「歯医者でおっぱい当たる」ことを数学的に証明してみた

「歯医者でおっぱい当たる」ことを数学的に証明してみた

文・構成:Shugo Matsuoka | 投稿日: 2020年07月19日
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「歯医者でおっぱいが当たる」という都市伝説は、数十年も前からまことしやかに囁かれている。メディアやSNS、匿名掲示板でもたびたび話題に上がってきたが、議論は平行線を辿っていた。

「痛みを和らげるためにわざとおっぱいを当てている」「胸にタオルを詰めている」という歯科医療者から見れば一発でダウトとわかる主張も繰り広げられている始末だ。われわれは、この議論に終止符を打ちたいと考えた。

本記事では、実際に女性歯科医師・歯科衛生士の意見を交えながら、「歯医者でおっぱい当たる」という説に関する理論的な最終整理を試みたい。

結論から言ってしまえば、本記事で説明する条件が揃えば、「歯医者でおっぱい当たる」ということが証明された。

女性歯科医師・歯科衛生士はどう思っている?

まず最初に、実際の臨床家の方々に意見を聞いてみよう。複数の歯科衛生士や女性歯科医師に「歯医者でおっぱい当たる」問題について話を聞いてみると、「当たる派」「当たらない派」に分かれた。 

【おっぱい当たる派】

気が付いた時には当たっていることがあります。学校で「ミラーテクニックが下手だと当たる」と教わっていたので、当たっていると気が付いたら注意するようにしています(22歳・歯科衛生士) 。

普段は当たることはありませんが、1人で処置をしている時、反対側にあるスリーウェイなどを取ろうとして当たってしまうことはたまにあります。でも当たるのは一瞬だけです(31歳・歯科衛生士)。

以前、スクラブの胸ポケットに挿しているペンが患者さんの頭に当たって痛いと指摘されたことがあります。気が付かないうちに当たっているんだなと思いました(28歳・歯科医師) 。

【おっぱい当たらない派】

絶対当たらない。都市伝説です。たまに業界外の男性から「わざとおっぱい当ててるんでしょ?」とか言われますが、ありえません(27歳・歯科衛生士) 。

当たらないですね。何かしら当たっているとしたらお腹じゃないですか。というか、男性はおっぱい当たって嬉しいものなんでしょうか(25歳・歯科衛生士)。

「ミラーテクニックが下手だとおっぱい当たる」はよく言われることであり、1D読者の方々も心当たりがあるのではないだろうか。しかし、「絶対当たらない」「当たっているとしたら腹の肉」という反対意見も多かった。

「歯医者でおっぱい当たる」問題は臨床家のなかでも意見が分かれるところであり、個別のヒヤリングをしただけで埒が明くような問題ではないのだ。

「歯医者でおっぱい当たる」ことの数学的証明

さらに詳しく検証していこう。実際のところ、歯科診療中の術者のおっぱいは患者に当たることはあるのか。

1D編集部での検討の結果、今から解説する条件が揃えば「歯医者でおっぱい当たる」ことが明らかになった。 なお、本検証では術者が椅座位、患者が仰臥位の一般的な水平位診療を前提としている。

「歯医者でおっぱい当たる」を再現するためには、2つの条件が必要だ。これをそれぞれ条件A、条件Bとする。 

【条件A】 
まず、条件Aから定義していこう。下図は、歯科治療中における術者と患者との位置関係を水平的に表したものである。
上図において、m、c、n、dは変数である。これらの変数m、変数c、変数n、変数dには、それぞれ以下の値が入る。

【術者側の変数】
m = 術者用イスの座面からおっぱいまでの距離(mm)
c = 地面から術者用イスの座面までの距離(mm)

【患者側の変数】
n = ユニットの座面から水平位の患者の高さ(mm)
d = 地面からユニットの座面までの距離(mm)

「歯医者でおっぱい当たる」ためには、まず前提となる条件Aとして次の等式が成立しなければならない。
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つまり、地面から術者のおっぱいまでの高さ(m + c)と地面から患者の頭までの高さ(n + d)が等しくならなければ、そもそもおっぱいは当たらないということである。

【条件B】 
条件Aでは「歯医者でおっぱい当たる」ための上下的な位置関係を定義した。続いて、「歯医者でおっぱい当たる」ための水平的な位置関係を定義していこう。
上図における変数a、変数b、変数cには、それぞれ以下の値が入る。

a = 術者の肩から指先までの距離(mm)
b = おっぱいの大きさ(mm)
c = 咬合平面から頭頂部までの距離(mm)

変数cについて補足しておこう。変数cは下図で示しているように、咬合平面(occlusal plane)から頭頂部(parietal portion)までの距離のことである。
変数a、b、cを用いると、条件Bとして次の式が導き出される。
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この式は、おっぱいの大きさ(b)と咬合平面から頭頂部までの長さ(c)の和が、腕の長さ(a)よりも大きくならないとおっぱいは当たり得ないということを示している。 

まとめると...

条件A・条件Bを組み合わせ、どのような場合におっぱいが当たるのかについて整理していこう。「歯医者でおっぱい当たる」のは、次の条件に合致する場合である。 

術者用イスの座面からおっぱいまでの距離をm、地面から術者用イスの座面までの距離をc、ユニットの座面から水平位での患者の高さをn、地面からユニットの座面までの距離をdとした場合、 

m + c = n + d … 条件A

術者の肩から指先までの距離をa、おっぱいの大きさをb、咬合平面から頭頂部までの距離をcとした場合、 

b + c > a … 条件B

条件Aが成立し、かつ条件Bも成立した場合に、術者のおっぱいは患者に当たる。

現実的に調整できる変数は2つ

本記事では、「歯医者でおっぱい当たる」問題に関して理論的・数学的な整理を試みた。最後に、「歯医者でおっぱい当てない」ために、実際の臨床での活かし方を解説しよう。

上記で上げた変数のうち、術者用イスの座面からおっぱいまでの距離(m)、ユニットの座面から水平位の患者の高さ(n)、おっぱいの大きさ(b)、咬合平面から頭頂部までの距離(c)はそれぞれ固有の数値であるから、調整することはできない。

つまり事実上コントロール可能なのは、地面から術者用イスの座面までの距離(c)、すなわち術者用イスの高さの設定、地面からユニットの座面までの距離(d)、すなわちユニットの高さの設定、そして術者の肩から指先までの距離(a)、すなわち診療時の腕の曲げ具合の3つの変数しかないのである。

さらに現実的には、術者用イスの高さを調整することはあまり一般的ではない。となると、実際の診療においてコントロール可能な変数は「ユニットの高さ」と「腕を曲げ具合」だけである。

ユニットを適切な高さに調整することに加えて、ミラーテクニックなどを駆使することで腕を曲げすぎない(患部を直視しない)ことを意識すれば、おっぱいは患者に当たらなくなるのである。

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