ここ最近、「海外で働く歯科衛生士」について雑誌やメディアでとりあげられている記事を目にすることはありませんか?
特にセラミックやホワイトニング、インプラントやフッ素についての論文や症例を学ぶことが多くなってきた現代では、歯科先進国であるアメリカ、予防大国であるスウェーデンへ興味を持っている歯科衛生士さんも多いのではないでしょうか。
今回はアメリカに絞って、実際に現地で活躍されている歯科衛生士さんをご紹介しながらその実態に迫ります。
歯科衛生士としての社会的地位が高いのがアメリカです。アメリカではきちんと勉強すれば、日本では歯科衛生士の業務行為として禁忌事項であるCR充填やレントゲン撮影をすること、自ら麻酔を打ってSRPをすることができます。
また働く州によっては、「歯科医師の指導のもと」でなくとも治療を提供することが可能となっており、予防処置や保健指導、診療補助の3大業務に限らないため、歯科衛生士が職として確立している証拠に責任は非常に重くはなりますが、向上心が強い方にとっては「やりがい」となることでしょう。
2021年のDentalPostの調査によると、フルタイムで勤務する歯科衛生士の給与の72%は、40,000ドル〜80,000ドル(約5,280,000円〜10,500,000円)、またその内の43%が年間70,000ドル以上、歯科衛生士の21%が年間80,000ドル以上を稼いでいます。
また時給にすると、全国平均は38ドル、つまり約5,000円を超えるほどです。今は円安ドル高なので、ドルの価値は高まっていますね…。※1ドル=132円(2022.12現在)
アメリカの歯科衛生士は、日本と同様に国家資格となります。そのため必ずアメリカの歯科衛生士学校へ入り、国家試験を受ける必要があります。
歯科衛生士学校での学位は、2年制の「準学士号」と4年制の「学士号」、そして大学院での教育の向上を目的としたプログラムを経て取得可能な「修士号」に分かれており、準学士号を取得することで、歯科衛生士業務に携わることができるため最短でも2年間は通う必要があります。この学位では、一般歯科医院での臨床や歯科業界の営業などで勤務する方に限るでしょう。
その上の「学士号」を取得することにより教育者(インストラクター)を、さらに上級学位である「修士号」を取得することにより、主に研究者や学会など公の場での講演者を目指すことが可能となり、より幅広いキャリアを築くことができます。
しかし国家試験の合格率が、日本では約95%前後の合格率であるのに対し、アメリカは約75%と日本よりも取得するハードルが高い資格となっています。アメリカでは、筆記試験に加えて実技試験も行われているため、このことが合格率に影響を与えている可能性があります。
学校入学時から実習、国家試験を終えるまで、もちろん全て英語です。日常会話だけでなく、専門用語の英語も覚えて話せるように理解しなければなりません。そんな難関な国家試験を合格し、実際にアメリカで歯科衛生士として活躍されているお2人をご紹介していきます。
person① MISAKI 【USA歯科衛生士ユーチューバー】
鹿児島県出身で高校時代の交換留学をきっかけに、自然溢れるアメリカのシアトルに魅力を感じたMISAKIさんは、短期大学を卒業後、22歳の時にアメリカへ渡航し、歯科助手の仕事を経て31歳の時に歯科衛生士免許を取得され、現在は歯科衛生士として働きながら3児の母としてアメリカに在住されています。
特に日本で歯科経験があったり歯科衛生士の免許を持っていたりということでもなかったそうですが、25歳の時には1児の母となっていたMISAKIさんにとって、歯科衛生士が魅力的だと思った理由として以下の4つの理由があったそうです。
州によって、また学ぶペースによって人それぞれ異なるそうですが、アメリカのワシントン州だと最短で2年程で取得が可能となっているとのことです。卒業後すぐに職に就ける程、綿密に詰め込まれたプログラムのようですが、「2年学べば働ける」というモチベーションで学校に通えたそうです。
上述したように、アメリカの歯科衛生士は平均で時給45〜55ドルという日本では考えられない程高額なお給料を頂くことができます。
クリーニングができる
クリーニングと詰め物ができる
2に加えて抜歯もできる
と3つのカテゴリーに分かれていて、3になるに連れて施術内容が濃くなるので取得までの期間と難易度が上がり、それに伴いお給料も上がると言います。
子供がいる状況でいきなり夫が職を無くしてしまった…といった最悪なケースに陥ったとしても、MISAKIさん自身の足で立つことのできる手に職を得たかったとのことで、時給約55〜56ドルである「⒉クリーニングと詰め物ができる」を選択したそうです。
ひたすら患者さんと会話をするのが好きだというMISAKIさん。プライベートな区切られた個室空間で、患者さんと直接関われるというのが楽しくて仕方がないそうです。
また、多人種が共存するアメリカにおいて来院する患者さんは本当にさまざまで、そういった方々と個々に向き合える時間は、非常に素敵な経験になりますよね。
歯科衛生士の免許取得時は1児の母だったMISAKIさんが、現在では3児の母となり、ライフスタイルがガラリと変わっているため、それに伴い働き方を考える必要性があったことと思います。
テンポラリーという派遣の歯科衛生士制度もあり、MISAKIさんは一時期、週4日歯科医院で勤務し、1日派遣の歯科衛生士というフリーな状態で働くことをされていたそうです。
こちらの理由は日本でもママさん歯科衛生士にとって強い味方だとは思いますが、環境に合わせて働き方を自分で決められるというのは視覚の魅力でもありますよね。
MISAKIさんのYouTubeでは、アメリカ歯科衛生士についての生の声からさまざまな情報を発信しているので、興味のある方はぜひ見てみてくださいね。
日本にて歯科衛生士免許を取得後、数々の一般歯科に勤務しながら雑誌で見たり、実際に学会のセミナーに参加したりしているうちに、「アメリカで働く歯科衛生士」に魅力を感じたグリフィス友美さん。
上述した通り、アメリカの歯科衛生士さんは自分の仕事を確立しており、チームの一員として歯科医師と対等に認めてもらえ、同じ目線で患者さんを診ることができる環境が思い描く歯科衛生士像だったそうです。それを求め、1人でアメリカへ行くことを決意したと言います。
アメリカへ渡航後は、ネバダ州にあるラスベガスのCollege of Southern Nevada Dental Hygiene Programへ入学し、同州の歯科衛生士免許を取得し、複数の歯科医院にて勤務された後、現在はノースカロライナ州で臨床を行いながら、日本の各メディアにてアメリカで働く歯科衛生士として執筆活動を行っているそうです。
グリフィス友美さんのアメリカへ行くと決断した経緯や想い、ライセンスの取得方法など多数の雑誌掲載やインタビューで取り上げられているので、ぜひこちらも参考にしてみると良いでしょう。
このように実際に経験されている歯科衛生士さんの体験談を聞けば聞くほど、アメリカの歯科衛生士にしかない魅力に惹かれてくる方も多いのではないでしょうか。
現在ではドルの価値が高まり、日本人にとってはアメリカは更に働きやすい場所となっています。そのため向こうに移住し、歯科医院を開業される歯科衛生士さんもいらっしゃるそうです。
もし海外で歯科衛生士として働いてみたいという想いが少しでもある方は、歯科衛生士発祥の地と言われているアメリカで、挑戦してみるのも一つの選択かもしれません。ぜひ参考にしてみてくださいね。
2022 Salary Survey Report, DentalPost(
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