Invisalignはアラインテクノロジー社が提供するマウスピース矯正だが、永久歯列が生えそろってから行うⅡ期治療において用いられている。
透明で目立ちにくく取り外しも容易であることから、需要は高く、従来ブラケットとワイヤーを用いた矯正治療に躊躇していた人々からも受け入れやすいものである。近年、そのニーズは大人のみならず子どもにまで広がっている。
InvisalignFirstとは、乳歯と永久歯が混在する混合歯列期から使用できる子ども向けのアライナー型矯正装置である。成長過程にある子どもに向けて歯列弓の拡大によるスペース確保と、理想的な咬合への誘導を同時に兼ね備えた装置である。
対象としては、個人差はあるが第一大臼歯が生えそろい、上下前歯4本が生えそろってきた頃が理想的である。成長過程において治療の介入ができるため、歯列不正や咬合の問題の悪化を予防できるというメリットは大きく、2期治療が必要な場合もより短期化することも可能である。
また指しゃぶりや舌の突出癖などの習慣の改善をサポートもできる。臼歯部の後方移動も、CTなどで確認をしつつ第二大臼歯が生えてくる前の10歳くらいであれば行いやすい。
目標としては、犬歯萌出の平均年齢は男性約10歳、女性9歳半であるので、それまでに犬歯の萌出スペースを確保することである。具体的には、前歯部の叢生が確認されたら早期に前歯4本を並べ、それから犬歯の萌出スペースを確保していく。
前歯部と犬歯までが正常に萌出し、上下第一大臼歯が正しい位置関係になれば、その後萌出してくる小臼歯2本は解剖学的スペースに問題はなく生えてくることが多く、その後2期治療の必要性があれば、より短期間に簡単にすることができる。
一般的に6〜10歳だが、適用条件は身体年齢ではなく歯牙年齢に基づく。
・切歯のうち少なくとも2歯が2/3以上萌出している
・少なくとも3/4顎に乳歯(C,D,E)または未萌出の永久歯(3,4,5)が2歯以上
Invisalign Firstは主に1期治療症例のためにデザインされている。Invisalignとの違いは、対象が子どもであるため歯の生え替わりなど流動性があり、それに合わせた介入をしていくことである。
成人の場合であれば、AIによる適合性に頼ることのできる判断を、生え替わり中であることなどを考慮して AIモニタリングなどから外したり、成長予測をしながらカスタマイズしていく必要がある。そうすることで歯列を育形成し、萌出歯牙のためのスペース確保が可能になる。
歯列弓の拡大はデフォルトとしては、大臼歯をはじめにある程度拡大し、次に犬歯とすべての臼歯を同時に拡大していく。最適アタッチメントを設置したり、歯列弓拡大に必要な歯牙移動をサポートするコンタクトとフォースを生み出すことにより、予測実現性の高い歯列弓の拡大が可能となる。
短い臨床歯冠に対しても維持用最適アタッチメントなどを設置することによって、維持力の向上も期待できる。自然萌出する歯牙のために、正確なスペース保持も可能になる。
萌出スペースは上顎切歯、犬歯および小臼歯に使用可能であることから、混合歯列期前期から後期も治療が可能である。また完全萌出していない歯牙の過剰萌出を防ぐために萌出タブなどの設置も可能である。
このように、Invisalign Firstは成長過程に特化した製品であり、治療のニーズに対応するように設計されている。また、顎骨の成長を阻害せずに歯列不正を治していくという点において、永久歯列を対象にしたInvisalignと比べても矯正治療の技術と経験が必要不可欠である。
小児期の矯正治療は成長発育を利用して歯列咬合の基礎となる顔面骨格の改善を期待することができる。また、顎整形効果や発育障害の抑制、歯の外傷の減少、包括的な治療を実現できたりとさまざまなメリットがある。
その点において、歯列咬合を整えるという意味での2期治療とは目的が異なる。Invisalign Firstを用いてのマウスピース矯正は、適応の範囲内の移動であれば大変便利なものであり、利点は多数ある。しかし、治療範囲の限界もあり、その限界をよく理解した上で使用することが必要である。
小児期の矯正治療は一見簡単そうに見えるが、症例によっては思ったような歯の移動が認められなかったり、予期せぬ成長が見られたりと難しいことも多い。
この時期の歯列不正を治すのに失敗したからと途中で投げ出し、矯正専門医に依頼するケースも近年増えている。小児の歯・歯列・歯槽部・咬合の成長発育を熟知し、正しい診断とアライナーによる歯の移動の特性をきちんと理解した上で取り組むべきである。
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