スケーラーとは、歯石や感染部位を除去する器具(手用)または機械です。種類によって用途が異なり、主に歯科衛生士がクリーニングや歯周病治療の際に使用します。
使い方を間違えると歯や歯ぐきを傷つける恐れがあるため、問題なく使えるようになるまで念入りに練習を重ねます。刃こぼれのチェックも欠かせません。
スケーリングは歯石除去を指し、クリーニングで行われる機械を使った歯石除去も含まれます。基本的にスケーリングをする際に麻酔は必要ありません。
一方、歯周ポケット内部にある感染組織の除去や歯根の表面を滑沢する目的で行われる処置を指すルートプレーニングでは、麻酔が必要になることがほとんどです。
健康な方でも歯と歯ぐきの境目に1〜3mmのすき間は存在し、歯肉溝(しにくこう)と言いますが、それ以上深くなると病的な問題があるとして歯周ポケットと表現されます。
スケーリングは一般的なクリーニングとして頻繁に行われる処置ですが、ルートプレーニングは主に中度や重度の歯周病治療として行われます。
スケーリングとルートプレーニングを合わせたSRPは、歯周病治療には欠かせない処置であり、歯周ポケットの深い部分まで触るため麻酔が必要です。SRPを何度か繰り返して改善が見られないようであれば、患者様に外科手術をご検討いただきます。

機械では振動を利用するエアースケーラーと、パワーの強い超音波スケーラーがあります。手用スケーラーでは、先端が刃物になっている鎌型スケーラー(シックルタイプ)と、先端に丸みのある鋭匙スケーラー(キュレットタイプ)の2種類がよく使われています。
鎌型スケーラーで目に見える部分の歯石除去を行い、鋭匙スケーラーで歯周ポケット内にある歯石や感染組織を除去します。
鋭匙スケーラーはさらに両側に刃がついているユニバーサルタイプと、片側に刃がついているグレーシータイプに分類され、部位に合わせた使い分けが必要です。
その他にも「鍬型スケーラー(ホータイプ)」「やすり型スケーラー(ファイルタイプ)」「のみ型スケーラー(チゼルタイプ)」がありますが、頻繁には使用されません。
鎌型スケーラーは、歯肉の上にある歯石を除去する目的で使われることから、部位に制限はありません。一方で鋭匙スケーラーは、部位に適したものを選んで使用します。
器具には「#〇」と番号しか書かれていないため、どの部位に使用するかは事前に覚えておく必要があります。
使用する部位を間違えてしまうと歯肉を傷つける恐れがあることから、正確に覚えるまでは処置を禁ずる歯科医院も少なくありません。スムーズに使いこなせるよう、練習を重ねることが大切です。
スケーラーの持ち方は、鉛筆持ちの状態から中指の側面をスケーラーの頚部に添えた持ち方です。「執筆法変法」と言い、手用スケーラーでは基本の持ち方となります。使用するときは手の角度を固定するために、スケーラーを握っていない薬指をどこかに添える必要があります。
主に対象部位の近くで固定点をとりますが、場合によっては、対象部位の反対側や対合側(例:対象が下顎のときに固定点が上顎)になるときもあります。自然に固定ができるようになるには、練習が必要です。
前歯部の先端に長く固定点をとると、指が痛くなるだけでなく患者様のお口を広げすぎてしまう可能性があるため注意しなくてはいけません。また汚れが大量に付着している部位は、指が滑る恐れがあります。滑らないことを確認してから器具を動かすようにしましょう。
スケーラーの挿入角度は、0°です。使用角度は鎌型スケーラーや鋭匙型スケーラーの場合であれば、刃部の内面と歯面のなす角度が約85°の位置です。機械のエアースケーラーや超音波スケーラーの場合は、機械の先に装着するチップの長軸と歯の長軸が0〜15゜になる位置となります。
歯周ポケット内で使用する鋭匙スケーラーの場合は、挿入角度に特に気をつけなくてはいけません。刃先が中に入ったことを確認してから使用角度に合わせる必要があります。使用中は歯肉を傷つけないよう、歯の側面に沿わせながら動かすことが大切です。
手用スケーラーを砥石を使って研ぐことをシャープニングといいます。歯石や感染組織を正確に除去するためには、常に切れ味の良い状態でなくてはいけません。スムーズに除去することができれば、その分患者様の負担も減らすことができます。
スケーラーのシャープニングには、スケーラーを固定して砥石を動かす方法と砥石を固定してスケーラーを動かす方法があります。どちらも一方通行に動かすルールがあり、弯曲に合わせて元の形を崩さないように研いでいくことが大切です。
鋭匙スケーラーのグレーシータイプは、刃部に近い部分の頚部と砥石のなす角度が 30゜になるよう調整しましょう。
患者様のお口の中でスケーラーを使用するときは「薬指を使って固定点をかならずとる」「歯の側面に沿わせる」この2つを意識することが大切です。簡単なようで実際にやってみると慣れるまでそれなりの時間がかかります。
また、スケーラーの刃先がお口の外にでるまでは気を抜いてはいけません。部位から離れたからといってよそ見をしていると、抜くときに唇を引っ掻けてしまう恐れがあるので、最後まで十分に注意しましょう。
スケーラーには様々な種類があり、特に鋭匙スケーラーをスムーズに使いこなすには、適切な部位と角度を正確に覚える必要があります。初めは大変でも慣れてしまえば自分の強みとなり、仮に転職してもその先で役立ちます。
歯科医院によっては機械のエアスケーラーや超音波スケーラーをメインで使用するところもありますが、知覚過敏の症状がある方に対しては機械だと痛みが出やすいため、手用スケーラーを使って対処することも少なくありません。
ぜひスケーラーの種類と使い方、シャープニング方法も含め、自分の技術として取り入れてください。