シンママDHが女性歯科医療者の悩みについて語る連載、第2回はキャリアパスについて話します。
歯科医院組織の一員として働く歯科衛生士たちは、仕事において単なる「労働価値=報酬」を得たいだけではない。仕事を通じて得たいものは一体なんなのか?
特に少子高齢化が進み、将来に不安を抱えて生きている近年の労働者がどんなことを考え、変化をしようとしているのか。おそらく歯科医院に所属して一生そのまま働き続けられる、と安易に考えている人も少なくなってきている。
今回は個人としての「キャリア」について調べ、考えてみた。
「キャリア」という言葉を聞いてどんなイメージをお持ちだろうか。きっと、職業や職務のこと?と考える人が大半だと思う。
著書「キャリアカウンセリング 宮城まり子」によると、近年では「キャリア」の概念を「個人の人生・生き方とその表現方法」であるとし、「単なる職業・職務内容・進路にのみ留まらず幅広く全体的・総合的にライフ・キャリアを捉えるようになってきた」とある。
思えば筆者も「仕事」に対してやりがいや楽しみとして続けられる理由として、「自分の価値観や考えが表現できる」ことや、それによって得られる「感謝の言葉や報酬により、更に自己実現が叶えられること」であると感じた。
単に労働から得られる報酬だけが目的ではないし、更に言えばいくら報酬が良くても続けられないだろうなと思う。
しかし、体力のない小規模の歯科医院ではライフステージに合わせて労働環境を働き手に合わせるということが容易なことではないし、社会情勢による変化に適応するのにも大変な苦労を要する。
正直なところ、そんな業界では自己実現を可能にする働き方ができている人は多くない。
転職も当たり前になってきた世の中で、コロナ禍では更に休業や閉院を余儀なくされる歯科医院も目立った。首都圏に就職したが医院がコロナの影響で閉じてしまったのでUターンして地方に戻ってきた人もいた。
急激な社会経済環境の変化の中で働く我々は、本来想定していた予定どおりに人生や職業生活を歩むことは非常に難しいのである。
しかしまだまだ社会人としての経験や知識も浅い中で追い込まれた状況下での「キャリア」相談ができる場所がどのくらいあるだろうか。
歯科衛生士として働く中で周りから聞く内容からは、学校でもそこまで「キャリア」について教わる機会も少なく、再就職を目指して歯科医院選びをするも、条件から選ぶだけなので本来の職業選択に対する相談や問題解決に向けたカウンセリングなどを受ける機会が非常に少ないと言うことがわかった。
歯科衛生士が辞める理由としては以下のようなことがほとんどである。
理由として挙げられたこれらはどれも医院側の問題である。要は他者や環境が理由で辞めるという選択肢をとっている人がほとんどなのだ。
そもそも「良い職場」「悪い職場」をどう分別するのかという意見もあるかと思うが、よほどブラックな職場を除いたとしてもやはり出てくるのはもっと良い職場で働きたいということである。
学生時代の友人の話や、SNSで見るキラキラして楽しそうな職場をみると自分にはもっとできることがあるのではないか、もっと良い職場で働きたい!と思う人もいるだろう。
ここで注意したいのが、ただの憧れで良いと思った職場は本当に働く上で自分に合った良い職場であるかどうか、ということだ。
厳しい話をすると、自分の能力や求めている事実としての条件とマッチするかどうかということはよく考えないといけない。
つまるところ、よく見える職場というのはさまざまな課題に対して向上心を持った院長やスタッフが生産性の高い仕事ができており、更に良くしようと努力をしている結果が良い条件として外から見えているということになる。
そこについていく気持ちや能力がある程度備わっていないと、入職しても体力的にも精神的にも辛い思いをする可能性もあると言うこと。決してモラルに反したことでの体力・精神面の辛さではないということは誤解しないでいただきたい。
そこを踏まえての合う合わないは一体どうやって見極めるのかと言う問題は非常に難しい。正解がある訳ではないので経験から学ぶことも必要ではあるし、自分では判断できない、理解できないことは他者からの目線での評価のもとで受け入れることも必要になってくる。
資格があるからこそ強みとするメリットも歯科衛生士として働く上では沢山ある。
国家資格であり、就職や転職しやすい
専門性の高い仕事なので貢献度が高い
比較的収入が安定している
これらを有効に活用しつつ自分がやりがいの感じられる働き方はないか?ともっともっと考えていこうではないか。今や時代はどんどん良い方向に変化しており、固定概念にとらわれず、どんなことでも仕事にできたり挑戦できる環境はいくらでも揃っている。
おそらく不安や例が少ないために挑戦しにくいという心理的な理由もあるだろうが、自分のペースで自分を肯定できる方法を考えるくらいの感覚でまずは自分が変わっていくことを恐れずにやってみよう。
少しずつでも自分から良いと思う行動をやってみること、それを楽しむことが「仕事」だけではなく「人生」を楽しむスタートになるだろう。
最後に、今回重要視したいのは「自己理解」を深めるということ。
自己理解について相談や学ぶ機会が少ない業界ではあるが、「ストレングスファインダー」や「16パーソナリティー」といった診断をwebや本などから手軽に受けることもできる。また他者と共有することでより自己理解も深まるのでおすすめだ。
ぜひ自分の「キャリア」について悩む人はこういったことにも取り組んでみてほしい。