障がいを持った患者にTBIをする際は、障害の特性・発達レベル・身体的状態を把握した上で指導を行う必要がある。今回は以下の患者に対してTBIを行う際にしておくべき準備、TBI時にすべきこと等を見ていこう。
障がい者へのTBIを行う前には、健常者へのTBIと同様あるいはそれ以上に入念な準備が必要である。個人を尊重しながら行動変容を行うため、以下に沿って準備を行うと良い。
障害の種類によって特性は異なる。あらかじめ確認しておくことで、患者やその保護者・介助者と良好な関係を築きやすくなる。
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学習能力は知的レベルに依存する:発達や知的レベルに応じた指導が必要
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記憶力が少ない:原則、1回の指導で教える内容は1つに絞る
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集中できる時間は長くない:1回の指導時間は短くする
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習慣化に時間を要する:次回来院時状況を確認、習慣化されていなければ再度同じ指導を行う
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陽性強化(ほめるなど)は効果がある:応用行動分析による対応
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パニックになりやすい:患者ができること、患者のレベルに応じた課題を提示する、陽性強化は効果的
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学習能力は知的レベルに依存する:発達や知的レベルに応じた指導が必要
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記憶力が少ない:原則、1回の指導で教える内容は1つに絞る
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集中できる時間は長くない:1回の指導時間は短くする
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習慣化に時間を要する:次回来院時状況を確認、習慣化されていなければ再度同じ指導を行う
行動変容法には数多くの種類があるが、今回はそのうちのいくつかを挙げる
ABAとも呼ばれるこの方法は、以下のような3要素から成る。
これにより「〇〇をしたことでほめられたので、毎日〇〇をするようになった」といった行動につながり、できることを増やしていく方法である。
モデルとなる者の行動を観察させることで、患者自身がどのような行動をすべきか理解させる方法である。障がい者へのTBIにおいては、指導を行う歯科医師や歯科衛生士がモデルとなり以下の流れで進める。
プロンプトとは、患者が正しい行動を行えるようにするための補助的な刺激のことを指し、いくつかに分けられる。
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身体的プロンプト:身体に直接触れる等してガイドする
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視覚的プロンプト:モデリングなど視覚的情報で訴える
目標やゴールまでの道のりを細かく区切り、その1つ1つをクリアする度にほめるなどして達成感を与える方法である。例えば「歯科医師に挨拶する」「ユニットに座る」「歯ブラシを持つ」など段階的に進め、緊張や恐怖心を少しずつ解きながらステップアップしていく。
障がい者へのTBIにおいて、プログラム学習は以下の4つの原理から成る。
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スモールステップの原理:歯科における目標を細かく設定し、小さな「できた」を増やしていくことで最終目標の達成につなげていく
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積極的反応の原理:患者本人が主体となり、積極的に参加することで学習が進んでいく
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即時フィードバックの原理:患者の行動に対して、指導を行う側がすぐにほめるなどの刺激を与えることで、行動が維持されやすくなる
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自己ペースの原理:患者のレベルに合ったペースで指導を行う
歯磨き行動に関する目標・課題を細分化し、簡単なものから難しいものへと系列化させる。
まず同じ目線で患者本人と保護者へ挨拶・自己紹介し、その日行う内容を伝える。
「いつものように磨いてください」と伝え、歯磨き行動を観察する。観察時間は2分間以内とされている。同じ部位を繰り返し磨いていたら、一旦歯磨きを止める。観察中に把握すべきことは、患者は何ができていて何ができていないか、どの部位に歯ブラシが届き、どの部位に届かないか等である。
上記に沿ってTBIを行ったものの課題の達成が難しいとなった場合は、指導課題をさらに細分化し強化する。あるいは理解可能な課題に変更するのも一つの方法である。
またTBI終盤で「今日、やったことをもう一度やってください」とその日の指導課題を再度行わせ、今回の指導で学習が成立したか否かを評価することも重要である。その上でその日の指導内容と達成の可否、次回までの課題、介助が必要な部位などを保護者・介助者へ伝える。