”業界タブー”に挑戦。デンタルシステムズの創業秘話と革新的ビジョンとは?

”業界タブー”に挑戦。デンタルシステムズの創業秘話と革新的ビジョンとは?

1D編集部
2023年2月24日
第2回目の今回は、岩室社長がデンタルシステムズ株式会社にどのようなビジョンを描かれ、どのような思いで日々製品を作られているのかに注目してお話を伺いました。

デンタルシステムズ株式会社 代表取締役 岩室圭一社長

1D編集部 ユースケイシカワ(以下、イシカワ):今回のインタビューでは、ぜひ社長のお人柄の部分を掘り下げて参りたいと思います。早速ですが、社長はなぜこのようなお仕事をしようと思ったのか、デンタルシステムズさんの創業のきっかけを教えてください。


岩室 圭一 社長(以下、岩室社長):私は元々、一点モノのシステムを受託して作る注文生産型の会社でSEでした。毎回違うシステムを作れるというのは楽しかったのですが、「自分が作ったものが蓄積されて財産にはなっていってないな」と感じていました。

せっかく苦労して作り上げたのに一度使えば終わりというのはとても悲しくて、たくさんの人に使ってもらいたいという想いが段々強くなったんです。


そこで「パッケージ製品を作りたい」と当時の会社の上司に何度も伝えたんですが、「売る人やメンテナンスをする人が必要であるから、今は考えられない」という意見しかもらえませんでした。そこで段々と、自分が目指す方向性が会社と違うな。という感覚になり、そこの会社を飛び出しました。


その後、同業の知人と自分が実現したかったパッケージや紙のものを電子化する電子ファイリングの仕組みを作るようになりました。今ではクラウド化とも言われ電子化が当たり前のようになっていますが、当時その時代には、先駆けすぎて周囲の理解を得られず、なかなか売れませんでした。


そんな時、たまたま知り合いから「歯科のレセコンを一緒に作ってみないか」というお誘いがあったのです。しかし私の場合、「歯科ってなんだろう?」「レセコンってなんだろう?」という状態でした。そんなスタートでしたので、開催されていたデンタルショーに行ってみることにしたのです。


そこで「このシステムで300万もするのか…!?」と思うほどレセコンが高額で販売されているのを知りました。私から見れば、そのシステムよりももっと良いモノを作れるぞ!という代物だったのです(笑)

イシカワ:コンプレイセンシーの時代ということですね(笑)

岩室社長:そうです、そうです。だから「もっと良いものを作れば売れる!」と私の中で心が奮い上がりました。


ただ私は歯科業界の知識が全くなかった。作るからには勉強しなければならず、知り合いの歯科医師に教えてもらいながら歯科治療の流れや仕組みを猛勉強して、そこからどっぷり浸かっていきました。そこからデンタルシステムズ株式会社としての幕開けとなったのです。
歯科に対する様々な情報を取り入れながら自分が納得できるレセコンを作れたのは良かったのですが、その束の間、次は営業をどのように行うかという問題が出てきました。


同業他社の多くは、歯科のディーラーさんと一緒に販売しています。しかし、新参者がみんなと同じことをやっても絶対に勝てない、仕入れてくれるわけがないという途方もない状態でした。しかし私は、他者と全く違った売り方をしようと考えた結果…直販しかない!と思い立ったのです。


また、当時のレセコンというビジネスモデルは、6年ごとに買い換えを推奨していました。しかし私は、大した違いはないのにも関わらず、買い換えるのは絶対におかしいと感じていました。


そのようなビジネスモデルを覆すために、「レセコンを一度購入したら、システムのメンテナンスを毎月の保守料のみで行います!永久に使って頂けます!」というデンタルシステムズ株式会社にしかできない新しい形態で売り出していきました。


やはり最初は全く相手にしてくれなかったのですが、私たちの考えをわかってくれる先生たちがポツポツと現れてきて頂けました。その時は本当に感動しました…。


しかし次は、現在使用している他社製品から弊社のレセコンに切り替える際に、データの引き継ぎができないためなかなか売れないという壁にぶつかりました。私は何とかこの問題を解決しようと、最低限どのような必要な情報があれば移行できるのか?ということを、歯科医師の先生と徹底的に話し合いました。


そしてそのデータを移行できるように、A社はこれ、B社はこれ、といった会社ごとのデータ引き抜きツールを作れば良いといった結論になり、レセコンを作り上げるのと同じくらいパワーをかけて開発していきました。

新しいメーカーさんから出れば、それに合うように開発します。それを繰返し続けて続けて…今ではもう、日本全国ほとんど全てのメーカーさんに対応した仕組みを生み出すことに成功しています。データをある一定の標準形式にしてしまえば同じツールにできるということです。
イシカワ:なるほど…自力でHL7(Health Level 7)と言いますか、標準化するツールを作ってきたような感じですよね。30年前程は僕もあまり詳しくはないのですが、レセプト自体がデータ化して間もなかったわけですよね。本当にクラウドの先駆けとなっているのがデンタルシステムズさんの仕組みなのですね〜。でも全てのものに対応できるよう開発することは、相当困難だったのではないでしょうか?

岩室社長:そうですね。データを引き抜く作業、これは本当に苦労しました。コンピュータを紐解いたら01の羅列で、それが商品コードや点数でしかも他社製品ごとに違って無数にあるので、ある意味謎解きでした。

今はデータベース化して分かりやすくなっていますが、当時は自力で探し当てなければならないというところが難関で、膨大なデータから地道に推測して、「売るためには〇〇社のデータを引き抜け!!」と夜も寝ずに死に物狂いで作業をしていた記憶があります。


それをやったからこそ今があると思うと、頑張って良かったと心の底から感じています。
イシカワ:クラウド化をしようとしたきっかけや、クラウド化することへのこだわりは何だったのでしょうか?

岩室社長:
  • データを集中管理したい
  • ソフトウェアをサーバーから廃止したい
  • ユーザーに自由に好きな端末を選んで使用してもらいたい
の主に3つですね。そして何よりも、クラウド化した方がスピード感が全く違って非常に早いという特徴があります。より便利に先生方に使って頂きたい。そんな気持ちで取り組んできました。

実は、十数年前くらいからクラウド化したいとは思っていました。しかし、当時はクラウド化するためのツールがレセコンより高すぎて買えなかったという辛い現実がありました。


しかし転機になったのは4年前。現在のWindowsのPower4Gをクラウドに移行できるツールを持っていたある会社と出会いがありました。その時、「価格を抑えてクラウド化できるのはこれだ…!」とお宝を見つけたような感覚でした。十数年間の想いが、ここに叶ったと確信しました。


それから私は会社の全財産を投げ打ってその会社を買収し、今の子会社としました。本当に嬉しかったですね〜〜。

イシカワ:すごく運命的な出会いがあったんですね。そのようなクラウド化に強くこだわりの想いをお持ちの社長が、やりがいを感じる瞬間はいつでしょうか?

岩室社長:パッケージを作る!と意気込んで前の会社を飛び出した理由でもありますが、一番は使ってくれている先生が喜んでもらえることです。たくさんの人に喜んでもらいたいという想いだけです。


私は直接会って話すことが好きなので、昔はよく現場に行ってそのような嬉しい声をよく伺えていましたが、最近は個々でお会いするのが少なくなりましたが営業チームからそのような話を聞くとやはり嬉しい気持ちになります。


「このレセコンはいいね」「使いやすいね」「最高だね」という声を聞くだけでも、嬉しくて仕方がありません。やっていてよかった、これからもやっていこうと思える瞬間です。
イシカワ:この業界において、社長が自分で認識している使命感は何でしょうか?

岩室社長:今までタブー視とされていた、データの引き抜きやクラウド化にすることをやってきた経験から、他社がやりたがらないことをやり続ける会社で在りたいと思っています。特にこれからはDXの標準化するために、色々なことにみんなでチャレンジをしていきたいと思います。

さらに今後の構想としてあるのが、HPにも記載させて頂いていますが、クラウド上にあるデータと繋げてAIによる診断をしていくことです。AI診断こそ正確で、術者による揺らぎが全くなくなるため、標準化されるというのが非常にメリットなのです。


ちなみに現在「歯式」に関しては既に完成していているので、パノラマ画像をいれたらどのメーカーの製品でも対応できるように他社にもその仕組みをオープンにして、どこのメーカーからも情報を出せるようにしていきたいと思っています。


そうなると、全国のパノラマによるデータが知らず知らずの内にデンタルシステムズに集まってきて、それが厚生労働省の欲しがるようなビックデータとなると予測しています。このような取り組みをすることが、私がデンタルシステムズ株式会社でしなければならない、最後の使命だと思っています。
イシカワ:社長が将来思い描いている、デンタルシステムズさんとしてのビジョンをぜひ教えてください。

岩室社長:歯科版のM3のような存在となりたいですね。

イシカワ:我々の競合となってしまいそうですが…大丈夫でしょうか!?(笑)

岩室社長:ですね(笑)ただその意図は、DXの記事の時にもお伝えしましたが、一番強い想いとして色々な会社と一体化するプラットホームを建築したいということです。


私の仕事観や人生観は、最初に勤めた受託会社の社長から、物事の本質を捉えるまでのアプローチの方法問題解決力の大事さをしこたま教えられました。全てがその方の教えでできているくらい、私の真髄にあります。


歯科医療者の問題に対して、デンタルシステムズ株式会社にしかできない形態のサービスを、これからも提供していきたいと思っています。

〜番外編〜 ユースケイシカワのインタビュー感想

前回に続いて岩室社長のお人柄を掘り下げてきましたが、一言で“パワフル”だなと思いました。

自分が良いと思ったこと、世の中のためになると思ったことへの、社長自身の推進力があってこそ今があると感じます。

「常識をぶっ壊す」精神はシンパシーを感じざるをえず、一気に距離が縮まったと勝手に思いました。

岩室社長のバイタリティに倣って、僕らも全力で業界の発展に貢献していこうと、インタビューを通して再確認しました。

改めまして、岩室社長ならびにご協力いただいたデンタルシステムズの皆様に感謝申し上げます。

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Pratten et al. Physical disruption of oral biofilms by sodium bicarbonate: an in vitro study. Int Jour Dent Hyg. DOI: 10.1111/idh.12162 2. Jose et al. Six-month evaluation of a Sodium Bicarbonate-Containing Toothpaste for Reduction of Established Gingivitis: A Randomized USA-Based Clinical Trial. J Clin Dent 2018;29:33 -39                                        ー「カムテクト」という名称に込められた意味や思いを教えていただけますか?『カムテクト』という名称は、「噛む(カム)」と守ることを意味する「Protect(テクト)」を組み合わせた造語です。この名前には「歯と歯ぐきをしっかり守る」という製品コンセプトが込められています。単なる歯磨剤ではなく、歯周病予防を目的に、歯と歯ぐきの健康をサポートする存在でありたいというブランドの思いを象徴する名前となっています。現在、日本国内には歯ぐきの悩みを抱える人が4,000万人以上いるとされています。『カムテクト』はそのような方々へ、日常のセルフケアで寄り添える存在であることを目指しています。ー『カムテクト』がもつ主要な有効成分や技術的特徴はどんなものですか?『カムテクト』の最大の特徴は、約70%という高濃度で配合された炭酸水素ナトリウムにあります。炭酸水素ナトリウムには、プラークを軟化させ、ブラッシングによる物理的除去をサポートする作用があり、まさに『カムテクト』の処方設計の核と言える存在です。一方、一般的な歯周病予防用歯磨剤では、殺菌成分や抗炎症成分を中心とした「薬効ベースの処方設計」が主流です。歯周病の原因となる菌を抑制・炎症を抑えることに重点が置かれており、プラーク自体を機械的に落としやすくするというアプローチは、あまり重視されていないケースも見受けられます。また、炭酸水素ナトリウムは日本の薬機法上「有効成分」とはみなされておらず、処方上の差別化にはつながりにくいという理由で、競合製品では積極的に使われていないのが現状です。それでもなお、当社が炭酸水素ナトリウムに強くこだわるのは、豊富な科学的エビデンスと国際的な臨床データに裏付けられているからです。こうしたグローバルで培われた処方設計と研究成果を、日本市場向けにローカライズして展開できる点は、他社製品とは一線を画す、当社ならではの大きな強みと言えるでしょう。ー開発にあたり、特に苦労した点や壁となった要因は何でしたか?『カムテクト』の開発においては、処方設計・製造工程の両面で、いくつか大きな課題を乗り越える必要がありました。なかでも、以下の2点は製品化に向けた大きな壁となりました。炭酸水素ナトリウムと他成分の相性問題『カムテクト』は、約70%という高濃度の炭酸水素ナトリウムを配合した特殊処方です。この処方は、プラークの物理的除去をサポートするうえで大きな価値を持つ一方、他の有効成分との相性において化学的な安定性が課題となりました。炭酸水素ナトリウムの性質上、特定の成分と組み合わせるとpH変動や分離、変質などが起こる可能性があり、配合を断念せざるを得ない成分もありました。粘度の高さによる撹拌・充填の難しさ使用感からも実感いただけるように、『カムテクト』は非常に硬めのテクスチャーが特長です。これは高濃度の炭酸水素ナトリウムを含むことによるもので、製造工程において技術的困難が伴いました。・高粘度により、撹拌時に成分が均一に混ざりにくく、有効成分が偏るリスクが発生・粘度が高くなることで、チューブへの充填が困難これらの課題を解決するために、複数の技術的対応が必要でした。ー「カムテクト」ブランドとして、歯科医療者や患者さんに向けて伝えたいメッセージはありますか?『カムテクト』は、歯ぐきの健康に悩むすべての人々を支え、生涯にわたって口腔内に自信を持てる毎日を提供することを使命としています。現在の日本では、成人の約8割* が歯周病の兆候を抱えていると言われています。このような状況において、『カムテクト』は、誰もが手に取りやすい製品であることが、歯周病予防への重要なアプローチであると考えています。ドラッグストアで購入できる身近さと、科学的根拠に裏打ちされた処方。この両立が、日々のセルフケアを支える「続けやすさ」へとつながっています。『カムテクト』が描く歯科医療の未来像は、「歯科医院と患者さんの間に立つ信頼できる架け橋として、セルフケアの質を底上げし、結果的に歯科医療全体のレベル向上に寄与すること」です。このビジョンは、当社が掲げる「ボトムアップ型の健康支援」という企業哲学とも深く結びついています。また、「Deliver better everyday health with humanity.(もっと健康に、ずっと寄り添って)」というパーパスを掲げ、その実現に向けて、製品開発の革新、サイエンスの追求、そして現場との対話を重ねる姿勢を大切にしています。今後も『カムテクト』は、歯科医療者の皆さまとともに、患者さん一人ひとりの健康意識を支えながら、より良い未来の口腔健康の実現に貢献していきたいと考えています。出典元: *令和4年歯科疾患実態調査Haleonヘルスパートナーに登録して患者さん用無料サンプルをオーダーしませんか?Haleonヘルスパートナーとは?Haleonヘルスパートナーは、歯科医療従事者の皆さまに向けて、オーラルヘルスケアに関する最新情報を提供するコミュニティサイトです。日々の診療に役立つコンテンツや、患者さんとのコミュニケーションを支える資料など、さまざまな情報をご利用いただけます。主なサービス内容・ウェブ講演会の無料配信知覚過敏症ケア、歯周病予防、義歯やマウスピースケアなどをテーマとしたウェブ講演会を、いつでも無料で視聴可能。過去の講演ダイジェスト動画もアーカイブで公開されています。・患者さん用無料サンプルの提供歯磨剤の『カムテクト』や『シュミテクト』、義歯・リテーナー洗浄剤の『ポリデント』、義歯安定剤の『ポリグリップ』など、患者さんのセルフケア習慣づくりに役立つ製品サンプルを、オンラインから簡単にオーダー可能です。・患者指導用資材のダウンロード歯周ケアを含む様々なセルフケア指導に活用できる、わかりやすい説明資料や配布用ツールがダウンロード可能です。登録して『カムテクト』患者さん用サンプルをオーダーしませんか?オーダー方法について1. 会員登録(無料)Haleonヘルスパートナーの公式サイトで、必要事項を入力して会員登録を行います。(※登録フォームへの入力後、承認まで最大5営業日ほどかかる場合があります。)2. ログイン後、サンプル依頼ページへアクセス登録完了後、ログインして、専用ページからサンプル申請が可能になります。3. 患者さん用サンプルを選択してオーダー希望のサンプル(例:『カムテクト』)を選択して、注文を完了します。登録や詳細は、以下の公式サイトをご覧ください。公式サイトで詳細を確認する
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審美歯科のスペシャリストに聞く「接着のカンどころ」

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デンタルIQの向上によって高まる審美歯科のニーズ近年、国民の健康意識が大幅に向上し、予防歯科の普及とともに、審美歯科へのニーズも急速に高まっています。特に、デンタルIQが向上した患者は、単に機能回復を求めるだけでなく、審美的な仕上がりやメタルフリー治療、矯正治療など、より高度な審美的要求を持つようになっています。こうした患者ニーズの変化に対応するため、歯科医師には高い技術力と信頼性がこれまで以上に求められています。審美歯科治療の分野では、新しい技術や材料を迅速に習得し、エビデンスに基づいた治療を提供することが、患者の期待に応えるために不可欠です。追い風にも感じる「脱パラ」への動き厚生労働省の方針により、金銀パラジウム合金の使用縮小が進み、メタルフリー治療の需要が高まっています。背景には、パラジウムの価格高騰や金属アレルギーへの配慮があり、今後のメタルフリー材料の普及が期待されています。この流れの中で、CAD/CAMシステムによるレジン材料やPEEK冠などの新素材が注目され、審美性向上に寄与しています。特に保険診療での金属使用が減少する中、審美歯科における材料選定は今後さらに重要です。歯科医師には、最新のメタルフリー材料や信頼性の高い接着剤、セメントを適切に活用するスキルが求められています。エビデンスに基づいた材料選びと最新技術の導入が、今後ますます重要となるでしょう。スペシャリストの審美治療を解剖今回は、審美歯科の第一線で活躍されている髙木仲人先生に、審美修復における接着のポイントや、その効果を最大限に引き出すためのZEN®ユニバーサルシステムについて伺いました。ZEN®ユニバーサルシステムは、三井化学が開発したモノマーを採用し、サンメディカルの技術力によって製品化されたユニバーサルタイプの接着システムです。こちらのシステムは、「ZEN®ユニバーサルセメント」と「ZEN®ユニバーサルボンド」の2種類のみで、歯質や金属、ジルコニア、アルミナ、ガラスセラミックス、レジン系材料、さらにはPEEK冠にも接着が可能です。ZEN ユニバーサルセメント/歯科接着用レジンセメント/管理医療機器/認証/305AKBZX00052000ZEN ユニバーサルボンド/歯科用象牙質接着材/管理医療機器/認証/ 305AKBZX00051000髙木先生には、ZEN®ユニバーサルシステムを実際の臨床でどのように活用しているか、プロフェッショナルの視点からその魅力を解説していただきます。左:ワンディー株式会社 編集部 高橋 佳奈 右:門前仲町髙木歯科 院長 髙木 仲人先生Q1: 先生はZEN®ユニバーサルシステム発売後すぐにご使用いただいておりますが、現在の率直なご感想をお聞かせください。最近では、接着対象となるマテリアルが非常に多岐にわたっています。CAD/CAM修復物、PEEK冠、セラミック、ジルコニアなど、さまざまな素材に対応する必要があり、その処置が複雑化してきました。しかし、ZEN®ユニバーサルシステムの場合、アドヒーシブとセメントの2つだけで処置が完了します。このシンプルさが非常に魅力的で、手技が大幅に簡略化され、とても使いやすい製品だと思います。Q2: 接着力や審美性が求められるケースでも使用されていますが、その後の経過はいかがですか?ZEN®ユニバーサルシステムを導入して6ヶ月が経過しましたが、これまでに使用したコンポジットレジンやセラミック、ジルコニア、CAD/CAM修復物、PEEK冠において脱離は一例もなく、非常に順調に経過しています。また、前歯部の審美修復に使用することが多いのですが、被膜が薄いため、マージンラインが見えにくい点がいいです。さらに経過中の着色も一切見られず、審美性の高い修復を提供できています。Q3: 接着性レジンセメントの自動練和型と手練和型の操作性の違いについて教えてください。自動練和型のメリットは、テクニカルエラーを減らせる点と作業時間の短縮です。セメントを手練和する場合、慣れている歯科医師や歯科衛生士、歯科助手が行うとしても、練和の上手さや練和にかかる時間に個人差があります。もし練和が不十分であれば、化学重合がうまく進行せず、ムラが生じることもあります。自動練和はそうしたリスクを大幅に軽減します。さらに、手練和では、練る際や補綴物に入れる際に気泡が混入するリスクがありますが、自動練和の場合、セメントをそのまま注入できるため、気泡が入りにくいです。Q4: ZEN®ユニバーサルセメントは特殊な脱泡装置を使用していますが、ペーストの性状についての感想をお聞かせください。ZEN®ユニバーサルセメントでは、練和されたペーストに気泡が混入しているのを見たことがありません。また、程よい粘性があり、補綴物に入れた際に垂れることもなく、非常に操作性が良いです。硬すぎず柔らかすぎず、ちょうど良いバランスで扱いやすい印象です。Q5: ZEN®ユニバーサルシステムの「DIS™」(Double Initiator System)による重合性能についての印象はいかがでしょうか?今回の「DIS™」システムについてですが、化学重合が非常にアクティブに反応している印象があります。そのため、他社製品と比較しても、化学重合に対する信頼性が高いと感じています。特に、ジルコニアやPEEK冠など光が通らない材料の場合、光による重合はほとんど期待できませんので、化学重合が主な役割を担います。そういった意味では、光が届かない補綴物に対する化学重合の強さは、非常に有利に働くと感じています。Q6: ZEN®ユニバーサルシステムを使用して脱離しにくい理由はどこにあるとお考えですか?脱離しにくい理由は、今回の化学重合システム「DIS™」の反応の良さではないでしょうか。また、アドヒーシブに含まれているタッチキュアも重要な要素です。それぞれのアドヒーシブおよびレジンセメントにおける化学重合成分が非常に強力であるため、脱離を防ぐ効果があると考えています。さらに、アドヒーシブの被膜の厚さが5μmと適度で、薄すぎず厚すぎないため、これらの要素が組み合わさり、脱離のリスクを低減していると感じています。Q7: ZEN®ユニバーサルシステムの経済性についてのご意見をお聞かせください。ZEN®セメントのミキシングチップはデッドボリュームを32%減少させることができるため、メーカーさんが非常に工夫を凝らしていると感じます。ノズルが長すぎると未使用部分が生じますが、逆に短すぎると混合が不十分になり、気泡が混入するリスクがあります。そのため、単純にノズルを短くするのではなく、バランスを考慮した設計がなされていると思います。コストパフォーマンスについては、他社製品と比較しても非常に優れていると感じています。個人的には、接着力の低下を避けるため、ミキシング直後のセメントは使用したくないので、最初の1センチは捨てるようにしていますが、それでも無駄が少ない印象を受けています。Q8: ZEN®ユニバーサルボンドの「被膜の薄さ」や「エアブロー時の操作性」についての印象を教えてください。被膜の薄さは2ステップの製品に比べると約三分の一程度で、特に前歯部の審美修復において、コンポジットレジンやダイレクトボンド、ダイレクトコンポジットラミネートベニアなどを使用する際にメリットがあります。ボンド層が厚いと光が入った時にボンド層が見えてしまうことがありますが、被膜が薄いため、前歯部での審美的な充填が可能だと考えています。また、エアー操作を行う際に粘度が高すぎると、液だまりを起こすことがありますが、このボンドは粘性が適度なため、エアブローがしやすいという印象があります。Q9: CAD/CAM修復物やPEEK冠などの被着体に対する接着結果はいかがですか?CAD/CAM修復物やPEEK冠など、従来は接着が難しかった被着体に対しても、ZEN®ユニバーサルシステムは一貫して優れた接着力を発揮しています。各歯面に対して、なぜこの処理を行う必要があるのか、リン酸エッチングの目的は何か、シランカップリング材入りのMDPを使用する理由について考えることは重要です。しかし、そうした専門的な知識を持つ先生方だけでなく、どのような先生が使用しても一定以上の接着力を発揮できることが大切だと思っています。つまり、ユニバーサルな製品であり、誰が使っても安定した接着力を提供できることが求められます。今回の製品は、どなたが使っても一定以上の接着力を発揮できる点が非常に魅力的です。また、アドヒーシブとセメントの2つだけで良いというシンプルさも、非常にわかりやすいと感じています。Q10: 使用にあたって、術式のポイントやコツがあれば教えてください。コツとしては、被着体側のエアブローを行う際に、強圧でするのではなく、重要なMDPや有効成分を残すように溶媒を揮発させるエアブローを行っていただきたいです。有効成分を残すように注意しながら作業することで、接着力がさらに向上します。e-max インレー症例写真光照射器に関しては、しっかりとカンファーキノンに反応するものを使用することが重要です。また、個人的にはこの製品の化学重合タッチキュアは若干早いと感じています。ですので、セメントアウトを行う際には、仮照射を先に行い、早めにセメントアウトをするのが良いかと思っています。Q11: ZEN®ユニバーサルシステムをご使用後、治療効率や患者さんの反応について教えてください。ZEN®ユニバーサルシステムを使うことで、治療の効率が非常に向上しました。アドヒーシブとセメントの2つを用意するだけでよいので、準備もシンプルです。これによって、準備をするスタッフの負担も軽減されますし、私自身も手順が簡単なので、全体的な治療時間が短縮されます。患者さんにとっても、口を開けている時間や治療そのものが短く済むので、大きなメリットだと感じています。Q12: 最後に、ZEN®ユニバーサルシステムを使って良かった点やお勧めしたいポイントを教えてください。このシステムを使うことで、接着の効果はもちろん、診療時間の短縮にもつながりました。特に、ステップ数を減らせることが大きな魅力です。接着をシンプルに楽しんでいただければと思っています。市場には多くのセメントやボンドが存在しますが、「これだけで十分」と満足していただけるかと思います。セメントに関しては、無駄が少なく、コストパフォーマンスも優れていると実感しています。他社製品と比較した際、オープン価格でも非常にコストパフォーマンスが高いですね。クリニックとしても、単価の経済性があり、必要なものが少ないため、在庫管理も楽になります。さらに、室温保管が可能という点も大きな利点です。冷蔵庫に入れる必要がなく、他社製品では常温保管の指示がないものが多い中で、これは嬉しいポイントです。高木先生がお使いの接着システム ZEN®ユニバーサルシステム の製品情報はこちらから髙木仲人先生のインタビューからも伝わる、ZEN®ユニバーサルシステムの優れた操作性や審美性、強力な接着力。審美歯科のプロフェッショナルが信頼を寄せる接着システムについて、特長や臨床での活用方法をさらに詳しく知りたい方は、こちらから製品情報をご覧ください。製品情報はこちら「ZEN」はサンメディカル株式会社の登録商標です。「DIS」はサンメディカル株式会社の商標です。
1D編集部
2024年10月24日
愛され続け60年。知覚過敏ケアの定番『シュミテクト』を大解剖!

愛され続け60年。知覚過敏ケアの定番『シュミテクト』を大解剖!

成人の約30%が罹患していると推計される「知覚過敏」データで見る知覚過敏知覚過敏は日常臨床においてもよく見られる症状ですが、実際に3人に1人が知覚過敏症状を経験しており1,2、若年者*に至っては5人に2人が経験しています。3*18~35歳また成人の2/3が歯周病に罹患していると言われている現代、歯周病罹患患者のうちで知覚過敏症状を発症しているとされる方は60%以上*とされています。冷たいものや甘いものを口にした際に感じる鋭い痛みは、日常生活において大きなストレスとなるため、歯周病だけでなく知覚過敏症状も現代人の口腔内の悩みとして大きい割合を占めていると言えるでしょう。*Haleon調べ知覚過敏の病理・病態カリエスがなく、しみるという訴えがあるとき「知覚過敏」と一言でまとめてしまいがちですが、その定義はエナメル質が摩耗したり歯肉が退縮することによって象牙細管が露出することで生じる一過性の疼痛で、刺激(主として熱,脱水,擦過,浸透圧,化学的刺激)を加えることにより短く鋭い痛みを発するのが特徴です。知覚過敏が発症するケースは多岐に渡りますが、開口した象牙細管の内部にある組織液がさまざまな刺激により動くことにより、閾値が下がり、鋭敏となった象牙細管内の神経終末や象牙芽細胞が興奮し痛みが生じるという動水力学説が一般的に考えられています。Hys症状改善方法の違い知覚過敏の発生機序から考えて、症状改善方法として3つの方法が考えられます。1つめは結晶物を析出させたり、レジン系やグラスアイオノマーセメント系の材料で行う「象牙細管の封鎖」です。次に、グルタールアルデヒドとハイドロキシエチルメタクリレート(HEMA)などを主成分とする各種製品やレーザーなどにより「タンパク質を凝固させることにより細管内組織液が動かないようにする」方法があります。この2つが主にオフィスケアで用いられている方法です。3つめの方法である「知覚鈍麻(閾値上昇)」に関しては、硝酸カリウムを主として有効成分とする製品が知られています。オフィスケア用の製品もありますが、そのほとんどが歯磨剤としてセルフケア用に使用されており、予防も含め、ホームケアとして有効成分が含まれた歯磨剤を普段から使用することによって適切な効果を発揮していきます。市場に溢れる知覚過敏症状の抑制効果を謳った各種材料は、いずれも上記のどれかが(複数の場合もあり)採用されています。参考資料1.Addy M. Int Dent J 2002; 52:367–375.2.Ipsos Claimed Penetration Omnibus. January, 2015.3.West NX et al. J Dent 2013; 41:841–851.知覚過敏には患者さんのセルフケア習慣化も重要なぜセルフケアが重要なのか?適切な診断のもと、知覚過敏症状に対する正しい原因除去を行うことができればほとんどの症状は治まりますが、現実には処置後も続く患者の訴えに困ることもあるかもしれません。そのようなときには、繰り返し同じ知覚過敏症状を抑制する製品を使用したり、異なる製品を用いるしか方法はないのでしょうか?実は、知覚過敏症状を抑制するためには効果的な順番があり、その順序を守らないと望ましい効果が得られないのです。まずは「知覚鈍麻」させた後に「凝固」させ、それから「象牙細管の封鎖」を行うというプロセスで行うのが望ましいでしょう。凝固や象牙細管の封鎖に関する処置を行なった後に知覚鈍麻を行なっても、効果は十分に期待できず、治らない症状に対して次の手がなくなり困ることになるかもしれません。そのため、患者さんの日々のセルフケアによる知覚過敏に対するアプローチも重要になってくるのです。セルフケアの原則は「歯磨き」知覚過敏の主な原因のひとつとしてプラークコントロールの不良が挙げられますが、プラークの付着は象牙細管の開口に関わるため適切なセルフケアによるプラークコントロールは知覚過敏症状抑制の原則となります。また、軽度の知覚過敏症状であれば、酸性食品、飲料の摂取を控えて適切なプラークコントロールを行えば自然に治癒する場合もあり、予防も兼ねて知覚過敏ケア効果のある歯磨剤を使用して歯磨きを行うことが知覚過敏に対する基本的な対処法として考えられます。知覚過敏ケアの定番『シュミテクト』『シュミテクト』は、知覚過敏の症状を予防するための歯磨剤で、海外では『Sensodyne(センソダイン)』と呼ばれ、世界中で高く評価されています。知覚過敏用の歯磨剤の市場規模が拡大する中、『シュミテクト』は特に注目されるブランドであり、2024年1月時点で、18年間連続で売上を伸ばし、市場をリードしています。*歯がしみるのを防ぐ「硝酸カリウム」や、歯肉の炎症を抑える「グリチルリチン酸モノアンモニウム」、う蝕予防に役立つ「高濃度フッ素1,450ppm」も含まれており、知覚過敏症状だけでなく、歯周病、口臭、ホワイトニング、う蝕といった多様なオーラルケアニーズにも対応しています。*インテージSRI+ハミガキ市場2023年5月~2024年4月累計販売金額シェア(「シュミテクト」シリーズ計)『シュミテクト』研究員にインタビュー『シュミテクト』の歴史と『シュミテクトプラチナプロテクト EX』の開発秘話今回は、Haleonジャパン株式会社のオフィスに実際に伺い、研究開発担当の中谷 遼太朗氏に、『シュミテクト』の歴史と、新商品の『シュミテクトプラチナプロテクトEX』の開発秘話についてお伺いしました。Haleonジャパン株式会社 研究開発担当 中谷 遼太朗氏── まずは、シュミテクトの歴史について教えていただけますか?はい、シュミテクトの歴史は非常に長いです。まず、1961年にアメリカとイギリスで『Sensodyne original』として誕生しました。その後、1980年に、硝酸カリウムを含む初の歯磨剤『Sensodyne F』が登場し、臨床的に知覚過敏症状抑制効果が証明され、画期的な製品として大きな注目を集めました。1992年には、日本で初めて硝酸カリウムを配合した『シュミテクト』が発売され、それ以来、多くの方に愛用されています。さらに進化を続け、2024年3月には『シュミテクトプラチナプロテクトEX』が新たに発売されました。── 新製品『シュミテクトプラチナプロテクトEX』の開発に至った背景をお聞かせください。ワンディー株式会社 編集部・高橋 佳奈これまでのシュミテクト製品は、知覚過敏症状に対する有効成分として硝酸カリウムを主に配合していました。従来の製品でも十分に効果を発揮していましたが、より広範囲のユーザーに効果を届けたいという思いから、今回の『シュミテクトプラチナプロテクトEX』では新たに、有効成分の乳酸アルミニウムを加えました。これにより、より幅広いニーズに応えることができる、さらに効果的なケアを実現する製品が完成したと考えています。『シュミテクトプラチナプロテクトEX』の特徴とエビデンス── 『シュミテクトプラチナプロテクトEX』の主な特徴について教えていただけますか?先ほどもお伝えしたのですが、『シュミテクトプラチナプロテクトEX』は、硝酸カリウムと乳酸アルミニウムという2つの有効成分を配合しています。硝酸カリウムは歯髄神経の過敏性を鎮めることで、内側からの知覚過敏症状を軽減します。一方、乳酸アルミニウムは露出した象牙細管の穴を塞ぎ、唾液中のリン酸イオンと結びついてリン酸アルミニウムとして結晶化し、外側からの刺激を防ぎます。Haleonジャパン株式会社 メディカルアンドサイエンスアフェアーズ オーラルヘルス研究員 金山 昌氏このダブルの効果により、「鈍麻」と「封鎖」の両面から知覚過敏にアプローチします。さらに、寝ている間が知覚過敏ケアに有効な時間であることに着目し、こちらの『プラチナ プロテクトEX 集中ナイトケア』を開発しました。就寝前に使用していただくことで、長時間有効成分が歯にとどまり、象牙細管をしっかり封鎖し、外からの刺激を防ぎます。この他にも、歯周病予防のために、抗炎症作用を持つ「グリチルリチン酸モノアンモニウム(MAG)」、う蝕予防として「高濃度フッ素」が含まれており、知覚過敏の症状を防ぐだけでなく、歯周病やう蝕予防にも効果的なケアが行えます。── 『集中ナイトケア』の効果を示すエビデンスはありますか?ナイトケア製品は、象牙細管の封鎖効果が8時間後に2倍以上増加することが研究データで確認されています。このデータは、ナイトケアとして就寝前に使用することで、長時間にわたり知覚過敏をケアできることを示しています。さらに、これだけではなく、当製品は耐酸性の効果も持ち合わせています。酸性のクエン酸溶液を用いた実験では、封鎖物が流されず、酸に対して強い保護層が形成されることが証明されました。── 製品の信頼性については、どのような点が重視されていますか?当社では「信頼されるサイエンス」を理念に掲げ、科学的根拠に基づいた製品開発を行っています。法律で義務付けられていないことでも、品質保証のために社内の厳しい基準を設けています。たとえば、私たちの歯磨剤は全て、品質保証期間を通じて、フッ素がう蝕予防に有効な形(遊離フッ素)として製品に存在することを担保しています。また、新たに配合した乳酸アルミニウムは酸性の成分ですが、歯磨剤のpHをを中性に保ちながら有効成分の効果を最大限に発揮できるように設計されています。これは高度な技術であり、成分同士の相互作用を考慮しつつ効果を保つためのバランスを取ることが求められます。このような徹底した品質管理と研究開発の取り組みが、実際に製品を使用したお客様から「効果を実感した」「知覚過敏症状が改善した」といった評価を得ることにつながっていると考えています。Haleonヘルスパートナーに登録する3つのメリット!Haleonヘルスパートナー(旧:GSKヘルスパートナー)ではオーラルヘルス、特にセルフケアに関する知識を深めるためのコンテンツや、歯科医療従事者の日々の臨床をサポートする情報を提供するプラットフォームです。著名な講師が登壇。臨床に役立つ情報をウェブ講演会で無料配信!象牙質知覚過敏症、歯周病、義歯安定剤や義歯洗浄剤、口腔内装具用洗浄剤に関するウェブ講演会を無料でご視聴いただけます。過去のウェブ講演ダイジェスト 動画もご覧いただけます。 患者さん用無料サンプルでセルフケアを習慣化!診療がスムーズに患者さんのセルフケア習慣化をサポートするための患者さん用製品サンプルをご依頼いただけます。歯磨剤(シュミテクト・カムテクト)や義歯安定剤、義歯・口腔内装具用洗浄剤などインターネットから簡単に患者さん用サンプルをオーダーいただけます。日々の臨床にお役立てください。製品情報と患者さん用資材ダウンロード製品情報や、セルフケアの指導に活用していただける患者さん用資材をダウンロードいただけます。ぜひ、こちらよりアカウント登録をして申し込んでみてはどうでしょうか。無料で登録する
1D編集部
2024年9月27日
「8割の歯科医師が将来性を感じている」。訪問歯科診療の実態調査を実施

「8割の歯科医師が将来性を感じている」。訪問歯科診療の実態調査を実施

DSヘルスケアグループ(代表・CEO:寒竹 郁夫)のデンタルサポート株式会社(本社:千葉県千葉市、代表取締役:草深 多計志)は、1D会員の歯科医師に対し「訪問歯科診療に対する意識調査」アンケートを実施した。調査内容期  間:2024年5月30日~2024年6月30日対  象:「1D」に会員登録している歯科医師有効回答:419名調査方法:WEBアンケート60%以上の歯科医院が訪問歯科診療に取り組んでいる一方で、訪問先施設への加算協力の実施は半数以下。約80%の歯科医師が「訪問歯科診療はまだ伸びる」と将来性を感じていると回答した。調査の詳細は以下の通り。調査結果の概要① 訪問歯科診療の実施状況60%以上の歯科医院で訪問歯科診療を実施しており、担当医は理事長・院長が多い。訪問メンバーの構成は歯科医師+歯科衛生士が多い。歯科衛生士が口腔ケアのみで訪問している歯科医院は約30%約60%の歯科医院が、訪問先施設への加算協力をおこなっていない。② 訪問歯科診療の実施に感じている課題は、器具機材の準備と体制整備。③ 約80%の歯科医師が「訪問歯科診療はまだ伸びる」と将来性を感じている。調査結果の詳細訪問歯科診療の実施状況60%以上の歯科医院で訪問歯科診療を実施している。月に1回以上実施している歯科医院の割合は46.8%。医院として訪問歯科診療の実地状況訪問の際のメンバー構成訪問歯科診療の担当医口腔ケアのみで歯科衛生士が訪問しているか訪問先施設への加算協力の現状機材は何を準備しているか(実施日数別の持参機材)開始するにあたって大変だったこと<訪問の際のメンバー構成><訪問先施設への加算協力の現状>訪問歯科診療を実施するうえでの課題<訪問歯科を実施している医院>現在の課題実施状況に満足しているか<訪問歯科診療を実施していない医院>60%以上の歯科医院は、これから新たに訪問歯科診療を始めることを考えていない。始めたいと思う条件は「経営にプラスになるなら」。訪問歯科診療を始めたいと思うかどのような条件であれば始めたいか始めるにあたっての疑問点・不安<訪問歯科診療への考え方>訪問歯科診療への熱量(関心度)将来性をどのように考えるか訪問歯科診療の勉強会で学びたい内容<訪問歯科診療の将来性>アンケート結果の全文はこちら
1D編集部
2024年9月5日

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