「歯科医師国保」という言葉は聞いたことがあっても、具体的にどんなものなのかは知らないという方も多いのではないでしょうか。世の中にはたくさんの保険があって、いざ自分が保険を選ぶときにならないと、なかなか詳しく知る機会はないですよね。
この記事では、歯科医師国保がそもそもどんなものであるかから、メリットや注意点までを解説します。歯科医師国保がどんなものなのか理解できますので、ぜひ最後まで読んでください。
歯科医師国保とは、「職域国保」の一種です。職域国保とは、国民健康保険法に基づいて運営されているもので、医師や弁護士、理美容師などの地域の同業者が設立する国民健康保険組合が行う組合国保のことです。
また「歯科医師国保」という名前ですが、歯科医師だけでなく歯科衛生士や歯科技工士、歯科助手、受付の従業員、その家族も加入できます。
歯科医師国保は国民健康保険であるため、社会保険完備にはならないと勘違いされることが多いです。しかし実際は、歯科医師国保と厚生年金に加入すれば、社会保険完備者とされています。
歯科医師国保に加入するメリットには、大きく分けて「保険料が一律」「福利厚生が充実している」「大きな手当が2つある」の3つがあります。それぞれのメリットについて、以下で詳しく解説します。
歯科医師国保に加入するメリットの1つめは、保険料が一律であることです。公務員や会社員とその扶養家族が加入する健康保険では、給与の額によって保険料が変動します。個人事業主やパート、アルバイトの方が加入する国民健康保険では、保険料は前年の所得に応じて変動します。
それに対し歯科医師国保は保険料が一律であるため、所得や給与に応じて保険料が変動する保険に加入するよりも、支払い額が安くなる可能性があります。
保険料は毎月払わなければいけない固定費なので、安く抑えられるのは大きなメリットと言えますね。ただし加入する組合によって保険料に差があるため、勤め先がある地域の組合を調べるようにしましょう。
歯科医師国保に加入するメリットの2つめは、「保険事業」と呼ばれる福利厚生が充実していることです。保険事業の内容は健康診断や予防接種、人間ドックなど、健康増進を促すものが中心ですが、組合によって独自の保険事業を行っている場合があります。
例えば神奈川県歯科医師国民健康保険組合では、「組合員とご家族の方の健康保持・増進のため」として、東京ディズニーランドや東京サマーランドなどのレジャー施設の割引利用券を発行しています。
(参照:
『健康増進施設 | 保健事業 | 神奈川県歯科医師国民健康保険組合』)
他にも温泉の割引やアロマ教室の開催など、組合によって様々な保険事業を行っているので、上手に活用することができれば大きなメリットになりそうですね。
歯科医師国保に加入するメリットの3つめは、「傷病手当金」と「出産手当金」という、大きな手当が2つあることです。
傷病手当金とは、業務外でのケガや病気が原因で仕事ができず給与がもらえなくなったとき、被保険者とその家族を守るために支給される手当のことです。なお業務中や通勤中にケガをした場合は、労災保険が適用されます。
出産手当金とは、出産のために仕事ができなかった日数に応じて支給される手当のことです。ただし、産休中の保険料免除がないことには注意しましょう。
歯科医師国保の主な保障内容を、全国歯科医師国民健康保険組合を例にとり、以下の表にまとめました。なお、絶対的必要給付(組合が必ず行わなければならないもの)は除いています。
相対的必要給付出産育児一時金被保険者が出産(妊娠4ヶ月以上の死産・流産を含む)した場合1児につき420,000円(H21年10月~)を支給。葬祭費被保険者が死亡した場合、その者の葬祭を行う者に支給される。
1種組合員:300,000円2種組合員:150,000円3種組合員:100,000円1・2・3種組合員の家族:100,000円後期高齢者組合員の家族:100,000円任意給付傷病手当金1種組合員 入院一日につき 4,000円2種組合員 入院一日につき 1,500円3種組合員 入院一日につき 1,500円出産手当金産前6週間、産後8週間において業務に服さなかった組合員一日につき 1,500円
(参照:
『全国歯科医師国民健康保険組合::保険給付一覧』)
ただ歯科医師国保を運営する組合は全国に複数存在しているので、具体的な保障内容は各組合ごとに変わります。そのため歯科医師国保への加入を考えているのであれば、あなたが加入する可能性がある組合について調べてみましょう。
歯科医師国保で注意すべき点には、大きく分けて「自分が勤めている歯科医院は保険適用外」「扶養がない」「勤め先が保険料を負担してくれない可能性がある」の3つがあります。それぞれの点について、以下で詳しく解説します。
歯科医師国保で注意すべき点の1つめは、自分の勤め先には保険請求ができないことです。通常の医療機関では窓口負担は3割ですが、自分の勤め先は例外で、保険請求をすることができません。そのため自分の勤め先を受診すると負担額が多くなってしまいますので、注意しましょう。
歯科医師国保で注意すべき点の2つめは、「扶養」の概念がないことです。「扶養」とは、一般的に「親族から経済的援助を受けること」を指し、健康保険では扶養している家族がいても加入者が支払う保険料は変わりません。
それに対し歯科医師国保では、加入者に扶養している家族がいる場合、人数分の保険料を払う必要があります。そのため扶養している家族が増えれば増えるほど、保険料が増えてしまうのです。
例えば、一人親で子どもが複数いるような場合には、健康保険に比べて保険料の総額が高くなる可能性がありますので注意しましょう。
歯科医師国保で注意すべき点の3つめは、勤め先が保険料を負担してくれない可能性があることです。
公務員や会社員とその扶養家族が加入する健康保険では、勤め先が保険料の半分を負担してくれますが、歯科医師国保では勤め先が従業員の保険料を負担する義務がありません。そのため、勤め先が保険料を負担してくれない場合は支払い額が増加してしまいます。
もしあなたが現在転職を考えているのであれば、新しい職場は歯科医師国保に加入しているのか、また保険料を負担してくれるのかを確認しましょう。
今回は歯科医師国保がそもそもどんなものであるかから、メリットや注意点までを解説しました。
歯科医師国保には、「保険料が一律」「福利厚生が充実している」「大きな手当が2つある」というメリットがある一方で、「自分が勤めている歯科医院は保険適用外」「扶養がない」「勤め先が保険料を負担してくれない可能性がある」という注意点もありました。
歯科医師国保に加入すべきかどうかは人それぞれ異なりますので、あなたにとってメリットとデメリットのどちらが大きいのかを考えて、加入するかどうかを決めましょう。