男性歯科衛生士は、絶滅しゆくのか?データで見る現実と将来性

男性歯科衛生士は、絶滅しゆくのか?データで見る現実と将来性

文・構成:Shugo Matsuoka | 投稿日: 2020年09月02日
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「男性の歯科衛生士」と聞くと、どのようなイメージを抱くだろうか。全国で数十人しか存在しないこの職業については、あまり業界での議論が重ねられていないように感じる。

今回の記事では、男性の歯科衛生士という存在について、実際のデータから見えてくる将来像について解説していこうと思う。

「男性歯科衛生士」は日本に何人いる?

厚生労働省による平成30年度衛生行政報告例によれば、日本全国には「67人」の男性歯科衛生士がいる。同調査による日本全国の歯科衛生士数は132,629人であるから、女性歯科衛生士に比べて男性歯科衛生士は桁違いに希少性が高いことがわかるだろう。男性歯科衛生士の67人以外の全員が女性歯科衛生士だとすると、歯科衛生士のうち0.051%しか男性の歯科衛生士が存在しないという計算になる。

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男性歯科衛生士という存在について、「これからもっと増えていく」「法律が変わってから増加傾向にある」という印象を持っているのではないだろうか。確かに、超高齢社会である日本において、介護現場への歯科の介入など力仕事が増えていくなかで男性歯科衛生士の需要は高まっていきそうだ。

歯科衛生士法から「女子」の文字が消える

平成26年の歯科衛生士法の改正で、同法第2条第1項は次のように改められた。

【改正前】
この法律において「歯科衛生士」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、歯科医師の指導の下に、歯牙及び口腔の疾患の予防処置として次に掲げる行為を行うことを業とする女子をいう(以下略)。

【改正後】
この法律において「歯科衛生士」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、歯科医師の指導の下に、歯牙及び口腔の疾患の予防処置として次に掲げる行為を行うことを業とするをいう(以下略)。

これだけ見ると(看護師がそうであったように)男性歯科衛生士が今後どんどん増えていくものと思いがちだが、あくまで条文が男女共同参画の文脈で改められたというだけである。

「女子」の文言が「者」に改められたことで、男性でも歯科衛生士になる道が開かれたというわけではない。昔から、歯科衛生士は男性でもなることができた。

改正前の歯科衛生士法の附則第2項には、保健師助産師看護師法第60条第1項・第2項における「男子である看護人(看護士または准看護士と称する)」に関する規定と同じように、準用規定が設けられていた。つまり、「女子」の文言が「者」になったのは、改正まで附則により男子に準用していたものが改められただけに過ぎないのである。

男性歯科衛生士数を年齢別に見ると?

だから、高齢の男性歯科衛生士(65歳以上)も実在する。歯科衛生士法の改正後に歯科衛生士免許を取得した可能性も捨てきれないが、恐らく平成26年以前から活躍していた男性歯科衛生士だっただろう。

男性歯科衛生士の年齢別の分布は、20代が14人、30代が24人、40代が19人、50代が7人、60代が3人といった具合だ。だいたい1学年に1人は男性歯科衛生士がいる計算である(下図)。
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年齢別に見てみると、これまた「若い世代の歯科衛生士で男性の割合が増えている」と思いがちだが、そういうわけではない。それぞれの世代の全歯科衛生士数を分母に男性歯科衛生士の割合を計算してみると、以下のパーセンテージになる。

  • 男性歯科衛生士の割合(20代):0.043%
  • 男性歯科衛生士の割合(30代):0.067%
  • 男性歯科衛生士の割合(40代):0.052%
  • 男性歯科衛生士の割合(50代):0.032%
  • 男性歯科衛生士の割合(60代):0.049%

そもそも歯科衛生士という職業は40代以下に多いため、「若い世代の歯科衛生士で男性の割合が増えている」というのも錯覚である。

実際、男性歯科衛生士は減少している

実際のデータを見てみると、男性歯科衛生士は増加するどころか減少している。平成28年度衛生行政報告例では日本全国に77人いた男性の歯科衛生士は、平成30年度には67人になっている。10人ほどが歯科衛生士という職業から離職したと考えられるのである。

特に、20代の男性歯科衛生士の減少が著しい。平成28年には24人いた20代の男性歯科衛生士が、平成30年には14人まで減少している。その多くが、診療所に勤務する男性歯科衛生士である。

仮説に過ぎないが、男性歯科衛生士という存在に対して歯科業界の給料面や労働環境面での対応が追いついておらず、彼らは離職してしまったのではないだろうか。

歯科医院側で高まる、男性歯科衛生士のニーズ

絶対数の少ない男性歯科衛生士が歯科衛生士の仕事から離職してしまうことは心苦しいが、考えようによっては男性歯科衛生士のニーズは高まっていく。女性歯科衛生士と比べた場合の、男性歯科衛生士を雇用するメリットについて考えてみよう。

男性が歯科衛生士になるメリット①:力仕事にも対応できる
大量注文した材料や消耗品の段ボールを運んだり、紙のカルテを移動させたり、歯科衛生士の仕事は意外と力仕事が多い。また近年では訪問歯科診療でも力仕事が要求される場面が増えていると思われる。この点で、力仕事にも対応できる男性歯科衛生士のニーズは高いだろう。

男性が歯科衛生士になるメリット②:男性特有の安心感がある
歯科医院で働いている方なら、「男性の先生希望」という患者さんに出くわしたことがあるかもしれない。処置内容にもよるが、「男性の方が安心感がある」と感じる患者さんも少なくないそうだ。男性特有の安心感がある、という点も男性歯科衛生士を雇用するメリットとして挙げられる。

男性が歯科衛生士になるメリット③:ライフステージの影響を受けにくい
歯科医院の院長が頭を悩ます問題のひとつに、歯科衛生士の離職・休職問題がある。女性は男性と比べて、出産や育児によるライフステージの影響を受けやすい。この格差は是正されてはいるものの、結婚や出産に伴って女性が退職・休職しなければならない風潮はいまだ根強く残っている。男性の歯科衛生士であれば、この問題は解消できるかもしれない。

男性歯科衛生士を取り巻く「課題」

本記事では、男性歯科衛生士にまつわる実際のデータや男性歯科衛生士が歯科医療の現場において活躍できる理由について解説してきた。しかし、男性歯科衛生士を受け入れる歯科業界側の課題は山積している。

「男性歯科衛生士」というキャリアをまだ数十人しか歩んでいないため、キャリア形成や給料体型などのロールモデルが確立されていないことは否めないだろう。先述したようにライフステージの影響を受けにくいからこそ、いかにして歯科衛生士としてキャリアを歩んでいくのかは問題である。そもそも、女性しか入学できない歯科衛生士学校が多いという事実も問題だろう。

今後数年間で、すぐに男性歯科衛生士にとって働きやすい歯科業界に変化する兆しは感じられないが、さらに活躍する男性歯科衛生士が増えていって欲しいものである。

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