近年日本では高齢化の進展とともに認知症患者が増加しており認知症の予防や早期発見が重要な課題となっている
認知症という病気はその名の通り徐々に記憶や認識力が低下していく病であり、記憶障害や認識障害、言語障害や判断力の低下などが主な症状である。
過去の出来事や日常的なことを覚えることが
難しくなり家族や友人の顔や名前を忘れることがある。
物の名前や物事を理解することが難しくなり
行動においての目的や理解が乏しくなる。
また、判断力の低下により日常生活において適切な判断ができなくなる。
高齢化が進む現代社会において認知症はさまざまな分野で深刻な問題として浮上している。
家族や友人の中で認知症に苦しむ方々が増える一方で、その対応には多くの課題が立ちはだかる。
そんなある日、とある歯科医院で訪れた認知症の患者のエピソード。
患者は付き添いの家族との関係性もわからないほどの認知症で、
高齢になってからは歯科治療もほとんどしてこなかった。
今日はどうされましたか?と尋ねると歯科とは関係のない過去の話をひたすらに語る。
しかしどうやら様子を伺っていると口腔内の義歯が当たり痛がっている様子。
歯科受診もかなり久しぶりということもあり少し不安気な表情。
椅子を倒し口腔内を観察すると残っている歯のほとんどが虫歯になっており
義歯はクラスプと呼ばれるワイヤー部分が破損しておりまわりには食べカスがびっしりと付着している。
しかし、先生とスタッフはじっくりと患者と向き合い認知症による苦しみを理解し、穏やかな声で説明する。
「今日は歯を綺麗にして入れ歯を治し、美味しいご飯を食べられるようにしましょうね」
すると患者の表情がほんのりと和らいだ。
治療を行い、先生とスタッフは丁寧に患者の口腔内をケアする。
補助するスタッフも手際よく補助し認知症患者の笑顔を取り戻すためにチーム一丸となり治療を進めていく。
治療中は時折眉間にしわを寄せたり不安気そうな表情を浮かべることもあるがなんとか椅子に座り治療は進行していく。
そしてついに待ちに待った治療を終えた。
患者の表情はまだうっすら戸惑いの表情が見えるものの口元には満足気な微笑みが浮かんでいる。
とスタッフが言うと患者は感謝の気持ちを交えながら喜びの表情とともに「こんなに心地よいことはないです」と嬉しそうに帰って行った。
このとある歯科医院でのエピソードで認知症の患者は一瞬でも
口腔内のトラブルは認知症の方でも、そうでない方でもストレスに関わる。
認知症の進行、認識障害や言語障害により場合によっては十分な治療を進めることが難しい場合もあるが
歯科医院では認知症の患者の特性を理解し、優しさと思いやりを持ってコミュニケーションを取る方法や口腔ケアのアプローチをしていく。
本来の笑顔のために、認知症について理解し歯科との関わりに心を寄せ、支えていくことが大切なのかもしれない。
歯科疾患の早期発見、治療、予防的なケアは認知症の進行を抑制し、口腔の健康維持に役立ってくる。
認知症の進行、認識障害や言語障害により自らの状態を理解しにくい場合が
あるので場合によっては十分な治療を進めることが難しいケースもあるが
患者の特性を理解し、優しさと思いやりを持ってコミュニケーションを
歯科業務の中には患者と通常のコミュニケーションがとれる場合ととれない場合がある。
そのためミュニケーションがうまくとれない患者に対しては絵や写真などを用い、簡単に理解しやすい情報提供を心掛ける必要がある。
歯科医療者が言葉だけではなくこれらを用い、説明をすることで
患者が適切な口腔ケアを覚え日常生活でも継続して取り入れやすくなる。
認知症患者に対する歯科治療において理解や判断に時間を要することがある。
治療や口腔ケア、歯磨き指導の際は慌てずゆったりとしたペースで
患者に無理なく協力してもらえる環境を作ることが大切であると言える。
また治療中の痛みや不快感は認知症患者にとってよりストレスに
受けるにあたって負担を軽減する配慮なども必要である。
記憶障害や運動障害には短期記憶、長期記憶、物忘れ、時間感覚の混乱などの症状がある。
これらの症状に伴う歯磨きのタイミングや義歯の置き忘れなど歯科関連に対するアプローチ方法としては次のような
・カレンダーやメモなどを活用し日常において必要な習慣、情報をリマインドしておく
・家族や介護者が共同でサポートを行い必要な情報やケアを行う
一方で小さな変化が患者の笑顔を作り出し大きな喜びと幸せをもたらします。
歯科医療者と家族の理解とサポートが欠かせませんね。
これからの未来に向けて歯科と認知症の繋がりを