私たちが毎日欠かさず使用するスマートフォン。指紋認証や顔認証によってセキュリティのロックを解除できることは、今や当たり前のテクノロジーとなっている。こうした「生体認証」に驚きの新技術が登場しつつある。それも、歯科医療者にとっては馴染みの深い「歯ぎしり」で。早速紹介していこう。
アメリカ・フロリダ州立大学とラトガース大学の研究チームは、ユーザーが歯を動かすことによって発生する音波をイヤホンで検出し、生体認証を行う「ToothSonic」を開発した。
人間の歯は、咬頭の形態・エナメル小柱のパターン・歯と歯の間の距離・Speeの弯曲の程度などがひとりひとり異なる。そのため、当然歯同士のタッピングや滑走の際に生じる音も個人に特有のものとなる。研究チームは、この「歯ぎしり」によって生じる音を、生体認証に利用出来ないかと考えた。
音波の感知には、内向きマイクを備えたイヤフォンを用いた。歯の動きを認識し、ノイズフィルタリングを実施。さらにMFCC(音声認識や楽器の識別等によく使用される特徴量)やピッチ、共鳴音や摩擦音の成分など多数の特徴を抽出し、テンプレートのデータと一致するかどうかをディープニューラルネットワークを用いて解析、認証を行う仕組みを開発した。
25人の被験者を対象とした実験では、ユーザーの歯の動き一つでなんと95%の精度を達成した。今後さらに研究が進み認証精度がさらに上がれば、実用化に向けた動きが急速に進むことだろう。イヤフォンを用いて歯を接触させるだけでスマホのロックを解除できる日はすぐそこかもしれない。
1. Zi Wang, Yili Ren, Yingying Chen, Jie Yang, ToothSonic: Earable Authentication via Acoustic Toothprint, Vol.6, No.2, Proceedings of the ACM on Interactive, Mobile, Wearable and Ubiquitous Technologies, 07 July 2022