体裁(総売り上げ)を気にする院長と現状(実際の診療内容)を気にする副院長(二代目)還暦も有に超え、診療自体からは少しずつ遠ざかっている院長だが、自分の思うやり方と理念を掲げ、それに見合った売上を上げていく。それが一番良いことだと信じて今もなお檄を飛ばす。
もちろん、ここまで医院を大きくしたのも院長であるし、そのやり方でよかったはずである。その当時は。
最近、どうもスタッフ含め医院が全体的に噛み合っていない。コロナの頃から患者が少しずつ減少し、今も下り坂だ。
院長はその原因がチームとしての一体感がないからだと訴える。
しかし現実はどうだろう?
医院としての一体感がないのは認める。ただその原因は、院長の言う一人一人の「患者への向き合い方」がなっていないだけではない。むしろスタッフは診療内容にしても、職場環境にしても「こうなったら良いのに」という思いは十分に抱えている。
でもそれを変えようという気力も今は無く、慣れた日常をこなすだけ。日常の生活と今まで通りの仕事で精一杯なのである。
今のままでも仕事は十分成り立っているし、いろんなことを変えるほど面倒なこともしたくない。その雰囲気に気づいているのは二代目の副院長だけだ。
最先端の歯科医療技術、患者目線での分かりやすいモニターやデータの活用、治療ひとつに至っても、新しい技術をどんどん取り入れたいし、こうやった方がいいという方向性もある。
でもそれができない。
現時点で院長の言うことは絶対だし、そこを揺るがすほどのスタッフからの信頼もまだない。
現状の売上は悪くない。むしろ、このままでいければ大丈夫だろう。でも今後もこれが続いてくれるのだろうか。トラブルの火種はそこら中にあるというのに。
今は慣れた患者ばかりだからなんとかなっている。
でも、もし自分に代替えして、新しく来た患者だったらどうだろう。「なんとなく」で通っていたことも、ヘタをすると大事になりかねないこともある。
院長にそのことを話しても、そんなことは問題ない、大丈夫だと取り合わない。
今はいいかもしれないが、自分がこの後この医院を受け継ぐとき、少しでも負担を減らせるようにしておかないとたまったもんじゃない。
イケイケドンドンでよかった歯科の時代はもうすでに終わった。
これからは地に足をつけた確実な処置でやっていかないと続かないし、患者も来ない。大きなトラブルにも発展する。
本音を1番分かって欲しい相手に分かってもらえない、理解されないというのは本当に苦しいものである。そしてそれが一番近い肉親なら尚のことである。
新しいセミナーに参加して、仲間と語り合っては今後について悩み、親だからこその割り切れない思いに頭を抱える日々である。