職する場合の退職金はどれくらいもらえるものなのでしょうか。歯科衛生士は退職金がもらえるのか、また歯科衛生士の退職金の相場について解説をしていきます。

    歯科衛生士の退職金は、勤務年数・勤続年数によって変わってくることが多いです。歯科医院という職場では、勤続年数が3年以上の場合に退職金が出るケースがよくあります。

    歯科衛生士の退職金の相場

    歯科衛生士の退職金の相場・平均は、月給の1〜4ヶ月分程度と言われています。冒頭で解説した歯科衛生士の平均月給は27万円なので、歯科衛生士の退職金の相場・平均は27万円〜108万円程度の支給となります。

    歯科衛生士の退職金についてもっと詳しく知りたい方は、こちらの記事もぜひご覧ください。

    >> 歯科衛生士の退職金の相場・平均はいくら?転職で出ない場合も?

    まとめ

    以上、『歯科衛生士の給料や年収は?キャリアアップの方法を解説』と題して、歯科衛生士の月給・年収やキャリアアップ、職場の選び方などについて総合的に解説をしてきました。

    歯科衛生士の業務には「歯科予防処置」「歯科診療補助」「歯科保健指導」がありますが、これを極めていく道もあれば、別の働き方で歯科衛生士としての知識・経験を活かすという道もあります。

    歯科衛生士の国家資格を取得したからと言って、歯科医院で歯科衛生士として働かなければならないということはありません。ぜひご自身のキャリアを考える一助になれば幸いです。

    監修者情報

    松岡 周吾

    歯科医師。1992年千葉県生まれ。2016年鶴見大学歯学部卒業、歯科医師免許を取得。2017年同大学附属病院歯科医師臨床研修修了、東京歯科大学大学院博士課程に入学。2018年同大学院退学後、株式会社Dentability(現・ワンディー株式会社)を創業。

    1D編集部
    著者/監修者
    1D編集部

    1D編集部は、臨床経験のある歯科医師・歯科衛生士・歯科技工士で構成されています。歯科業界の最新ニュースから歯科医療の臨床・学術情報、歯科医療者のためのライフスタイル記事まで、歯科医療の専門家の視点で、ただしく・おもしろいコンテンツをお届けします。

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    1D編集部
    2025年12月12日
    どうして私だけ。合格率9割の歯科衛生士国家試験に「落ちた」女たち

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    歯科衛生士国家試験の合格率は、例年95%を超える。受験資格が基本的には歯科衛生士学校を卒業した者に限定されるため一概に比較することはできないが、国家試験としては合格率の高い部類に属するだろう。本記事では、歯科衛生士国家試験に不合格になった経験のある女性3名に取材を行った。今回取材に協力してくれたのは、田代さん(仮名・24歳)と斎藤さん(仮名・22歳)、そして松田さん(仮名・31歳)だ。 合格にストーリーがあるように、不合格にもそれぞれのストーリーがある。不合格後も内定先の歯科医院で歯科助手として働きながら合格を目指している人や、学費を捻出することができずに3年以上も受験を続けている人など、数字では語られないバックグラウンドがある。【あなたにおすすめの記事】> 【ルポ】歯科医師国家試験、多浪生の現実> 歯学部を放校になった「30歳・元歯学部生」の末路1年の歯科助手経験を経て合格、田代さん(24歳)の場合田代さん(仮名・24歳)は短期大学の歯科衛生士科を卒業後、2018年の第27回歯科衛生士国家試験を受験したが、あえなく不合格となった。翌年の国家試験を受験して合格し、現在は歯科衛生士として埼玉県内の歯科医院で歯科衛生士として働いている。 明るくハキハキと話す彼女の口から、不合格だった1回目の試験直後のことを語ってもらった。 「私はもともと成績があまり良くありませんでした。試験当日はプレッシャーもあって、問題を解いている最中も ”あぁ、これは落ちたな” と思いながら解いていました。試験が終わって自己採点をしてみると、やっぱり点数が足りていませんでした」。 自己採点で点数が足りなかったため、すぐに諦めがついたと田代さんは語る。すでに地元である埼玉県内の歯科医院に内定が決まっていたが、内定先の院長とも話し合い、歯科助手として採用してもらえることになった。 「翌年、自己採点で合格点を取れた時はものすごく嬉しかったですね。両親と学校の先生、院長先生にもすぐに泣きながら報告しました。あとは学校の同期にも、1年前は私のせいで合格率100%が達成できなかったので、報告しました」と当時の嬉しさを振り返っていた。 ケアレスミスで1点に泣いた、斎藤さん(22歳)の場合斎藤さん(仮名・22歳)は、2020年に行われた第29回歯科衛生士国家試験で不合格となった。斎藤さんは幼少期から介護福祉士に憧れており、高齢者と関わる仕事に就きたいと考えていた。介護職員初任者研修を取得できる高校に進学し、実際に資格も取得した。しかし夜はしっかりと寝たいタイプだった斎藤さんにとっては、夜勤の多い介護の現場に出ることは不安だったようだ。 そこで斎藤さんは、介護の資格を活かすことができる医療系の専門学校を志すようになった。歯科衛生士専門学校に進学したのは、国家試験の合格率が高くダブつくリスクが低いということも決め手だった。 斎藤さんは、自身が落ちた理由について次のように分析する。「学校での成績も悪くなかったし、模試でも合格点は到達していました。でも私はおっちょこちょいな部分があって、問題をパッと見た瞬間に、直感で回答してしまうことがよくありました。模試は難しく感じましたが、本番当日は “なんだ、簡単じゃん” と思いながら解いていました」。 しかし会場からの帰りのバスで自己採点をしたところ、点数が足りないことが判明したという。「自己採点では1点足りませんでした。普通は不適切問題が1〜2問あるので合格はできるかなと思っていましたが甘かった。本番でおっちょこちょいのクセが出てしまって、悔やんでも悔やみきれません」。 国家試験では、1点に泣いた。現在は自宅近くの歯科医院で歯科助手として働きながら、すでに来年の国家試験に照準を合わせている。 「4月中旬から勉強を始めています。国試の麗人と医歯薬の5年分の過去問を徹底的に理解して、わからない箇所には付箋も貼っています。去年は臨床現場で働かなければわからない問題がたくさん出題されていたので、今年は歯科助手として臨床現場に出ながら猛勉強をしています」。 屈辱から雪辱を目指す、松田さん(31歳)の場合今年32歳になる松田さん(仮名)は、高校を卒業後に派遣社員などを経て歯科衛生士専門学校に入学した経歴の持ち主だ。今回取材にご協力いただいた3人のなかでは最年長になる。彼女も、今年の3月に行われた国家試験で1点に泣いた1人だ。 松田さんは、歯科衛生士国家試験を実施する歯科医療振興財団に憤りを覚えている。今年の国家試験では不適切問題による採点除外が一問もなかったためだ。 「毎年、3問くらいは不適切問題になります。なのに今年は1問もない。なぜよりによって、という気持ちが正直がところです」。松田さんは、合格発表直後に不適切問題の検証を行ったという。「周りの友人に協力してもらい今年の問題を見返してみると、10問くらい不適切っぽい問題があったんです。合格基準を考え直してもらおうと歯科医療振興財団に連絡してみましたが、返事はありませんでした」。 さらに松田さんはこう続ける。「私は一度社会人を経験してから、歯科衛生士を目指しています。学校の同期と比べても努力はしていましたし、成績も態度も良かったと思います。私より成績が悪くてやる気も無い20歳そこそこの子が合格しているのに "どうして私だけが" という怒りはあります」。 合格発表日当日、松田さんは内定先の歯科医院で仕事をしていた。「自己採点の結果から、合格できるかどうかは半々だと思っていました。でも不適切問題がないという結末で、不合格に。勤務先の院長に落ちたということを伝えたら "1年間一緒に頑張ろう" とは言ってくれましたが、気持ちをリセットしたいという思いもあり退職しました」。松田さんはいま、週に4日歯科医院で歯科助手として働きながら、来年の3月に向けて勉強を始めている。不適切問題の線引きは?不適切問題の線引きに対する不満を、不合格になった受験生は持っていた。確かに、1D編集部で歯科衛生士国家試験を解いてみたところ、不適切問題の線引きが怪しいと思われる設問も無くはなかった。2019年の社会福祉士国家試験では、不合格となった受験生の声を受けて厚生労働省が問題を再検討したところ、不適切問題が覆るという出来事があった。この時には、厚生労働省が418名の追加合格を出すという結末になっている(外部リンク:厚生労働省)。ただ、歯科衛生士国家試験は一定の知識があれば合格することができる資格試験だ。合格基準もシンプルで、運の要素は少ない。不合格になってしまった人は、知識が不足しているということは否めないと思われる。歯科セミナーなら「1D(ワンディー)」で!日本最大級の歯科医療メディア「1D」では、診療に役立つオンラインセミナーを多数開催中。もっと知りたい臨床トピックから超ニッチな学術トピックまで、参加したいセミナーが見つかります。下記ボタンから、開催中のセミナーを見てみましょう!開催セミナーを見てみる
    Masahiro Morita
    2025年12月11日
    歯学部を放校になった「30歳・元歯学部生」の末路

    歯学部を放校になった「30歳・元歯学部生」の末路

    歯科医師国家試験の合格率は、下げ止まりの状況が続いている。厚生労働省が新規参入歯科医師を削減する動きもあるなかで、各歯学部は合格率の維持、そして優秀な学生の確保に頭を悩ませている。歯科医師国家試験が難化しているしわ寄せは、各歯学部の教員陣、ひいては在籍する歯学部生に及んでいる。臨床実習を含む現実味のないコア・カリキュラムのなかで、詰め込み型の教育を強いられているのが現状だ。多くの歯学部では、学生が在籍できる年数に限度がある。最大で12年間在籍できる歯学部もあれば、1学年につき1度の留年しか許されていない歯学部もある。勉強や実習に付いていけず、在籍限度を超えてしまった歯学部生に待ち受けているのは「放校」と呼ばれる事実上の追放処分だ。1D編集部では、今年で私立歯学部を放校になった「元・歯学部生」に取材を試みた。彼はこの春から地元である東北に帰り、歯科とは関係のない道へ進む。自分に合う職業を探す、ゼロからの再スタートを切ることになる。本記事が、歯学部が構造的に抱える教育上の欠陥に対する問題提起になれば幸いである。「ただただ、両親に申し訳ない」「至らぬ点もあるかと思いますが、本日はよろしくお願いします」。90度に近いお辞儀をして、彼は取材会場に現れた。鈴木さん(仮名)は見るからに真面目そうで、とても礼儀正しい印象の男性だ。彼は今年で31歳になる。2月中旬に発表された進級判定で留年が確定し、大学規定の在籍限度を超えてしまった。教授陣や大学事務にも掛け合ったが、なすすべなく放校という処分を受けた。「この数年間、こうなるかもしれないということは感じていました。今はまだ放校になった実感はありませんが、ただただ、両親に申し訳ないという気持ちでいっぱいです」。淡々とわれわれの質問に答える彼の表情は、勉強や実習の重圧から解放され安堵しているようにも見えた。叶えられなかった夢、守れなかった約束歯科医師になることを約束された人生だった。両親はともに歯科医師で、東北地方の地方都市にユニット10台を超える規模の歯科医院を経営している。1日に訪れる患者数も多く、地元住民から信頼されている歯科医院である。そんな両親の間で生まれ育ち、小学校の卒業文集には「お父さん、お母さんのような歯医者さんになりたい」という夢を書いた。中学・高校は地元で1番の進学校に通い、推薦入試で関東地方にある某私立歯学部に入学した。「子どもの頃から、自分は歯科医師になるものだと確信していました。歯学部での勉強はやればできるだろうという自信もあったので、まさか自分が放校になるなんて微塵も考えていませんでした」。歯科医師の資格を取り、臨床家として経験を積んだ後に両親が経営している歯科医院を継ぐーー。順風満帆に思えた彼の歯科医師としての人生は、歯学部入学後すぐに暗転することになる。「放校確定」までの顛末歯学部に入学した彼を待ち構えていたのは、休むことを許されない歯学部のカリキュラムだ。「歯学部での勉強は、想像していた以上に過酷でした。推薦入試で入学した私は、ほとんど受験勉強をしていなかった。朝が得意ではないということも相まって、1年生の冬には成績も出席も足りないという状態になりました」。人間関係のトラブルもあり、彼は1年生で留年することになる。翌年はなんとか2年生に進級したが、2年生でも留年。その後も毎年のように留年を重ね、5年生から6年生に上がることができず、あえなくタイムオーバーとなった。「歯学部に殺される」という危機感彼には、現在の歯学部の教育に対して主張したいことがある。それは、歯学部での評価方法が成績のみに限定されており、努力や人柄を無視しているということだ。「鬱になり学校に来れなくなったり、最悪の場合には自殺した人も出ています。人格的に素晴らしい人や才能がある人も、歯学部に入ると殺されてしまう」と憤る。さらに、歯学部が歯科医師国家試験の予備校と化している点についても指摘する。「大学側の目的は、国家試験の合格率。学生のことを合格率のパーセンテージとしか見ていません。合格率を上げて、大学の権威を保つということしか関心が無いのだと思います」と続ける。おわりに歯科医師になる資質がない者は、歯科医師になるべきではない。国民や患者に対する責任があるからだ。歯科医師国家試験は、基本的資質を有さない者を弾く機能として、重要な役割を担っている。しかし、弾かれた者にも人生がある。毎年、十数名の「歯のことを10年以上勉強した何でも無い人」が誕生しているのだ。資質を有さないと思われる者には、歯学部低学年時から他のキャリアを提案するなどの大学側の仕組みが必要である。さらに言えば、現在の歯科医師国家試験の合格率偏重の歯学教育は、本当に国民や患者のためになっているだろうか。歯学部が「予備校化」したことで、本来研究や臨床という役割を担うべき大学教員のリソースが国家試験対策に奪われ、本来あるべき大学としての機能を失っていないだろうか。われわれにも正解はわからないが、歯学部が抱える教育上の諸問題は、国民の健康な生活のために、もっと議論されるべきテーマである。※個人特定防止の為、内容やプロフィールを一部脚色しています。
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    2025年12月8日
    【速報】3Dプリントデンチャーが保険適用へ

    【速報】3Dプリントデンチャーが保険適用へ

    2025年12月、総義歯のデジタル化が本格スタート厚生労働省は2025年11月の中医協総会において、液槽光重合(SLA)方式による3Dプリント総義歯の保険適用を正式に通知した。保険収載日は2025年12月1日の予定。今回の決定は、義歯領域におけるデジタル補綴の大きな転換点となる。保険収載されるのは、クルツァージャパン社のディーマ プリント デンチャー ティース(歯冠部材)償還価格:1歯あたり59円ディーマ プリント デンチャー ベース(義歯床材)償還価格:1顎あたり2,026円の2種類。いずれも区分C2(新機能・新技術)として保険収載され、原価計算方式で償還価格が設定された。3Dプリントデンチャーに関するセミナーも開催タイムリーなことに、来る11月15日(土)〜11月16日(日)で開催される「ワンディー24時間セミナー2025」では、3Dプリントデンチャーに関するセミナーが開催される。東京科学大学高齢者歯科学分野の金澤学教授による『実用可能な「3Dプリントデンチャー」の理論と製作』と題されたセミナーで、製作の基本やその精度と可能性について解説される。今回のニュースを受け、保険収載された背景や実際の診療での活用についても語られる予定だ。セミナーはYouTubeライブにて無料で視聴可能。最新情報を最速で入手し、導入後の診療の準備ができるのでぜひ受講していただきたい。視聴はこちらから「総義歯2:2,420点」を準用して算定可能今回、最も大きなインパクトは技術料の扱いだ。企業が当初希望していた準用技術料「総義歯(1顎につき)2,420点」は、そのまま採用。中医協の最終案においても、液槽光重合方式3Dプリントによる総義歯の製作は「有床義歯 2 総義歯(1顎につき)」の点数を準用すると明記されている。つまり、材料だけでなく総義歯の技術料として保険算定できる道が正式に開かれたことになる。保険算定には“要件あり”プリント義歯を算定するためには、以下の条件を満たす必要がある。歯科補綴の専門知識と3年以上の経験を持つ歯科医師が在籍液槽光重合方式3Dプリント義歯装置が院内にあるまたは該当装置を有する歯科技工所との連携使用装置名・技工所名の診療録記載上下顎同日装着に限り算定可能また、印象・咬合採得・仮床試適は従来通り別途算定できる。東京科学大学高齢者歯科学分野の金澤学教授によるライブセミナー『実用可能な「3Dプリントデンチャー」の理論と製作』の視聴はこちらから(視聴無料)視聴はこちらからプリントデンチャーが保険収載された背景資料によれば、以下の臨床的有用性が示されている。従来義歯と比較し再製作・修理回数に差はない装着後の潰瘍や疼痛などの併発症が有意に少ない造形の均質性による適合の安定化デジタル化により製作時間の短縮技工プロセスの効率化により技工士不足への対策にもなるまた、患者数予測は初年度18.5万人、10年後には3.9万人が使用すると見込まれており、義歯のデジタル移行が中長期的な国家方針とも読み取れる。義歯領域の“デジタル元年”が始まる今回の収載は「材料だけの保険化」ではない。総義歯として算定できる技術が正式に制度に組み込まれたことが最大のポイントだ。これにより、デジタル補綴の普及加速技工・診療プロセスの効率化技工士不足問題への貢献義歯の再現性・適合性の向上が実現し、総義歯領域のパラダイムシフトが一気に進む可能性が高い。2025年12月から始まる“保険プリント義歯”の時代。今後の診療報酬改定では、部分床義歯や他デジタル補綴への波及も強く期待される。「ワンディー24時間セミナー2025」開催東京科学大学高齢者歯科学分野の金澤学教授による『実用可能な「3Dプリントデンチャー」の理論と製作』をはじめとする、全15セミナーが全て無料で視聴できるライブイベント「ワンディー24時間セミナー2025」が開催。「歯科医療の最先端と、これから」をテーマに、CAD/CAMシステムや3Dプリンティング技術、AIを活用した歯科診療の最新情報と今後10年で見込まれる診療の変化を各分野で学ぶことができるシンポジウムとなっている。加速度的に進化を続ける歯科医療に遅れを取らぬよう、いち早く最新情報を入手し日々の臨床や経営に活かしてほしい。開催はYouTubeライブにて、11月15日(土)15:00から11月16日(日)15:00の24時間完全生中継。各分野のスペシャリストに質問も可能なため参加して損はないだろう。イベントに参加する参考文献「医療機器の保険適用について(令和7年 12 月1日収載予定)」中医協, 2025年11月12(PDF)
    1D編集部
    2025年11月13日
    【ルポ】歯科医師国家試験、多浪生の現実

    【ルポ】歯科医師国家試験、多浪生の現実

    歯科医師国家試験の難化について取り上げた記事( 歯科医師免許をかけた、歯科大学と厚生労働省の戦い )には、国試浪人中の方から多くの反響を頂いた。歯科医師国家試験が「落ちれば落ちるほど受からない」のは、厚生労働省も認めているデータだ。5浪以上となると、国試に合格できるのは10人に1人しかいない。今回1D編集部では、5浪以上の国試受験生に取材を行った。協力してくれたのは、2013年に某私立歯科大学を卒業した稲屋さん(仮名)だ。彼は来年2月、6回目の国家試験を受ける。私たちが取材を行ったのは、まだ夏の余韻が残る10月上旬。「合格体験記は飽きるほどありますが、”不合格体験記” は珍しいんじゃないですか」。笑いながら話す彼の表情からは、諦めのような感情が見て取れた。6年生までは全てが順調だったーー5浪に至るまでの経緯を教えてください。意外に思われるかもしれませんが、6年生まではストレートで進級しています。成績も平均だったので、まさか自分がこんなに立ち止まってしまうとは思っていませんでした。卒業試験で留年してしまいましたが、1年間頑張ったら卒業はできた。その年の国家試験も1問に泣いただけだったので、1年間頑張れば受かるだろうと高を括っていました。ーーところが翌年も、翌々年も合格できなかった。これはやばいかもな、と思ったのは1浪目の秋です。模試を受けるたび、現役生にどんどん追い抜かされていき、成績が下がっていくんですね。自分の方が勉強時間や努力の総量は多いのに、結果が出ない。どう勉強すれば良いのかがわからなくなり、焦りにつながりました。もがき続ける浪人生活ーー1日にどれくらい勉強していますか。授業が始まる10時30分から、予備校が閉まる22時まで、一日中机に向かっています。一生懸命やっていますが、はっきり言って集中していない時間が多いです。心のどこかで「もう合格できない」と諦めているのかもしれません。近年は国家試験の当日も、1日目の午前中に心が折れて、2日目は気合が入らないこともあります。ーー周りのサポートはありますか。既に歯科医師になった友人が優しく「大丈夫か?」と連絡をくれても、「こいつ俺のこと馬鹿にしてるんじゃないか」と感じてしまいます。仲が良かった友人のなかには、もう院長をしている奴もいる。学生時代は対等だったのに、自分のことを嘲笑っているんだろうなという一方的な劣等感はありますね。祖母に見せられなかった白衣姿ーーいま、最も辛いことは何ですか。祖母が、ずっと自分のことを気にかけてくれていたんです。祖母は「私の孫は歯医者の先生になるんだ」と自慢げに友人に言っていたのに、自分が歯科医師になる前に他界してしまいました。祖母に、歯科医師として働いている姿を見せられなかった、というのは未だに悔やんでいます。1年でも早く歯科医師になって、天国にいる祖母に報告したいですね。ーー合格するまで浪人を続けていくわけですね。ここまで来たら後には引けません。歯科大を卒業しても、ライセンスを持っていなかったら仕事はない。自分の活躍できる場所はここしかないという気持ちで、追い込んで勉強しています。もう10年以上も歯科業界にいるので、今さら他の職種には就きたくないという気持ちもあります。浪人中、やってはいけないことーー合格したら、どんな歯科医師になりたいですか。正直、今は国試合格がゴールなので、歯科医師の仕事をしている自分を想像できません。机と向き合っている生活が長いので、実際に現場に出たらどうなることか。この数年間で知識だけは身に付きましたが、臨床現場に出て自分が治療をしたり、患者さんとうまく話せる自信はありません。ーー浪人中、やってはいけないことはありますか。どんな友人と付き合うかは真剣に考えた方が良いと思います。勉強を一緒にできる友人とだけ付き合うべきです。予備校には10浪以上の人もいたり、勉強をせずに遊んでいる人もいる。そういう人たちと付き合ってしまうと、モチベーションが下がり、成績も上がりません。自分は今年、あえて誰とも付き合わず、1人で勉強することを意識しています。平成最後の歯科医師国家試験は、必ず合格したいですね。歯科臨床を学ぶなら、1Dプレミアム!歯科医師向けセミナーなら、「1D(ワンディー)」で!臨床・経営問わず1,000講座以上の歯科セミナーが見放題。会員満足度96%超え。会員登録で今すぐセミナーを受講しよう。今すぐ申し込む
    1D編集部
    2025年10月22日

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