歯科医療業界において、接遇マナーは欠かせないもの。接し方や話し方など細部まで気を配るのは難しいが、私はむしろ自分の礼儀正しさや親しみやすさをアピールできる良い場面だと思っている。今回は歯科医院での基本的な接遇マナーや、患者と関わるときの留意点とおさらいしよう。

歯科医院での接遇マナー5原則

①挨拶
受付で患者を受け入れるとき、ユニットへ患者を案内するとき、TBIを始めるとき・・・歯科衛生士が患者へ挨拶する機会は多くある。挨拶は患者さんと関わる上で一番初めに交わすコミュニケーションであり、歯科医院全体のイメージにもなりかねない

また痛みに耐えながら、治療について悩みながら来院する患者も少なくない。何度も通っている患者から見ても、会う度に明るく挨拶をしてくれる歯科衛生士と、暗い声で挨拶してくる歯科衛生士とでは気持ちが大きく違うだろう。患者の不安や緊張を取り除けるような、仰々しくない自然な挨拶が理想だ。

②身だしなみ
学生時代、歯科衛生士は歯科医師よりも厳しく言われてきたであろう身だしなみ。職業柄下を向いて処置することが多いため、最低限髪の毛はしっかりまとめておきたい。また爪が長いと患者の顔や口腔内を傷付けやすいだけでなく、指との間に汚れや細菌が入り込み不潔だ。患者に不快感を与えないようにするだけでなく、「清潔で安全な身だしなみ」も意識したい。

加えて患者と関わるときはマスクを付けているため、目元の印象はイメージとして残りやすい。清潔感を感じさせるためにはアイメイクはほどほどにしておこう。その他アクセサリーは控えめにするなど、仕事中の身だしなみを「おしゃれ」と混同しないことだ。

③表情
患者を呼ぶときやTBIをするときなど、明るく笑顔を見せるだけで印象は大きく変わる。患者のことを思い、どれだけ親身になってTBIをしても、威圧的であったり暗い表情だったりすると患者も身を引いてしまうだろう。

注意したいのは、笑顔が全てではないということだ。患者が不安を感じているとき、笑顔で安心させられることもあるが逆効果なこともある。患者の本当の思いや発言の意図をくみ取り、信頼してもらえるよう表情には特に気をつけよう。

④言葉遣い
患者と関わる上では敬語が基本だが、小児歯科でのTBIや、患者との間柄によっては言葉遣いも変わってくるかもしれない。とはいえ、どれだけ仲が良くても敬語を使うべきだと言う人は一定数いる。自分の立場を踏まえた上で、相手に合わせて使い分けたい。

⑤態度
特にTBI中は、なるべく患者と正面で向き合って話すようにしよう。ユニットや処置スペースの都合上患者の横から話すことが多いが、正面で向き合って話した方が相手にとって親切である。また初診の方や小児歯科では、歯科に対して警戒心を抱いていることも多い。初めから距離を詰めすぎずちょうど良い距離感を意識し、徐々に親しくなっていくと信頼されやすいだろう。

特に患者への気遣いが必要なシーン

①治療が長引き、次の患者を待たせているとき
歯科医師のアシストに付いているときよくあるシーンである。前の患者の治療が延びていることもあれば、ユニットの不具合であったり歯科医師が休憩から戻ってこなかったりなど理由はさまざま。こんなときは予約時間を過ぎてしまった時点で、謝罪ともう少しで案内できる旨を伝えよう。予約時間が過ぎても呼ばれないと「忘れられているのかな?」と思う患者は多い。

なお待たされている身からしたら、歯科医院側の事情や待たされている理由に興味はないので、こと細かに伝える必要はない。加えて、このとき「あと〜分でご案内できます」と具体的には伝えないことだ。患者によってはその時間を過ぎると怒ってきたり、状況が変わったりする可能性があるからである。あと何分で呼ばれるのか聞かれたときは、ざっくり伝えるか変動する可能性がある旨も伝えよう。

②印象や染め出しなど口周りが汚れる可能性があるとき
染め出しのときはワセリンなどを口周りに塗るだろう。それ以外にも、服が汚れないようタオルで首元などを覆ってから処置を始めるようにしよう。こちらがどれだけ気を付けていても、患者が急に動いて汚してしまう可能性もある。それでも責められるのは術者である私たちなので、できる限りの予防策を立てておこう。

また処置後は手鏡とペーパータオルを渡し、患者が自分で口周りを拭ける状況を作ろう。口周りが汚れていることに気付かないまま人前に立ってしまうかもしれない。なおペーパータオルは少し濡らしておくと汚れを落としやすく、より親切だ。

③明らかに間違った方法なのに自信を持って磨いているとき
「あなたの歯磨き方法は間違っている」と率直に指摘するのも、患者との間柄によっては効果的かもしれない。ただ初診の方や警戒心を抱いている方だと、ムッとされたり自信をなくしてしまったりする可能性がある。そのため「そのような磨き方もあるけれど、こう磨いた方がより磨きやすいですよ」「(歯科衛生士の)私だったらこう磨きます」などと相手を完全には否定せず、1クッション置いてから正しい方法を教えると良いだろう。

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