訪日外国人が来院したとき、「医療費が支払われない可能性」を考慮して対応していますか?
2018年に厚生労働省が行なった調査では、訪日外国人を受け入れた病院のうち、およそ2割が医療費不払いを経験していることがわかっています。
訪日外国人による医療費の不払いは、受診者への適切な説明・確認を行うことによって防げることがあります。またこの説明・確認は、受付時など診療開始前に行うべきです。
厚生労働省が配布している以下のチェックポイントに沿って確認を行なってから、診療を始めましょう。
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本人確認の実施(必要に応じて、同行者についても本人確認を実施する)
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支払い方法を確認する(海外旅行保険を使用する方には、保険会社に連絡するよう伝える)
まずは、患者とコミュニケーションが取れる状態を確保することが重要です。必要に応じて通訳者や翻訳ツールを活用します。
厚生労働省や地方自治体、医師会は遠隔通訳サービスの提供も行なっているので適宜活用しましょう。夜間・休日の場合は厚生労働省が運営しているワンストップ相談(03-6371-0057)でも言語サポートの案内をしています。
文化的背景の違いから「診療は不要、薬だけ欲しい」などといった、対応の難しい目的を持って来院されることがあります。
支払いトラブルにもつながりかねないため、最初の段階で確認することが有効です。
診療申込書のテンプレートは、以下の厚生労働省のサイトからダウンロードできます。日本語・英語・中国語・ポルトガル語・スペイン語に対応しています。
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医療費不払い発生時の国への個人情報提供の仕組みの説明 など
あらかじめ印刷しておき、受付に用意しておくとスムーズです。
海外在住で日本の公的な医療保険証を持っていない患者に対しては、パスポートを使用して本人確認を行いましょう。正確に取得すべき重要な情報は以下の通りです。
上記の項目は、医療費不払いが発生したときの国への情報提供時にも必要です。
国籍に応じて本人確認の必要性を判断するのは、国籍による差別となります。
氏名等は診療申込書にも書いてもらっていますが、誤った情報が記載されていたり読めなかったりすることも考慮し、本人確認書類を通じても取得しておきましょう。メモではなくコピーを取るのが確実です。
なお患者が出国時に取得した査証(ビザ)の種類によっては、日本入国の条件として民間医療保険の加入が義務づけられていることもあります。また必要に応じて、同行者や関係するツアー会社などの情報も取得しましょう。
日本では診療前に医療費の話をすることはまれですが、海外ではあらかじめ医療費の概算を提示することが一般的です。例えば「●●万円くらい」とおおよその総額を示したり、「診察だけで済む場合は○○円」「CT撮影を行うと追加で▲▲円」などと示したりするのも良いでしょう。
実際の費用があらかじめ伝えた概算を上回ると、トラブルになることもあります。そのため「実際には歯科医師の診察・診断によって必要な処置と金額が決まる」ということも説明しましょう。
高額な費用が予想される場合には、クレジットカードの支払い上限額を確認するよう助言するのも良いでしょう。とにかく、必要な診療費が支払えるかを確認することが重要です。
現金あるいはクレジットカードなど、自院で対応している支払い方法を説明し、患者がどの方法で支払うつもりか確認します。
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日本円での支払いのみ可能なのか、外貨での支払いも可能なのかを伝える
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必要に応じて近隣の外貨両替所や外貨の引き出しが可能なATMを伝える
クレジットカード・電子マネーで支払おうとしている場合
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利用可能なクレジットカード会社・電子マネーを伝える
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高額な医療費が予想される場合は、クレジットカードの支払い上限を確認するよう助言する
ここでもっと重要なのは、患者が海外旅行保険を利用した支払いを希望している場合、患者本人からその保険会社へ連絡をしてもらうことです。夜間・休日の場合は、厚生労働省が運営しているワンストップ相談(03-6371-0057)でアドバイスを受けることも可能です。
あらかじめ医療費に関する要望を把握しておき、関係者に伝えることは、後の支払いをスムーズにするために有効です。例えば以下のような要望が考えられます。
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「海外旅行保険の補償の範囲内で収まるようにしたい」(入院の場合、大部屋は補償範囲内だが、個室は補償範囲外となるなど)
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「医療費の支払いに不安があるため、できるだけ医療費を安く抑えたい」
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「医療費の概算で提示された以外に追加の検査・処置が必要になる場合は、必ず事前にいくらくらいかかるか教えてほしい」
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「いま手持ちの現金が少ないので明日支払いに来たい」 など
一通りの確認が済んだら、以下重要な項目に対して再確認を行います。
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個人情報の扱いを含む診療申込書に適切な署名があるか?
患者が日本滞在期間中に全額支払ってもらえるような方法・計画を立てることが重要です。これまでのチェックポイントに関して不安が残る場合は、厚生労働省や都道府県の相談窓口に連絡することも検討しましょう。
なお治療費が高額になることが予想される場合は、デポジット(前払い)を請求することも視野に入れます。その際は以下のステップを参考にしてください。