「歯医者の年収ってどれくらいなんだろう」と気になったことはありませんか?身近な職業であり、他の職業に比べて年収が高そうなイメージはありますが、実際にどのくらいの年収なのかを知る機会はなかなか無いですよね。
この記事では、歯医者の年収はいくらなのかを、仕事のやりがいや将来性と共に詳しく解説しています。歯医者の年収について深く知ることができるので、ぜひ最後まで読んでみてください。
歯医者とは、歯科医師免許を取得して歯科医業をしている方のことです。仕事内容は歯科医師法によって規定されており、むし歯・歯周病の治療や歯並びの矯正、インプラント手術など口腔内における健康の管理を行います。
また歯科医師法によって「歯科医業を行って良いのは歯科医師のみ」と定められているので、一般的な内科医や外科医とは違い、口腔内の治療に特化した医療職種です。近年は歯医者の役割が広がってきていて、子どもの食育や高齢者の歯・口の健康ケアで活躍する方も増えてきています。
歯科医師の仕事内容は、歯をはじめとした口腔全体の治療です。具体的には、むし歯や歯周病の治療、入れ歯や差し歯の制作と装着、詰め物や被せ物、歯並びの矯正や抜歯、治療にかかる保健指導や健康管理などが主な業務です。
他にも、クリーニングやホワイトニング、インプラント手術などの口腔外科も行います。また学校や児童施設で歯の定期検診を行ったり、保健所や国の行政機関で公衆衛生関係の仕事に携わったりすることもあり、歯の病気の予防に努めることも歯科医師の大切な役割と言えます。
歯科医師の年収は、働く地域や施設、開業医であるか勤務医であるかによって変わります。以下では、開業医と勤務医に絞って説していきます。
開業医の場合、平均年収は1,000万円を超えます。ただ一口に「開業医」と言っても、個人なのか医療法人なのかによって、また平均年収が異なります。
個人の開業医の場合は平均年収が約632万円であるのに対し、医療法人の歯科医院の院長だと、約1,400万円と倍を超える額になるのです。しかし人口が少ない地域で開業するとそれに比例して歯科医師の需要も少なくなるため、年収が下がる可能性があります。
(参照:
『第22回医療経済実態調査 (医療機関等調査) 報告』)
勤務医は、一般病院で働いているのか歯科診療所で働いているのかによって年収が変わります。なお一般病院とは患者20人分以上の入院設備がある施設のことで、歯科診療所とは一般病院の基準を満たさない施設のことです。
一般病院で勤務医として働く歯科医師の平均年収は約1,242万円ですが、歯科診療所だと半分未満の約606万円が平均です。歯科医師が勤務医として働く際には、他の診療科もあるような大規模な医療施設に就職したほうが、年収は高くなるようですね。
(参照:
『第21回医療経済実態調査 (医療機関等調査) 報告』)
歯科医師になるためには、歯学部に入学して6年間の教育を受けた後、歯科医師国家試験に合格し、歯科医師免許を取得する必要があります。
また、歯科医師国家試験を受けるには以下の受験資格のいずれかを満たす必要があります。
①学校教育法(昭和22年法律第26号)に基づく大学において、歯学の正規の課程を修めて卒業した者(令和4年3月10日(木曜日)までに卒業する見込みの者を含む。)②歯科医師国家試験予備試験に合格した者で、合格した後1年以上の診療及び口腔(くう)衛生に関する実地修練を経たもの(令和4年3月10日(木曜日)までに実地修練を終える見込みの者を含む。)③外国の歯科医学校を卒業し、又は外国で歯科医師免許を得た者であって、厚生労働大臣が(1)又は(2)に掲げる者と同等以上の学力及び技能を有し、かつ、適当と認定したもの④沖縄の復帰に伴う厚生省関係法令の適用の特別措置等に関する政令(昭和47年政令第108号)第18条第1項の規定により歯科医師法の規定による歯科医師免許を受けたものとみなされる者であって、厚生労働大臣が認定したもの
(参照:
『歯科医師国家試験の施行について|厚生労働省』)
なお、免許を取得したらすぐに歯科医師として働き始められるわけではなく、研修施設に指定されている病院や診療所などで1年以上の臨床研修を行うことが義務づけられています。
歯科医師の国家試験の試験内容は、「臨床上必要な歯科医学及び口腔衛生に関して、歯科医師として具有すべき知識及び技能」についてです。
年に1回、1月下旬から2月上旬の土日の2日間で行われ、2日間とも午前と午後にそれぞれ135分(2時間15分)の試験があります(2時間15分×4回=計9時間)。また試験は以下の8都道府県のいずれかで受けることができます。
(参照:
『歯科医師国家試験の施行について|厚生労働省』)
必修問題、一般問題、臨床実地問題が出題され、必修問題が80問、一般問題が180問、臨床実地問題が100問です。
歯科医師の国家試験の合格率は、新卒者では77~80%程度で、全体だと61~65%程度です。なお、新卒者とは歯学部卒業と同時に受験した方のことで、全体は既卒者も含めています。参考までに、過去5年分の合格率を以下の表にまとめました。
第111回新卒者77.9%全体64.5%
第112回新卒者79.4%全体63.7%
第113回新卒者79.3%全体65.6%
第114回新卒者80.2%全体64.6%
第115回新卒者77.1%全体61.6%
(参照:
『医道審議会(歯科医師分科会)|厚生労働省』)
既卒者は新卒者に比べて合格率が低い傾向があるようで、どの年を見ても全体の合格率よりも新卒者だけの合格率の方が高い結果となっています。
歯科医師は主に医療施設で働きますが、他にも教育機関や研究機関、行政機関などで働くこともあります。今回は、歯科クリニック、病院、公務員の3種類の働き方に絞って、以下で詳しく解説します。
歯科クリニックは、歯科医師の就職先として最も有名な職場であり、「コンビニよりも数が多い」と言われています。
それほど身近にあるため、歯の痛みや違和感があった際、多くの人が最初にかかる医療施設です。そのため、歯科クリニックに就職すると様々な症状の患者を相手にすることになります。
また最先端の医療技術を導入したり、保険対象外の治療を充実させたりと、競合との差別化を積極的に行っているクリニックも増えています。
歯科医師になるためには、国家試験に合格した後、研修施設に指定されている病院や診療所などで1年以上の臨床研修を行うことが義務づけられています。
歯科大学や歯学部がある大学は附属病院を持っていることが多く、1年研修を附属病院で終えた後、そのまま系列病院の医局に入ったり、大学院に進学したりするケースがあります。そのため、歯科診療所に比べて勤めている歯科医師の平均年齢が低いようです。
附属病院では最新の研究が行われているため、附属病院で働くと医療知識や技術を幅広く身につけられるというメリットがあります。
歯科医師には、「医系技官」や「歯科医官」のような国家公務員として働く選択肢もあります。
また地方公務員の選択肢もあり、歯科医師として地方公務員になると、各自治体の公立病院に配属されます。
歯科医師が年収を上げる方法は、大きく分けて2つあります。
1つめの方法は、開業することです。経営が安定すれば年収1,000万円以上も夢では無いので、勤務医として年収を上げることが難しいと感じているのであれば、開業を視野に入れてみてはいかがでしょうか。なお、医療法人として開業できれば、個人経営よりも年収が高くなる傾向があります。
2つめの方法は、自由診療科目を取り入れることです。歯科医師は、歯科以外にも歯科口腔外科や矯正歯科、小児歯科を標榜(診療科目を看板や広告に掲げること)でき、医療法の限定解除要件を満たした場合には、審美歯科や予防歯科も標榜することができます。
特に審美歯科はホワイトニングやセラミック治療、インプラント治療などの自由診療を扱うことが多く、利益率が高いです。そのため自由診療科目を積極的に取り入れると、より年収を上げることができるでしょう。
ここまでは歯科医師の年収に注目して解説してきましたが、いくら収入が良くても、やりがいがない仕事をするのは辛いですよね。そこで、ここでは歯科医師の仕事のやりがいを3つお伝えします。
歯科医師の仕事のやりがい1つめは、患者の全身の健康に貢献できることです。歯は食事に欠かせない重要な器官であるため、歯の健康は全身の健康の維持や増進、病気の予防に繋がります。
歯を治療することによって患者のさまざまな体調不良を改善し、患者から「ありがとう」と言われるのは歯科医師の大きなやりがいでしょう。
2つめは、専門性の高い仕事ができることです。歯科医師法によって「歯科医業を行って良いのは歯科医師のみ」と定められているので、歯科医師の仕事は歯科医師にしかできません。そのため、専門技術を持って難しい治療をしたときや歯科医師としての技術力の向上やレベルアップを実感できたときには、「自分にしかできない仕事をした実感」があり、大きなやりがいを感じるでしょう。
3つめは、医療人としても経営者としても活躍できることです。歯科医師の特徴の1つとして、開業医の割合がとても高いことが挙げられます。開業したら経営者としての仕事もすることになるので、医療人としてのやりがいも経営者としてもやりがいも得られます。
近年は「歯科クリニックの数はコンビニよりも多い」と言われており、供給過多のイメージがありますが、歯科医師の将来性はあるのでしょうか。結論からいうと、歯科医師は医師と同じように不可欠な存在であり、将来性がある仕事と言えます。
もちろん、歯科医院が増えたことにより競争が起こり、経営が上手くいかない歯科医院が出てきてしまっていることは事実です。しかし少子高齢化が進んでいる今の社会では、高齢者を対象にした訪問歯科の需要が高まっていくことが予想されています。
訪問歯科は保険点数(医療行為ごとに点数が決められていて、療行為に対する価格は「1点=10円」で計算される)の加算が多く、治療の内容にもよりますが、同じ治療を外来で行った場合に比べて報酬が3倍程度になることもあります。
訪問歯科医の数は足りていないと言われていますので、まだまだ歯科医師を必要としている人はたくさんいるでしょう。
今回は、歯科医師の年収はいくらなのかを仕事のやりがいや将来性と共に詳しく解説しました。歯科医師の年収は開業医であるか勤務医であるかで差があり、また開業医の中でも個人なのか医療法人なのか、勤務医の中でもどの施設で働いているのかによってさらに差があります。
さらに「歯科クリニックの数はコンビニよりも多い」と言われており、供給過多のイメージがありますが、今後は訪問歯科の需要が高まっていくと考えられています。そのため歯科医師はまだまだ将来性のある仕事と言えますので、あなたが望む収入に合わせて働き方を決め、歯科医師を目指してみましょう。