歯科医師過剰問題の文脈で必ず語られる「歯科医院はコンビニより多い」という文句。これはれっきとした事実であるが、この文句には意味がない。
コンビニの数が歯科医院の数を上回ったことなど無いからだ。そもそも歯科医院は、コンビニより多いものなのである。
現在の歯科医院数は、67,874件(※1)である。一方でコンビニの数は、55,404件(※2)。コンビニよりも歯科医院の方が13,599件、およそ20%多い。
東京や大阪などの都市部に暮らしていると、どうしてもコンビニの方が多い印象を抱きがちだ。しかし、コンビニは1階のテナントへの出店が多いこと、歯科医院はそうでもないことを考えると、こんなものかという感じもする。
「歯科医院はコンビニより多い」という事実は、センセーショナルである。しかし、歯科医療が持つポテンシャルを考えれば、むしろ歯科医院の数が足りていないくらいだと、個人的には思う。
本記事では、「
歯科医院より実は多いモノ」を発見していきたい。それを調べたからといって何になるわけでもないが、意外に多いモノが世の中には溢れている。
私は歯科医師である。美容院に行き、仕事の話になると「歯医者ってコンビニより多いんスよね〜」「お互い厳しいスよね〜」という話を、十中八九振られる。
申し訳ないが、美容師には言われたくない。
美容院の数は現在231,134件(※3)と、圧倒的に歯科医院より多い。ちなみに、日本全国の信号機の数は208,061基(※4)なので、
美容院に至っては信号機より多いという衝撃のデータもあるほどだ。
調べたなかで意外だったのは、神社の数だ。神社は全国で81,067件もある(※5)。神社は、歯科医院より12,276件多い。
神社とは別に、お寺も全国に77,256件存在している。
お寺も、歯科医院より8,465件多い。
神社やお寺と同列に並べるのは少し抵抗があるが、日本全国の性風俗店の数は、31,514件である(※6)。届け出をしていない違法風俗店は考慮しないとしても、歯科医院より遥かに少ない。
ただ、事実上、性風俗店に行く客の大半は男性であり、また働き盛りの年代であることを踏まえると、どうだろうか。
現在の日本の生産年齢人口のうち、男性の人数は3,289万人だ(※7)。男性の生産年齢人口10万に対する性風俗店の数、すなわち事実上の人口10万対性風俗店数は、95.8件となる。
先日、
歯科医院の倒産件数が急増している という記事を書いた。歯科医師は過剰であるというマスメディアの声を聞く一方で、現場では人手不足が叫ばれている。
厚労省の統計データによると、歯科医院の件数は2000年代に入ってから微増傾向にあったが2017年からは緩やかに減少している。過去20年を全体で見ると増加しているが、直近では
「開設・再開」する件数を「廃止・休止」する件数が上回っている(※1)。
増加していた総数も2008年の67,779件から12年ぶりに68,000件を下回った。この原因としては2020年に始まった新型コロナウイルス感染症の流行によって廃止または休止する歯科医院が増加した、もしくは開業予定が延期したことが推測できる。
学校保健統計調査によると
子供のう蝕は1980年代から約半減している。う蝕の洪水と言われていた時代とは状況が全く変わり、治療に訪れる患者数の減少が歯科医院の減少に直結していると考えられる。
東京を代表に駅周辺や人口が多い地区で歯科医院が飽和しているのも事実だ。ここに高齢化による人口減少も重なり、経営競争に負けた歯科医院が淘汰されている。
高齢化に伴って事業の継続が困難になり、継承する人物もいないため閉院するケースが増えている。①②のように経営難が理由で閉院、つまり倒産する歯科医院は実際少数派で、廃止または休止した歯科医院のほとんどはここにあたる。
世間で多いと叫ばれる歯科医院だが、データから実態として減少傾向にあることがわかる。
冒頭で書いた通り、歯科医療のポテンシャルは、全身の健康状態との関連をはじめ、こんなものではないと思う。
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