歯科助手とは?仕事内容や資格の取得方法を解説!

歯科助手とは?仕事内容や資格の取得方法を解説!

小森 柚
2022年8月17日
歯科診療を行う上で、欠かせない存在である「歯科助手」。「資格はないけど医療系の仕事にチャレンジしたい!」と思われる方に人気の職業です。

さらに歯科医院の数は増加しており、今後も安定した求人が見込まれます。そして確かに必須の資格はありませんが、資格を習得することによりあなたの歯科助手としての需要はさらに高まることは間違いないでしょう。

今回はそんな歯科助手の仕事内容や資格の取得方法について、詳しく解説していきます。

歯科助手とは?

歯科助手とは、歯科医師や歯科衛生士のアシスタントとして、機材の準備や診療の補助などを行う職業です。診療のサポートだけでなく、院内の清掃や器具の消毒、お会計や次回の予約を取ったりなど様々な業務に携わり、歯科診療所において欠かせない存在です。

スキルや経験を積めば、どの歯科医院でも求められる存在になります。歯科助手の仕事を極めれば、転職活動などでも困る事はないでしょう。

英語表記では「Dental Assistant」。その頭文字から「DA」と呼ばれることもあります。

歯科衛生士との違いは?

歯科助手と歯科衛生士では行う業務範囲が違います。その違いは「医療行為ができるかどうか」です。

歯科衛生士には国家資格が必要です。資格を取得することで、歯科衛生士の主な業務である「歯科診療補助」「歯科予防処置」「歯科保健指導」が可能になります。簡単に言うと、患者さんの口腔内で直接器具を操作したり、歯科衛生士と名乗っての保健指導を行うことが可能になるというわけです。

一方で、歯科助手は医療行為以外の業務を担当します。患者さんの口腔内を触って施術を行うするはありません。
そのため歯科医師や歯科衛生士が医療業務従事者と区分されるのに対し、歯科助手は一般事務に区分されることもあります。

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    歯科助手になるには?

    歯科助手には必須な資格や免許はないので、未経験からでも仕事に就くことができます。実際の求人でも未経験歓迎という歯科医院は多くありますので、その求人に応募して就職することで、いつでも歯科助手として業務を始めることができます。

    歯科助手に向いている人は?

    歯科助手に向いている人の特徴は主に3つあります。
    • 臨機応変に動ける人
    • コミュニケーションをとるのが好きな人
    • 細やかな気遣いができる人
    このような特徴に当てはまる人は歯科助手に向いていると言えるでしょう。

    臨機応変に動ける人

    診療中、予定とは違う器具が急に必要になったり治療自体が変更になったりなど、様々なことが考えられます。急なサポートやカバ―が必要な際に素早く動ける歯科助手がいることにより、診療はスムーズになるでしょう。

    コミュニケーションをとるのが好きな人

    スタッフ同士のコミュニケーションを円滑にするのも重要な仕事です。連携がうまくいかなければ、良い診療をすることはできないでしょう。

    また患者さんとのコミュニケーションをとる機会も多く、特に受付業務をしている歯科助手の第一印象で歯科医院全体の第一印象が決まることもあります。人と接するのが好きで、笑顔が素敵な人は歯科助手に向いていると言えるでしょう。

    細やかな気遣いができる人

    歯科医師や歯科衛生士口腔内に意識を集中させていることが多いです。そんな中、歯科助手が周りを確認し、患者さんの小さな変化に気づき対応できると術者はとても助かります。また几帳面で作業が丁寧な人は、患者さんや歯科医師、歯科衛生士からも信頼される歯科助手になるでしょう。

    歯科助手の民間資格は?

    歯科助手資格認定制度

    日本歯科医師会が歯科助手の資格認定に関する基準を定め、所定の教育訓練を修了した人を歯科助手と認定する制度です。

    歯科助手の育成と資質の向上とを図り、各都道府県歯科医師会(もしくは都道府県歯科医師会が適当と認める機関)が歯科助手の教育を行っています。

    歯科助手の認定は、「甲種」と「乙種第一」「乙種第二」に分けられます。条件は以下の通りです。
    【甲種】
    ・甲種歯科助手訓練基準による訓練を修了した者(420時間以上)
    ・乙種第一歯科助手の資格を有し、3年以上の業務経験を有する者であって、補充研修訓練基準にとよる訓練を修了した者

    【種第一】
    主として診療室内の仕事に従事する者(52時間以上)

    【乙種第二】
    主として事務的な仕事に従事する者(40時間)

    引用:日本歯科医師会

    歯科アシスタント検定試験

    全国医療技能検定協議会が主催する、

    • 受付やカルテ整理などの事務業務
    • 診療の補助や器具の消毒、後片付けなどのアシスタント業務

    これらを円滑に行っていく為に必要な歯科助手の能力を証明する検定試験です。難易度によって、1級~3級に分類されています。

    試験内容程度は以下の通りです。
    3級    歯科医療の基本的な知識があり、簡単な診療方法を把握している。
    2級    歯科医療に対して広い知識があり、診療方法の応用が身についている。
    1級    歯科医療に対する認識が深く、診療体制について正確・迅速な対応ができる。

    引用:全国医療技能検定協議会

    医療事務管理士

    技能認定振興協会が主催している、受付やカルテ管理、会計、診療費の請求等のレセプト業務に特化した試験に合格することで「歯科医療事務管理士」の資格を習得することができます。法律、保険請求事務、医学一般に加え、実技でレセプトを作成する試験があります。

    これらの資格は必須ではありませんが、取得することによってあなたの市場価値は高まり、全国どの歯科医院でも働きやすくなるでしょう。

    歯科助手の仕事内容は?

    歯科助手は、無資格でもできるため歯科診療の中でも行える範囲が限られています。医療行為を行うことはできませんが、歯科医院では欠かせない「医療事務業務」「診療補助」「カウンセリング」などの業務をこなします。

    歯科助手ができる業務の範囲と、できない業務の範囲について詳しくご説明します。

    歯科助手ができる業務は?

    歯科助手は、先ほどもお伝えした通り、
    • 医療事務業務
    • 診療補助
    • カウンセリング
    などの業務を主に担当します。

    医療事務業務

    予約や会計等の受付業務、カルテの管理や電話対応などを行います。

    診療補助

    歯科医師や歯科衛生士のアシスタント業務です。機材や薬品の準備、診療中のサポートなどを行います。案内や介助、説明などの患者様対応も歯科助手も含まれます。

    カウンセリング

    患者様とコミュニケーションをとり、治療の経過や症状の変化等を確認します。歯科医師や歯科衛生士に性格に伝える事により、診療がスムーズに進むでしょう。

    歯科助手ができない業務は?

    歯科助手は国家資格が必要となる「医療行為」を行う事ができません。

    具体的には、


    などは業務範囲外となります。

    放射線を扱う業務は歯科医師や医師、診療放射線技師のみが行うことができます。また歯科助手は、口腔内の中で器具を操作したり薬品を扱ったりすることもできません。

    歯科助手の給料は?

    全国平均の歯科助手の時給・月給・年収の相場

    2022年1月時点の全国平均の歯科助手の時給・月給・年収の相場は以下の通りです。
    歯科助手の平均年収は、323万円ほどとなっています。こちらの平均年収は、厚生労働省の【令和3年度賃金構造基本統計調査】から算出しております。パート・アルバイトの場合やお住いの地域でも変わってくるため、実際に求人を見ることをお勧めします。

    サービス別の歯科助手の時給・月給・年収の相場

    歯科助手は一般的な歯科診療だけでなく、訪問歯科を行う場合もあります。それぞれのサービス別で給料の平均が異なり、基本的には訪問歯科の方が賃金の相場が高い傾向にあります。

    歯科助手の働き方は?

    診療時間や業務内容は歯科医院によって異なりますが、診療時間が午前9時~午後18時までの場合の基本的な歯科助手の働き方、1日の流れはおおむね以下の通りです。

    8:45 ー 出勤・診療準備
    9:00 ー 午前診療開始
    12:00 ー 午前診療終了・片付け
    12:30 ー 休憩
    13:30 ー 午後診療開始
    18:00 ー 午後診療終了・片付け
    18:15 ー 退勤

    このような流れになるでしょう。

    基本的には週に2回休日が設けられている歯科医院が多く、その週に祝日がある場合は週に3日休日になる歯科医院もあります。

    もちろん勤務先によって異なりますが、休みもしっかり確保できる場合が多いのでプライベートと仕事、両方を充実させたいという方や子育てしながら働きたいという方も多いのではないでしょうか。

    歯科助手の勤務先は?

    歯科助手のほとんどは一般的な歯科診療所に勤めることが多いようです。歯科診療所の中でも「矯正歯科」や「審美歯科」などの専門的な施術を提供する歯科医院も存在します。そこではもちろん、歯科助手も専門的な知識が必要になってくるでしょう。

    また少子高齢化に伴い「訪問歯科診療」を専門に行っている歯科医院もあります。それぞれ来院する患者層や習得できる知識・スキルも変わってきます。勤務先を検討する際は、自分がどの層の患者様と関わりたいのか、どのような治療に興味があるのかなどを考えてみましょう。

    覚えておきたい歯科用語と歯科用器具

    歯科助手としての業務をする上で、必ず押さえておきたい専門用語や器具の名前、用途などをご紹介してきます。

    覚えておきたい歯科用語10選

    1、【カリエス
    虫歯のこと。う蝕(うしょく)ともよばる。表記する際は、「C」と略されることもある。

    2、【ペリオ】
    歯周病のこと。表記する際は「P」と略されることもある。

    3、【根管
    歯の根っこ部分にある、神経が入った管のこと。

    4、【補綴
    歯の被せもののこと。範囲によって、「インレー」「アンレー」「クラウン」等とよばれることもある。

    5、【CR(シーアール)】
    虫歯を削り、レジン素材を使って直す治療のこと。

    6、【スケーリング】
    歯石を除去する治療のこと。表記の際は、「SC」と略されることもある。

    7、【根管治療
    歯の神経を治療すること。表記の際は「RCT」と略されることもある。

    8、【エキスト】
    抜歯のこと。表記の際は「EXT」とかかれる場合もある。

    9、【印象採得
    補綴治療等をする際に、歯の型をとること。

    10、【TBI(ティービーアイ)】
    歯磨き指導のこと。


    覚えておきたい歯科用器具10選

    1、【ミラー
    口腔内で操作する小さな鏡のこと。肉眼では見えないところを見たり、頬や舌が傷つかないように保護のためにも使用する。

    2、【ピンセット
    口腔内で操作する柄の長いピンセットのこと。小さなものを掴み、口腔内で操作する際に使用する。

    3、【エキスプローラ―】
    探針(たんしん)」ともよばれる。虫歯の確認などに用いられる。

    4、【バキューム
    口腔内の唾液や血液、歯を削る際にでてくる水や歯の削りカスを吸い取るときに用いる。

    5、【エキスカベータ―】
    虫歯を削ったり、補綴除去する際に用いる器具のこと。

    6、【ストッパー】
    充填器(じゅうてんき)」ともよばれる。補綴を装着したり、仮蓋をする際などに用いる器具のこと。

    7、【光照射機】
    CRの治療中、レジン硬化させる際に用いる器具のこと。

    8、【タービン】
    虫歯をけずる際に用いる器具のこと。

    9、【コントラ
    虫歯を削ったり、補綴を磨く際などに用いる器具のこと。

    10、【プローブ
    歯周病の検査をする際に用いる器具のこと。


    歯科助手の将来性は?

    現在、歯科診療所の数はコンビニよりも多いとされています。そして、すべての国民が毎年歯科検診を受診することを義務付けられる「国民皆歯科検診制度」の導入が検討されているなど、日本全体で歯科に対する意識が高まってきています。それに伴い、ニーズなども多様化しており、今後も歯科助手の仕事は広く必要とされるでしょう。

    まとめ

    歯科助手とは、歯科医師や歯科衛生士のアシスタントとして、機材の準備や診療の補助などを行う職業です。歯科診療を行う上で、医療行為以外の業務を担っています。

    診療のサポートだけでなく、院内の清掃や器具の消毒、お会計や次回の予約を取ったりなど様々な業務に携わり、歯科診療所において欠かせない存在です。

    日本全体の歯科への意識が高まってきている現在、今後も歯科助手の需要は増加することが考えられます。資格は必須ではありませんが、資格を習得し、スキルや経験を積めばどの歯科医院でも求められる存在になるでしょう。
    小森 柚
    著者/監修者
    小森 柚
    歯科衛生士

    1994年、香川県生まれ。香川県歯科医師会立歯科医療専門学校卒業後、歯科衛生士免許を取得。香川県で2年間、岡山県で2年間臨床経験後、スモールビジネスを立ち上げ、フリーランスとして働いている。その後、株式会社F.R.Wilで、同じようにスモールビジネスを立ち上げようとしている人達の企画やレターのブラッシュアップ、SNSマーケティングを行う。2022年に当社参画。セミナーの企画や記事作成に携わっている。

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    どうして私だけ。合格率9割の歯科衛生士国家試験に「落ちた」女たち

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    歯科衛生士国家試験の合格率は、例年95%を超える。受験資格が基本的には歯科衛生士学校を卒業した者に限定されるため一概に比較することはできないが、国家試験としては合格率の高い部類に属するだろう。本記事では、歯科衛生士国家試験に不合格になった経験のある女性3名に取材を行った。今回取材に協力してくれたのは、田代さん(仮名・24歳)と斎藤さん(仮名・22歳)、そして松田さん(仮名・31歳)だ。 合格にストーリーがあるように、不合格にもそれぞれのストーリーがある。不合格後も内定先の歯科医院で歯科助手として働きながら合格を目指している人や、学費を捻出することができずに3年以上も受験を続けている人など、数字では語られないバックグラウンドがある。【あなたにおすすめの記事】> 【ルポ】歯科医師国家試験、多浪生の現実> 歯学部を放校になった「30歳・元歯学部生」の末路1年の歯科助手経験を経て合格、田代さん(24歳)の場合田代さん(仮名・24歳)は短期大学の歯科衛生士科を卒業後、2018年の第27回歯科衛生士国家試験を受験したが、あえなく不合格となった。翌年の国家試験を受験して合格し、現在は歯科衛生士として埼玉県内の歯科医院で歯科衛生士として働いている。 明るくハキハキと話す彼女の口から、不合格だった1回目の試験直後のことを語ってもらった。 「私はもともと成績があまり良くありませんでした。試験当日はプレッシャーもあって、問題を解いている最中も ”あぁ、これは落ちたな” と思いながら解いていました。試験が終わって自己採点をしてみると、やっぱり点数が足りていませんでした」。 自己採点で点数が足りなかったため、すぐに諦めがついたと田代さんは語る。すでに地元である埼玉県内の歯科医院に内定が決まっていたが、内定先の院長とも話し合い、歯科助手として採用してもらえることになった。 「翌年、自己採点で合格点を取れた時はものすごく嬉しかったですね。両親と学校の先生、院長先生にもすぐに泣きながら報告しました。あとは学校の同期にも、1年前は私のせいで合格率100%が達成できなかったので、報告しました」と当時の嬉しさを振り返っていた。 ケアレスミスで1点に泣いた、斎藤さん(22歳)の場合斎藤さん(仮名・22歳)は、2020年に行われた第29回歯科衛生士国家試験で不合格となった。斎藤さんは幼少期から介護福祉士に憧れており、高齢者と関わる仕事に就きたいと考えていた。介護職員初任者研修を取得できる高校に進学し、実際に資格も取得した。しかし夜はしっかりと寝たいタイプだった斎藤さんにとっては、夜勤の多い介護の現場に出ることは不安だったようだ。 そこで斎藤さんは、介護の資格を活かすことができる医療系の専門学校を志すようになった。歯科衛生士専門学校に進学したのは、国家試験の合格率が高くダブつくリスクが低いということも決め手だった。 斎藤さんは、自身が落ちた理由について次のように分析する。「学校での成績も悪くなかったし、模試でも合格点は到達していました。でも私はおっちょこちょいな部分があって、問題をパッと見た瞬間に、直感で回答してしまうことがよくありました。模試は難しく感じましたが、本番当日は “なんだ、簡単じゃん” と思いながら解いていました」。 しかし会場からの帰りのバスで自己採点をしたところ、点数が足りないことが判明したという。「自己採点では1点足りませんでした。普通は不適切問題が1〜2問あるので合格はできるかなと思っていましたが甘かった。本番でおっちょこちょいのクセが出てしまって、悔やんでも悔やみきれません」。 国家試験では、1点に泣いた。現在は自宅近くの歯科医院で歯科助手として働きながら、すでに来年の国家試験に照準を合わせている。 「4月中旬から勉強を始めています。国試の麗人と医歯薬の5年分の過去問を徹底的に理解して、わからない箇所には付箋も貼っています。去年は臨床現場で働かなければわからない問題がたくさん出題されていたので、今年は歯科助手として臨床現場に出ながら猛勉強をしています」。 屈辱から雪辱を目指す、松田さん(31歳)の場合今年32歳になる松田さん(仮名)は、高校を卒業後に派遣社員などを経て歯科衛生士専門学校に入学した経歴の持ち主だ。今回取材にご協力いただいた3人のなかでは最年長になる。彼女も、今年の3月に行われた国家試験で1点に泣いた1人だ。 松田さんは、歯科衛生士国家試験を実施する歯科医療振興財団に憤りを覚えている。今年の国家試験では不適切問題による採点除外が一問もなかったためだ。 「毎年、3問くらいは不適切問題になります。なのに今年は1問もない。なぜよりによって、という気持ちが正直がところです」。松田さんは、合格発表直後に不適切問題の検証を行ったという。「周りの友人に協力してもらい今年の問題を見返してみると、10問くらい不適切っぽい問題があったんです。合格基準を考え直してもらおうと歯科医療振興財団に連絡してみましたが、返事はありませんでした」。 さらに松田さんはこう続ける。「私は一度社会人を経験してから、歯科衛生士を目指しています。学校の同期と比べても努力はしていましたし、成績も態度も良かったと思います。私より成績が悪くてやる気も無い20歳そこそこの子が合格しているのに "どうして私だけが" という怒りはあります」。 合格発表日当日、松田さんは内定先の歯科医院で仕事をしていた。「自己採点の結果から、合格できるかどうかは半々だと思っていました。でも不適切問題がないという結末で、不合格に。勤務先の院長に落ちたということを伝えたら "1年間一緒に頑張ろう" とは言ってくれましたが、気持ちをリセットしたいという思いもあり退職しました」。松田さんはいま、週に4日歯科医院で歯科助手として働きながら、来年の3月に向けて勉強を始めている。不適切問題の線引きは?不適切問題の線引きに対する不満を、不合格になった受験生は持っていた。確かに、1D編集部で歯科衛生士国家試験を解いてみたところ、不適切問題の線引きが怪しいと思われる設問も無くはなかった。2019年の社会福祉士国家試験では、不合格となった受験生の声を受けて厚生労働省が問題を再検討したところ、不適切問題が覆るという出来事があった。この時には、厚生労働省が418名の追加合格を出すという結末になっている(外部リンク:厚生労働省)。ただ、歯科衛生士国家試験は一定の知識があれば合格することができる資格試験だ。合格基準もシンプルで、運の要素は少ない。不合格になってしまった人は、知識が不足しているということは否めないと思われる。歯科セミナーなら「1D(ワンディー)」で!日本最大級の歯科医療メディア「1D」では、診療に役立つオンラインセミナーを多数開催中。もっと知りたい臨床トピックから超ニッチな学術トピックまで、参加したいセミナーが見つかります。下記ボタンから、開催中のセミナーを見てみましょう!開催セミナーを見てみる
    Masahiro Morita
    2025年12月11日
    歯学部を放校になった「30歳・元歯学部生」の末路

    歯学部を放校になった「30歳・元歯学部生」の末路

    歯科医師国家試験の合格率は、下げ止まりの状況が続いている。厚生労働省が新規参入歯科医師を削減する動きもあるなかで、各歯学部は合格率の維持、そして優秀な学生の確保に頭を悩ませている。歯科医師国家試験が難化しているしわ寄せは、各歯学部の教員陣、ひいては在籍する歯学部生に及んでいる。臨床実習を含む現実味のないコア・カリキュラムのなかで、詰め込み型の教育を強いられているのが現状だ。多くの歯学部では、学生が在籍できる年数に限度がある。最大で12年間在籍できる歯学部もあれば、1学年につき1度の留年しか許されていない歯学部もある。勉強や実習に付いていけず、在籍限度を超えてしまった歯学部生に待ち受けているのは「放校」と呼ばれる事実上の追放処分だ。1D編集部では、今年で私立歯学部を放校になった「元・歯学部生」に取材を試みた。彼はこの春から地元である東北に帰り、歯科とは関係のない道へ進む。自分に合う職業を探す、ゼロからの再スタートを切ることになる。本記事が、歯学部が構造的に抱える教育上の欠陥に対する問題提起になれば幸いである。「ただただ、両親に申し訳ない」「至らぬ点もあるかと思いますが、本日はよろしくお願いします」。90度に近いお辞儀をして、彼は取材会場に現れた。鈴木さん(仮名)は見るからに真面目そうで、とても礼儀正しい印象の男性だ。彼は今年で31歳になる。2月中旬に発表された進級判定で留年が確定し、大学規定の在籍限度を超えてしまった。教授陣や大学事務にも掛け合ったが、なすすべなく放校という処分を受けた。「この数年間、こうなるかもしれないということは感じていました。今はまだ放校になった実感はありませんが、ただただ、両親に申し訳ないという気持ちでいっぱいです」。淡々とわれわれの質問に答える彼の表情は、勉強や実習の重圧から解放され安堵しているようにも見えた。叶えられなかった夢、守れなかった約束歯科医師になることを約束された人生だった。両親はともに歯科医師で、東北地方の地方都市にユニット10台を超える規模の歯科医院を経営している。1日に訪れる患者数も多く、地元住民から信頼されている歯科医院である。そんな両親の間で生まれ育ち、小学校の卒業文集には「お父さん、お母さんのような歯医者さんになりたい」という夢を書いた。中学・高校は地元で1番の進学校に通い、推薦入試で関東地方にある某私立歯学部に入学した。「子どもの頃から、自分は歯科医師になるものだと確信していました。歯学部での勉強はやればできるだろうという自信もあったので、まさか自分が放校になるなんて微塵も考えていませんでした」。歯科医師の資格を取り、臨床家として経験を積んだ後に両親が経営している歯科医院を継ぐーー。順風満帆に思えた彼の歯科医師としての人生は、歯学部入学後すぐに暗転することになる。「放校確定」までの顛末歯学部に入学した彼を待ち構えていたのは、休むことを許されない歯学部のカリキュラムだ。「歯学部での勉強は、想像していた以上に過酷でした。推薦入試で入学した私は、ほとんど受験勉強をしていなかった。朝が得意ではないということも相まって、1年生の冬には成績も出席も足りないという状態になりました」。人間関係のトラブルもあり、彼は1年生で留年することになる。翌年はなんとか2年生に進級したが、2年生でも留年。その後も毎年のように留年を重ね、5年生から6年生に上がることができず、あえなくタイムオーバーとなった。「歯学部に殺される」という危機感彼には、現在の歯学部の教育に対して主張したいことがある。それは、歯学部での評価方法が成績のみに限定されており、努力や人柄を無視しているということだ。「鬱になり学校に来れなくなったり、最悪の場合には自殺した人も出ています。人格的に素晴らしい人や才能がある人も、歯学部に入ると殺されてしまう」と憤る。さらに、歯学部が歯科医師国家試験の予備校と化している点についても指摘する。「大学側の目的は、国家試験の合格率。学生のことを合格率のパーセンテージとしか見ていません。合格率を上げて、大学の権威を保つということしか関心が無いのだと思います」と続ける。おわりに歯科医師になる資質がない者は、歯科医師になるべきではない。国民や患者に対する責任があるからだ。歯科医師国家試験は、基本的資質を有さない者を弾く機能として、重要な役割を担っている。しかし、弾かれた者にも人生がある。毎年、十数名の「歯のことを10年以上勉強した何でも無い人」が誕生しているのだ。資質を有さないと思われる者には、歯学部低学年時から他のキャリアを提案するなどの大学側の仕組みが必要である。さらに言えば、現在の歯科医師国家試験の合格率偏重の歯学教育は、本当に国民や患者のためになっているだろうか。歯学部が「予備校化」したことで、本来研究や臨床という役割を担うべき大学教員のリソースが国家試験対策に奪われ、本来あるべき大学としての機能を失っていないだろうか。われわれにも正解はわからないが、歯学部が抱える教育上の諸問題は、国民の健康な生活のために、もっと議論されるべきテーマである。※個人特定防止の為、内容やプロフィールを一部脚色しています。
    1D編集部
    2025年12月8日

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