「ひとり親方」の技工所は激減する:アメリカ技工業界のいま

文・構成:青木 秀馬 | 投稿日: 2020年02月27日
筆者の叔父は、すでに引退はしているが、アメリカ・シアトルで開業している歯科技工士であった。そんなこともあり、今回の記事ではアメリカの歯科技工所の事情についてお伝えする。

アメリカの歯科医療の現状は?

まずは、アメリカの歯科医療の状況を見ていこう。歯科医師数は、2019年に初めて20万人を超え、増加傾向にある(米国歯科医師会)。

歯科医師数は日本のおよそ倍だが、人口10万人当たりの歯科医師数は61人と、その比率は日本よりも低い。
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このような環境のなか、歯科技工所はどのようになっているのだろうか。

今回紹介するのは、AGD Impactという米国歯科医師向けの雑誌に掲載された『The Changing Landscape of Dental Labs(2018.5)』というレポートである。

「ひとり技工所」が激減している

アメリカにいる歯科技工士は、2017年現在45,000人で、歯科技工所の数は6,200件。

これに対して、2001年には歯科技工士数は47,000人、歯科技工所は7,800件であり、16年間で歯科技工士の数はさほど変わらず、歯科技工所だけが約20%減少したことになる。

特筆すべきは、2001年には「一人開業」の歯科技工所が約5,000件あったにも関わらず、2017年には約700件に大幅に減少していることである。

これは、業界が縮小した状況というわけではなく「統合が進んだ」結果である。これが、現在アメリカの歯科技工業界で起きてる減少なのだ。
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背景には開業費用の高コスト化

なぜこのようなことが起きるのだろうか。主たる原因は、歯科技工所の高コスト化にある。

2000年前後は歯科技工所の開業費用は1万ドル(約110万円)であったが、近年は10万ドル(1100万円)程度まで高騰している。このあたりの数字は日本においても同程度であり、日本でも同様の減少が起きることは想像に難くない。

同レポートのなかで、「中小規模の歯科技工所は大規模の歯科技工所を追いかけて無理をしても結果につながらない」と分析されている点は、参考にすべきかもしれない。

歯科技工士養成は、歯科技工所で

また、正確な数は記載されていないが、歯科技工を志す若者は減少傾向にあり、養成機関の数も減少傾向にあるということも指摘されている。

しかし実際の数字を見ると、歯科技工士の数は大きく減少していない。この原因として、大規模な歯科技工所が独自のカリキュラムを組み、歯科技工士を養成している背景がある。

とある歯科技工所では、養成機関が用意する倍の量のカリキュラムを組んでいるところもある。

破格の国外製技工物

こうした歯科技工業界全体の変化は、歯科医師と歯科技工士との付き合い方にも変化をもたらしている。

従来、アメリカの歯科医院は近所の歯科技工所に技工物を依頼することが主流だったが、現在は国外の歯科技工所との付き合いが可能になっている。

中国、ベトナム、インドネシア、パキスタンなどから送られてくるクラウンは、送料込みで25ドルからというものがあるそうだ。アメリカ国内で製作されれば、100ドルは下らない。

このような状況では、歯科医師と患者は技工物の品質に注意する必要がある。また、技工物の品質だけではなく、物流に支障が生じた際の対策も講じておく必要があるだろう。

格安技工物が利用されるケースがどの程度あるかは定かではないが、複数のラボとやりとりできる状態にしておくというのは、安定的な歯科診療に欠かせない。

最後に

日本国内では、今でも約80%の歯科技工所が「ひとり親方」状態である。

アメリカのように劇的な状況の変化は発生しないとしても、日本の歯科技工士の高齢化が進んでいること、デジタル機器の価格が低下傾向であることを考慮すると、日本においても何かしらの変化が起こるはずだ。

その時々に適切な判断・対応が取れるように、この記事が参考になれば幸いである。

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