「付着歯肉」とはどの部位を指しているか、適切に説明することができますか?本記事では付着歯肉の定義からその重要性について、わかりやすく解説していきます。
付着歯肉とは、角化歯肉から遊離歯肉を引いた「動かない歯肉部分」を指します。具体的には、歯肉溝底から歯肉歯槽粘膜境までの歯肉を指し、歯槽骨に付着しているため、歯周病が進行することで幅が短くなっていきます。
また長期間入れ歯を使い続けている高齢者の方の場合、入れ歯による刺激によって奥歯の付着歯肉幅がほとんどないという方も少なくありません。
健康な状態ではスティップリングとよばれる穴(みかんの皮にみられるような小さな穴)があり、色はサーモンピンクです。付着歯肉幅は外科治療や補綴治療をするときの大切な情報となるため、定期的な記録をおすすめします。
角化歯肉とは、歯周組織をとりまく硬い歯肉で、遊離歯肉と付着歯肉を合わせた部位を指します。具体的には、歯肉辺縁から歯肉歯槽粘膜境までの歯肉です。付着歯肉幅が短くなれば、その分角化歯肉幅も短くなり、歯肉全体の見た目が変わります。
遊離歯肉とは、角化歯肉から付着歯肉を引いた「動く歯肉部分」を指します。具体的には、歯肉辺縁から歯肉溝底までの歯肉です。
歯周病による腫れの多くが遊離歯肉にみられ、歯間に存在する歯間乳頭は、健康な状態では三角、炎症がおこると丸みをおびた見た目に変わります。歯肉炎の判断基準でもあるため、ブラッシング指導の際にお伝えすることをおすすめします。
付着歯肉の存在は、良好なプラークコントロールに影響を与えるとされており、厚みや幅が臨床的な重要な環境因子と考えられています。しかし付着歯肉を含む角化歯肉の存在がなくても、歯周組織の健康が維持される場合もゼロではなく、必要と断言できるものではありません。
無いよりはある方が良いといわれています。歯科業界で意見が分かれる問題であることから、正解はありません。
しかし付着歯肉があるのと無いのでは見た目に大きな違いが生まれ、特にクラウンやインプラントでは付着歯肉幅が短くなれば歯肉全体が下がることで根元が見えるようになります。さらにプラークコントロールがしにくくなると、2次カリエスや脱離などトラブルを引き起こしかねません。
また最近ではインプラントなどの外科手術の際、歯肉が足りない部分を補うための移植に使用することも少なくありません。
付着歯肉幅が1mm短くなると通常のブラッシングは難しくなるとされていますが、必ずしも悪い結果になるとは限りません。正常な場合あっても付着歯肉の幅には個人差があるため、健康なうちに記録をとっておくことをおすすめします。目安は以下のとおりです。
上顎切歯、とくに側切歯は幅が広い 3~5mm
下顎犬歯と第二大臼歯は狭い傾向にある 1~2mm
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付着歯肉は、かならず無ければいけない部分ではないものの、あった方がプラークコントロールがしやすく、クラウンやインプラントをした場合の見た目が良いというメリットが存在します。
付着歯肉を失わないための工夫として患者様には歯間ブラシやフロスの使用をおすすめし、状態の変化の把握に役立つ定期的な付着歯肉幅の記録を心がけましょう。