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インプラントオーバーデンチャー vs 全部床義歯、臨床&エビデンスの実際

文・構成:1D公式アカウント | 投稿日: 2021年04月05日
我が国における無歯顎患者の割合は年々減少しているものの、高齢者の人口は増加しており、総数で見ると無歯顎患者数は依然として多い。

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欧米諸国では長きにわたり、無歯顎患者の欠損補綴治療の第一選択は全部床義歯であったが、2002年のマギル声明において「下顎無歯顎患者の補綴歯科治療には2本のインプラント体支持によるインプラントオーバーデンチャー(IOD)を第一選択として用いるべきである」という提言がなされ、以後積極的にインプラントオーバーデンチャーが用いられるようになっている。

さらに、2009年のヨーク声明では「下顎インプラントオーバーデンチャーは従来の全部床義歯と比較して、患者満足度ならびにQOLに関して優れていることを、現時点で得られる多くの科学的根拠が示している」との声明が発表され、マギル声明を強く後押しする形となった。

一方、日本では諸外国との平均寿命の違い、治療費用や費用対効果、さらに解剖学的制限を考慮すると「インプラントオーバーデンチャーが無歯顎患者の欠損補綴治療の第一選択である」とは単純には言い切れない。さらに全部床義歯のみが保険収載されていることもあいまって、日本では現在でも全部床義歯が第一選択となっている。

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インプラントオーバーデンチャーの大原則とは?

インプラントオーバーデンチャー(IOD)という用語は、従来 "Implant-retained overdenture(インプラント体維持オーバーデンチャー)" または "Implant-supported overdenture(インプラント体支持オーバーデンチャー)" という意味である。

つまり、インプラントオーバーデンチャーにおけるインプラント体は、埋入されたインプラント体を支台とした可撤性義歯の維持(義歯の離脱力に抵抗する作用)または支持(義歯の沈下に抵抗する作用)を果たしていた。

しかし近年、"Implant-assisted overdenture(インプラント補助オーバーデンチャー)" という用語が用いられている。

インプラント体は可撤性義歯を補助するために用いられていることを示しており、つまりインプラントオーバーデンチャー治療においても従来の有床義歯補綴治療がベースとなることをくれぐれも留意すべきである。

下顎インプラントオーバーデンチャーの役割

治療効果のアウトカムとして、患者満足度、口腔関連QOL、全身健康QOLなどを称する「主観的評価項目(患者立脚型アウトカム)」と、補綴物やインプラント体の生存率、歯槽骨・インプラント体周囲または顎堤の骨吸収の進行度、咬合力、咀嚼能率、栄養状態など、数値化できる項目が挙げられる「客観的評価」が用いられる。

主観的評価項目について、下顎全部床義歯およびインプラントオーバーデンチャー装着患者の患者満足度について調べた全てのランダム化比較試験をメタアナリシスによって解析したところ、全部床義歯の群に比べてインプラントオーバーデンチャーの群の方が、義歯装着後に有意に満足していることが示されていた。

また、客観的評価については、咀嚼能力、咬合力、食品嗜好など、多くの項目においてインプラントオーバーデンチャー群の方が全部床義歯群より有意に高かったことが報告されている。

上顎インプラントオーバーデンチャーのエビデンスは?

マギル声明にもあるように「インプラントオーバーデンチャーと言えば、下顎」と考えがちであるが、実際の臨床においては上顎にもインプラントオーバーデンチャーは適用されている。

しかし、上顎インプラントオーバーデンチャーに関して上顎全部床義歯と比較した際の有効性について、下顎インプラントオーバーデンチャーほど興味を示す臨床家は少ないとされており、上顎インプラントオーバーデンチャーに関するデータは圧倒的に不足していると言える。

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まとめ

今回の記事では、全部床義歯と比較した際のインプラントオーバーデンチャーの有効性について、文献的レビューを基に検証した。

その結果、下顎に関してはインプラントオーバーデンチャーを適用することで無歯顎患者の患者立脚型アウトカムだけでなく、口腔機能も改善できると言える。しかし、上顎に関してはインプラントオーバーデンチャーの科学的根拠が不足しているため、上顎インプラントオーバーデンチャーの有効性については判定できなかった。

今後、上顎インプラントオーバーデンチャーに関するエビデンスが増加することを期待したい。また、上下顎ともにインプラントオーバーデンチャーを有効的に用いるためには、従来の全部床義歯治療を基本とした適切なインプラント設計を心がける必要がある。

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